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保護猫『とのま』の一言成長日記2025。5月~6月



5/13(火)

 今朝も4時10分前に起こしに来てくれて、そのまま枕元で香箱座り待機。10分遅れで私が起きると同時にすりすりで早朝プレご飯を催促。こうでなきゃ、うちの朝は始まらない。今は足元で、待機。あ、昨日、おにぎり食べてたら、歯の、ギンが、取れた……。今週末に配車行きます。歯は大切に。もうすぐ本早朝ご飯が出るよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

5/12(月)

 今朝も、もう起きているのにリヴィングで待機。私が起きてくるのをじっと待っていた様子。そういう風に、やり方を変えたのかも。私の、健康を、腰の塩梅を気遣って?そういえば最近は、お気に入りの毛布を敷いても膝に乗って来なくなりました。それも?私の腰を気遣って?心配かけるね。大丈夫だからね。とのちゃんは優しいね。今日も一日家族みんなでよろしくね。

5/11(日)

 今朝は遅めの起こしに来てくれました。雨は降ってないけど、どん曇り。とのちゃんのはとうとう、トイレで育て中の猫草に気づきしきりにトイレに入りたがりますが、もうちょっと、かな、今日の夕方くらいに、ひょっとしたら上げるかも。暖かくなってきたから伸びるのもちょっと早くなってきたからね。兄さんは今日も練習試合、今日も一日家族みんなでよろしくね。

5/10(土)

 今朝も、定刻4時よりやや遅めに起こしに来てくれました。でも手荒な事はせず、隣で香箱座り。私が起きたら,いつもよりもべたべたすりすり、足元にクテっと、寝っ転がったり。何かのアピールっぽい。あ、そうか!ブラッシングか?もう換毛期だもんね、としばらくブラッシングしてたら、ありがとう甘嚙み。今日はお昼ぐらいまで雨だってさ。兄さんは土曜日出勤、大変だ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

5/9(金)

今朝は帝国ちょっと前に起こしに来てくれました。そして私の横で待機。4時になったら再び起こしてくれました。その時はちょっと、鼻フック。見るとトイレが汚れてて、それを言いたかったのか、と思いました。6年も一緒にいると言いたいことが分かるようになってくるもんだね。今日も一日家族みんなでよろしくね。

5/8(木)

 今朝も、そっと近くに来てじっとして私が起きるのを待っていた様子。一瞬、頭を何かが飛び越えるのが分かりました。前なら、思いっきり踏みつけてきたのが、最近は上品になってきた気がする。それとも、そればとのちゃん成りの何か理由があるのかも。とにかく、家族を気遣ってくれてるのはすごくわかります。きょぅも一日、家族みんなでよろしくね。

5/7(水)

 今朝も起きてるのに私が自発的に起きてくるのを待っていた様子。今、足元にいます。ゴールデンウィークも終わり、また通常運転。兄さんは今日も部活、天気は良さそうです。そういえば、とのちゃん、もうすぐ誕生日だね。なんかお祝いしないとだね。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

5/6(火)

 今朝もちょっと遅れで起こしてくれました。とのちゃんは定刻に起きていた様子。兄さんは今日の予定だった練習試合が中止になって、このゴールデンウィーク初の、フル休み!!喜んで寝ております。天気は悪そうだけど、今日も一日家族みんなでよろしくね。

5/5(月)

今朝は大寝坊。6時半まで寝てました。昨日、兄さんの野球部の父母会。という名の飲み会に参加したたため。兄さんは今日も練習試合。調子を保て!今日も一日家族みんなでよろしくね。

5/4(日)

 今朝は4時過ぎに起こしに来てくれました。どうやら、私が左を向いて寝ているときは鼻フックがかかりにくいため、枕元で待機、右向きに寝ているときは、鼻フック、GO!という、セルフルールがあるらしい。とのちゃんは左利きなんでね。そういう事か。今日は兄さんはホームで練習試合、母さんは野球部父母会、父さんはそのあと、父母会飲み会。天気は良さそうだよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

5/3(土)

 今朝は2時間寝坊。とのちゃんはちゃんと定刻に起こしに来てくれたんですが、特になにもせず、じっとわたしのそばで、30分ほど香箱座りした後いったん退散。その後6時ぐらいのアラームの音を聞いて再び現れて、この時は、ちょっと、鼻フック&ニャ、(起きろ!)と言ってくれました。息子は今日も遠征試合、野球少年に休息はない。昨日の天気と打って変わって今日は快晴。また、デカいヒットかホームラン、打てるといいな。今日も一日家族みんなでよろしくね。

5/2(金)

久々の雨模様。とのちゃんは今日も、じっと静観。私のアラームが鳴ると、ニャ、ニャ(起きろ!起きろって!)と起こしに来てくれます。今日をやり過ごせばあとは4連休。兄さんは今日は東京・上野に遠足?高校生なのに、遠足? なんだって。でも雨だからな。楽しいといいね。そして今日も一日、家族みんなでよろしくね。

5/1(木)

今朝も、私が起きるまで静観。本人はとっくに起きている様子。こういう起こし方に変えたみたい。大人っぽい。でも、早朝ご飯食べてるときは、子供っぽい。こういう、ギャップの事をギャップ萌え、というのかもね。今日も元気でかわいいです。腰の具合は、まあまあだよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

Various Goods


●Cups & Glass

●GLASS
●LONG GLASS
●MUG CUP
●THERMO TUMBLER

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●Cushion & Blanket

●Cushion
●Blanket

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●Towel-Handkerchief & Bandana

●Towel-Handkerchief
●Bandana

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●Bag(バッグ)

●T-SHIRTS TRINITY
●SUZURI
UP-T

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●Poach/Phone case(ポーチ/スマホケース)

●T-SHIRTS TRINITY●

●Phone case
●Flat Poach SS
●Organic Cotton巾着S
●Cotton Linen巾着
●Flat Poach
●Cotton Poach
Organic Cotton巾着L

●SUZURI●

●Phone case

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●Sundry goods(日用雑貨)

●T-SHIRTS TRINITY●

●Key chain(circular)
●Key chain(rectangle)
●Clear case
●Leather badge
●Leather Magnet
●Pass case
●Clear file
●Coin pass case
Leather badge(rectangle)

●SUZURI●

●Key chain
●clear case
●Can badge
●Sticker
●Clear file
●Clear case mini
●Note book

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『いきてるきがする。』《第20部・春》



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      第101章『後縦靭帯骨化症という愛。(その5)』

  乗合の馬車に乗っていて、道もガタガタであるはあるのだが、どうにも揺れが危なっかしいようでふと外を見ると、左前の車輪を止める金具が緩んでグラグラと今にも外れそうになっているのだ。しかし御者はとんでもない老爺のため、ぼんやりと前は見ているものの横も後ろも全く見ていない様子。

  これは例え話。

 やがて轍を跨ごうと馬車全体がぐらりと揺れた時、とうとう金具は外れて落ちて、コロコロと転がって路傍に消えた。もう限界だ、外れるのは時間の問題だ。

 見ると子供を抱いた人も乗っている。その人は愛おしそうにお子の顔をのぞき込んでいるが外の様子には全く気付く様子もない。馬車は当たり前に目的地に着くと信じ込んでいるようだ。我が子が愛おしいのはわかるが、今は顔を覗き込んでいる場合じゃない!

 私の額には大量の汗が浮いてきて、

「どうしたい?兄さん、気分が悪いのかい? 馬車に酔ったか? 都会モンかい?」なんて向かいの赤ら顔にまで言われる始末。だって危機迫る現実が、目の前に全く現れてこないのだから。実際、旅人である私としては洒脱な返しの一つもしたいのだが今はそんな余裕はない。一刻も早く飛び降りるしかないのだが、そんな現実が全然ない以上、私はなんと言えば、この人達を、無事にスムーズに飛び降りさせる事が出来るだろうか……。

  まあ、これぐらいにして……。

 結論から言うと私はその店を喧嘩同然でやめたんですが、それはもう、入社から10年も経った後の事でした。その間、例の無駄な序列と慣習は家宝のように連綿と受け継がれ、それに私もさほど不満も感じなくなっていたのです。人が口にするものすべてが料理というならば地球はさながら大きな台所だ!私はそんな言葉を反芻してはその大層な無意味さに、ププ、と吹き出しそうになりながら、日々チャーハンを炒め、野菜を炒め、中華麺を茹で、カツを揚げていたのです。しかしいくら私が悪人を装ってみせても、本物の悪業をやり続けるにはやはり限界があるとわかったのです。かつての私の夢・目標は、干からびてもう何かの形見のようになってはいましたが、まだ懐に奥深くにしまってあったようです。そして、じゃあ訊くが、これとこれ、どっちが自分に正直か、と自問した時、私は私なりに、たとえ何の得もなくても、少しでもこの無意味な序列と慣習に亀裂を入れてやろうと、それこそがここにいる柑橘たちに対する本当の仏心だろうと思ったのです。

 思い付いたらすぐにやれ!口動かす前に手を動かせ!なんでも早ければ早いほどいい!! 口ごたえをするな!と、それがあたかも世界の4大原則であるかのように自信満々に繰り返す老社長のその言葉通り、厨房には無計画に備え付けられた無数の換気扇や水道の蛇口、ガス栓が犇めいており、食器棚には10年間で一度も使った事のない皿やどんぶり、大型冷蔵庫には、血水にまみれた野菜屑、そのほか、すり減って熊手のようになった竹箒や、熱で曲がって重ならない番重、焦げたフライパンや黴の生えた摺りこぎ棒やしゃもじがあっちこっちに散らばり、それらすべてはもう疲れ果てているように見えました。

 社長。僕、今月いっぱいで、退社します。

 一番の年嵩で、一番新人で、一番仕事が出来ない、という看板はなんと10年も続いたのです。しかし私はわかっていました。弱い組織ほど、そういう看板が思わぬ大きなものを支えるようになる事を。そして粗悪な組織ほど、そういう捨て石のようなモノが絶対必要不可欠であることも、私は十分理解していました。だから私は例の4種の柑橘類たちの不健康な惰眠にも、そっと毛布を掛けてやることを忘れませんでした。誰のなんの役にも立たない彼らの矜持こそ、この場所を支える柱だったと今も確信しています。私もいったんはそれを守ろうとしました。そして欲しがる老人の意のままに、消化の悪い脂身を食べさせ続けたのです。

 

 老社長は一瞬、驚いたような顔をしましたがすぐに渋面に戻り、まあ、うちもね、そんな、よけいな人をね、雇う余裕もないわけだから、やる気がないなら、やめてもらって結構ですよ。 と言いました。やっと辞めたか、という空気が一瞬で厨房に充満するのが分かりました。彼らは一致団結して役立たずを追い出してやった。という事に満足げでした。しかしそれは単に寝ざめの心地良さでした。その心地よさと引き換えに、彼らの惰眠はあえなく終わりを告げたはずでした。あの時、彼らは確実に目を覚ましていました。さあ素敵な夢は終わったよ。どうする? このうえ二度寝をするというのならもう知らない。勝手にしろ。結局私は一人で馬車を下りることになりましたが最後に一言、車輪、もうすぐ外れるからね。といい残したのです。

 これは決して、私の当てすっぽうの恨み節ではありませんよ。彼らの世界では知りませんが、私の世界では実際その通りになりました。そしてその時も私の気持ちはやはり、彼らを残して一人で馬車を下りたという後ろめたさでいっぱいでした。私は自分の現実を信じきれなかった不甲斐なさ、無力さを感じながら、よたよたと走り去る馬車を忸怩たる思いで見送ったのです。

               *

 どうしたらいいんでしょう? 私は萩原にそう尋ねました。

大戦中の日本兵は女をどう扱うものなのか、私にはわかりませんでしたから。

萩原は「私の親戚の令嬢なのだから堂々としていればよろしい。」そう言ってくれました。その言葉は優しく、凛としており、私は少しホッとしました。そして妙な気持になりました。それは恋愛感情のような、ずっと寄り添って頼って歩きたいような慕わしい気持ちでした。少しうっとりとして歩いていると、

「ところで君はいつここへ来たんだ?今どこのお世話になっている?」と萩原は私に訊きました。そりゃあ、当然そう思うでしょう。これは私の頭の中の世界ですから、どんな出鱈目でも本当になるはずでした。でも私の頭はもう少しの出鱈目を思いつかなくなっていました。他の兵隊たちは少し足早に酒場へと向かって歩いていました。ネコのいい匂いも、車輪が外れそうな馬車も、そして自分が女子であるという事も、すべてをそのままにして、私には一つの答えしかないように思えたのです。

 あの……、もし、今、戦争中でなかったら、私が、あなたの姪でもなかったら、どうします?

 こんな拙い言葉では何も伝わらない。私は萩原に妙な疑いを抱かせてしまったかもしれない。そう思いました。なんなら私は今すぐにパソコンを閉じて元の世界に戻ることもできたでしょう。でも、それはこの世界を完全に疑わなければならないのと同じ事でした。たとえ本当でもウソでも、現実を疑うのは辛い事です。私は一瞬、この海に暮れる綺麗な夕焼けや優しい海風や、少し前を行く、闊達で勇敢な日本兵たちの後姿をそうしてしまう勇気がなかったように思えたのです。しかし、

「同じ事だ。」 萩原はそう言って笑いました。

 何も変わらない。私を取り巻く環境なんて、私はまるで門外漢だよ。私は生きている。それだけだ。それだけで十分だ。君が戦時下ではないと思うのならそれで結構。私もそうしよう。私の姪ではないというのなら、それでも結構。そうしよう。この少し後、私はきっと奴らと一緒に酒を飲むだろう。私もまったくその気でいる。だがその前に、いきなり飛び出してきたどこかの誰かに射殺されるかもしれない。それは戦時下であろうとなかろうと、君が姪であろうとなかろうと関係ない。つまり何の問題もない。生きるとは実に単純明快な事なんだよ。

 萩原さん、この島はもうすぐ焼け野原になります。アメリカから攻撃を受けるのです。 私は言いました。これも或いは私の世界の出来事なので、私がそういわなければ、そうはならなかったのかもしれません。しかし萩原は、

 同じ事だよ。と、やはりそう言って笑うのでした。

                  *

 六義園に届ける花見の団子を乗せるために荷台に無理矢理番重を括りつけた不安定な自転車で、よたよたと危なっかしく車道の右を走ったり左を走ったり……。終戦直後とは違うんだから、交通ルールぐらい守れよ!死ぬよ。

 それでも80歳を過ぎているとは思えない巧みなハンドルさばきで六義園にたどり着いた老社長は私に、ほれ、食え。と、注文の箱の中からみたらし団子を一本私に差し出しました。

 これは注文の……。

わかりゃしねぇよ。食え。

 枝垂桜の前のベンチに腰を下ろし、池を眺めながら老社長は言いました。

 お前なんて、どこいに行っても使ってもらえないよ。もっと素直にならなきゃ、可愛がってもらえないよ。人間はな、可愛らしさが一番大事なんだよ。戦後の日本みたいにな。あの頃、もし日本人が強がってたら、アメリカは容赦なく日本を滅ぼしただろうさ。皇室も、政治家も、大人も子供も、一丸となって、可愛らしく連合国に媚びたから、今の日本があることを忘れるな。

そりゃ、悔しかったさ。でもそうすればその日一日がをより楽しく生きてられる。強がることが一番じゃない。人生なんて、その日の飯が旨けりゃそれで十分なんだよ。

                *

 やっぱり、私は、失礼します。 そういって立ち止まると、萩原も立ち止まり、そうか、まあ、十分に気を付けて。そう言ってそのまま立ち去りました。長い影を引くその後ろから、大人用の自転車を三角漕ぎをする少年が追い越していきました。あの少年は将来、本土に戻って巣鴨で小さな団小屋を始めるかもしれない。そしてその店は、地蔵通りブームの波に乗って食堂へと拡大して、やがて箸にも棒にもつかない、ひねくれた男を雇うかもしれない。そのためには是非ここが、焼け野原にならないように、私はせいぜい別の未来を創造するしかない。それしかないんだろうか。

             <続く。>

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 第100章『後縦靭帯骨化症という愛。(その4)』

 ポカポカの日差しの中でネコの背中を撫でています。

温かいネコの背中は、嗅がなくてもいい匂いだとわかるんです。この『ひなたの猫はいい匂いがする』というのはおそらく世界共通の錯覚だと思われるのです。

 つまり全世界が共有する錯覚は、確かにある、という事になりますよね。でもそれって、錯覚、なんでしょうか? 実際となにが違うのでしょう?

 私は私という人間にさほど興味はありません。顔が良かろうが悪かろうが、頭が良かろうが悪かろうが、スタイルが良かろうが悪かろうが、家柄が良かろうが悪かろうが、育ちが良かろうが悪かろうが、健康が良かろうが悪かろうがどうでもいい。私が興味があるのは、私の周りの出来事のみで、それにはむしろ病的に興味がある、と言えそうです。

 私がこの、病的に、と言うところは、私の身体の、或いは頭の中の、感覚や印象、予感やイメージ、記憶や直感などを、収集家の蝶のように種類・色・形ごとに分け、狂気じみた等間隔でびっちりと並べてはそれを眺めることを言います。

 店は春の日差しに溢れています。『昔の子』『今の子』はいつもと変わらず、来客に備えて掃除したり、商品のレイアウトを工夫したりしています。それはいつもと一緒。彼らはそうして、夏には夏の、秋には秋の、冬には冬の様子を見せてくれますから、今は春のそれ。ただそれだけ。40歳になる2匹の金魚も頗る元気な様子。私はそんな、ありきたりで幸せで、そして猫の匂いのように、いつでもいくらでも疑える目の前の光景を敢えて一切疑いません。そして私はきっとまた、フラフラと自分の立ち位置を変えて、ここに来たり戻ったり、トラックを運転したり、ギターを弾いたり、バイクに乗ったり、風呂に入ったり酒を飲んだり、将来を案じて捨て鉢になったり、一縷の夢を見出したりしながら、その度事に私の周りに現れるこの世界をまったく疑う事なく現実として、創造するともなく想像しては観察しているのでしょう。

                *

 厨房には私のほかに4人の調理人がいました。私は基より人好きのするタイプではないので、ここでもまた少なからず人間関係に問題を作りました。 だいいち料理に関しては全くの素人の私が、一番の年嵩という面倒くさい立ち位置から加わったのですから当然、空気はある種のパラドックスのようなものを楽しみ始めるわけです。包丁の持ち方も知らず、カレーすら満足に作れない私に奴らは、「俺、カレーが作れない奴生まれて初めて見たよ。」などと軽い嫌味を言いましたが私はそういう連中の方にこそ、これまで嗅いだことがないような強烈な腐敗臭を感じたのです。それはあまりにも哀れで痛ましい、長い時間蔑ろにされた挙句、救われる事なく腐敗した『焦り』で、この連中が若くしてすでに頭打ちで終わる寸前である事を、こればかりは年の功でしょうか、はっきりと感じることが出来たのです。そしてこここそが今私がいる現実の中の一番つまらない部分。こんなつまらない想像をするから、こんなつまらない現実が出現しまうんだと。あぁ、恐ろし、恐ろし……。と心底思ったのです。

 この4人を仮に、八朔、蜜柑、柚子、ネーブル、としましょうか。私は当初、自分が飲食店を経営する際のノウハウを得るためにここに入ったつもりでしたが、実際には役に立つノウハウは何一つありませんでした。あるのは意味のない序列と慣習だけ。そこにこの4種の柑橘は、駄々ぶちまけたように転がっていました。

 まず八朔は、ホテルの厨房でやってたという立派な肩書を持ち、技術もこの店では一番で、その事で老社長からも一番信頼があったようですが、当の本人にはまったく自信がなく、逃げ回ってきた事は間違いありませんでした。

 続いて蜜柑は、和食、洋食、中華、全部やってきたと豪語する割にプレッシャーに弱く、焦ると平気で生煮えのカツを客に出すような失態を犯し、言い訳ばかりが達者で腕のない、しかもプライドだけは誰よりも高い、無知と不見識と不摂生の権化のような男でした。

 そして柚子は、一応は料理学校を卒業しているらしく、理論派風、ではありましたが、何をするにも猿真似止まりでまるで閃きがなく、発想力の欠片もない迂闊な奴でした。

 最後がネーブル。この男は料理人云々以前に人間的に重篤な問題を抱えており、不幸な家庭に育ったらしく、愛情への猜疑心と渇望が全身にむき出しになっていました。そして狭い檻のような心の内側から世の中を盗み見てはその内側に理想の楽園の絵を描いて世の中との関係を拒絶しながら手繰り寄せるような徒労を繰り返す、中でも一番危険な人間でした。

 そして、この集団を束ねる老社長は、自分が戦時中子供だった事を常に笠に着ては、「お前らは恵まれ過ぎている!だからアマちゃんなんだ!お金が貰えるだけありがたいと思え!」などと言っては早出・遅番を強い、賄いにまでいちいちケチをつけ、「昔は茄子のヘタだって食べたんだ!!」などと喚き散らし、そのくせレジのお金で孫におもちゃを買ったりと下卑たルール違反も平気でやらかすのでした。

 こんな連中と綺麗な輪など基より作れるはずもなかったと今でも思います。私はすぐに関係を断ち切って、仕事だけに専念するつもりでいたのですが、それも無理でした。もし私がもっと器用であれば、或いはこの毒壺の回る轆轤を回し続ける事も出来たのかもしれません。しかし私はもとよりそんな器用な人間ではありませんし、毒壺を回し続ける事にも何の意味も見出せませんでした。私のそんな態度はすぐに周囲に伝わり、私はほどなく誰からも嫌われるようになりました。バランスを崩した毒壺はたちまち倒れ、辺り中に毒をぶちまけたのです。連中はレシピノートを隠したり、ウソのオーダーを伝えたり、私の作った料理をそのまま捨てたりしました。そうすれば私が困るだろう、焦るだろう、叱られるだろう、きっとそう思ったのでしょうが、実際には私は作り直せばいいだけで、それは単に客が迷惑しているのだという事に、悲しいかなこの強烈な腐敗臭を放つ連中の頭脳では辿り着けなかったようです。毒が客席まで飛び散っている事に、奴らは終ぞ気付かなかったようです。

 因みに、『出汁の引き方を教えてくれませんか。』と頼んだ時。

八朔は、何でも訊くんじゃねー考えろ! と言いました。

蜜柑は、そんなもん、美味く引きゃいいんだよ! と言いました。

柚子は、わからない……。と言いました。

ネーブルは、それは人それぞれ違うから、と言いました。

 いずれ劣らぬバカな答えです。

正直に、知らない、と言えばいいのに……。

唯一、知ってそうな柚子まで、わからない、という始末。

そして腐敗臭は一層きつくなります。私は限界にまた一歩近づきます。

             *

 トラック島の夕日はとても綺麗で、本当に戦時下なのかと疑うほどです。

海風がふいに私の髪を揺らしました。乾いた風は何千キロも彼方の波の音を運んでくるようでした。祝日のない6月を前にウンザリとしていた私は、まさかこんなに綺麗な夕陽を見るなんて思ってもみなかったのです。

 心が緩んでいくのを感じました。ホッと息をつくとその場に寝転がってしまいそう。うっとりとしている自分は、ひょっとして、若くて可愛い女子なのかもしれない……。

ハッと我に返りました。そしてもう一度、頭の中を整理します。

 これは誰もが一度は考えることかもしれませんね。

 自分が、男性? 或いは、女性?

 

 しかし萩原さんが私を、茂さんの姪、と言った以上、私は女性でなればなりません。それは、『ネコのいい匂い』のように、いくらでも疑える現実ではありましたが私は一切疑わないのです。そしてそうする事は困難なようで、実際はそうでもない。

 あぁ、そうですか、私、女性ですか。そんなモンで止めておけばいいんです。実際そうですよね? 毎日毎日、そこまで性別って意識してませんよね?

 たとえ性的な関心が女性の方に傾いていてもそれでいいじゃないですか。

萩原さんにそういう姪がいる事が、そんなに不思議ですか?不自然ですか?

 全然。性自認の多様性はなにも最近になって俄かに発現した事ではありませんものね。

  別の兵隊が、「よかったら一緒にご飯でも食べませんか?」と言いました。え?と言って思わず視線を落とした私の仕草は、或いは十分に女性的であったかもしれません。でも……。

 落ち着けよ。落ち着け……。私は自分に言い聞かせました。この時代の男女の関係について、自分は何も知らないのです。

            <続く>

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    第99章『後縦靭帯骨化症という愛。(その3)』

  もうどうでもいいや……と呟いた時、

ダメだ!それでは全てがダメになる。という誰かの声に私はハッとする。

 こんな経験ありません?

 オムレツを作っていて、まさに今この瞬間!!という大事なタイミングで突然ガスが止まって、べチャッとした半かたまりの溶き卵がとても残念な形でフライパンの中でゆっくりゆっくりと冷えていく……。

 それはその少し前に発生した小さな地震のせいで安全装置が作動してガスが止まったからなのですが、私はこの些細な出来事の源泉を、たかが私がオムレツを作るのを邪魔するぐらいの事で、こんなにも大袈裟な、地球規模の仕組みを使う馬鹿で幼稚なナニモノかの姿に見出すと、私の目の前には本当に、醜悪なバケモノが浮かび上がったのです。

 バケモノは、

 やめろやめろ!全部諦めろ!何もかも、今すぐやめろ!諦めろ!と言いました。どうやらコイツは私を、コイツの住処である臭くて汚い所へと誘い込もうとそうとしている様子でした。

 え?諦めろって? このオムレツを?

 そうだ、とにかく今やってる事をすぐに全部やめろ!すべて諦めろ!お前が解放されるにはそれしかない。ないんだよ!

 しょうもない一言ですが、これはこれまで一生懸命に、平穏無事に暮らしてきたつもりの私にとっては無礼極まりない一言で、それはただ目の前のオムレツが一つ無駄になるだけではなく、これまでも、そしてこれから続くであろうすべての出来事に対しても須らく、お前はこれまでどおり、無能で無慈悲で無責任であれよと、あたかも私の無知蒙昧を優しく諭すかのように、愛情たっぷりに導くかのように仕向けてくるのです。

 お前は、父か?

 (男の声)「卵は悪くないよ。悪いのはお前だ。そうだろ? 卵が自分の好きな形にならなかったと勝手にがっかりして勝手に見捨てたのは誰だ? そう、お前だ。 オムレツだと? 違う、それは卵だ。命の尊厳はそうそう簡単に変えられるものではない。もとより、お前にそんな能力はない。ガスが止まっても余熱で十分オムレツを作れるヤツもいれば、お前のように早々に諦めては地震のせいにして自らの失敗を他に転嫁しようとする愚か者もいる。」

 それともお前は、母か?

 (女の声)「誰にも望まれず、期待されず喜ばれもせず、ただただ食べられるためだけに生を受けた夢精卵という命の、お前はなにを理解できたというの? わかった。じゃあもし、この世のすべてがそんな風に生まれ、そんな風に消えるのだとすれば、お前は自分に何の価値を見出すの? 可能性? そうらもう引っ掛かった!そう。つまりお前のせいよ。この世のすべての悲劇は、お前のような身勝手な可能性を信じ、それが叶わなかった事を口惜しく悔しく残念に思うヤツが生み出した悪夢なの。もし私が地球規模の力を尽くしてお前がオムレツを作るのを邪魔をしたと文句を言うのならば、すべてはそんなお前の浅はかさのせいなの!」

 じゃあいっそ、ぐちゃぐちゃにして炒り玉子にしちゃえばいいんじゃないの??

 (男女の声)「この大馬鹿者め! この期に及んでお前はまだ、安易に別のモノにすり替えて事をやり過ごそうとするのか!炒り卵など、誰が望んだ?誰が食べたいと言った? あまつさえ誰にも望まれず、何の可能性も持たずに生まれてきた可哀そうな卵を、無慈悲に、無責任に、ぞんざいに扱っては自分の失敗の代償を炒り玉子などという屈辱に満ちたレッテルを張ることで小さな卵一つに転嫁しようとするとは情けない……。まったくお前は、どこまで馬鹿で臆病者で卑怯者なんだ!」

 いや、申し訳ないけど。オムレツだから……、卵は3個、使ってます。

 細かい事はいい!!!

 そうなんですよ。コイツ、目も当てられないほど醜悪な見た目のバケモノくせに、たまにこういう、愛情に似た臭い事を言うんです。満開の桜の園を吹く春風のように無垢で無作為で、なんならこの世のすべてを散り尽くしたとしてもそれは寧ろ美しい事で……。

 あるモノは実は無いモノの正体。無いモノが実はあるモノの正体。

 などと、笑うでもなく泣くでもなくただ一言……。

 

 色即是空、諸行無常。いいか、boy.

罪などもともと何処にもないのだよ。

あるのはお前のその、薄汚れた小さな『我』だけなんだ。

なんて括るのですよ。汚いっすよね!? 私は、

 どうしよ、失敗しちゃったよ。誰か、食べる? 

 と同僚の調理師に訊いたのですが、

  要らねぇよ。捨てちゃえよ。と言います。

 気付きましたか? 見えました?この一言の中にある、世の底辺を這いずり回り、逃げ回って尚、行き場のみつからない、垢じみた肌着のような薄っぺらい矜持一枚を羽織っただけの哀れな落人の姿が……。

 ふん、と鼻で嗤い、半かたまりの卵が残飯のカゴに落ちる、ドサ……、という力ない音を聞きながら私は、誰にも聞こえない声で呟きます。

  大嫌いなんだよな……、お前の、そういうとこ

             *

  ほう、ここに到着しましたか……。そうですか、はい。

 じゃあ。ここは巣鴨です。『おばあちゃんの原宿』として全国でも有名な、

『巣鴨地蔵通り』で私が調理師として働いていた頃の話です。

 そのころの私にはまだ綺麗な夢があったのです。

 ええ、甘えですよ。世の中が自分を必要としてくれているという、

とんでもない甘えです。

 私はここの他にも、日本橋の和食の名店『和田万』からも正社員の内定をもらっていたのですが断りました。それは私にとっては自分を自分の夢へ導く上で、一番大切な事とは何か、名店だか何だか知らねーけれど、何を選べば一番自分に都合がいいかという判断を何よりも優先させなければなりませんでした。そのために私は私独特の方法である、片手に私の夢を乗せ、もう片方の手にはその夢に与える水とエサを乗せた姿勢で、失礼します。とこのいかつい店に入ったのですが、その瞬間からもう、世の中はどうにもおかしくなってきたです。それというのも……、

 『和田万』有名料理雑誌に載るほどの名店のくせに、素人の私のわがままに対してあまりにも、イエス、が多すぎたのです。

 私、音楽やってるので長髪ですが……、

うちは帽子被るので、長髪はオッケーです。

 ライヴがあるのでちょいちょい休みますが……、

ドタキャンはダメだけど、一週間前に行ってくれればオッケーです。

 調理の経験、まったくありませんけど……、

うちはみんなそうですよ。親切な指導がモットーです。

 職場から遠いので交通費が高いですが、

もちろん、全額、支給します。

 全てウソだと見破るのは簡単でした。それは入り口に掛けられたいかつい金文字の木看板と、店全体から漂ってくる狂気じみた清潔極まりない匂と、達筆なメニュー、きっちり揃ったテーブル一つ一つに置かれた、一輪挿しに刺さった季節の花のこわばった表情からも確実でした。もしあんな言葉を鵜呑みにしてここに就職していたとしたら、私は初日から研修という名の苛烈で無意味ないじめにあって頭をおかしくしていたことでしょう。これは憶測ではありませんよ。十分本当の事です。

 和食の世界は甘くない、なんて言葉を聞いたことがないですか? それはどういう意味かというと……。

見習いの分際で休みなんかあるわけねーだろ。

先輩の言う事は絶対だ。

何でも訊くんじゃねー、見て盗め。

何度も訊くんじゃねー、一発で覚えろ。

 料理とは修羅の業、厨房は精神錬成の道場。

 でもね、そんなバカな事を言い出したのはせいぜい戦後になってからなのですよ。それは敗戦で矜持をすべて失って何も頼るものがなくなった日本人の心の隙を突いてまんまと真ん中に居座った邪気のようなものなのです。

 私のお爺さん、元帝国軍人のお爺さん。命を懸けて国を守ろうとした、本物の日本人のお爺さん。

 お爺さんはいつか僕に、『エエ時代になったんやから、お前は好きなことやったらエエ』って言ってくれたけど、良くなったのは栄養状態と治安だけで、人間は全然よくなってませんよ。寧ろ戦争の前よりも悪くなった。相手を騙すことしか考えなくなった。それって、相手を殺すことしか考えなかった戦時中よりずっと悪いですよ。

 一瞬で死ぬ薬を飲ませるよりも、一生苦しんでのた打ち回る薬を飲ませる方がよっぽど悪質だと思いませんか? 今の日本は国民全員がお互いにこの薬を飲ませ合ってるようなモノです。そして人間の可能性と幸福を、国家の平和と繁栄を、根底から完全に抹殺しようとしているのです。お爺さんが命懸けで守ろうとしたこの国を毒殺しようとしているのですよ。

                 *

 私はその背の高い兵隊に話しかけました。

もしかして、萩原、さん、でしょうか?

 叔父の苗字は母方の『萩原』だったと聞いていましたので、私はイチかバチかそう訊いてみたのです。その兵隊は、

 ん、君は?だれかな?と言いました。私は自分とその人の関係を一瞬で偽造しなければなりませんでした。

 私は、東京の徹(とおる)おじさんの甥で、茂(しげる)と申します。

 全部、ウソです。私に徹という叔父もいなければ、名前も茂ではありません。しかし、

 甥? 姪だろ?

と、萩原と思しきその兵隊は予想だにしない事を言いました。

 しかしなにがあっても、私は決して動揺するわけにはいきません。創造の世界とは現実同様、思い通りにはなりません。そしてこの世界は、私が全責任を負うべく私の想像した世界なのですから。

 私は、姪……。 兵隊は、

 茂さんに姪がいたんだね。知らなかった。初めて会うね。

と言って笑いました。

 きっと事実とはそういうものです。日本人である私がデタラメな日本語をしゃべれないのと同じく、身内である私には出鱈目な親戚関係は想像もできないのでしょう。

           <続く。>

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 98章『後縦靭帯骨化症という愛。(その2)』

 おせちや鏡餅、新しい年を迎える準備をして、いざ年が明けてはやはり、年賀状が、誰にも出さなくても来るんですね、毎年、数枚。当然迷惑ではありませんよ。寧ろありがたい。おめでたい。お気遣いありがとうござます。手数かけさせてすみません。新年早々の無礼・不作法を恥じております。ちゃんとそこまで思います。それにその返事をする準備も、実はもう去年の内から出来ています。あらかじめ干支にちなんだ動物のレコードのジャケットを選び出して、ちょっと加工して使います。今年はアリスクーパー『コンストリクター』をアレンジ。正月早々、こんな年賀状が着いた方は、さぞ驚かれることでしょう。

 さて……、

 春というにはまだまだ寒い。案の定、正月なんてあっという間に過ぎて今は3月。梅は、桜は、いつ咲きましょう? などと知っていながら知らないような顔でうそぶいてみせる。これも国民総演出の予定調和で、誰も答えなど欲しくない。ただ質問をする、そういう事の中に、永遠に対する敬意と尊重を含ませているのです。これも私は、大方そんな事だろうと思ってました。日本人はそういうことをする民族です。さてその間も、私はまた何んにもしていません。この3か月間、私の態度はずっと保留されていたわけです。そして、桜が咲いたな。アジサイが咲いたな。ヒマワリが咲いたな。コスモスが咲いたな。山茶花が咲いたな、と。そこまでは簡単に思い出せるがでも、それが何年前の、何処の、桜か、アジサイか、ヒマワリか、コスモスか、山茶花か、なんて事までは付随する記憶を頼らなければ思い出せかけもしません。私は毎年、それらの季節の花々を押し花のように潰して、重ねて、そのくせ二度と見ようともしないのです。

残念ですね……。それに残酷です。私はそうして自分の時間を、経験を、逐一無駄にし続けていると言っても過言ではないでしょう。

 そのくせ、こうして唐突に思い出してみては、あれは実際、どういう事だったのか。それに従ったとしたら、今のこれは実際、どういう意味なのか、なんて思いを巡らせては、汚いものにほど同情し、あれはもしかして、愛だったのかもしれない。これはもしかして、愛なのかもしれない。なんて勝手にいいように解釈してはのぼせているのですから世話がありません。

 そしてまんまと、今回も私の甘い勇気が試されました。そして性懲りもなく私はまた、私が病む、後縦靭帯骨化症が実は私への尊大な愛である。と、結論付けてしまったのです。私の昔からの性癖として、自分の勝手な思い込みを実際の理屈に従って検証して、少しでも納得出来ない場合はそれが ウソである、と結論付ける、というのがあります。それがたとえ、科学的に疑う余地がないような事であっても関係ありません。私の検査に合格しなかった事象はすべて、 ウソである。という事になるのです。当然、その逆も然り。

 私の子供を身ごもったかもしれないあの女子大生も、お金持ちを装って虚飾の豪邸で私をもてなしてくれたあの色白の少年も。実際には、いたのか、いなかったのか……。

 目の前の2人を疑う事が難しくても、頭の中にいる2人ならいくらでも疑えます。今私は、3月の麗らかな日差しになびくレースのカーテン越しに揺れる数本の黒い電線をぼんやりと眺めながら考えています。幾何学模様のようなその景色はまるで麻痺しているように私を一つの時間と場所に杭留めようとします。そしてこれと同じ事は時々、電車の中や町の中でも起きてしまいます。私が見ず知らずの人をぼんやりと眺めてしまうのもおそらくこの性癖からだと思われます。

 この人は、僕の親なのかもしれない。恋人なのかもしれない。いつか僕を殺した犯人なのかもしれない……。

 

                  *

 叔父はトラック島の空襲で命を落としたと聞きました。享年18歳。私の父の6つ上で、色白の男前だったと聞きました。声も身体も大きくて、運動神経抜群で、リーダーシップがあって、将来は学校の先生になりたいと言っていたそうですが、叔父と同じく帝国軍人だった祖父は息子には家業の写真館を継がせようと思っていた様で、教師になる事には反対していたそうです。しかしいざ、自分より先に亡くなってみれば、なんでもいいから元気で生きていてくれればそれが一番だと思い直すようになったそうです。そして私に対しても、

「お前は好きなことして好きに生きていったらほんでええ。こんなええ時代に生まれたんやから。それができるようになったんやから。」と穏やかに言ってくれたものでした。

 叔父の写真はありません。叔父を知っている人ももういません。そして私はまた例の性癖で、『昔の子』と叔父の間の実際を理屈に従って照らし合わせて、もし合致する点が少しでもであればもう、私は『昔の子』は私のなき叔父である、と結論付けようとしています。結論ありきでは結果が偏ってしまう、という懸念もありそうですが大丈夫。われわれが思う実際なんて全てそのフィルターを通して出てきた複製物でしかないのですから。

 私はひとまず、叔父が命を落としたというトラック島の船着き場の端に立ってみました。何も難しく考えないでください。すべては想像でいいんです。先程も言いましたが、実際は想像の複製物ですし、想像は先入観からしかチョイスできないし、先入観がないと目の前の事を何も理解できない事は、もう皆様もお気づきのはず。

               *

 生暖かい風が吹いています。石炭の臭いに混じって夕餉の匂いが漂ってきます。驚いた事に、こんな小さな島にもちゃんと町があるんですね。さすがに看板の文字などには多少の違和感はありますが、昔の映像として見るのとは違ってそれは現実の風景としてすんなりと受け入れられています。

 子供が自転車を漕いで向かってきました。今の子供よりも小さいけどすばしっこそう。夕暮れ時、ライトを点けた車と点けていない車があります。

 目の前の兵舎らしい建物から兵隊らしい一団が出てきました。みんな若くがっちりと引き締った体躯ですが、大人もやはり、今の大人よりも少し小柄に見えます。

 しかしその中に、ひときわ背の高い兵隊がいます。他の兵隊よりも色白で、話す声も大きく響きます。

 あれが、私の、叔父? 兵隊一人一人は、私をちらっと見てそのまま談笑して通り過ぎていきました。赤信号を待つその一団の様子は私が知っているの日常の風景となんら変わりません。一日の仕事を終え、同僚とそのまま飲みに行くサラリーマンの一団となんら変わりません。戦時下にもありふれた日常があり、ありふれた日常の中にも戦争がある。こんな当たり前のことに、私は今まで気づきませんでした。ここが、あと少しすれば見る影もない廃墟と化すことは、本当なんでしょうか?それはもう、絶対に避けられない事なのでしょうか?

 私はそんな想像を、やめたり、また始めたりして、何かのバランスを取っているようです。それは個人の心のバランスよりもやや大きくて、やや難しいバランスです。みなさんは私が今、具体的に見えて当たり前で避けようのない風景だけを描写したことにお気づきになったでしょうか。私は怪しまれないように少し離れて、その兵隊の一団についていく事にしたのです。     続く……。 

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保護猫『とのま』の一言成長日記2025。3月~4月



4/30(水)

 今朝は完全に静観。起きてるのに、静観。そして私が自発的に起きるのを待って、早朝ご飯のおねだり。なんだか、また一歩進化したような感じです。昨日、兄さんは走者一掃のスリーベースヒットを放ったそうだよ。試合も2勝。いい祝日になったよ。今週末まであと3日。天気は、まあまあじゃないかな。ゴールデンウィークが終わったら、じめじめのつゆ、そして夏だね。まだちょっと先か。とにかく、きょうもいちにち家族みんなでよろしくね。

4/29(火)

今朝はアラームが鳴る少し前、3時50分ぐらいに一回、軽い花フックで起こしに来てくれましたが、私にまだ起きる意思がないと悟ると、いったんリビングに退散、そして、アラームが鳴ると、はい、アラーム、鳴ったよ、と言わんばかりに起こしに来てくれました。賢い!今日は昭和の日で休み。兄さんの遠征試合の送迎をする予定。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

4/28(月)

今朝は私が自分で起きるのを待っていた様子。私が起きるとすぐについてきて、早朝ご飯をおねだりしてきました。元気そうだ。オッケー。昨日は野球の試合、結局観に行かなかったよ。兄さんが、体調不良で試合休んだからね。まあ、休養も大事。でも、スマホの時間が長すぎるのが気になるところだよ。本人の自覚次第だね。こればっかりは。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/27(日)

今朝も4時に一回4時半に一回、起こしに来てくれました。ちょっと、吐いてた。元気そうだけど、大丈夫?今日は、兄さんは練習試合、父さんと母さんはちょっくら、ベルーナドームに西武VSオリックスを観に行くから、お留守番、お願いね。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/26(土)

 今朝はいきなり、鼻フック!びっくりした。昨日までのあの、控えめな起こし方とは対照的です。でもそういえば、腰の調子が、悪くなる前ぐらいに回復してる。そんな気がする。ドクターとのちゃんはもう 寛解、と判断した様子。じゃあ来週からまた頑張って働きます。今日は兄さん、練習試合。天気はどうだろう。今日も一日、家族みんなでよろしくね。」

 

4/25(金)

 今朝は4時きっかりに起こしてくれました。私も起きました。そして、トイレの窓辺でこっそりと育てていた、猫草を発見されてしまいました。まあ、そこそこ伸びてたから、食べてもよかったんだけどね。どう?久々の猫草は。おいしい?やっと金曜日です。今日もいちいち家族みんなでよろしくね。

4/24(木)

 今朝も、4時きっかりにいったん起こしに来てくれたものの、私の様子見であとは枕元でじっと何もせずに待機。慎重です。とのちゃんは、家族の健康について一番心配してくれるのかもね。腰の具合はだいぶ良くなったよ。やっと木曜日だね。昨日は兄さんがカラオケから帰ってくる前に寝てしまったよ。楽しかったかな?今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/23(水)

 今朝は、一瞬、胸乗っかり攻撃を見せましたが、しばらく乗った後、あ、まだ、本調子じゃなさそう……、と悟ったのか、そのあとはリヴィングで私が起きてくるまで待機。どうやら、トイレの小窓の前に猫草があることに気づいた様子で、しきりにトイレに入りたがります。目ざといね!でもまだ伸びてないから、今週末ぐらいまでお預けです。雨も予報だけど、今日も一日、家族みんなでよろしくね。

4/22(火)

 今朝も、とのちゃんは起きてるけど私のところには来ませんでした。リヴィングからじっと様子見。やっぱり、私の腰の状態に気づいていて、前みたいに、どん!と胸に乗ってくることはないです。早く治して、またとのちゃんが、心おきなく、どん!と乗れるようになるよ。兄さんも、バッティングの不調が、ちょっと、回復傾向、らしい。いいねいいね!!今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/21(月)

 今朝は私の勝ち。とのちゃんはちょっと遅れて起きてきましたね。雨降ったのかな?とのちゃんは今、ベランダ散策中。腰の様子はだいぶ良くはなってるけど、まだ様子見だね。無理しないようにします。さあ、また新しい一週間の始まりですよ。今週も、まずは今日一日、家族みんなでよろしくね。

4/20(日)

 今朝も用心深く起こしてくれました。私は腰の塩梅を考慮して、いつもよりも1時間半も寝坊。とのちゃんはその意図を組んでくれたかのように、私の枕もとや足元にじっとして、時々にゃー?(おきる?)と鳴いてくれました。ありがとうね、今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/19(土)

 今朝はとても用心深く、起こしに来てくれました。しばらく、鼻先をクンクンとして、私の体調、おそらく腰の様子を、推察。まずは起こさずにちょっと手に触れる程度で30分ほど待機。そのあと、ちょっとずつ、起こしてくれました。気を遣わせるね。ありがとうねとのちゃん、腰は、昨日よりだいぶいいよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/18(金)

 今朝はちゃんと4時に起こしに来てくれましたが、そのあとは静観。私が自主的に起きるまで、じっとしてました。そのあと、とのちゃんのトイレ掃除しようと思ってしゃがんだら、腰が……。今日は、出勤するかどうか思案中……。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/17(木)

 今朝は4時過ぎにドン、と乗っかって来て、そのまま兄さんを起こしに行きました。兄さんのいびきが気になったのか、寝ている兄さんの口元をぺろぺろ舐めて、嫌がられてました。いろいろ、家族の健康を気遣ってくれている様子。今は足元で、早朝ご飯を待ってます。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/16(水)

 今朝はおとなしめに起こしてくれました。まず、私に起きる、意思があるか、どうか。これを見極めて言う様子。ジーっと観察して、私がちょっと話しかけたり、なでたりすると、あ、これは、起きる意思あり! と判断するようです。優しくて、賢くて、可愛くて、元気で、大きくて、すべて最高の猫だね、とのちゃんは。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/15(火)

 今朝はちゃんと4時に起こしに来てくれました。鼻フック攻撃で。今は早朝プレご飯の後、本ご飯待ち。あ、今、本ご飯、でました。兄さんの今年の野球部のスケジュール見せてもらったけど、ハードだった。やっぱりこの夏も、帰省できそうもないね。そりゃそうだ。とのちゃんと一緒の過ごす夏になるね。その方がとのちゃんもいいでしょ?今日も一日、家族みんなでよろしくね。

4/14(月)

今朝は私の方が早起き。しばらくして、起きてきました。その前、たぶん30分ぐらい前に一回、胸に乗っかってきたのを、なんとなく覚えているのですが、私はそのまま寝てしまいました。とのちゃんはそのあと、2度寝した様子。今は早朝ご飯食べてます。また月曜日だね。ちょっと雨が降ってます。今週も、そして今日も、家族みんなでよろしくね。

4/13(日)

 今朝はアラームなしなのに4時10分前に胸乗っかり攻撃で起こされてしまいました。手の匂いをクンクン嗅いで、腕を持ち上げて、さ、起きろ!起きろ!の催促。結局平日よりも10分早く起きてしまいました。とのちゃんはおとなしくしてます。昨日の任さんの春大会、惜敗……その後の練習で兄さんは球が顔面直撃、えらい一日でした。兄さんは今日も午後練習、天気はいまいち予報だけど、どんな感じだろう。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/12(土)

今日はアラームなしの土曜日なのに、とのちゃんはちゃんと4時に起こしに来てくれました。今日は兄さんの春隊の公式戦を見に行くので、家族全員早起きです。とのちゃんも、今日はお留守番、お願いします。天気は良さそうだよ。何時ぐらいに帰って来られるかなぁ、なるべく早く帰るよー。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/11(金)

 今朝はアラームと同時。でも、ひょっとして、一晩中、兄さんのそばにいたの?兄さんは昨日、ちょっと、だるい、と言って野球の練習をせずに帰ってきて寝てたらしいね。連日遅くまで、寝ないで勉強してたからそのせいかと思うけど、あまり続くならやっぱり病院に行かないとね。春先は体調を崩しやすいから、とのちゃんも気を付けてね。そして今日も、家族みんなでよろしくね。

4/10(木)

 今朝もちゃんと4時に起こしに来てくれました。買ってきた猫草、ほとんど食べてないね。そんなに味、違う?グルメだね。だんだん暖かくなってきて、とのちゃんも外に出たいね。ベランダしか出してやれなくてごめんな。またなんか、外から情報とってくるよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/9(水)

 今朝は4時ちょっと前に起こしに来てくれましたが、私が10分スヌーズ。その間、枕元で大人しく待っててくれました。いつも早起き、ご苦労さんです。今日も天気、いいかな。兄さんは今、学校の課題で夜遅く、いや、もう朝早く、まで勉強してます。体壊さなきゃいいけど。いろいろだけど、今日も一日、家族みんなでよろしくね。

4/8(火)

今朝は起きていた様子。私が10分スヌーズした後、起きたら同時にニャニャ、と声をかけてきました。もう、起きる?みたいな。気を使ってくれています。きっと。兄さんは昨日2時半まで学校の課題をやっていた様子。だから今朝はちょっと、そっとしてやってね。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/7(月)

今朝はとのちゃんが先に起きて起こしに来てくれました。眠かった私はちょっとスヌーズ。10分後に起きたのですが、やっぱりとのちゃんはスヌーズの意味を完璧に把握している様子で、その間、じっと私の枕もとで尻を向けて香箱座りで待機しててくれました。そして再びアラームが鳴ると、差、10分経ったよ! とニャニャ、と鳴き鼻フック攻撃を再開しましたとさ。賢いね。とのちゃん。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/6(日)

 今朝はなんだか、とのちゃんに起こされるまま、ちょっと早く起きてしまいました。昨日、とのちゃん用に猫草の大きい奴、買ってきたけど、あんまり食べないね。やっぱり、既製品よりも、タネから自宅で育てた、オーガニック猫草の方が、おいしい?? じゃあ、やっぱり、もうちょっと、待っててね。今日は兄さんの練習試合を送ってくるよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/5(土)

 今朝は4時前に一回、私が携帯を確認する音に気付き、起こしに来てくれましたが、私にまだ起きる意思がないという事を悟り、退散。その10分後ちゃんと4時になったら再び、ニャニャ、と現れて、今度は容赦なく鼻フック攻撃で起こしてくれました。やっと晴れたね、いい週末になるよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/4(金)

 今朝は私の方が早起き。とのちゃんは5分後に起きてきました。そういう時は鳴かずに、シーンとして、しれっと起きてくるところが、バツ悪そうで、可愛い。もうすぐ早朝ご飯だよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/3(木)

今朝は4時10分に起こしに来てくれました。4時からスヌーズタイム10分後、という感じで、一回はスルーでも2回目は看過ならぬ、と言った感じ。何が決め手になってるんだろう。今日も雨みたいだね。兄さんも、試合の日程が中止続きでスッキリしない様子、とのちゃん、兄さんと母さんの相手、よろしくね。そして今日も、家族みんなでよろしくね。

4/2(水)

 今朝は私が起きるのを待っていた様子。すぐに起きてきてすりすり、猫草をちょっと食べて早朝ご飯、ちょっと残して、今はリビングでぼんやりしてます。寝ないの?今日も雨が降って寒いから、布団の中の方が暖かいよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

4/1(火)

 今朝も私の方が早起き。何日かぶりの、新しい猫草を食べながら、何やら部屋の中を気にしている様子。何が見えるの??と、時々思うのも、猫あるある。何が見えてても、とのちゃんと、我々家族が元気ならいいや。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/31(月)

 今朝は私の方が10分早起き。とのちゃんは遅れて起きてきて、ニャニャ、とちょっと言い訳しながら起きてきて、早朝プチご飯を食べて今はリヴィングで待機中。また月曜日だね、今週も、とりあえずは今日一日、家族みんなでよろしくね。

3/30(日)

 今朝は一回、4時に起こしに来てくれて、あ、コイツ、休日だから起きる気ないな。と判断していったん退散。そして、4時半、早朝ご飯が出た後で、いくら休日でも4時半には起きるだろう。と思って再び現れ、今度はしっかり、ニャニャ(おい!起きろ)と鳴いて鼻フック攻撃で起こしてくれました。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/29(土)

今朝は、とのちゃんは、2時ごろ1回、4時ごろ1回、4時半ごろ1回、計3回、起こしに来てくれました。何かとても欲しい様子でしたが、今は早朝のベランダ散歩してます。まだ真っ暗だよ。外の空気は素敵?今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/28(金)

 兄さんは無事に大阪から帰ってきました。とのちゃんも、無事、久々の猫草にありつけました。しかし、今朝、ちょっと吐いてた。吐きたくて、猫草食べたいのかも。食欲もあって、元気いっぱいだけど。やっと金曜日だね。今週もお疲れさまでした。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/27(木)

今朝も定刻4時に起こしてくれました。今日は兄さんが大阪に行っていないので、久々の3人家族。昨日は相当楽しかった様子。今日は京都観光で帰ってくるのは夜中だってさ。楽しいのはいいけど、無事に帰ってくるように。もう春だね、今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/26(水)

 今朝は、家族みんな起きてます。4時半に息子が甲子園に向かいます。甲子園は、遠い。とのちゃんも、こんな時間4時に家族みんな起きている状況を把握できかねている様子。めったにない事だもんね。今日も天気は良さそうだよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/25(火)

 今朝も4時、ちょっと前に起こしに来てくれました。猫草はもうちょっと。今日、明日と暖かいからぐんぐん伸びると思うよ。楽しみにしてたもんね、もうちょっと。待っててね。昨日は兄さんがクラスメイトと焼肉晩御飯に出かけたよ。楽しかったけど、イマイチ、食べたりなかった、って。そりゃ、高校男子野球部が本気で食べたら、お店から肉がなくなるよ。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

3/24(月)

 今朝もとのちゃんは4時きっかりにおこしにきてくれました。その前、2時にも起こしに来てくれたけど、それはさすがに早すぎた。たぶん、リビングで2時間じっと待機してて、私のアラームが鳴ると同時に起こしてくれたものと思われます。それは、ひとえに、猫草が食べたいから。今、猫草の横に燈明の苗を置いているので、それが猫草に見えたのかもしれません。でもね、とのちゃん、猫草は全然伸びてない。たねまいたばかりだから。もうちょっと、まってね。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/23(日)

 今朝も4時15分に起こしに来てくれました。昨日、息子の高校のグランド整備で、なかなかの重労働だったから、今朝はゆっくり寝るか……、と、ちょっと思ってたけど、ウィークデーよりも普通に、とのちゃんが起こしに来たので、 あ、私はそんなに疲れてないんだ。と判断。いつも通りに起きました。今日は、息子は野球の練習試合、妻は踊りのレッスンで出かけます。だからとのちゃんと私はお留守番だね。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/22(土)

 今朝は、アラームの鳴らない土曜日ですが、ちゃんと4時に起こしに来てくれました。昨日、残業がひどくて、もうちょっと、寝てたいなぁ、と思ったけど、とのちゃんがそういうなら起きましょう!、ただ、猫草はまだ伸びてないんだよね。新しい猫草の種と、土、買ったから、今日グランド整備が終わったら、植えてみるね。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/21(金)

 今朝はアラームと同時に4時きっかりに起こしに来てくれました。胸乗っかり攻撃、でも私にあと10分起きる意思がない事を確認すると、またリヴィングに戻って待機。だんだん、私の行動と考えが分かるようになってきた様子。さすが、家族、さすが親子。今日行けば週末だ。今日も一日家族みんなでよろしくね。」

3/20(木)

 今日は祝日、でも木曜日だから、アラームが鳴って、とのちゃんが起こしに来てくれました。こないだ病院で計った時7kgあって、ちょっと驚いた。今はどうかな。その体重で、胸乗っかり攻撃は一発で目が覚めますね。兄さんは今日も練習試合。昨日の雪は、想像を超えていっぱい降ったから、グランドの状態どうかな。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/19(水)

 今朝は4時20分に起こしに来てくれました。アラームの10分スヌーズ、ちょうど2回分。それまでリビングで待機していた様子。そんなに疲れてる?まあ、とのちゃんがそういうんだから、疲れてるんだろうなぁ、午前中雨だけど、今日も一日、家族みんなでよろしくね。

3/18(火)

 今朝は私の方が早く起きました。とのちゃんは10分遅れで起きてきて、ニャニャ、となんか言い訳してました。ちょっと、寝坊した……、みたいな。今日は寒いね。とのちゃんも暖かくしてね。兄さんは今日、新入生の部活勧誘があるらしい。そのあと、当日券でオープン戦を見に行くかも、だって。そんな感じで今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/17(月)

今朝も、起きているのにリビングで待機していた様子。私が起きると同時にニャ、ニャ、と駆け寄ってきました。思わず、早朝プチご飯を上げてしまいました。これが、肥満の元なのに……。昨日は兄さんのスパイクと守備手袋を買いに行ったよ。今週は木曜日が休み、あと3日頑張ろう。そして今日も一日、家族みんなでよろしくね。

3/16(日)

 雨が降ってます。とのちゃんは4時半ぐらいにそっと起こしに来てくれました。枕元でじっとして、あまり得意ではない、ゴロゴロ音を小さく鳴らしながら。とのちゃんは賢くて丈夫で甘えん坊で優しくて大きくて、最高な猫だけど、甘え上手、では、ないよね。そこがまたかわいいところなんだけどね。兄さんは今日も遠征試合の予定だけど、雨だから注視かもね。雨だけど、今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/15(土)

 今朝は珍しく、この時間家族全員起きてます。とのちゃんはもう遊びモードで一階からしきりに呼んでます。あそぼーよ!みたいな鳴き声で。兄さんは今日は三郷で遠征試合。8時半から。めちゃ早! 花粉症が苦しそうだな。鼻うがいしてから行きなさい。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/14(金)

 今朝は起きてたけど、やはり起こさずにリビングでじっと待機しててくれた様子。昨日の仕事がまたハードで、たぶん匂いと顔色から、「あ、明日の朝は、そっとしとこう」と判断してくれたに違いない。私が起きるとすぐに近づいてきて、朝の、猫草は?と、催促。猫草はね、まだ伸びないんだよ。そろそろ植え替えないと、もう根っこがパンパンだから、もう伸びないかも。明日植え替えるね。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

3/13(木)

 今朝はアラームと同時に起こしに来てくれましたが、私がスヌーズに入れるのを見て、そのままじゃませずずっと、枕元で待機していてくれました。気を遣わせるね。だから、まだちょっと早いかなぁ、と思ったけど、猫草を上げることにしました。そろそろ、植え替えないと、もう伸びなうなってきたのかもしれない。兄さんが、部費で新しいファーストミットを手に入れたよ。飽くまで部のモノだけど、兄さん嬉しそう。だって新品だもの! 触ったけどまだカッチカチ。鞣してもらわないと使えなさそう。今日は天気、良さそうだよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/12(水)

 今朝は4時ちょっと前に起こしに来てくれました。でも、何もせず。ただ、胸の上に乗っかって、アラームが鳴るのを待ってました。そしてアラームが鳴ると、本格的に起こしてくれる。久々の『髭抜き攻撃』でした。猫草がめちゃめちゃ食べたい様子。でもまた伸びてないから、もうちょっと辛抱して。もうすぐ早朝ご飯が出るよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/11(火)

 今朝はスヌーズ2回目に起こしに来てくれたよ。起きないの??って感じで。そのあとは私の布団の上にじっとして何もせず待っててくれた。朝、おなかがすくんだね。健康的でいい事だけど、あんまり上げないよ。お母さんが起きたら、またちょっと、もらうんでしょ?それまでちょっと、我慢。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/10(月)

 今朝もやっぱり、ウィークデーは起こしてくれないらしい。ちゃんと起きてるのに、私が起きるまで、じっと待ってるみたい。早朝ご飯の時間が1時間早くなったから、起こさなくてもいいや、って事なのかもしれない。さて、3月ももう10日。春めいてきた?今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/9(日)

 やっぱり、今朝も4時きっかりに起こしに来てくれました。週末限定?という事のようです。ちょっと前の体調不良がウソのように、食欲復活、朝から、おねだりします。これは嬉しい事なんだけど、こないだ病院で7kgオーバーだったのが、ちょっと気になってね。猫草はまあ、伸びれば上げるけど。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/8(土)

 今朝はちゃんと4時に起こしてくれました。久々、でも、今日はアラームの鳴らない、土曜日。なぜ?と思ったんだけど、とのちゃんはその賢い頭を駆使して、あぁ、ウィークデーはアラームが鳴るから別に僕が起こさなくてもいいや。でも土日はアラームが鳴らないから、僕が起こさなきゃ!と、思ったとしたら、この子天才!!今日も一日、家族みんなでよろしくね。

3/7(金)

 今朝は、起きていたけど起こしに来てはくれませんでした。どうやら意図的に、起こさないようにしているらしい。彼の野生の勘は本物だから、私の体調を気遣っての事だとしたら、とのちゃん、私の体、どこが、どう変わったの?と聞きたいところ。まあ、人間は自分で管理すればいいけど、とのちゃんの体調のせいだったら、それは気がかり。今のところ、ウンチもおしっこも正常です。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/6(木)

 今朝も起こしてくれませんでした。でもすぐ後に起きてきて、やっぱり、猫草ですか?ホントに好きだね。でもまだ伸びてないから、明日か、明後日か。最近また寒くなったから草も伸びが悪いんだよ。今日あたりからまた暖かくなるそうだから、そうしたら草もよく伸びるようになるよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/5(水)

 今朝も、とのちゃんはまだ、夢の中……。寒いもんね、雪は降っていない様子。あ、今、起きてきました。おはようとのちゃん、今日も寒いから、暖かく過ごすんだよ。猫草、また食べきっちゃったから、窓辺に移動しました。あ、すごい!ご飯のタイミングとぴったり!!野生の勘? 家ネコになってもう6年になるのに。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/4(火)

 今朝は珍しく起こしに来てくれませんでした。寒いから、誰でも布団が恋しいよね。で、そのあとすぐに起きてきて、足元すりすり。お腹が空いている&猫草食べたい。という意思がはっきり伝わってきました。飼い主だなぁ、と思う瞬間。今日、雪が降るみたいだよ。寒いよ。暖かく過ごしてね。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/3(月)

 久々の雨の朝です。昼は大雨予報。嫌だね……、とのちゃんは時間通り4時に起こしに来てくれました。もう寝ててもお構いなしに、鼻フック・あごひげ抜き攻撃、するようになってきました。よっぽどおなかが空いている模様。でも、早朝プレご飯は廃止されました。病院で,7kg超えてたのを受けまして、あくまでとのちゃんの健康維持のため、意地悪してるんじゃないよ。兄さんもようやく帰ってきました。やっと家族4人そろったね。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/2(日)

 とのちゃんは今朝も早朝から、猫草所望。でも昨日、いきなりいっぱい食べたせいか、やっぱり、ちょっと、吐いた。猫草をね。食べ物じゃないから、まあいいけど、やっぱり、病み上がりでいきなりたくさん猫草を食べるのは無謀、という事が、よくわかったね。わかってない様子。今日は兄さんが退院して帰ってくるよ。やっと四人そろうよ。楽しみだね。今日も一日家族みんなでよろしくね。

3/1(土)

 とのちゃんのう〇ちも完全復活しました。猫草解禁です。したら、もう速攻であんなに生い茂ってた猫草がまるはげになりました。ホント、猫草、大好きだね。う〇ちにもしっかり猫草が混じってました。あとは兄さんが無事退院してくるのを待つばかり。盛りだくさんな週末だな。今日も一日家族みんなでよろしくね。

保護猫『とのま』の一言成長日記2025。1月~2月


2/28(金)

 とのちゃんはすっかり食欲全開。ほぼかんちしたようす。でもまだう〇ちが出てない。よっぽどお腹の中が空っぽだったんだね。もうすぐいいう〇ちが出るよきっと。兄さんも日曜日の午前で退院することになったよ。まあ、予定より早くてよかった。いい週末になりそうだよ。2月も今日で終わりです。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/27(木)

 今朝は4時前に起こしに来てくれました。早いなぁ、と思いつつ、目を覚ますと、猫草、食べさせて!!の猛アピールでした。じゃあ、2本だけ。そして早朝ご飯が出ると、勢いよく走っていき、今、カリカリ、がっついてます。という事は、もうお腹の調子は元に戻ったんだね。じゃあ早く、以前のような素敵なう〇ちを見たいものです。兄さんは入院3日目。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

2/26(水)

 兄さんがいないの不思議に思ったでしょ。兄さん、入院しちゃったんだよ。風邪だと思ってたのが、マイコプラズマ肺炎だったんだって。一週間ぐらい、入院します。寂しいね、でも兄さんが元気になるためだから家族みんなで頑張ろうね。兄さんが回復したら、お祝いしよう。とのちゃんは、大好きだった、ちゅーる、まただいすきにもどったようす。さっき完食しました。カリカリフードもちょっとずつ回復。これでう〇ちが、固くなれば、猫草も解禁だよ。今日も一日、家族みんなでよろしくね

2/25(火)

 とのちゃんの様子は、だいぶ、良くなってきた、ような気がします。相変わらずカリカリフードは、食べたり、食べなかったりで、あんなに好きだった、ちゅーるには見向きもしなくなりました。まだ本調子ではない様子。でも、なぜか、猫草だけはものすごく欲しがって、仕方がないから、一本、二本、ちぎってあげたけど、まだまだ足りない様子。お腹が下ってるから、それがよくなってから、ちゃんと上げるからね。兄さんの熱も、まだ下がらない。でも今触ってみたら、熱、なさそうです。このまますんなり下がってくれることを願います。しかしこの、『謎のウイルス』とやらは、ホント、しつこいです。

2/24(月)

 とのちゃんは、まだ、食事ができず。なんだかだるそうです。しんどそうではないのですが。 あと、しきりに猫草を食べたがるんですが、食事もできず、吐いていたのに、どうにも猫草は、あげられない……。ごほうびだった、ちゅーるにも見向きもせず。もしあと数日たっても食事が出来なければ、また病院に連れて行こうと思います。兄さんの熱もまだ下がらず、変な三連休になってしまいそうです。が、それでも今日も一日、家族みんなでよろしくね。

2/23(日)

 今朝は3時過ぎから何度も起こしに来てくれました。そんな早くから、でも理由はわかってます。お腹が、空いた……。かわいそうに、3日前から下痢と嘔吐を繰り返しているので、病院に連れて行って、注射を打ってもらい、たぶん嘔吐の方は収まってるはずなんですが、ウンチの様子が元に戻るまで、いつもの、カリカリフードを、水でふやかして、ウェットフードのしてあげてください。しかも、ちょっとだけ、という指示があって、今そうしたんですが、おなか激ヘリのはずなのに、全然食べません……。よっぽどまずそうなんだなぁ、可哀そうに。でも、今日は、これしか出さないよ。意地悪じゃないからね、嫌な三連休の中日になるかもしれないけど、今日も一日、家族みんなでよろしくね。

2/22(土)

にゃんにゃんにゃんの、『猫の日』。ですが、とのちゃんは下痢と嘔吐が止まらず、今日は病院に行くことにします。早く治れ!兄さんもまだ、高い発熱が続いています。早く治れ!この三連休は病気療養の三連休になりそうです。とにかく、家族そろって、家族みんなで、今日も一日、健康健全に、よろしくね。

2/21(金)

 兄さんに続き、とのちゃんもやや体調不良の様子。お腹が下って、ちょっと、吐いたらしい。とのちゃんも、無理しないように、おなかの調子が悪いなら、猫草はしばらくなしだね。兄さんも、コロナでもインフルでもなかったようだけど、まだ発熱は続いている様子。季節の変わり目で、寒かったり、暑かったりだから、みんな気を付けようね。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/20(木)

 昨日から兄さんが熱を出して寝てます。とのちゃんも心配そう。今朝も、いつもなら胸乗っかり攻撃で、ニャニャと、鳴きながら起こしに来てくれるところ、乗っかったまま、じっと、何もせず。兄さん、大丈夫。早く起きて、様子見た方がいいんじゃない?ととのちゃんに言われているようで、起きて兄さんの熱チェック、しました。ン~、まだあることはあるけど、そんなに高くなさそうだよ。薬が効いてるのかも。今朝、病院に行く予定、インフルか、コロナか、ただの風邪か。今日のテストは受けられないね、でもしょうがない。ゆっくりしろという神様の命令に従おう。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/19(水)

 今朝はアラームと同時に、4時きっかりに起こしに来てくれました。もう起きて、アラームが鳴るのを待っていた様子。私も今日はすっきりおきました。晴れてますが風が強くて冷たいです。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/18(火)

 今朝は何度も起こしに来てくれました。よっぽどお腹が空いてたのかな。でも私が、今日は休みなので、もたもた、寝たふりばかりするもので、とのちゃんは、行ったり来たり。ごめんな。ちゃんと定刻に起こしに来てくれてるのに、今日は休みなんだよ。だから、つい。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

2/17(月)

今朝はアラームと同時、4時きっかりに飛び乗ってきて起こしてくれました。思わず、え?!っと、目が合ってしまったので起床認定。あとはずっと鼻フック攻撃でした。今は早朝のパトロール中、さあ、新しい一週間の始まり、今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/16(日)

 今朝は何度も起こしに来てくれました。でもやっぱり、私が目を開けない限り無理に起こしてはきません。ちょっと胸に乗っかったりして様子を見て、あ、まだ、起きる気ないなぁ……、と判断すると潔く退いて、そのあと私が何か物音を立てるとすかさず、ニャ、ニャ、と小鳴きしながら近づいてきて、目が合うと、はい!今、目が、合いましたね?はい、起床確定!はい、起きて!!と、容赦ない攻撃に移ります。優しいね、とのちゃんは。可愛いね、とのちゃんは。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/15(土)

 今朝はとのちゃんの勝ち、胸乗っかり攻撃で起こしてくれました。でも、こっちがまだ寝ているとわかると、さっと降りて、様子見。ちょっと寝言を言うとまた乗っかって攻撃。を繰り返し、結果やんわり起こしてくれました。気を使ってくれているのがよくわかるほっこりエピソードです。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/14(金)

 今朝は2スヌーズ目に同時に起きました。とのちゃんは早朝プレご飯後、私の足元に移動、冷たい床の上に香箱座りしてます。じゅうたんに戻ればちょっとは暖かいのに。足元に来てくれたのは、朝一の喜び。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/13(木)

 今朝は私の勝ち!とのちゃんは後追いで起きてきました。にゃーん、にゃん、と言い訳しながら。早朝プレご飯食べて、まったり中、二度寝する??今朝はそんなに寒くないね。だんだん暖かくなるってよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/12(水)

 今朝は4時のアラームきっかりに起こしに来てくれました。そこで、また実験。寝たふりをしていると、とのちゃんは起こさずにそっとしておいてくれるのか?さすがに狸寝入りはちょっと疑ったらしく、2~3回鼻のあたりをチョコ、チョコ、触ったけど、やっぱり起こさず。その後スヌーズで目を覚ますと、その時は容赦なく鼻フック攻撃。やっぱりとのちゃんは、寝ている人の邪魔をしないんだね。優しいね、今日も一日、家族みんなでよろしくね。

2/11(火)

今日は祝日。とのちゃんは一回、起こしに来てくれたんだけど、わざと寝たふりをしていると、ちょっと顔を触っただけでそっとしておいてくれました。そして、30分ぐらいしてわざと寝言を言うと、起きた?! って、駆け寄ってきて、目が合うと今度は容赦なく鼻フック攻撃をして起こしてくれました。寝ている間は起こさないという、セルフルールがあるんだね。やっぱり優しいね、とのちゃんは、今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/10(月)

 今朝は起こしてくれました。4時10分ぐらいかな。胸乗っかり攻撃で。でもとのちゃんはその前から起きていた様子で、私のアラームが鳴って、それを私がスヌーズしたのを聞き遂げたから、起こしに来てくれた様子。気を使ってくれてます。昨日はずーっと一緒にお昼寝してたね。いい天気だし、とのちゃんは暖かいし、最高に気持ちがよかったよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/9(日)

 今朝は3時半ぐらいから、胸乗っかり攻撃で起こしてくれました。今は、何やら要求して鳴いてますが、さすがに朝6時前からベランダに出ても寒いだけだと思うよ。今日も天気はいいけどサムサム予報。一緒に家の中でゆっくりしようよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/8(土)

 今朝はとのちゃんは4時前、たぶん3時半ぐらいから、何度も胸乗っかり攻撃で起こしに来てくれました。肉球触ってみると冷たくて、こんなに寒い朝なのになんで、こんなに早く起きるのかなと思って起きてみたら、飲み水がなかった。かわいそうに喉乾いたのかなと思って水を換えたけど、飲まずにそのまま寝ちゃった。やっぱり純粋に私を起こしに来てくれたんだね。毎朝ありがとう。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/7(金)

 今日はタッチの差でとのちゃんの勝ち!乗っかり攻撃で起こしてくれました。ここ一週間ぐらい、朝が寒いね。しかし、ロイヤルカナンの値上がりっぷりが狂気じみてる。とのちゃんの餌も、帰る時が来るかもよ。せっかく気に入って食べてんのにね。うちに来てからずっと、ロイヤルカナンだもんね。ほかの餌との調合比率を変えつつ、考え中。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/6(木)

 今朝は一足遅れて起きてきました。とのちゃん。そっと足元に寄り添ってうずくまるのが朝から可愛いです。今は早朝プレご飯中。寒い朝だね、水は換えといたよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/5(水)

 今朝はちゃんと起こしてくれましたよ。最近朝が寒いです。でもちゃんと起こしてくれました。猫草が伸びなくて、早く植えないと。もっとでっかいプランターにドカッと植えるかな?とりあえず、今日も一日、家族みんなでよろしくね。

2/4(火)

 今朝は私の方がちょっとだけ早く起きました。とのちゃんは早朝プレご飯の後、一回をパトロールに出かけました。寒い朝です。とのちゃんも早く2階に帰ってきて2度寝しな。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

2/3(月)

 今朝はとのちゃんと、ほぼ同時に起きました。早朝ご飯を食べて、今のんびり中。また新しい一週間の始まりだよ。今週も、とりあえず、今日も家族みんなでよろしくね。

2/2(日)

 今朝はなぜか、月曜日と勘違いしていました。そうしたらとのちゃんが起こしに来てくれてえ、今何時?と携帯を見て、まだ日曜日だったと判明。一日得した気分の朝です。クリーニングに出すコートのポケットから千円出てきた気分です。今、雨が降ってます、ひょっとして、雪になるかも、なんて言われています関東地方。兄さんは一日部活。寒いから、柔軟怠りなく。今日も一日家族みんなでよろしくね。

2/1(土)

 今朝もちゃんと起こしてくれましたよ。胸乗っかり攻撃で。その際、とのちゃんの肉球が冷たくて、あ、今朝は寒いんだな。早く起きて暖房付けないと、と思いましたとさ。今はエアコンの風邪が落ちてくるところを独り占めしてます。暖かい??今日も一日家族みんなでよろしくね。

1/31(金)

 今朝は私のちょっと後に起きてきました。ニャニャと、ちょっと、寝坊した……。と言い訳しながら。言い訳しなくてもいいよ。早朝プチご飯、終了。やっと金曜日だね。いい天気みたい。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/30(木)

 今朝は同時に起きたよね。そして、今は、テーブルの目の前にいます。あ、降りた。久々に寒く感じたから暖房付けてみたよ。まだまだ寒いのかな。天気は良さそう。やっと木曜日だね、今日も一日家族みんなでよろしくね。

1/29(水)

 今朝はまだお休み中。もうすぐ起きてくるものと思われます。あ、今起きてきました。おはよう!!水換えといたよ。トイレ掃除しといたよ!!今日も一日家族みんなでよろしくね!!

1/28(火)

 今朝も定刻4時きっかりに起こしてくれました。今朝はそんなに寒くないね。とのちゃんに、お酒、ちょっと控えたら、と言われた気がしたので、考え中。この子ったら、お酒を飲もうとしたら、じーっと見つめて、お酒の匂いを嗅いで、嫌そうな顔して、いろいろな形でアピールするんだね。考え中。 今日も一日家族みんなでよろしくね。

1/27(月)

 今朝は胸乗っかり攻撃で4時きっかりに起こしに来てくれました。平日はちゃんと定刻に起こしに来てくれるなんて、曜日感覚あるんだね。天才ネコ。新しい一週間が始まったよ。今週もよろしくね。とりあえず、今日一日、家族みんなでよろしくね。

1/26(日)

 今朝は起こしてくれたし、起きました。でも1時間寝坊。最近、休みの日に起きるのがしんどくなってきた。疲れがたまってる証拠。ゆっくりします。今日は母さんがお出掛け、兄さんは午前部活だから、一日、父さんと留守番だよ。父さんも午後、晩御飯の買い出しに出かけるから、午後は兄さんとお留守番だよ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

1/25(土)

 今朝は1時間寝坊、息子と同時に起きました。息子は部活。とのちゃんはその間、2度も起こしに来てくれました。久々の胸乗っかり攻撃。今朝はちょっと暖かいからかな。そんな感じで今朝は家族全員、起きてます!今日も一日家族みんなでよろしくね。

1/24(金)

 今朝は起きてきましたよー。久々の朝のとのちゃんとの二人タイム。でもなぁ、最近、ちょっと太り気味だから、早朝ご飯の大盛りはなしです。食欲があるのはいい事だけどね。兄さんが学校の成績、学年で8番だって!いつそんなに勉強したんだろうね。不思議な奴だね。とのちゃんも不思議だけど。今日も一日家族みんなでよろしくね。

1/23(木)

 とのちゃんは今朝もまだ夢の中。そろそろ起きてくると思うけど。昨日は、仕事から帰るなり、遊んで攻撃。お気に入りの、兄さんが小学校の頃作った、紙粘土のピザを持ってきて、遊べ!遊べ!アピールが、とてもかわいかったよ。今日も天気は良さそうだよ。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/22(水)

 今朝はとのちゃんはまだ寝てます。昨日、寝るときにしばらく私の布団の上にいたのを覚えてますが、眠かったのでそのまま寝てしまいました。何か、言いたいことがあったのかな?今朝は、なんとなく暖かいよ。十分寝たら、早朝ご飯食べに起きておいで。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/21(火)

 今朝は私が起きた4時にはもう起きていた様子で、ただおこそうとせず、一人で寒くて暗いリヴィングにいたようです。どういう理由で、起こしてくれたり、くれなかったりするのかは、今をもってまだ、とのちゃんの謎の一つです。彼なりに何か規則があるのでしょう。今朝はちょっと甘え目、でした。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/20(月)

 今朝は仕事で一番早い時間なので、とのちゃんはまだ起きてきません。昨日の夜、1時ぐらいかな、一回起こしに来たのは、何を言いたかったの?そのあと、お母さんのところに寝に言ったね。それはいつも通り、今日もいい天気の予報だよ。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/19(日)

 今朝は母さんととのちゃんと、三人ほぼ同時に起床。とのちゃんがタッチの差で早かったかな。昨日今日と、朝寝坊しそうになるのはやっぱり疲れているせいか。兄さんはまだ寝てます。今日は一日部活だから、十分休めばいいと思うんだけど、それならもうちょっと早く寝た方がいいと思います。どうもね、スマホの時間が長すぎて、とのちゃんからも注意してやって。今日も一日家族みんなでよろしくね。

1/18(土)

あぁ、今日は私が大寝坊。とのちゃんはその間、3度も起こしに来てくれたそうです。ニャ、ニャ、ンニャーと、たぶん、起きて、起きて、起きろ!だと思う。起きたよ。今日もいい天気だね。兄さんはもう部活に出かけた後でした。今日も一日家族みんなでよろしくね。

1/17(金)

 今朝もまだ寝てます。寒い朝です。昨日返ってきたときには真っ先に迎えに来てくれたそうだね。遊びたかった?それからしばらくハイテンションだったけど、あの時間から窓を開けたりできないんだよね。寒いから。今日も天気はいいみたいだから、ゆっくり過ごそうね。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/16(木)

 今朝はちょっとだけ遅く、起きてきて、早朝プレご飯を終了。早朝本ご飯まで、あと10分ぐらいだけど、もう寝る? 今日は晴れるけどめちゃ寒いらしいよ。暖かく過ごしなさいね。そして今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/15(水)

 今朝はとのちゃんが寝坊。今年から私の方が早いパターンが増えました。そのうち、ニャニャ、と言い訳しながら起きてきます、きっと。いい天気が続いてますね。宮崎の地震が心配だね。今日も平和で終わりますように、とのちゃんと一緒に願ってます。では今日も一日家族みんなでよろしくね。

1/14(火)

一日祝日で今週は火曜日スタート、とのちゃんは私の起きたちょっと後に起きてきました。朝が、寒いからね。ゆっくり寝ててもいいんだよ。冬、ちょっと、太った?もともと6.5kgもあるからね。今度計ってみよう。今度、病院に行くのはいつだっけ?首のノミ取り薬を、ちゅーってするのは、いつだっけ? あれ嫌いなんだよね。とのちゃんは。でもしょうがない。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/13(月)

 今朝はちゃんと起こしに来てくれました。私もちゃんと起きたよ。今日は月曜日だけど、成人の日で祝日、休みです。きっと晴れ着姿の可愛い成人たちがいっぱい歩いてるんだろうけど、今日もきっと引きこもりです。天気が良くてよかったね。おめでとう。新成人。そして今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/12(日)

 今朝は3回も起こしに来てくれたのに起きなくてごめんね。どうも最近、朝が苦手になってきたようで。冬の寒さのせいでしょうか?とのちゃんは、早朝ご飯を食べて、もう2度寝に行きました。眠いのに3回も起こしに来てくれたんだよね。ありがとう。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/11(土)

 今朝は土曜日なのでアラームはもともとならないのですが、とのちゃんは5時半に起こしに来てくれました。久々に起こしてもらった気がする。やっぱりとのちゃんに起こしてもらわないと朝が始まらない。でも今朝はなぜか、要求が多いようでさっきからずっと鳴いてます。なんでしょう??早朝ご飯も食べたし、今、極寒の一階へと向かいました。すぐ戻っておいで。今日も一日家族みんなでよろしくね。

1/10(金)

 今朝も、とのちゃんは起きてきません。朝に会わないと、帰るころはまだ寝てたりして、結局一日に、10分ぐらいしか見ない事もあるから、ちょっとでも、起きてきて。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/9(木)

 今朝は1時間寝坊。でも大丈夫な時間に起きてるんですが、とのちゃんも寝坊。危ないところでした。やっと木曜日、今日も天気は良さそうですが、とにかく朝晩、寒いです。とのちゃんも風邪ひかないようにね。飼い主も風邪ひかさないように。今日も一日家族みんなでよろしくね。

1/8(水)

 今朝はまだ起きてきません。いいよ、寝といで。正月明け、仕事初めから3日経ちましたが、イマイチな配車が続きます。これで今年を占うわけにはいかない!今日も午前に11件と盛りだくさん。早く配車が上達ますように。できるだけ早く帰ってくるよー。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/7(火)

 昨日は久々の雨でした。ちょっと濡れた。でも今日はまた晴れ予報、久々の仕事は疲れたけど、早く当たりを付けて慣れないと……。一年が始まった、って感じです。とのちゃんは相変わらずの可愛さ、賢さで、今早朝ご飯を食べてます。カリカリ音が聞こえます。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/6(月)

さ、いよいよ2025が始動します。今日から仕事初め、とのちゃんは、一瞬、起きてまた、寝た?いいよ、ゆっくり寝な。今日は久々の雨もよい。仕事スタートにはちょっと……、な天気ですが、久しぶりなので慎重に行って、さっさと帰ってきますよ。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/5(日)

 いよいよ正月休みも今日まで。明日からまた日常が始まります。とのちゃんは今日は私に遠慮して、6時に起こしに来てくれました。明日からまた4時に起こしに来てください。今日はゆっくりするぞ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

1/4(土)

 今朝はとのちゃんは起きてるのに、じっとリビングから静観。まだ正月休みだから、あまり早く起こすのも酷だろう、という、猫心。今年も新春から、気づかいの猫っぷりを発揮してます。三賀日も終わり、いよいよ今年も始動したね。今年も、そして今日も、家族みんなでよろしくね。

1/3(金)

 今朝はお母さんのいない朝です。とのちゃんはいつもと勝手が違うみたいでそわそわしてます。昨日、どこで寝たの??いつもお母さんと一緒に寝てるもんね。寝られた?今も、そわそわと一階ばかり気にしてます。かわいそうに、心細いんだね。大丈夫、お母さん、帰ってくるよ。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

1/2(木)

 おはようございます。とのちゃんは今日もちゃんと起こしに来てくれました。でも私は2日連続寝坊するところでした。でも、今日は箱根駅伝があるからね。早起きは必至でした。おこしてくれてありがとう!とのちゃん!でも当の本人はさっさと二度寝に言った模様。寝正月は猫の基本だからね。今日からお母さんが里帰り。兄さんと三人でお留守番だ。今日も一日家族みんなでよろしくね。

1/1(水)

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。今年一発目の朝はとのちゃんが、ちゃんと起こしに来てくれたのに、今年初の寝坊。8時に起きてしまいました。とのちゃんは、ふて寝中……。初ふて寝。今年もよろしくお願いします。可愛さと優しさを、いっぱいくださいね。今日も一日、家族みんなでよろしくね。

『いきてるきがする。』《第19部・冬》



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   第97章『後縦靭帯骨化症という愛。(その1)』

 3か月ぶりの定期健診で、だいぶ症状が出始めてますね、と言われた。

『後縦靭帯骨化症』って知ってますか?

 頸椎の神経の周りの靭帯が『骨化』、つまり骨になってしまう病気で、骨化した靭帯はやがて神経を圧迫して、ひどくなると首から下が麻痺して動かせなくなってしまうという『原因不明の難病』です。

「ほら、交通事故などで頸椎を挫傷して首から下が動かせなくなったりするでしょ。あれに似たような状態になる。まあ似た症状といっても程度は人それぞれなんですが。」

 と新しい主治医は残酷なほどわかりやすく私の今の状態を説明してくれた。

 うん、確かに。そう言われれば以前よりもノック式ボールペンをカチカチやりにくくなった気がする。細かい文字も書きにくくなった気がする。そうか、そうなんだ、じゃあ私はいつか首から下が動かなくなってしまうんだ……。

いえいえ、まだそう決まったことではないんですが……。

 電動車椅子に乗って歩道をヨチヨチと進む年老いた自分の姿をぼんやり想像しながら私は、じゃあ、パソコンは? と間抜けな質問をした。

 もちろん、そうなってしまったら打てません。とまたわかりやすい答えが返ってきた。 そりゃ、そうだろうね……。

 まあこれも一種の老化と考えれば、誰しも生老病死は免れぬわけだから諦めて他の事を考えるのがいいのだろうが、だがしかし、つまりそうなると私がコツコツと構築してきたこの、生ブログ風小説『いきてるきがする。』のデータをの更新が出来なくなってしまうという事になる。つまりこの物語は停止する。私の体同様に完全に麻痺してしまう。それは私にとっては一大事なのだが、そんな事とは気付く様子もない主治医は、「だから出来るだけ早い段階での手術するのがいいと思うんですが、はどうですか?」と言った。

「ん~……。でもね先生。前の担当の先生にも言われたんですけど、その手術をやっちゃうと首が動かせなくなるんですよね。」と私が言うと新しい主治医は、そうです。とまた端的な答えをくれた。

「首が動かなくなると、今のドライバーの仕事はもうできなくなるってことですよね。後方確認とか、出来なくなるってことですよね?」

 それに対しても主治医は、「そうでしょうね、おそらく。」とまた端的な答えをくれた。

「それに、手術したからって、必ず良くなる、もう再発しない、ってわけでもないんですよね。」

「そうですね、手術しても、今より良くなることはありませんし、再発の可能性は常にあります。」

「でも、首が動かなくなるって事だけは、確実なんですよね。」

「そうですね、固定してしまいますから。」

「じゃあ、今すぐにはちょっと無理かなぁ……、」という私の囁きに対し新しい主治医は「じゃあ今度は3か月後の2月でいいと思います。まあ進行性の病気ではないのでね、何かあったらすぐ来てください。」とあっさりと話を引っ込めた。

                *

 病院を出ると空気は冷たく澄んでいたが、並木の木漏れ日だけは斑に暖かかった。そのどっちつかずなバランスがまるで自分の『今』を表しているように思われた。

 あぁ……、今の自分には、面白い事と辛い事が混在して一気に進行している。

 このお互いに無関心で決してぶつかり合うことない2つの側面は、時間になったり空間になったりを繰り返し、やったろか? やめたろか? と私の『今』を鷲掴み、捩じり上げていく。そして新しい主治医の「出来るだけ早い段階での手術がいいと思うんですが、どうですか?」という言葉そのままに、私を救おうとしたり、奈落の底に突き落とそうとしたりしている。

 しかしそれは残酷なようでいて実は、とても尊い愛でもある。

               *

 いいかい、お前はバカだけど根はいい子だ、要するにリハーサル通りの態度で望めよ、と母の冷たい手が散髪したての私のザンギリ頭のポンポンと叩いた。私は兄弟たちと一緒に父の運転する白いマークⅡに乗り、隣町の祖母の家までお正月の餅を丸めに行く。タバコと消臭剤の匂いが入り混じった地獄のような車内は、時間と空間を今と同じに、きっと楽しい事があるぞ、という気持ちと、また一人ハブられて嫌な思いをする、という気持ちをぐるぐると捩り合わせていた。私はずっと不思議に思っていた。なぜ私よりも年下の従妹が、当たり前のように親戚の輪に入り込んでいるのに、私は未だにその輪に入れずにいるのだろう。そんな事を考えている私のみっともない挙動が余程皆の優越感を刺激するらしく、従妹たちは、私の一挙一動を間抜けなモノとして茶化しては笑いの種にし、ますますその『親戚』という、私から見れば氷の結束を強固していく様だった。

 やがて粉が敷き詰められた長い板の、一番遠い端に私は笑い合う従妹に混じって座らされた。これから始まる悲劇は容易に想像できた。初めからわかっていた事は、おばあちゃんが投げる餅など、私のところには届かないということ。

 京都のお正月の餅は丸餅。

  おじいちゃんによって突かれた餅はおばあちゃんによって手際よく適当な大きさにちぎられ、そのまま孫たちが待ち構える粉を敷き詰められた板の上にポンポンとリズムよく放り投げられる。

 年かさの4人の孫たちが素早くそれをつかんで左手をお皿のように、右手を伏せたお椀のようにして、両掌でくるくると丸めていく。その時も、時間と空間はまだ、自分も餅を丸めたいというワクワクした気持ちと、誰も私に餅を中継してくれないかもしれないという不安な気持ちをぐるぐると交錯させていた。

  約40分。すべての作業は終わったがやはり案の定、私のところへは一つの餅も飛んでこなかった。

 それはわかっていた。そして私はこの時より、様々な嫌な事を我慢しなければならなくなっていた。まず年が明けると、我が家はまたここに年始の挨拶に来るに決まっている。まあ、よく来たねぇ、あけましておめでとう、なんて一見にこやかに迎えられるものの、お前は従妹の中で一人だけ、一つの餅も丸めていないのに、いざ年が明けると、さも餅を丸めた従妹たちと同等の孫のような顔をして再びこの家に現れ、まんまとお年玉をせしめ、さも旨そうにこの、誰が丸めてくれたかもしれない他人の餅を、ド厚かましく貪り食うつもりだろう。

 という声がもうすでに聞こえていた。

 その日の夜は従妹たちとカードゲームをやった。私はやはり、おそらくは『私だから』という理由で一人前扱いはされず、おばあちゃんとペアを組み参戦した。

 おばあちゃんは優しかったが、どう考えてもこのゲームに於いて私の存在は不要だった。

 おばあちゃんは、勝ったり負けたりしたが、カードゲームが進むにつれ、私は不要という時間と空間の締め付けはどんどんと強くなり、とうとう耐えきれなくなり、家に帰ると言うと、おばあちゃんはびっくりした様子で、どうして?どうして?楽しないの?ゲームしてんのに?と何度も訊いてきた。その顔があまりに心配そうで、ちょっと申し訳ない気もしたが、私はもう、死んでしまいそうなほど、そこにいるのが嫌で嫌で嫌で嫌で嫌で嫌でたまらなかったので、両親と一緒にその日は泊まらずに家に帰った。誰もいない部屋の明かりをつけると、居間の様子が蛍光灯の寒々しい光の中に浮かんだのを覚えている。この家でも自分は歓迎されていないことが改めてよく分かった。酔っぱらった父が、

「まったく、どうしてお前はいつも一人だけ違う事をするんだ。なぜ他の子たちと仲良くできないんだ。親戚に行ってまで、親に恥をかかせて、何が楽しいんだ。」とののしった。

                *

 

 私には今も、自宅の玄関の端に、人一人がようやくくくれるぐらいの穴がはっきり見えるんです。それはこの物語の序章で私が、あまりの自分の不甲斐なさに絶望して、もうすべてから逃げようとして、踏切に飛び込む代わりに飛び込んだその穴です。そしてその穴の中の様子については、これも序章で言ってますが、こうして皆様とのコミュニケーションが続く限り、今後も一切説明はしません。だからそういう意味でも、私のこの『後縦靭帯骨化症』は、皆様とのコミュニケーションを断ち切り、そして私をこの質の悪い抑圧から解放してやろうとしている、残酷な天使であり、優しい悪魔でもあるのです。

 私はいつもこうして常に私の目の前に重々しく垂れ下がる記憶の死骸を掻き分けてながら、穴を潜り二人のいる店を訪れているのです。

 2人は今日も店を清浄に保ってくれています。麗らかな冬の日に照らされて、50歳をとうに超えたであろう金魚たちも頗る元気に泳いでいます。妻の焼いたパンの匂いも香しい。こんな現実があることを、おそらく私以外の誰も知りません。

 なんか売れた? と訊くと『今の子』が、最近は小物がよく売れます。と答えてくれました。

 そうですか。それはよかった……。

 しかしいつか本当に私の首から下が動かなくなった時、この店はどうなってしまうのか。あの狭い穴をくぐって現実の世界にお引っ越しをするなど到底不可能です。そうなる前に、私はこっそりとこっちの世界に移動して、どうにかここで、2人と暮らすわけにはいかないだろうか。そうしなければ、私にはきっと、生きていく術などありません。そもそも全体、あの穴をくぐった時から、私は自分が生きているのか死んでいるのか判然としないでいるのです。そうでなければ、私はどうやってあの2人をこっちの世界に呼び寄せるつもりなんでしょうか。あの2人はどういう形であればこの穴を抜けてやってくる事が出来るのかと、私はそれを今、真剣に考えているのです。

 私はそろそろこの2人と自分の関係を、つまり自分にとっての、この2人の正体を見極めなければならないようです。私は記憶の中のいったいどこに、この2人は引っ掛かっているのでしょうか。私の知っている誰に、この2人はそれぞれ似ているのでしょうか。まずはそこから考えてみたのです。 

 戦時中に餓死した『昔の子』と、親からの苛烈な虐待に自殺に追い込まれた『今の子』。

『昔の子』は戦前に生まれたのだから、現実には私よりもずっと年上だと考えられます。ひょっとして私に何の関わり合いもない人なのかもしれませんが、そんな人の事をきっと、私は想像できません。人が想像に及ぶのは実際に接した人に限られるはずです。それはずっと昔から、あらゆる美術・文学・音楽を通じて人間そのものが証明してきた、いわば人間の性能の限界なのです。いったい『昔の子』とは、私の中の誰の事なのでしょう?

 私には戦争で死んだ叔父がいるそうです。享年、18歳。少年というには微妙な年齢ですよね。とつとつと戦争について語る祖父の口からも、ちょこちょこと出てくるその人の名前は、もう忘れてしまったか、もともと知らないか……。 

                続く。


 第96章『ウサギとペンギン』

 去年はウサギの着ぐるみでエライ目にあったから、今年は普通のバイトにした。でもなるべくお金のいいやつ。年末までの短期バイトだから、多少無理してでも稼がないと彼女と過ごすスイートなクリスマス&ハッピーニューイヤーが今年もまた台無しになってしまう。

 彼女が欲しがってた服に合わせて、俺もそれなりにいい服を選ぼう。だからそのために、ちょっと怪しいけど時給がやけに高い、24時間徹夜通しのオフィスの引っ越しのバイトを選んだんだ。

 思えば去年は、本当にひどいクリスマス&ハッピーニューイヤーだったなぁ……。

               *

 JR大森駅前に午前5時半はまだ真っ暗で、よく見ると風に揺れる捨て看板に混じって、何やら怪しい人影がいくつかあって、パンを齧ったり、煙草を吹かしたりしている。とうとう俺も、この仲間に入ってしまったか……。

 初めに言っておくけど、俺は強烈なレイシストだ。人種とか国籍とか性別とか、そんなわかりやすいモノばかりじゃない。生まれた都道府県も、声も、顔も、血液型も、背の高さも、髪の色も、直毛かくせっ毛かも。とにかくすべての違いを、俺は差別する。そしてそのすべてにおいて自分がゼロ点で、それ以外はマイナス。

 だから俺の世界基準とは、

 日本人の男で、京都府出身のAB型で、声はやや低く、顔はやや大きく、身長は175㎝で、髪は巻き毛で、メンヘラで派手好きな日本人の彼女がいること。これが世界基準であり、それ以外はすべてがマイナス、ということになる。俺がこんな捨て看板野郎どもに混じってたまるものか、同じ仕事をしていても、猿と猿真似は全然違う!そうだろ??

 とにかく、平等なんて言う胡散臭い概念が世界中に差別をまき散らしていることはもう疑いようもない事実だ。俺はそんな茶番と一年かけて戦って来て、きょうやっとここにたどり着いた。ここは、どこだ?この世の底辺か? 俺はこの捨て看板野郎と一緒に、たぶんこのまま、今ハザードを点けながら近づいてきた小汚いワゴン車に乗せられてどこかのオフィスに連れていかれることだろう。

   いいじゃん、なんて普通なんだ。

 夜が開け始めた窓からベイブリッジが見えた。なに?横浜? そんな方に向かってるの? いろんな形のビルがたくさん並んでいて、まるで陽気な墓場のような街だ。隣のおっさんはぐっすり寝ている。ああ、コイツはこんな景色見やしないだろう、見たってなにも感じないだろう。ぼんやり酒臭い。こんなヤツでもできる仕事が、こんなヤツに払う金が、この世の中にはまだまだたくさんあるんだなぁ。先進国ってすげぇな、すべてが茶番だよ。ナメたもんだよ。

 オフィスに着くと、同じようなワゴン車から同じような連中がぞろぞろと降りてきた。いずれ劣らぬ、役立たずの顔。こんな奴らと仕事をするのは誰だって嫌だろう。そしてきっとみんなお互いを見てそう思っているに違いない。そして俺もそのうちの一人。

いいじゃんいいじゃん、極めて普通じゃん。

 仕事はきつかった。オフィスの機器は全部アホのように重く、昔やんちゃしてました、みたいないかつい現場主任が、精密機器だから揺らすなよ、壊したら自腹だからな。なんて言ってる。じゃあ試しに壊してやろうか。お前が主任なんだからお前が責任被らないわけねーだろ。

 そして昼。一応1時間の昼休み。飯を食うのも億劫なほど疲れていた俺は、黒コッぺを半分だけ食べてとりあえず寝ることにした。オフィスの床は思ったよりずっと優しい触感だった。

 ポツポツと水滴が落ちる音が聞こえる。それが何の音だか、俺は気付いていながら、ん? 何? 水道の、栓かな? なんて間抜けな事を言って笑っている……。

 俺は逃げている。本当の俺はしっかり手を握って、大丈夫だよ。大丈夫だよ。なんて囁いている。

「おい、起きろ。午後だ。」そういわれて目を開けると本当に午後になっていた。午後も仕事はきつかった。みていると、怠けている奴はだいたい決まっていて、軽そうなパーティションとか、電話機とか、コピー用紙の空箱ばかり運んでいる。行きの車の中で寝ていた酒臭いおっさんはもちろんこのグループに属している。同じ労働時間に対する仕事量の圧倒的な差が、レイシストの俺を寧ろ生き生きとさせる。俺の軍手はボロボロなのに、オヤジらの軍手は抜けるように白い。事故が起きればいい。必ず、明日の朝までに、どこかでデカい事故が起きますように。そんな言葉を呪詛のように反芻しながら、俺は敢えて重い機器ばかりを運んだ。本当のレイシストは行動が伴わなければ成就されない。違いを徹底的に見せてやらなければ、すべてがマイナスの野郎どもに本気で失望することなどできない。ビルの外に出るたびに俺の体じゅうからもうもうと湯気が立っていて、まるで印象派絵画のようになった自分が、実はそれほど嫌いじゃない。

 差別って、こういうところに優しく作用したりするから嫌われるんだろうな。差別の結果が美しいなんてそれこそ茶番だと。役立たずどもはそう言いたいんだろ?  

 頑張ったことがないお前らはこんな湯気、一生立てられないぜ。空箱ばっかり運びやがって。あの酔いどれオヤジに、仮に俺の仕事をやらせたら、湯気が立つ前に必ず言うだろうな。 差別だ! って。そうだよ、それがどうした?どっちでも好きな方にいろ!! 誰がお前なんか平等に扱うかよ!

 

                 *

 頭の中で槇原敬之などをかけながら、僕はウサギの着ぐるみを着て風船を配っていたんです。付き合っていると思っていた彼女が来月結婚することが分かり、もう気持ちがグチャグチャで、自分が人前で顔を曝していることにすら容認できなくなっていたので、僕は仕方がなくこの仕事を選んだんですが、やってみると、そこにはもう哀れな自分はいない。そればかりか知らない人までニコニコと手を振ってくれる。ウサギパワー、すげー!

 僕は自分にはウサギになりきる才能があると気づき、もう風船を嬉々として配りまくったんです。子供達は大喜びで受け取ってくれるし、可愛い女の子が、一緒に写真撮って、なんて。

 なんて素敵な、嘘っぱちな世界。

               *

「10月いっぱいで退社するって聞いたけど、そのあと、どうするの?」

「結婚する。」

そんな言葉って、この世に、ある?

 急に心が逆戻りした。せっかく自分がいない世界を思う存分に楽しんでいたのに……。

 クリスマスのイルミネーションに彩られたアーケードから流れ出てくる人ごみの中に、僕は、シュッとしたイケメンと歩いてくる彼女をみつけた。クリスマスカラーを指し色に、オフィスでは見たこともないほどオシャレに着飾った彼女が、僕とは似ても似つかない背の高いマフラーをふんわりと巻いた上品な男前と一緒に近づいてくる。

 あ、ウサギさんだ! 聞いたこともないような甘えた声で彼女が僕を見て笑っている。ウサギさん、私にも風船ちょうだい。 僕は一瞬たじろいだ。まだ2か月しかたってないんだから、彼女が世界で一番好きな事に何の変りもなかった。しかし僕にはウサギになりきる才能があった。僕は、ウサギ、僕は、ウサギ!ここぞとばかりに思いつく限りの可愛いポーズを、僕はとった。可愛い!!彼女は大喜びで、イケメンも喜ぶ彼女に満足げだった。僕は風船を一つ取り、紐の先に輪っかを作った。そして彼女の左手をとり、薬指にその輪っかを嵌めた。

 え?ウサギさんにプロポーズされた? どうしよう!

 彼女は一瞬驚いたような顔をしたが、僕はすぐに手をたたいて、両手を大きく広げて二人を祝福するポーズをとった。男前は、ありがとう、と照れくさそうに笑った。

 遠ざかっていく2人の姿を見ながら、僕は自分のいない世界が、どれほど円滑に回っているかを痛いほど知った。自分がすべての基準からずれている。自分がいない事が、すべてにおいて正解。

                *

 つまりだ。俺が今こうして生きているという事は、俺以外すべてが不正解でないと辻褄が合わないという事だ。水の落ちる音が、ぽつ……、と止まった。

 徹夜作業では午前零時を回ると『午後』という。自分の膝小僧の上で目を覚ました時、メールの着信がある事に気づいた。彼女のお母さんからだった。

『幸恵、今、亡くなりました。』

 とびきり重いコピー機の前にはなぜかあの酔っ払いのおっさんが一人座っていた。昨日の朝からさんざん逃げ回ったがとうとう一番重い仕事に捕まっていた。飲み足したのか酒の匂いはあいかわらず強かった。レイシストの俺は嬉々としてオッサンに近づく。

 「こういうのはわけぇ奴が率先して運ぶもんだろ、年寄り当てにすんじゃねーよ」など、ブツブツと不潔な愚痴をこぼすわりに全然力を入れないオヤジに、俺はイライラとしながらも何かの答えのような不思議な感覚を得ていた。なんだろう、この、変な感覚……。

 幸恵が自殺を図ったのは今月の初めだった。もう何度目だろう。気を付けてはいたが今回も防げなかった。バイトが終わり、ウサギの頭を外した瞬間に、俺のいない素敵な世界は完全に消えた。そして真っ暗な世界には俺と幸恵だけがいた。まさかこんな子が、ペンギンの中に入っているとは思いもよらなかった。

 幸恵は触れ合うことを極端に嫌った。まなざしが触れ合う事すら嫌がった。俺にはその訳が手に取るように分かった。自分自身を認められないモノにとって、触れ合う事が一番質が悪い誤解なのだ。

 そうだよ、他人なんかどのみち、自分勝手な勘違いをして、自分勝手に幻滅して去っていくだけのモノなのだから。しかし幸恵は殊更明るく振舞おうとした。自分を無視して、無理やり楽しそうに生きていた。そして常に血を流していた。

 ねえ、今度一緒にディズニーランド行こうよ!! 派手に着飾って、ミッキーとハイタッチして、ピースして写真を撮って。もう見ていて涙が出るほど、彼女は必死に無益な無理を頑張るのだ。

 よし、じゃあ今度、お金貯めて一緒にイタリアのフィレンツェに行こう! フランスシャンゼリゼ通りにも行こう!リオのカーニバルも見て、フィンランドにオーロラを見に行こう!

 そんな言葉が、果てしなく彼女を傷つけている事に、俺は気付いていたに違いないのに。

 彼女の母親は、なぜ俺にメールをくれたんだろう。それも、たった一言。

『幸恵、今、亡くなりました。』

 これは俺への痛烈な呪詛かもしれない。

「お前は私から娘を奪い去った。私があの子の居場所を、これまでどれぐらい丁寧に構築してきたか、お前にはわかるまい。いや、すべてわかっていたくせにお前は、愛だの信頼だの希望だの将来だのと、あの子にとって一番の猛毒を次々と含ませて死へ追いやった。娘が本当に望んだものは、花のように咲き狂い、大気をその香で充満させ,やがて散り失せる豪奢な死ではなく、湖のように何もかもが遠く、何もかもが儚く、何も手に触れられない静かな生だった。その事を、あんなにわかりやすく、あの子なりの精一杯アピールして必死に助けを乞うていたのに。お前はそれを見殺しにした。お前を見て、あの子と同じ目をしたお前を見て、一瞬でも安心した私をお前は声をあげて笑うがいい。ただ、あの子はお前を愛したのではない。お前だってそうだろ?あの子を愛していたわけじゃない。ただ助けを求めていた、それだけだろう? それでよかったのに……。この世の底に溜まった汚泥からするすると奇跡のように並んで伸びた二輪の花は、そのまま未来永劫、そっと寄り添ってくれれば、それだけでよかったのに。あの子はお前に殺された。いや、あの子はお前の代わりに死んだ。だからお前はこれからも、死んだように生きろ!生きながら死ね!

あ、殺意だ。

 廊下を曲がる、ちょうどコピー機と壁の間が狭くなる時に、俺はグイ、っと押してそのまま手を離した。ドスン!という鈍い音とともに、おっさんは廊下の角とコピー機に挟まれ、ギャーという珍奇で耳障りな叫び声と同時に酒の匂いをまき散らした。

痛ぇ!てめぇ、早く、ど、どかせ!早く!!

 知らねーよ!ボケ!!

 俺はそのまま階段を下りて外に出た。真っ黒な空から弱々しい雪がさも意味ありげに落ちては消えた。遠くに高速道路が見えた。

 さて、東京はどっちなんだろう……。俺はとりあえず高速道路を目指して歩いた。

★偉人とシロネコ(文豪編)★


●夏目漱石(SOSEKI NATSUME)



●芥川龍之介(RYUNOSUKE AKUTAGAWA)



●樋口一葉(ICHIYO HIGUCHI)



●泉鏡花(KYOKA IZUMI)



●宮沢賢治(KENJI MIYAZAWA)



●太宰治(OSAMU DAZAI)



●三島由紀夫(YUKIO MISHIMA)



●川端康成(YASUNARI KAWABATA)



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『いきてるきがする。』《第18部・秋》



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第95章 『同じ場所、同じ時間に同じ。』

 少しずつ日が暮れていきます。夕日は足元あたりにやや佇んでいるようにも見えますが慌てた様子はありません。私ですか? 私は元気ですよ。でもその状態がいいのか悪いのか、いつまで続くのかは私には分りません。もうずいぶん長い間ここで同じことを考えています。やはりこれといった結論など出ないように思われます。結局私はこれからもここでずっと同じ事を考えていくより他に無いようですね。ただこの足元の明るさと温かさをどう解釈すればいいのか、それだけが私に委ねられた唯一の『今』のように思われるのです。

 『昔の子』『今の子』は今日も一日の勤めを終え、家路につこうとしています。40歳をとうに超えている2匹の金魚の泳ぐ水槽は今日もピカピカ。パンも弁当も一つも売れ残りませんでした。完売御礼。とてもいい日でした。そうして2人が帰ると店は空になり、やがて日没とともに私を巻き添えにして闇の中へと消えていくわけですが……。

 この子たちはいったいどこから来て、どこに帰っていくのか、実は私はそれを知りません。というよりもまだ決めていないのです。私が決めれば済む事なんですがね。今のところ彼らは毎日、どこからともなく現れて、どこへともなく去っていくことになっています。この曖昧さは不自然ですか? ホントに? 私が思うに、それは曖昧でも不自然でもありません。だって一般の人達だって同じでしょう。毎日電車で出会う人の事など、お互いに何も知らないのですから。彼は一体どこから来て、どこへ帰るのかなんて事をいちいち不思議がったところで仕方がありませんししません。ただ、大勢の人がいろんな場所でいろんなことを考えながらいろんな人と暮らしているんだろうなぁ……、と漠然と思うだけです。『現実』という、さも賢げで自信ありげなモノの99%以上がそれで埋め尽くされているんです。

 ただ、

 ストーリーという残酷な概念に、私の人生は常に縛られ続けているのは事実です。そして矛盾とか誤解というものに抗いきれずずっと苦しんで来ています。これまで通り、ここにいればいいのに、ここにずっといて、同じことをずっと考えていればそれで何の問題もないのに。そうして毎朝現れる『今の子』『昔の子』に、まったく疑いのない笑顔で、おはよう、とそういえばすべて丸く収まるというのに……。

 では、失礼します。そういってまず『今の子』が先に店を出ていきました。夕暮れはもう息絶え絶えです。『今の子』はかつて、自分は両親からのいじめを苦に自殺したのだと言いました。でも私は驚いたりしませんでした。なぜならば、私はその現場にいませんでしたし見てもいませんから。

 ほどなく『昔の子』も、じゃあ、失礼します。と言って出ていきました。わずかの時間差とはいえ外はほとんど真っ暗です。『昔の子』は戦後すぐ、餓死したのだといいました。最後、自分の手から滑り落ちた水粥が残った茶碗を、もう自力では拾えなかったといいます。

 それぞれの時代、残酷な死に方をした子供はきっと他にも大勢いたと思われます。こうしてストーリーが私の立ち位置をぐいぐいと押し狭めてきます。

 わかっています。私はいずれの出来事に対しても無力です。駄々、受け止めて従うしかないのです。しかし、私はそのいずれの出来事に対して、どうしても強い自責の念だけは抱かざるを得ないのです。私がその場にいれば、『今の子』『昔の子』も、西郷隆盛太宰治芥川龍之介も、死なずに済んだかもしれない。

 私はきっと今、『今』という完全平面の上に横たわっているのです。そしてその同一平面上には、宇宙・人類の普遍で無限の『今』があるのです。だったらば、私は何としても、『今の子』、『昔の子』、西郷・太宰・芥川3氏の落命の際にも立ち会えたはずなのです。

               *

 私の父の本当の母は、父が2歳の時に病死したそうです。当然私は会った事も、写真を見たことも、その存在についても聞いたことすらなかったのですが、私が結婚することを決め、妻になる人を連れて帰った夏の日に、突然父が、墓参りに行く、と言い出しました。私は盆に墓に参る事をことさら疑いませんでしたが、車に乗って墓に行く道がいつもと正反対であることにはすぐに気が付きました。やがて細い農道のドン突きにある見知らぬ民家の前に車を止めると、父は中に一声かけた後、その民家の手桶と酌を借り、また見知らぬ山の小道を、私と妻などいないかというほど自分勝手に登っていきました。やがて小さな墓石の前に立って、やっと連れてこれた。と呟くように言いました。「これが、お前のホンマのおばあちゃんの墓やで」墓石は苔生し、小塚の傾斜に合わせてすでに斜めになっていました。やがて崩れてなくなることは見てすぐにわかりました。父は勝手に線香を点け、そのあとに線香立てがない事に気づくと墓石の前に横に置きました。そして手を合わせると、お前らも線香あげてやってくれ。と言いました。

 私は婚約者の手前、やっと思いとどまりましたがその時、父に対する猛烈な嫌悪が吹き出しそうになったのです。

あんたはやっぱり勝手な人だ!

 自分だってよく覚えていない実母の墓前に、さらに何も知らない婚約者と私を連れてきて、あなたの孫ですよ、この度、結婚することになりました。と報告したところでなんになる? 覚えていないんだろ? あなたは悲しんでもいない自分を憐れんで、知りもしない母を慕い、苦しくもない事を苦しんで生きてきた。

 茶碗を落として拾えなかった少年の事を話してあげよう。

 母親の苛烈ないじめを苦に自ら命を絶った少年の事を話してあげよう。

 私がさいなまれているのは、彼らをどうしても救うことなど出来なかったという自責の念です。そしてそれを強いるストーリーです。私はじゃあ、何のために今、彼らに会って彼らと話をしているのでしょう。 幸い、彼はその事実について、私が知っていることを知りません。知らずに働いてくれています。私はなにも質問はしません。彼らも私に何も質問はしません。それはただの不文律なのか信頼なのかはわかりません。

 やれやれ、とっぷりと日が暮れてしまいました。その闇の中で、私はまたそれが自分の『今』だ、なんて言い始めて、まったく別の話をし始めるかもしれませんよ。でも決まっている事が一つだけあります。それは私が、幸せを目指しているという事。どんな材料が悪くても、そこから幸せを目指すことは必定だと思うからです。たとえ目の前にこんにゃくしかなくても、それを使って岩を掘り続けるべきだと思うわけです。もちろん、ストーリーはそれを邪魔します。こんにゃくで?岩を? 掘る?? と、あざけ笑います。

 いいじゃないですか、矛盾や誤解があったって、想像の域を出なくったって。それが間違いなく、あなたの『今』なのだから。