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covid-19 2022 Apr Tokyo Japan


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4/30(土)

8041 0

8041 2979人

37.04%

4/29(金)

3346(4364) 0(17)

3346(4381) 3893人

**********(88.86%)

4/28(木)

9877(12479) 178

10155(12657) 5394人

53.11%(42.61%)

4/27(水)

11671(14388) 23

11694(14411) 6052人

51.75%(41.99%)

4/26(火)

15188 (16198) 5

15193(16203) 5048人

33.22%(31.15%)

4/25(月)

18349(21910) 0

18349 (21910) 3141人

17.11%(14.33%)

4/24(日)

4169 (4620) 0

4936人

**********

4/23(土)

10150(10932) 32

10182(10964) 5387人

52.90%(49.13%)

4/22(金)

11604 (16438) 14

11618(16452) 5396人

46.44%(32.79%)

4/21(木)

12488 (14209) 44

12332(14253) 6713人

54.43%(47.09%)

4/20(水)

12652(15018) 17

12669(15035) 6776人

53.48%(45.06%)

4/19(火)

16275 (17107) 36

16311(17143) 5583人

34.22%(32.56%)

4/18(月)

22501(23067) 120

22621(23187) 3479人

15.37%(15.00%)

4/17(日)

4206(4315) 4

4210(4319) 5220人

**********

4/16(土)

9587(9747) 15

9602(9762) 6797人

70.78%(69.62%)

4/15(金)

10226 (16910) 48

10274(16958) 6768人

65.87%(39.91%)

4/14(木)

12784 (14340) 87

12871 (14427) 8540人

66.35%(59.19%)

4/13(水)

15923 (16652) 153

16076 (16805) 5253人

32.67%(31.25%)

4/12(火)

15518(18855) 3 (41)

15521(18896) 6922人

44.59%(36.63%)

4/11(月)

24697 (26230) 16

24713(26246) 8026人

32.47%(30.57%)

4/10(日)

5024(5312) 6

5030(5318) 8026人

**********

4/9(土)

11871 (12100) 25

11896(12125) 8102人

68.10%(66.82%)

4/8(金)

11988(18186) 20

12008 (18206) 8112人

67.55%(44.55%)

4/7(木)

15052(16655) 79

15131(16734) 8753人

57.84%(52.30%)

4/6(水)

16154(17303) 40

16194(17343) 8652人

53.42%(49.88%)

4/5(火)

18014 (18906) 13

18027(18619) 6968人

38.65%(36.83%)

4/4(月)

17523(22082) 13

17536 (22095) 4384人

25%(19.84%)

4/3(日)

3260(4624) 0(30)

3260(4654) 7899人

**********

4/2(土)

8668(9786) 0(43)

8668 (9829) 7395人

85.31%(75.23%)

4/1(金)

14515(15823) 0 (104)

14515(15927) 7982人

54.99%(50.11%)

保護猫『とのま』の一言成長日記 2022。3月~4月


4/30(土)

今日はお寝坊さんでした。そして、私の後に起きてきて一言、ニャ、と言ってエサを食べて水を飲んで、すぐに2度寝に行きました。ゴールデンウィークぐらい、猫だってゆっくりしたいよね、とのちゃん。

4/29(金)

今日は、4時きっかりに『胸に乗る攻撃』で起こしてくれました。6.5㎏あるからまあ、

胸に乗られると重い事重い事。なかなか効果的な起こし方の一つでです。

4/28(木)

今朝もちゃんと4時……、ちょっとすぎに起こしてくれました。最近はそんなに寒くないからいいね、水換えたよ。いま、ちょっと離れた和室の入り口から、体を半分出してジーっとこっちを見ています。もうすぐ早朝ご飯だよ。

4/27(水)

今朝もちゃんと4時前に起こしてくれました。今朝はちょっと、遊びたかったみたい。今は水を飲んで落ち着いて2度寝中です。もうすぐ早朝ご飯だよ~。

4/26(火)

今朝は4時少し前に枕元にたたずむ作戦で起こしてくれました。隣で寝ている息子の寝相が深刻。なぜ、自分の布団で寝ない??とのちゃんは最近毛が抜けるようになったので、また櫛でといてあげましょう。春だねぇ。

4/25(月)

今日は急遽、おやすみです。でもとのまはいつも通り、ちゃんと4時少し前に枕元に来て、ニャ、ニャ、と、他の家族を起こさない程度の声で起こしてくれました。それでも十分目が覚めるところが素敵と言うか、君の能力だね、とのちゃん。

4/24(日)

今朝も4時ちょうどに起こしてくれました。体内時計、すごいね。1分も狂ってない。それなのに、オートフィーデングマシンの時計はもう30分も遅れて、早朝ご飯の時間が5時近くなってる。直すよ、ごめんなとのちゃん、もうすぐ早朝ご飯だよー!

4/23(土)

今朝は久々に『顎髭抜き攻撃』を試みたけど、そんなに伸びてなくて未遂に終わったね。今は大人しく早朝ご飯待ち。お腹空いた顔してます。

4/22(金)

最近はジッとしてオーラで起こすやり方が主流のとのちゃん。今朝もそうでした。ジッと、手の上に香箱座りし起こすやり方です。

4/21(木)

今朝も、枕元にいたんだね。気配がないから気付かなかった。さすが、猫。今もじっとして、早朝ご飯を待ってジッとしてます。あと30分ぐらいで早朝ご飯だよ、もうひと眠りできるよ、とのちゃん。

4/20(水)

今朝は、いつから枕元にいたの?ずーっと、ゴロゴロ言ってる、夢を観てた。あぁ、枕元に、とのちゃんがいる、っていう夢。ずっといたの?

4/19(火)

お!やっと起きたねとのちゃん。今日は父さんの勝ち! 昨日は脱出おめでとう!雨だったけど、久々の外、少しは楽しめた?でも、お母さんが心配するから、脱出もほどほどにね。

4/18(月)

今朝は目覚ましが止まってて、本当に助かったよ。形態の目覚ましって、何で突然、解除されたり、音が消えたりするんだろう。とのまがいないと遅刻するよ。まったく。

4/17(日)

今朝も、いつも通り起こしてくれました。今は妻の枕元で香箱座り中。ひょっとして妻も起こそうとしてる??あ!今日は兄さんが練習試合だから?その朝ご飯を作るために?? 天才ネコ!!!それにしても私と違って、ずいぶんとソフトな起こし方だ事。

4/16(土)

今朝は父ちゃんの方が早起き。でも一応、必ず一回は起きてきて、すりすりしてからまた寝るんだね、律儀なネコ。とのちゃん。

4/15(金)

今朝も、最近は何もしないね。 ジッと枕もとで私が起きるのを待ってる。ただ、腕の上に『香箱座り』するので目が覚めます。今までで、一番ソフトな起こし方……。おはよう、とのちゃん。

4/14(木)

今朝はそばに居たけどなにもせずにじっとしてた。起こしてくれたのかな?今もジッとして2度寝もせずにいます。お腹空いた? 早朝ご飯待ち? あと10分ぐらいだよ。フィーディングマシーンの時計、直さなきゃね。どんどん遅れていく……。

4/13(水)

今朝はやけに要求が多いね。何言いたいが、だいたいわかる。お庭に出たいんだよね。君は明らかに、日本語をしゃべってるね。でもまだ外は暗いよ。窓から覗くだけにしといて。

4/12(火)

最近暖かい朝になって来て、お互い起きるのが辛くなってきて、いつもギリギリに、私は起きるし、とのちゃんは起こしてくれる。でもすぐ2度寝。おやすみ、今日もさっさと帰ってくるよ。

4/11(月)

今朝は起きてたのに起こしてくれなかった。起きたら目が合った。ジーっと見てるけど起こしてくれなかった。その後、水を換えたら少し飲んで、またすぐ2度寝。最近急に暑くなってきたから、給水怠りなく、とのちゃん。

4/10(日)

今朝も起こしてくれました。昨日は野球の試合が延長12回まで続いたせいで7時間も留守番させちゃったね。ごめんな。今は2度寝中。おやすみ、もうすぐ朝ご飯だよ。

4/9(土)

ゴメン!今朝は起きられなかった。いつもより眠かったのかな。起こしてくれたのに。でも私が起きたら一緒に起きてくれて、暫く甘えてくれて、早朝ご飯食べて水飲んで、今は2度寝中……。おやすみ、毎朝ありがとうね、とのちゃん。

4/8(金)

今朝も起こしてくれました。『枕もと佇み作戦』で。今日はお釈迦様の誕生日、花まつりですよ。お祝いにチュールでも貰う?

4/7(木)

今朝は、私の方が早起き!勝った!でもやっぱりすぐ後に起きてきて、ニャ、ニャ、と言い訳するところがまた、可愛いです。もう2度寝に行きました。もうすぐ、早朝ご飯だよ。

4/6(水)

今朝も起こしてくれました。今朝は、『何もせずただただ枕元にたたずんでオーラで起こす作戦』。あと、『手の上で香箱座り作戦』ふわっと、暖かいんだよね。ありがとうね、とのちゃん。

4/3(日)

今朝も『胸の上乗っかり作戦』で起こしてくれました。昨日もみんななかなか寝なくて、ねぇ、早く寝ようよ、ってアピールしてた。そうだね、今日は早めに寝ようね。まだ朝だけど。

4/2(土)

今朝は2:30に起こしてくれた。ちょっと早い……。でもちゃんと4:00にもう一度起こしてくれた。まいあさたのしいじかんをありがとうね、とのちゃん。  

4/1(金)

今朝は3:57に新しい起こし方、『鳩尾に飛び乗る作戦』で起こしてくれました。あれ、なかなか効くよ。

3/31(木)

今朝も起こしてくれましたよ。ちゃんと4時きっかりに。今は、2度寝かな。ネコなのに夜は一番早く眠くなるんだよね。それで、なかなか寝ない家族に「もう寝ようよ~」ってアピールするんだよね。かわいいね。とのちゃん。

3/30(水)

今朝もちゃんと起こしてくれました。ニャ、ニャ、と、小鳴きしながら近づいてくるだけで目が覚めるようになりました。こっちも進化してますよ。

3/29(火)

今朝も、ちゃんと起こしてくれました。今はエサケージの前で、早朝ご飯を大人しく待ってます。今日も、なるべくはやくかえってくるからね。とのちゃん。

3/28(月)

今朝も起こしてくれました。ちょうど4時10分。昨日は外の出たかったね。そのアピールが健気過ぎていつも心に刺さるよ。何とか外に出してあげたいんだよ。本当はね。

3/27(日)

 今朝も起こしてくれて、今私の足元にいます。どうやら最近、朝お腹が空くらしい。あと10分ぐらいで早朝ご飯ですよー。今日は法事なので午前中はお留守番、お願いします。

3/26(土)

朝はだいぶ暖かくなってきた。今朝は早朝ご飯のあと、トイレに行って、今は窓の外、明星を眺めていましたが……、今(5:00)2度寝に向かいました。おやすみ、とのちゃん。

3/25(金)

今朝もちょっと遅れて、慌てて起きてきた様子。暫く外を見て、今2度寝に行きました。律儀なネコだね、眠かったら、ねてていいんだよ。とのちゃん。

3/24(木)

今朝はきっちり4時5分に起こしてくれました。アラームの時間、ピッタリ。あら、今日はもう2度寝?もうすぐ早朝ご飯だよー。

3/23(水)

今朝も、私よりもちょっと後に慌てて起きてきた。そしてひとしきり寝坊の言い訳をしてから、ちょっとご飯食べて、また寝ました。昨日から、朝寒いもんね。もうすぐ早朝ご飯だよー。

3/22(火)

今朝は私の方が早起き。目覚ましを聞いて慌てて起きてきた様子。今は2度寝せずに、早朝ご飯を大人しく待ってます。最近、朝お腹すくのかな。

3/21(月)

今朝もちゃんと4時に起こしてくれました。久々の『髭抜き攻撃』と『左手チョンチョン攻撃』でしっかり目が覚めました。とのまも、左利き? 猫はほとんど左利きなんだって。

3/20(日)

今朝も、ちゃんと『枕もと佇み作戦』で起こしてくれました。夏休みのお留守番の事が今から心配なんだよね。思案中……。

3/19(土)

三連休初日の今朝は、1時間以上寝坊したのに、ずっと枕元にいてくれたんだね。とのちゃん。ちょっと、早朝ご飯食べて、すぐに2度寝。ありがとう、おやすみ。でも、あと2時間ぐらいで朝ご飯だよ。

3/18(金)

今朝も起こしてくれました。最近、昼間も寝てばっかりらしいね。どうした?しんどい?見る限りでは元気そうで熱もないし、でも今朝も、私を起こしてくすぐに2度寝に行きました。

3/17(木)

昨日の地震はびっくりしたね、寝られた?今はちょっと離れたところで、香箱座りで早朝ご飯を大人しく待っている様子。

3/16(水)

今朝も起こしてくれました。何だか遊びたそう。今ご飯食べてます。

3/15(火)

今朝も『枕もと佇み作戦』で穏やかに起こしてくれました。朝はべったりデレデレなとのちゃん。今日はさっさと2度寝。でももうすぐ早朝ご飯だよ。

3/14(月)

今朝はきっと、目覚ましが4時に鳴るのを待ってて、起こしてくれたっぽい。ぼんやりとした記憶だけど、2時ぐらいに枕元にじっと座ってた気配を覚えてる。起こし方を日々工夫してくれているような気がする。毎度毎度、毎朝ありがとう、とのちゃん。

3/13(日)

今朝も起こしてくれました。今はちょっと離れたところで、早朝ご飯待ち中。夜中1人で遊んだと見える、ピンポン玉が廊下に転がってました。あ、つめ切らないとだね。

3/12(土)

今朝は寝坊。ちょっと後で、小鳴きしながら起きてきました。その申し訳なさそうな感じが朝から可愛い。

3/11(金)

今朝も起こしてくれました。最近、起こし方が大人になったね。ジッと佇む、作戦。

3/10(木)

今朝も起こしてくれましたよ。でも最近はどうも、私の目覚ましアラームで起きている様子。春眠暁を覚えず、だね、とのちゃん。

3/9(水)

今朝は起こしてくれませんでした。まだ熟睡中……。そんな朝もあるさ、でもちょっと寂しい……。

3/8(火)

今朝は2時に起こしてくれた、さすがに早いと思ってたら、4時にまた起こしてくれた。ちゃんとねてる?今は2度寝中。

3/7(月)

実はこれは8日に書いてます。昨日、パソコンの不具合で書けなかった。でもちゃんと、3時0分に起こしてくれたよ。ありがとう。とのちゃん。


3/6(日)

今朝は起こしてくれたのに起きられなかった。ごめん。今は2度寝中。早朝ご飯、出てるよ。

3/5(土)

今朝も上乗っかり攻撃で起こしてくれました。3時45分ぐらいかな。君が起こしてくれるから、休日でも同じ時間に起きるんだよ。規則正しい生活が出来てます。ありがとう。とのま。

3/4(金)

今朝もちゃんと起こしてくれました。形態の電源が落ちてて目覚ましが鳴らないところだった。たすかったよ、とのちゃん。でも最近、昼間はずっと寝てるらしいね。体調でも悪い??

3/3(木)

今朝は3時に起こしてくれました。ちょっと、早い……。昨日の夜もずっとはしゃいでたし、眠れない?お昼寝し過ぎた??今は2度寝中。もうすぐ早朝ご飯だよ。

3/2(火)

今朝も起こしてくれた。今朝は2度寝せずに、大人しく早朝ご飯待ち中。今朝はお腹が空いているのかな。もうすぐだよ。とのちゃん。

3/1(火)

今朝もちゃんと起こしてくれました。くー と遊んで欲しそうに鳴いたけど、今は大人しく早朝ご飯を待ってる様子。毎朝ありがとう、とのちゃん。 

covid-19 2022 Mar Tokyo Japan


3/31(木)

15583 (17157) 0(10)

15583(17167) 8226人

52.78%(47.91%)

3/30(水)

13149 (17679) 0(9)

13149 (17688) 9520人

72.40%(53.82%)

3/29(火)

16618(19350) 0(3)

16618 (19353) 7846人

67.53%(39.72%)

3/28(月)

22633(25788) 0(33)

22633 (25821) 4544人

20.07%(17.59%)

3/27(日)

3619 (5521) 0

3619 (5521) 7844人

**********

3/26(土)

9179(12400) 0 (44)

9179(12444) 7440人

81.05%(59.78%)

3/25(金)

11351(19152) 0 (22)

11351(19174) 7289人

64.21%(38.01%)

3/24(木)

11531(16290) 0(32)

11531 (16322) 8875人

76.96%(54.37%)

3/23(水)

11705(17642) 0(19)

11705 (17661) 6430人

54.93%(36.40%)

3/22(火)

21268(26299) 0 (31)

21268(26330) 3533人

16.61%(13.41%)

3/21(月)

4276(6204) 0

4276(6204) 3855人

90.15%(62.13%)

3/20(日)

3819(5242) 0 (47)

3819(5289) 6502人

**********

3/19(土)

9734 (12282) 0 (9)

9734 (12291) 7444人

76.42%(60.56%)

3/18(金)

9824 (17907) 0 (14)

9824(17921) 7825人

79.65%(43.66%)

3/17(木)

12031(16692) 0 (72)

12031(16764) 8461人

70.32%(50.47%)

3/16(水)

13211(18892) 0 (23)

13211(18915) 10221人

77.36%(54.03%)

3/15(火)

14,565(21102) 0 (25)

14565(21127) 7836人

53.80%(37.08%)


3/14(月)

23511(28991) 0(24)

23511(29115) 4836人

20.56%(16.60%)

3/13(日)

4666(5626) 0(1)

4666(5627) 8131人

**********

3/12(土)

11467(13683) 0(47)

11467(13730) 9164人

79.91%(66.74%)

3/11(金)

11567(20607) 0 (11)

11567(20618) 8464人

73.17%(41.05%)

3/10(木)

13608(18517) 0 (117)

13608(18634) 10080人

74.07%(54.09%)

3/9(水)

16199 (19486) 0 (111)

16199(19597) 10823人

66.81%(55.22%)

3/8(火)

15498(22018) 0 (39)

15498(22057) 8925人

57.58%(40.46%)

3/7(月)

20887 (29282) 0 (63)

20887 (29345) 5374人

25.72%(18.31%)

3/6(日)

4212(5270) 0(8)

4212 (5278) 9289人

*********

3/5(土)

11868(14504) 0 (5)

11868(14509) 10806人

91.05%(74.47%)

3/4(金)

12320 (22526) 0(19)

12320 (22545) 10517人

85.36%(46.64%)

3/3(木)

16812 (21331) 0(76)

16812 (21407) 12251人

72.87%(57.22%)

3/2(水)

16051(22578) 126

16177(22714) 12693人

78.46%(55.88%)

3/1(火)

20167(24827) 129

20296(24956)  11813人

58.20%(47.33%)

『いきてるきがする。』《第8部・春》


もくじ


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第64章『オモイデ、アリ〼。』 

 今日は私が店番をしています。2人にはお使いに出てもらっています。少し時間がかかる様なお使いに出てもらっているので、暫く帰って来ないと思います。というのも、今日は皆さんに話す事が、話したい事があるのです。 

 しかしあの2人がいないと、この店はこんなにも冴えない古びた雑貨屋なんですね……。ゴールデンウィークが終わってからこっち、急に夏の様な日が続いたかと思うとジトジトと冷たい雨が降ったりして、何だか体調もすぐれません。 

 窓辺の万年風鈴が チリ、と鳴ったので目をやると、窓の向こうに人参色をしたケシの花がたくさんゆらゆらと気楽げに揺れているのが見えました。何かに似ているな、どこかで見たな、と考えるとそれはいつか神田駅のホームで見た酔漢達にそっくりでした。私がまだ未成年だったあの頃、酔漢達はみな模範囚の様に見えたモノです。そして巡り巡って、気が付くと自分までその模範囚となり今、私達は共に店の内と外でこうして揺れているのだから面白いモノです。そしてあの時同様、ほどなく雨が降るようです。 

 2人にお使いを仰せ付けた引き換えに私は、2人から多くの事を仰せつかりました。 

 今日はたくさん荷物が着きます。今日の発送分の品物に関しては触らないでください。それ以外は、Tシャツなら男女それぞれMサイズを柄ごとに1枚ずつ、袋から出して中央の台に見栄えよく置いてください。残りの在庫分は衣類はカラーバリエーションがグラデーションになるよう重ねて戸棚に、お客さんから見える様に綺麗に収めてください。小物も一つずつ出して、在庫は箱ごと見えない様に台の下に仕舞ってクロスを掛けて置いてください。平積みはやめてください。売れなくなります。どうもうちの商品はたくさん並ぶと急に魅力がなくなるようです。それはデザインに問題があると思います。いずれも一点モノでしか成り立たない様なクセのあるモノばかりで、しかも大人が着るにはふざけ過ぎていて、子供が着るには可愛くなさ過ぎるのです。それというのは店長が顧客のニーズを全く考慮せずすべて思い付きでデザインするからで、実際に買っていく人を見ても大概は後先考えない衝動買いか、さもなくば誰かに送って困らせてやろうというイタズラ好きな人ばかりのようです。 

 ずいぶんな言われようですが、これが実際なのでしょう。 

  

 昨日、フレデリックのしっぽの付け根に白いモノをみつけました。 

『おぐされ病』という病気らしく、いろんな原因があるのですが、医者の言いうところによると、フレデリック自身の免疫力の低下もあるのではないか、という事でした。薬をもらって、今朝から水槽に入れてるんですが、なにぶんご高齢につき、慎重には慎重を重ねて……。あ、これも触らなくていいですから。 

  

 フレデリックとは金魚の名前です。誰が付けた名前なんでしょう。人間ならもう300歳ぐらいでしょうか? いつからこの店にいるのでしょうか? 

 いえきっと、私はこれらの事はすべて知っているのです。しかし私があまりに長く生き過ぎたせいで、今初めて知った事も、ずっと昔から知っていた事もまったく区別がなくなっているのです。それは例えるなら、宇宙から地球を俯瞰しているような感じでしょうか。 

 宇宙から見れば東京も大阪も変わりません。更に遠く俯瞰すれば、銀河系もアンドロメダ星雲も変わりません。時間は長く過ぎれば過ぎるほど、『今』は遠くから俯瞰されるような変化をするのです。 

 もっと若い頃の私は『今』を時計の針の何倍も細かく刻んではそれを浪費しているような罪悪感に苦しんでいましたが、今はもうそんな事はありません。『今』は老いた猫と並んで、私の傍らでじっとしています。 

 言いたい事がある、と言いましたが、それは他でもないこの、私の溜まりに溜まった思い出の『処理問題』です。どうか皆さんにも使ってもらいたいというのが趣旨なのです。 

 他人の思い出を使うって?どういう事?と思われるかもしれませんが、思い出はもともと独り占めできるものはありません。こう言うと、じゃあ、夢は? と大概は仰るが夢にしたって独り占めできるものではありません。思い出も夢も、誰かと共通しているのが通常です。 

 私達は様々な場所を旅します。それは単に空間的にという意味ではなく、想像のエリアも含めた全体を示します。そしてその日に見た事、聞いた事、やった事を行商して回っているのです。 あぁ、今日はこんな事があった、でもこんな事もあった、だからこんな事になった、という按配で、それを人に見せて回っているのです。そして誰かがその思い出を気に入ればそれを持っていきます。お代なんて有りません。ただ、ひと声かけて持っていくのです。そしてその人が掛けた何気ない一言が、あなたの思い出や夢の内容を決めているんです。 

               * 

 やあ、忙しいそうだね、今日は。 

 早速、誰かが話し掛けてきました。 

  2人はお使いかい? どおりで忙しいわけだ。じゃあそのフレデリックという金魚について教えてくれないか? 

 私は金魚の事を話します。 

 あの金魚は私が小学2年生の時に神社の縁日で掬ったモノです。生き物が嫌いな父親に黙って、おばあちゃんと行った縁日で私は生まれて初めて金魚を掬ったのです。 

 5匹も掬ったのですが、家に帰るなり酔った父に取り上げられ、そのまま家の前を流れる側溝に捨てられてしまいました。血の雫の様な赤い金魚が、ボウフラが湧いた汚らしい側溝に消えていったのです。私は側溝に飛び込んでヘドロの中から金魚を掬いだしましたが、2匹しか見つかりませんでした。 

 ヘドロまみれの私に、父は酒臭い息で言いました。 

「お父ちゃんはな、動物が大好きなんだよ。子供の頃はいろんな動物を飼った。でも今は全部死んでしまった。自分が動物より先に死ねば楽でいいが、じゃあ残された動物はどうなる? 逆に動物が先に死ねば、それはお前が考えているよりもずっと悲しくて辛い事だ。動物を飼うという事はそういう事だ。どちらにせよ、お前は自分の人生を敢えて悲しみの袋小路に追い込むことになるんだ。それは無駄な事だ、やらなくてもいい選択だ。動物は絶対に飼ってはダメだ!」 

「じゃあ、人間の子供はどうなんだよ?」 

人間の子供は飼うんじゃない。子供の命は親の命の一部だ。大切かそうじゃないかという存在じゃない。だから大丈夫だ。先に死んでも、先に死なれても、存在を疑う必要はない。だから別段問題はない」 

「じゃあ、俺はどうなんだよ?」 

お前は大問題だ。お前は紛れもなく父ちゃんの子だ。だから厄介なんだ。」酔っぱらった父はその時、少しまじめな顔になりました。

 お前は生まれた時にほとんど死んでいた。お父ちゃんはそんなお前をベストじゃないと直感したんだ。だからもう諦めたからいいと言ったのに、医者が勝手にお前を生き返らせた。案の定、お前は父ちゃんには懐かず、ばーさんにばかり懐いて、父ちゃんのお前に対する愛情はどんどん薄れていった。それは父ちゃんをどんどん不幸にする事だ。だから父ちゃんは父ちゃんもお前も不幸にならないための唯一の方法を取った。それは神様から生まれた正真正銘の自分の息子であるお前を『飼う』事だ。飯を食わせて、病気をすると医者に連れて行って、誕生日のお祝いをして、旅行に行って、運動会に参加して、人並みに大学まで通わせた。でもただそれだけだ。父ちゃんはお前に何の見返りも期待せず、お前に感謝されない様にと、それだけを気を付けた。父ちゃんは自らの意志で、全く可愛くないモノを細心の愛情を込めたのとまったく同じように飼育したんだよ。犬猫と人間の混ぜこぜだ。これは大変だぞ。しかしそれでお前も私も救われたと、父ちゃんは自負している。今でも父ちゃんはお前が生まれてくれてよかったと思っているよ。そのお陰で父ちゃんは親子という関係の脆弱さを知った。疑う事が出来た。そして親子の関係を力づくで制御する必要性に気付いた。だから父ちゃんはお前に感謝している」 

その時の2匹が、あの金魚です。」

「……。」

「どうですか?」 

「つまんねぇ話、要らねぇ」 

「あぁ、そうっすか、じゃあ、神田駅のホームから酔っ払いが転落してそこに急行列車が……」 

「あぁ、それも、要らねぇ」 

「あぁ、そうっすか……。」 

 今日は、まだゼロのようです……。誰の現実も夢もシェア出来ていません。私はしばらく、ただぼんやりと夜景を眺める様に億千万の生活が星の一つ一つに宿っているのを眺めている事になりそうです。

 そうしてジッと庭を見ていると、『今』の自分がどういう状況に置かれているのか自分勝手に決めても一向にかまわない事に気付くんです。出来るんですよ。で、そこに花瓶につと花を1輪活けるように、

私の思い出の数々、置いてみませんか? オモイデ、アリ〼。

                 

                * 

  ポツポツという音で目を覚ますと同時に2人が帰ってきました。 

 お帰り、早かったね。  

 お帰りじゃないですよ店長。雨降ってきましたよ。窓閉めなきゃダメじゃないですか! 

 あぁ、そうかそうか。そりゃ大変だ。で、売れた? 

 売れませんよ。 

 万年風鈴がまた、チリ、と鳴りました。これはさっきも聞きました、遅かりしの雨告げのチリ、です。 夏までまだもう少しありそうな気がしました。 

第63章『拝啓、ミスター・ルサンチマン!』 

 私など大した人間ではないし、何も知らないし、何も出来ないのですが、こんな私に憧れ、必死に追いつこうとしたが追いつけず、ついにはルサンチマンから私を殺そうとした人がいたのです。これは私がドライバーになる前にいた職場での話です。 

 まず初めに、私は12歳でギターを始めました。まあ多少の才はあったのではないでしょうか。周りの友達よりも上達が早く、お前はなかなか筋がいい、東京でもイケるんちゃうか?!という周りの大人のいい加減な言葉を信じ、高校を卒業すると同時に、私は極東で一番大きくて一番危険な街、東京に足を踏み入れたのです。 

 そこでは壊れたバイクを高額で買わされたり、厄介な宗教団体に合宿と称して監禁されたり、殺人の前科がある変態性欲者の餌食になりそうになったり、 AV女優の運転手としてアメリカに行ったらパスポートを取り上げられ帰れなくなったりと色々ありましたが、もとより東京はバケモノの巣窟だと思っていたのでそれなりに処理できました。 

 しかしこれだけは意外でした。それは音楽が本当に楽しかったという事。 

 田舎にいた頃は、東京というモノを誇大に妄想しては、そこで暮らすにはきっともっと大きな角をはやさなければ、もっと派手な翼をはやさなければ、と荒唐無稽な条件が次々と頭に浮かび、『こんな田舎でこんな凡百な連中を相手に手こずっているようではとてもとても東京では通用しない!』と周りとの関係をわざとギスギスとさせて、相手の欠点ばかりに目を向けてその分自分を少しでも優位に立たせようとする、そんな卑屈で意味のない習慣が身に沁みついていたのです。 

 ところが実際に東京に来てみると、連中は皆とても楽しそうで、自分以外にいいプレーヤーをみつけたら寧ろ嬉しそうに近づいてきて、一緒にやろうよ! と声を掛けてくる。自分の可能性と相手の可能性を同等に見るんですね、しかも私には考えられないほど、ごく自然に……。 

 あぁ、つまりこれが東京なんだな……、と思いましたが、そう気付いた時はもう私にはそこを伸ばす伸びしろが見当たりませんでした。私は自分の才能にも可能性にも見切りをつけた事はこれまで1度もありませんが、ただ私には誰かの力を伸ばす力がなかった事だけは痛感せざるを得ませんでした。バンドをやろうと意気込んでいたくせに、私はバンドそのものをまるで信用していなかったのです。 

 30歳を過ぎた時、私はミュージシャンの夢を諦めて、普通に就職する事にしたのです。 

 まあ、よくある話ですね。 私はいつも恐れて怯えていた、ただそれだけです。誰かこんな凡人に憧れますかね? もし彼にもその事をちゃんと話せていれば、彼の私への病的な憧憬やルサンチマンは幾分か色褪せたモノになっていたかもしれません。殺す価値もない奴だと、早々に気付いていたかも知れません。彼は確かに、私の目から見ても、何も持っていませんでした。知識も、技術も、社交性も、話術も、素敵な表情も、罪のない嘘も、夢らしい夢も、希望も、目標も。 

 彼は職場の先輩でした。私よりも年は若いのですが、職場では先輩でした。私はいつか彼に仕事のやり方をたずねた事がありました。すると彼は、これは僕のやり方だから正解じゃない。だから僕のやり方を参考にするのは勝手だけど、自分の正解は自分で見つけて、と言いました。それからも、何かを訪ねるたびに彼は、これは正解じゃない、と同じ事を言いました。それは道理です。そして仕事に慣れ始めるに従って私は、彼が言ったとおり自分で工夫したやり方に変えていったのです。それは当然、彼にとっても正解のはずでしたが、しかし彼は事ある毎に私のやり方を非難するようになりました。 

 そんなやり方じゃ2度手間になる。僕の話、聞いてた? 

 と言っては、私のやった事をあてつけがましくやり直したりするのです。私は温厚な性格なので大概、態度には出しませんが、そういうあてつけがましい行為に対しては、自分でも驚くほど耐性がなく、その時も、傷ついたのか腹が立ったのかは今や判然としませんが、とにかく私は彼に対して猛烈な不快感を持つ様になっていったのです。 

 彼は私を見ても笑いません。当然私も彼を見て笑いません。仕事は慣れれば誰にでも出来るような単純なモノでした。だから私は彼を、彼は私を、出来るだけ仕事が連携しない様に、そしてその分、その他の社員とは出来るだけ楽しそうに話す様にと、それはげんなりするほど低辺な戦いを続けたのでした。底辺の戦いに関しては彼に分があるように感じていましたが、その時はまだ勝負としては互角だった様に思います。 

 しかしあるファクターが私に大きく加勢します。それは、その職場の所長が、『大のロック好き』という事情でした。所長と私はロックの話で盛り上がりました。所長は大のロ―リングストーンズファンで、私はいつも、ほんの少しだけ話の下手に出る形を取ります。すると話はとても盛り上がるのです。これを『銀座のホステス方式』と私は勝手に呼んでいるのですが……。 

 実はローリングストーンズの知識も、私には相当あるのです。でもわざとわからないふりをして相手に花を持たせる。これを相手にわからない様にするのです。そして相手が気持ちよくなっているところで、ストーンズのスピンオフ的話題、大ファンにとってはどうでもいいような、雑学的話題を振り掛けると所長は、お前は、本当によく知ってるなぁ~、と言って感心するのです。 

 恐らく私のそういうところが彼の琴線に触れたのだと、私は推測しています。彼は俄然、音楽を、特にローリングストーンズを聴くようになったのです。そして、 

「所長、知ってます? ロンドンのビル・ワイマンが経営するレストランのお土産のライターが、使い捨てなのに700円もするんですよ」などと、悲しいほどに絞りだしてきた話題で細々と対抗しようとするのです。私はかつての自分を見るようでした。彼を少し哀れに感じたほどでした。敵を恐れるあまり巨大に見えて、小石の様なモノまで投げつけて身を守ろうとする。 

 きみ、私と所長の話はそんな大したモノじゃない。ただの雑談なんだよ……。 

 しかし私は私で、明らかに彼の劣勢を意識して、それこそ必要以上に楽し気にローリングストーンズの話をして見せたのも事実です。私は読書も好きなので、ローリングストーンズの話にうまく交えて、三島由紀夫と川端康成の裏話や、ジョルジュ・バタイユガルシア・マルケスの様な、やや癖のある作家の雑学などを披露し、ますます『お前はホントにいろんな事をよく知ってるなぁ~」と言われ、彼を突き離しに掛かったのです。毎日彼の歯ぎしりが聞こえて来るようでしたが、それはそれで全然不快ではなかったです。 

 そんなある日、彼が突然、私を食事に誘ってきたのです。 

 彼は私を居酒屋に誘いました。そして突然、これまで取ってきた不遜な態度を全てを詫びてきたのです。あれはすべて、自分の不甲斐なさから出た事で、あなたには関係ない。私はあなたの豊かな知識と経験が羨ましくて仕方がなかった。自分は貧しい母子家庭に育ち、あらゆる欲望を諦めなければならなかった。そんな母親もある日、再婚相手と家を出て帰らなくなった。私は母を待ったまま親戚に引き取られ、そこで『飼育』されたんだと。 

 僕は、本当は警察官になりたかったんです。この世の中から、あらゆる不平等や理不尽を根絶したかったのです。彼はそう言いました。そして、でも、諦めました。と言ったのです。 

 『飼育』されながらも、彼は母を待っていたのだと言いました。いつか、あらゆる世の中の不平等や理不尽の間を縫って、母の白い手が私を目掛け、一直線に伸びてくるのを、バカバカしい話ですが、つい最近まで本当に心待ちにしていたのだと。 

 でも、諦めました。それは偏に、あなたのおかげです。 

 そいう言うと彼は、テーブルの下に隠していた両手を振り上げると私の胸めがけて包丁を振り下ろしたのです。大柄な彼がいきなり立ち上がったせいで、居酒屋のテーブルが彼の肘を押し、包丁は私の胸のややズレた場所に刺さりました。店内で悲鳴が上がり、私は彼の両手を両手で押さえた形で絵の様に膠着しました。そして彼はさめざめと泣きながら、 

 なんで? これも、ダメなの? 

 と言ったのです。 

 『命掛け』なんて簡単に言いますが、命なんて邪魔なだけじゃないでしょうか。命なんてモノを意識すればするほど、人生が他人事になってしまうんじゃないでしょうか。私は、彼のために立派に死ぬ事も出来たんじゃないでしょうか。それが正解だったのではないでしょうか。 

 私は彼を凹ませるためだけについた、ジョルジュ・バタイユやガルシア・マルケス、三島由紀夫と川端康成、ローリングストーンズについての数々の嘘を胸に抱えて、彼の代わりにまっとうな社会人として、父親として生きる事を誓います。 

第62章『名前は、椎名。』 

 さっきからずっと庭を眺めてはため息をついています。恋をしてるのかって?そんなんじゃありません。揶揄わないでください。喜怒哀楽が疲れ切ってしまった私の事などもう覚えている人も少ないかと思います。私の事が見えている人はもう1人もいないかもしれません。なぜならば私はあの出来事以来、すっかり自己嫌悪に陥り、自暴自棄になって、携帯からすべてのアドレスを消去して、SNSの全てのアカウントを削除してその上、何度も覚悟の足りない、中途半端な自殺未遂を繰り返して、そうしながら孤独の淵の奥深くに卑しく身を沈めているのですから。 

 私の名前は椎名。ウソでも本当でもそんなのどうでもいいです。 

 大好物はスイカ、いつかの夏の海であの子と食べたあのスイカです。日焼けしたあの子は、浮き輪に座ったまま器用に種をぷっぷと吹き出して……。それ以外は何を食べても同じです。 

 難しい問題は次から次と現れては私を掠めて飛んでゆきました。飛んで行ったのならいいじゃないか!と、そう仰ってもそれは違います。『今』とは常に、その掠めている瞬間の事なんですから。突然降りかかってくる、悲しみや恐怖は常に『今』なんです。それに、掠めるといったって、それはまるで剃刀のような勢いなんですよ。完全に私の命を狙っているんです。 

 だからまずは私は正体を隠す必要があるのです。だからまずは私の性別が男か女かわからなくするために、初恋の話から始めます。私の初恋は幼稚園の頃、同じクラスではなく違うクラスの、近所に住む……。 

「あ~あ、また始まったよ」そう言ってペンをくるくるし始めた。 

私?私の名前は椎名。ウソでも本当でもそんなのどうでもいいよ。 

どうせまた、そこから結婚して子供を3人設けて、なんのかんので今に至るまでのいきさつを滔々と2時間も3時間も話すんでしょ。もうウンザリだよ……。なんなんですかね、こうやって頭がおかしくなったフリさえすれば、罪はどんどん軽くなるってシステム。 

 昔みたいにタバコの煙がモクモクという事はありませんが、この部屋の中はその分、凛とした重い空気がみっちりとしています。タバコの煙など、たとえあったとしても揺れようもないでしょう。 

 私が庭を見ていたのは昨日の午後の事です。雑草が伸びたので娘達と一緒に草引きをするよと声を掛けて、それぞれが庭に出てくるのを待っていた時でした。風に揺れる雑草が私の足元で小さく揺れるのを眺めている時、私には今までの私の状況のすべてが、あたかも頭の中だけに限られた事のように思えてきたのです。私があの人と結婚したことも、あの人との間に2人の娘と、そして、あの子を授かった事も……。 

 私は大きくかぶりを振ります。違う違う!! 頭の中に限られた事なわけがない。でも私の心は尚、揺れる雑草を見て寛いでいるのです。バカな!嫌だ嫌だ! そんなにして、私はあの子を否定したいのか?もともとなき者にしたいのか?? 

 いくら私があの子の悲惨な最期を『今』に投げつけてみても、穏やかな風はやみませんし、私の心は落ち着いたまま乱れません。 

 そういうあなたは、心の傷を何だと思っています?どういう性質のものだと思っています? 

 そう訊かれて私は即座に、必ず癒す事が出来るモノだと思いますと答えたのです。するとその人は、なぜ、そう思う?と再び訊きました。私は、 

 人はいつまでも一つの事に固執していては前に進めません。人間は生きる限り先を、未来を見なければなりません。過去はどうする事も出来ませんが、未来はなんとでもすることが出来る。そう思って生きる事こそが魂を幸せに保つ事だと思うからです。 

 そんな、今思えば優等生過ぎる、雛形どおりの全く親や社会からの受け売りな事を、でもその時は本気でそう思ってそう答えたのです。 

 過去も未来を含まない、そんな『今』が、あなたには見えるんですね? 

 そう訊かれて私はあわてて訂正しようとしましたが、それはダメだとハッキリ言われました。一度そう答えたのならもうそれは本音として覆らないと。覆ったとしても、それは全てウソだと。『その人』は言います。 

 すべてのチャンスは一度だけだと……。 

  私は椎名といいます。でもそれはもともとは、誰名(すいな)から派生した名字で、誰も私の名前を知らない、という意味で……。 

  

 椎名、強いな、恣意な、思惟な、シーナ、sheena. 

 そんな調子で、私はきっと誰にでもなれるんでしょうね、いや、なれたのでしょう。その気になれば鳥にだって。そうして庭にポンと降り立って、心の向くままにミミズや虫を啄んだり、誰も見てさえいなければ植木鉢や車のボンネットの上にフンをして、そのまま鳥として、羽根を繕ったり、そこで偶然にスイカの種をみつけて……。 

 あ! やっと娘達が出てきました。双子なんですよ。2人とも私が言うのも何ですが、とても美人。お揃いの鍔広の帽子がとてもよく似合っています。さあ、草引きを始めますよ! 

                   * 

 やれやれ……、やっと終わったよ。今日は草むしりまでか。それで、あれでしょ、庭で草むしりをしていてスイカの種をみつけて、息子のあの出来事を思い出して、取り乱して、娘達に介抱されるんでしょ。そのあとは何でしたっけ? 何回聴いても、そこから先を忘れちゃうんですよね。まあ、どうせデタラメだからどうでもいいんですけど……。 

 私の名前は椎名。出身は京都なんですけど、なんでも千葉に多い苗字らしくて、部首の隹(ふるとり)はしっぽの短い、ずんぐりとした鳥、という意味があるらしいのですよ。それが木に止まっているって、そんな意味なんですかね? そりゃ鳥だから気に止まっても何も不思議じゃないでしょうけどでもね、椎名だからって、実際は何も私の事を表してはいないんですよね。 だから、そんな風に呼ばれても、一応返事はしますけど、納得しているようなしていない様な……。名前とか、何なら顔とか。 

  

 何なんでしょうね? わからなくなりますよね。いつも。  

第61章『春を走らせ!走らせ春を!』  

 素敵だなぁ、と呟いたら……。 

 そりゃ、そうでしょ。今年もこうして無事に桜が咲いてくれたんだからこんなに素敵な事は他にあるわけがないでしょ? まったく咲かない可能性だって、まるでなかったわけじゃない。黒い雲や冷たい風は、いつもどこかで渦巻いている。それが今年も房総半島の春が、こんなに素敵に無事にやってきたのだから、こんなに素敵な事が他にあるわけがないでしょ? 

 房総半島の春? そうか、私が見ているこれは、房総半島の春なのか……。 

 房総半島のちょうど真ん中辺にあるこの現場は、曲がりくねった狭い山道のどん詰まりに追い詰められたキツネの様に蹲っていて、余所者の私を見ると息をひそめるのか、だだっ広い敷地内にはいつも人影がなく、散々ウロウロと歩き回ってやっと誰かをみつけても、私の管轄じゃない、とか、フォークのオペレーターに訊いて、とたらい回しにされた挙句、もうちょっと早く持って来れなかったの? などと心無い文句を言われるのが常なので、朝、配車表でここをみつけると気持ちが沈むのが常なのですが、春だけは別。そうじゃない。とにかく、その道すがらの桜の見事な事! 

 今はソメイヨシノは終わり、花吹雪を演じているのは専ら八重桜。品で言うとやや線が太く、繊細な桜を演じるにはソメイヨシノよりやや劣ると評価されがちな八重桜が、それならばと一世一代、その一番の特徴であるふくよかな枝先を、まるで酔った楊貴妃の白妙の指先から下がるライチの房の様にたおやかに艶めかしく揺すってみせるのです。 

 お見事! 私はハンドルを握りながら拍手喝采! 

                 * 

 ディーゼルエンジンも今日は心なしかしゃいでいるようです。いつもよりウンウンと唸りを上げて坂を上ります。あなたもあるでしょう、お散歩中の犬のような気分。あっちこっちに素敵なモノがあり過ぎて、いったいどこに行きたいのかわからなくなるような気分。 いかんいかんと、私は気を取り戻します。

 この時間にまだ船橋だから、卸すのは午後イチになりそうだな。その後は多分、有明辺りで積んで都内近県に2~3件。それで終わりにしても事務所に着くのは17時前後と言ったところか……。 

 昔ならば何日もかかった道のりが、わずか数時間で過ごされる文明社会。結果として私は昔の人の何倍もの時間を過ごしている事になるでしょう。今日午前だけで私はきっと、江戸時代の旅人の数日分にも換算される時間を過ごした事でしょう。でもそれは単にトラックのスピードのせいじゃない。頭の中身が、時間を飛ばし読みをしようとしているのです。私の脳みそは道すがらの何百年のメッセージを一瞬で捕えようと無理をするのです。でもそれは昔の旅人だって同じです。何百年も昔にふと私をみつけて歩き出す、そんな無理をするのです。私と旅人は図らずもそうして、抜きつ抜かれつしながらお互いをめざして歩いている。会えない事もあるでしょうが、うまく会える事もある。 

 どうせ昼に掛かるのだから同じ事だと、私は路傍にトラックを止めて午後のちょうどいい時間までそこで昼休憩を取る事にしました。窓を開けるとソメイヨシノより稍々大ぶりの八重桜の花びらがいっぱい入ってきました。それはいつか昔、私が放った毛束のサルが花弁なって帰って来たモノかもしれません。私のメッセージは遠い中国の遠い作家に無事届けられたようです。そう、私だってなにかの目的のためにそこへ向かい、それを終えてまた戻るのだから旅人に変りない。その運ぶモノが例え、一通の恋文だろうが、20トンの建築資材だろうがなんら変わりはない。 

 『今』私の目の前に咲くこの立派な八重桜の老木は、江戸時代の旅人をしてわざわざ私に会いに向かわせるための標となって何百年も昔にこの道を歩かせしめたのでしょう。彼の目的は正に、私に会う事、そして一通の恋文を渡す事だったのです。もし私がちょうどその場所にトラックを止めていたとしたら、一体どういう現象が起きると思います? 

                   * 

 あぁ、やっと追いついた。この恋文は、貴方へのモノです。 

 え? でも私には、思い当たる人が1人もありませんが……。 

 そりゃ、そうでございましょう。おなごがそうそう恋心など悟らせようはずもございません。 さ、どうぞ、お読みください。それまで私はここで、一服させてもらいます。そう言ってガードレールにもたれると彼は猫の根付けをグイっと引っ張り、煙管を出すと煙草の葉を詰めはじめました。 

 受け取った手紙からは微かに香が香りがします。開くとそこには綺麗な平仮名がサラサラとして、知識のない私には全然読めないのですが、きっと私も年柄もなくドキドキと火照っていたのでしょう、その微熱のせいか、頭に入るなり平仮名はザラメの様に易々と解けては沸々と語り掛けてきたのでした。 

                  * 

『あなたへ。私は今、夢を見ているのでしょうか? あなたがはっきりと見えるのです。あなた、私は恋をした事がありません。それはきっと、誰かが私を望まなかったせいでしょう。いったい誰が、何のために私を望まなかったのでしょう。私は私の命が続く限り、その人と、その人が私を望まなかった訳と、そして最後に、その人の代わりに私を望んでくれる人を探したのですが、とうとう見つかりませんでした。それにはあまりにも私の命は短すぎたのです。私はそのあまりの辛さから、その考えを何度も捨てようとしました。しかしそのたびに、望まれない私がその考えを捨てたりしたらそれこそ、私は何なのか、私の命は、私の苦しみは、私の希望は何なのか、そのすべてを私自ら捨ててしまう事になるのです。それは矛盾です。揶揄われたのと同じです。もしそうならば、私を望まなかった張本人が私自身であったならばその時は、私は初めて腹を立てると決めているのです。憤怒に我を忘れて、髪を掻きむしってのた打ち回ると決めているのです。 

 今、気持ちはとても穏やかです。私の前には、小さな八重桜の苗木がほんの数輪の花をつけております。こんな小さな苗木に咲いた花でさえ、時に連れて老木と同じように散ってしまうのですから、私の命が幾許もなくとも文句は言いません。ただこの苗木がいつか見上げるほどの大木となって、そして私を望む人がふとその姿に目を止めて、その場所に立ち止まってくれたならば、私はその人に手紙を書くことが出来ると思うのです。 

あなたへ、あなたは私を望みますか? 望んでくれますか?』 

                  *  

 私が目を上げたのと同時に、読み終わりましたか? と言って彼はガードレールから立ち上がりました。 

 えぇ、でも、なんて返事を書けばいいのかさっぱりわかりませんよ……。で、この人はその、亡くなったんでしょうか? 

 はははは、そりゃ、もう何百年も前にね。いいんですよ、今、貴方が思う率直な気持ちで。 

 そう言われてもねぇ……、私はあくせくしながらようやく返事を書きました。それを渡すと、彼はそっと懐にしまい、 

 確かにお預かりしました。して……、 

と、猫の様に鼻を中空クンクンとさせ、さっきから春の香に混じって妙な匂いがしませんか? と言いました。そういえば確かに何かが焦げるような臭いがします。 

 大方、私のこの方への想いが、手紙の端っこでも焦がしてしまったのでしょう。私が言うと、彼は大きに笑いました。 

 ワハハハハハ! そんなに熱い内容なら私もちょっと読んでみたくなりました。読んでいいですか? 

 ダメダメ!絶対ダメですよ。何処の世界に人の恋文を盗み読みする人がいるんですか! 

 ワハハハハハ! 何処の世界にもおかしな奴はいるモンです。人のモノとも、自分のモノとも区別もつかず、いい事しているつもりで悪い事をしては、未来の、過去の人達に嫌われたり、また好かれたりしている。そりゃあもう、悔しいほど是非の付かない、おかしな連中が……。 

 とにかくその手紙、絶対に途中で読んじゃダメですからね。ちゃんとこの人に届けてくださいよ。 

 まあ、長い間ですからね、私にだってふっと魔が差す事がある。我慢する度胸はあってもふとした拍子にそれが徒となることもある。それならば堂々と今、ちょっとだけ。 

 だからダメだって言ってんじゃん!しつこいオヤジだな! 

 ワハハハハハ! 

                  * 

 そっと目を開けて時計を見るとちょうどいい時間です。私は腹の上に溜まった八重桜の花びらを払うとエンジンを掛けました。そしてギアを入れてハザードランプを消して右ウインカーを出し、再び走り出そうとしたのですが……。 

 妙にはしゃいでいるなと思っていたディーゼルエンジンの調子が妙なのです。ウンウンと唸るばかりで全然坂を上りません。 

 去年の車検の時、私はちゃんと言いましたよね? 

『クラッチの調子が悪いので診てください』って。 

 状況を告げると、電話の向こうで事務方が大慌てしている様子が聞こえてきました。 

 「えぇ、あの、予定していたトラックがですね、今、千葉で故障して動けなくなってしまった関係で、急遽別便を手配しますけど、もう少しお時間がかかるかと思うのですが……」  

 じゃあそれまで、私はこの桜の下で恋をしていようと思います。 


第60章『ウソを承知で。』 

  

 ゴールデンウィークが近づいてくると、自分の行動範囲がグッと広がっていくというか、いろんな場所がより身近に感じられるというか、自分が赴いてもいい範囲がいよいよ広く世の中に認可され始めてくるというか。 

  

 旅に出たい。知らない場所で知らない人と接したい。そこで新しい何かを経験をしたい。これはもう本能でしょう。人間が生きる上で必要な衝動でしょう。同時にそれは引きこもっている人間には残酷な背徳感を与える悪魔でしょう。 

 書を捨てよ、町に出よう! 

 その通り。インドア派であれアウトドア派であれ、もう他人の考えや生き様なんて胡散臭いモノを頼りにするのは一切やめにして、もっともっと、人は自分の内なる考えを頼りに生きてみたらどうでしょうか。その上で、他人はマイパーツとして認識するのがいいのかと思います。 

 でも一聴するとそれは他人を自分の都合のいいように理解して利用するという、とても利己的で浅ましい考え方のように感じますね。しかし実際は逆で、自分が意のままに行動するには、まるで杖の様に他人が絶対に必要である事を理解するという事を大いに助けるのです。 

 私は息子と車に乗って出かけます。妻も、と誘ったのですが家事が忙しいという事で今日はお留守番。妻がいないのだから、そんなに遠出は出来まい。晩ご飯のおかずもちゃんと3人分用意しているはずだから、それまでには必ず帰って風呂に入って食卓の前に鎮座する義務が、私と息子にはある。そんな条件付きで。 

                 * 

 大きくせり出した松を避けると今度は、『うどん・そば』 と書いた看板にぶつかりそうになりました。おっと危ない! その看板を避けると自然と駐車場に導かれ、うまい事導きやがったな! と私は笑う。昼なのに、土の駐車場には他に車が2~3台。入ると専門店と言うにはあまりにオートマチックな、食券を自販機で買って席に着くと、国籍不明の目の血走った店員が薄暗い厨房の奥から黙って出てきて半券をもぎってまた厨房の中に消える。うどんとそばはウソのような早さ出てきました。 

 ウソを承知で言うとなぁ……、私はなぜか口ごもっています。息子は大盛りの天ぷらうどんとサイドメニューの明太子おにぎりを上手に交互に食べながら返事もしません。 

 ウソを承知で言うとなぁ、父ちゃんは今、脅迫されているんだよ。 

 誰に? 息子はうどんをすすりながら訊いてきました。 

 ある、オバサンに。お前も知ってるだろ。父ちゃんの店。ほら、ネット上の店。 

 あぁ、『日日彼是面白可笑し。』? 

 そうそう、そのお店の事をネットで小説みたい紹介して遊んでるんだけど、ある日そこに、オバサンがやって来てさ。 

 オバサン? 

 そうオバサン。オバサンって言っても父ちゃんよりも若いと思う。綺麗なオバサンだよ。で、そのオバサンがさ、うちの店で働いている2人の子供の1人の母親だって言いだしてさ、息子を返せ!って言うんだよ。 

 ふーん……。 

 でもさ、父ちゃんとしてはその証拠がないわけ。で、ね、本人に訊いたわけよ。あれ、本当に母ちゃん? って。そうしたらさ、『あれはエキストラさんです』なんて言うんだよ。困っちゃってさ。 

 ふーん……。 

 エキストラ? なに?それ。って。そうしたらさ、『僕が自分が死んだいきさつがこうならいいのに、と思う上で必要だと思ったママです。』なんて事を言い出すんだよ。 

 ふーん……。 

 で、父ちゃんが拒否するとそのオバサンが未成年者略取誘拐の罪で父ちゃんを訴える、みたいな事を言い出してるんだよ。 父ちゃん、逮捕されるかもしれない。

 ふーん……。 

 でさ、いろいろ話してるうちに、そのオバサンが、どうやら変なヤツに洗脳されてることがわかってきたんだよ。『皇極法師』っていうヤツらしいんだけど、お前の友達とかでさ、そんな話聞かない? 

 聞かない。 

 あ、そう。それならいい。聞かないなら聞かない方がいい。それで、ここからがちょっとややこしいんだけど、その『皇極法師』ってヤツがさ、どうやら1人じゃないっていうか、人格じゃないって事に、最近気が付いてさ。 

 ふーん……。 

 人格じゃない。つまり、その時その時で、人の心や考えに忍び込んでくる何者か、みたいな。そこまではなんとなく気付いたんだよ。おまえ、こういう事ない? 例えば、ひらがなとか色をジーっと見てるうちに、突然ナニモノかわからなくなる現象。ない?

 今のところない。 

 あ、そう。それならいい。ないならない方がいい。でもこんな事考えた事ない? 『あ』『あ』で、『オレンジ色』『オレンジ色』でも、どっちが先なんだろうって。もともと『あ』があって『あ』が出来たの?それとも、『あ』が出来て『あ』が生まれたの? 

 そりゃ、『あ』が先でしょ? 

 お前もそう思う。実は父ちゃんもそう思ってるんだよ。つまりそうだよ、何かに名前を付けたのでも、名前が何かを生み出したのでもない。『あ』は同時に出来たんだよな。それ以外に考えられない。でもそうだとしたら、『皇極法師』は? 父ちゃんが作っちゃったって事? そのせいで、オバサンは洗脳されて、父ちゃんは脅迫されているの? 

 息子はすっかり食べ終わった天ぷらうどんの器を『返却口』に戻して帰ってきました。そしてこう言ったのです。 

 でもそれは全部、父ちゃんが作った世界のお話でしょ? 

 そうだよ、だから最初に『ウソを承知で』って言ったじゃん! 

               *      

 結局車でわざわざさして旨くもないうどんを食べに来ただけでした。え!まさかゴールデンウィークのお出掛け、これで終了? と息子は悲惨な顔をしました。午後はまだたっぷり時間があったので、いったん家に帰ってまたバッティングセンターに行くことにしました。今度こそ、妻も家事を終え、付き合ってくれると思います。 

        第59章『アイドルの命日』 

  

 あまりにも美しくなりすぎた彼は、大胆なポーズとともに雑居ビルの屋上の手摺の外側に消えたのでした。 

 僕は花を持ってガードレールの前に膝をつく。交通量の多い交差点だから邪魔になっている事はわかっています。また田舎モノが感傷に浸って変な事やってるなという冷たい視線は仕方がないとして、この日が彼の命日だと知っている人は、『今』この場所に何人いるのだろうと思った。 

 祈っている様に見えても、僕はこの一連の出来事に一片の悲しみも感じていません。彼が最後に浴びた風はきっと、世界中の誰もがうらやむホンモノの風だったと思うから。悲しみも苦しみも一切を洗い流してくれたに違いないと思うから。どうだった? だから僕は今年も、ただそれだけを訊きにここへ来た。気持ちよかった? 

 ただ惜しむらくは今年の今日がまるで真夏の様にクソ暑い日だという事。 

「ほれ!兄さん若い成りしてすぐへばらんともうちょっと頑張れや! あとここ2センほど掘って、平ぁらにして! ここ平ぁらに!」 

 若くったって暑いモノは暑いし、バテるモノはバテるんです。僕はさっきから、ドカヘルを被ってスコップで地面を平らにしています。腕の太さから想像するに、年齢は20歳前後。土の匂いから類推するに、場所は生まれ故郷でしょうか? 借りたドカヘルは代々どんなオッサンたちがどんな理由で渡り被ってきたのか知らないけれど、もう臭くて臭くて堪りません……。 

 よし出来た。ほなタバコしようか! そう言ってにっこり笑った親方の顔がどんなに善良そうに見えても、僕には上下の前歯が4本とも痩せた歯茎からニョキっとはみ出して今にも抜けそうなのは如何にも不衛生で不摂生で、休憩!と言ったらまるでその事しか考えていない様な、まるで裏も表もない様な笑顔を、どうしても善良だなんて依怙贔屓な判定は出来ません。もし不意にショベルカ―が倒れて、僕がその下敷きになって虫の息でも、親方は、だいじょうぶか? なんて平気で訊いてきそうだから……。 

 だから僕はこういう人にこそ、彼のエピソードを語るべきだと思ったのです。 

「昔、アイドルの友達がいたんすよ」 

「アイドル? なんや、ベッピンさんか?」 

「いえ、男のアイドル」 

「なんや男かいな、興味ない」 

「それがそんな男前じゃなくて『アイドル? なれるの?』なんて訊いたぐらいなんです」 

「あれやろ、整形手術やろ。芸能界なんてそんなヤツばっかりや。女も男も売れるためなら手段を択ばん。枕営業もホイホイな奴ばっかりやろ」 

 親方はどうやら、アイドルが自分とは関係のない存在だと決めつけているようです。彼にとってはまるで月の裏側の様な話を、すべてお見通しの様に話します。そうです。すべてデタラメでいいんです。きっとわざとそうしているんです。自分の歯茎が痩せて、前歯がグラグラで不衛生で不摂生である理由の肩代わりを、アイドル達がセッセとしてくれている事にわざと気付かないフリをしています。それは純朴に擬態したプライドという堅牢な壁です。とても厄介な鎧です。 

「それが、流行の方が彼にすり寄ってきたんですよ。ある地方局の食レポで大福もちを食べた時、『食べ方が可愛い!』なんて言われたのをきっかけに突然テレビや雑誌で『1000年に1人の男の子』なんて騒がれ出して」 

「ワシはその『男が可愛い』ちゅー意味がようわからへんのよ。赤ちゃんならわかるけど、大人の男はカラはゴツイし、髭も生えるし声は低いし、どっこも可愛くないやろ。おなごの方が形も声も、全然可愛らしい思うけどな」 

 その瞬間、弁当が腐るほどの熱風がザっと吹き抜けました。 

                   * 

 彼は悪魔に睨まれた。 

 僕は彼がアイドルになりたがってるのを知ってから、今まで見えなかった彼のおかしな特徴が見える様になりました。彼はアイドルになるために感情を捨てようとしていました。アイドルに喜怒哀楽は必要ないと思ったようです。以前、ある格闘家が『格闘家に前歯は要らない』と言って全部抜いてしまったという話を聞いたことがあります。彼にとっての感情は、その格闘家にとっての前歯と同じようなモノだったと思われるのです。脱着可能な喜怒哀楽。 

 実際、それで彼はどんどん上手くいったのです。彼は喜びたい時に喜んで、悲しみたい時に悲しめるようになったんです。それも、ウソじゃなく、本当に……。 

 そうして彼は彼を望まれるままのアイドルにすることが出来た。 

 ただ、彼の思うアイドルと、世の中が欲する彼はまるで違うのです。まるで違うというよりは正反対なのです。僕はこのズレに気付くことが出来ませんでした。 

              * 

 やがて年を取り、人気もなくなり、完全に行き詰った彼が一度だけ僕に希望したことがありました。それは自分の葬式に掛ける曲を作ってくれというモノでした。彼にはもう、感情が完全にありませんでした。 

「僕がさ、死ぬからさ、そうしたらそれを利用してさ、君はそのレクイエムで有名になればいい。そうしたらさ、君は儲かるし、僕お死の価値が上がるって事さ、いいだろ」 

 まあ、確かにナイスアイディアだと思いましたね。

「死ぬとか、何言ってんの、お前」 

 僕は一応そう言った。すると彼は、 

「いいからいいから、遠慮しないで!」 

 と笑顔で言います。それはもう、見た事がないほどの美しい笑顔で。 

「遠慮なんかしてねーよ!」 

 いいえ、ウソです。僕は確かに遠慮していたのです。 

「目を覚ませよ、お前さ、命を何だと思ってんの?」 

「命? 喜怒哀楽でしょ?」 

「バカ、喜怒哀楽が命じゃねーよ。命があっての喜怒哀楽だよ」 

「どこが違うの?」 

「え?」 

「命と喜怒哀楽。どこが違うの?」 

              * 

 うわー!嫁の手弁当が砂だらけやがな!もう食われへん!風のアホ! ほれ、兄さんタバコは終わりや、尻上げ! ほな午後はあっちを、もう2センほど掘って、あっちも平ぁらにして!平ぁらに!! 

 


第58章『記憶、正しく……。』

 

 どんなに辿っても実際になかった記憶には辿り着けない事は、誰にでも簡単にわかるよね??つまり逆を言うと、辿り着いたらならそれは実際にあったという事になるよね。 

 じゃあどうだろう、夢は。あれは記憶じゃないのかな? 

 間違いなく記憶だよね。じゃあ夢は実際にあった事でいいよね? 

 違う?なぜ? 

 夢というのは目を覚ましている間に見たり聞いたりした事が、睡眠時に頭の中で整理される過程に於いて副次的に生成されたイメージの残骸なんだよって? なぜそう思う? 

 残骸というなら寧ろ、今君が頭に思い描いている昨日の記憶の方じゃないのかい? 誰と会った、何を話した、気分がよかった、ムカついた。 

 そりゃあ、事象を一つ一つ他人を交えて確認し合えば、それがお互いの記憶と合致すれば、お互いの真実と言える事は言えるかもしれないけど、でもそれは半分、他人の記憶じゃないのかい? 個人の記憶というなら、他人の意見が混じった記憶よりも混じらない記憶の方が、より一層自分にとっての真実と言えるんじゃないのかい?そう考えるのが普通じゃないのかい? なのになぜ君は混ぜ物だらけの方を真実と、夢の方を残骸だと決めつけているんだい? 

 僕の知り合いでさ、可哀想なオバサンがいてさ。その人は自分の子供をずっと虐待していたんだね。育児ノイローゼさ。その男の子は結局死んでしまうんだけど、そのオバサンはそれが自分のせいではないと必死に言い訳を考えてるんだ。そりゃあもう必死さ。笑ってしまうぐらい。 

 だから僕は一言、『あなたのせいじゃない理由を、とりあえず100個探しなさい。探してみつけるんですよ。作るんじゃなくて、それだけに専念しなさい。』ってね、言ってみたんだよ。するとそのオバサン本当に探し始めちゃってさ、どう思う? 実際に虐待してたんだから虐待してない理由なんて、あるわけないじゃない。ところが……。 

 ある日、そのオバサンが嬉しそうな顔で僕の所に来てさ、息子をみつけました!って言うんだよ。始め聞いた時、全然意味が分からなかった。でも変な事を吹っ掛けちゃった手前僕も、あらそう、それは良かったですね。なんてね、平常心を装って言ったんだよ。するとオバサンは、でも息子はある質の悪いお店で店員紛いな事させられてこき使われてるから、今から取り戻しに行ってくる、って。 

 あぁ、とうとう狂っちゃった。可哀そうだけど、僕は彼女の話は全部妄想だと、そう確信したんだ。したんだよ、したんだけどさ……。 

 彼女は真剣な目で、僕にもその店に来て欲しい。そして頑固者の店長を説得して欲しい。なんて言うんだよ。僕は内心、知らねーよ! って思いながら、じゃあ今度僕もその店に行って、その頑固者の店長と話をしてみる。と、仕方がない、約束したんだ。 

 その約束の日が、実は一昨日だったんだけどさ。当然、僕としては気が乗らない訳さ。だってどんな顔で行けばいいのさ? 気が狂ったオバサンだよ、その店で僕はどんな悪党呼ばわりされているか見当もつかないじゃない。きっとあのオバサンの事だから、自分に知恵を授けてくれた大先生、みたいに触れ回ってるに違いない。悪いけど僕はそんな大したものじゃない。そしてそんなのが相手には真逆に作用するんだよ。インチキ野郎さ、皇極法師だよ。結局僕は行かなかった。『遅れていく』とだけ連絡してね。 

 で、暇になった午後を、僕は街歩きに費やそうとして電車に乗ったんだ。いつもと同じ、何処で降りるかなんて決めないさ。適当な駅で降りで、そのまま駅前の道をずーっと、でもそうだな、本当にただ歩くのはあまりにも無責任だから、とりあえず、あの高圧電線に従って歩いてみよう。そう決めたんだから、それなりの結果が必ず出るのはわかり切っているからね。 

 果たして僕は、高圧電線の下をずーっと歩き続けた。公園を抜けて、踏切を渡って、そしてある小さな小屋のような建物に出くわしたんだ。 

 まったく驚いたよ。 

 そこにはあのオバサンが娘らしい2人の女の子と一緒にいたんだよ。そしてその店の人間と何かを言い争ってたんだ。信じられるかい? 僕は適当な駅で降りて適当に歩いて、結局オバサンとの約束の場所に来てしまったんだよ。 

 どう? これ、僕の真実だと思う? 

どう考えたってそうじゃない。それで僕はピンときた。 

これは、オバサンの真実に僕が取り込まれているからだって。   

 そこで、夢の話に戻るよ。 

 改めて、君は本当に夢は自分が覚醒時に見聞きした記憶の残骸だと思うのかい? あんなに巧緻に作り込まれた世界が、本当に自分の拙い経験と幼稚な発想力だけで作り上げられていると思うのかい? 

 僕はその店のドアを開けた。きっと拙い事になる。そう思ったけど、何事もなかったよ。ただ僕はその店の店員の少年になった。『昔の子』というらしい。ただそれだけの事だよ。要らない人間や、その場にいるはずもない人間は、夢の方から必要な人間に置き換えられる。夢ってそういうモンじゃない? 

 じゃあ、君の言う現実は? 現実だってそうじゃない? 君は常にその場所に必要な人間に置き換えられている。自分がなぜそこに居るのか、どこの誰だか、名前も顔もわからなくなった事、これまで一度でもあった。ないはずだ。ないよね。それでいいんだよ。それで普通なんだよ。ただ時間の経過を『過去』『今』『未来』みたいにして並べちゃうとそんな当たり前な事が理解できなくなる。そして無理矢理、ありもしない理屈を作ってそれに凝り固まろうとするんだ。 

 オバサンは僕に気付かない。そりゃそうだよ。僕は店員の少年なんだから。僕がいらっしゃいませ、というとオバサンは明らかな作り笑顔で、あら、こんにちは、素敵なお店ね、なんてことを言うんだよ。もうなんだか気味が悪くてさ……。 

 僕は店長に荷物を渡して、確か、パンだったと思う。いい匂いがしたのを覚えてる。それを渡して何食わぬ顔で店の掃除を始めたんだよ。で、あ、やっぱり、拙い事になってる、って、その時気が付いたんだ。 

 僕は『昔の子』と呼ばれて、怪しまれもせずその日をその店で過ごした。すると、もう1人の、そのオバサンが自分の息子だと言った男の子が僕に、君は、なぜここにいるの? なんて事を訊いてきたんだ。 

 あぁ、拙い事になった……。 

 僕は渋々自分の事を話した。僕は、生まれたタイミングが悪くてね、戦争が終わってすぐに餓死したんだ。そうしたらその少年は、ふーん、って、それだけ。だろうね。他人なんてまずそんなモンだよね。 

 その少年はオバサンが言ったとおり、自分はママにイジメ殺された、って言ったけど、目は少しも悲しんでいなかった。むしろその配役に満足している様にすら見えたんだ。まあ、これは僕の主観だけどね。 

 わかるかい? もしここで僕が目を覚ましたら、それが『夢』という事になるんだよ。目を覚まさなければ、僕はずっとあの冴えない店で『昔の子』なんて呼ばれて、店の掃除をしたり、定期的にパンを運んだり、大きな金魚の世話に明け暮れなければいけないんだ。 

 ちょっと気になったのが、その店の店長という人でさ。その人は僕ほどはっきりと自分がなぜ死んだのかを理解していない様子だったんだ。まあ、大概の人はそんな事を理解しないんでしょうけどね。自分が死んだ瞬間を見ていない。そんな人もまれにいるんだね。 

 だから彼は今も、夢を見たり覚めたりしながら、『今』の中を彷徨っているんだ。 

 そしてそれは君も一緒だよ……。 

 なぜ違うんだい? なぜ、違うと思うんだい? 



第57章『早春あくび雑記』 

 だから!タイヤがツルツルなんですって!こないだの雪の日なんか本当に危なかったんですよ!  

 朝早に電話しました。昨夜、9時過ぎに仕事を終えた時はもう誰いなかったのです。 朝っぱらから文句の電話を取った休日当番は明らかの不機嫌そうに、 

 だって、うちはタイヤは一括で注文するんだからさ、君だけ先に替えるわけにいかないだろ。だからどうしてもこの時期になってしまうんだよ。 

 と言いました。私には彼が言う『だって』『どうしても』の意味がわかりません。誰かわかります? 

 電話を切ると私は外に出ました。今日はよく晴れているので公園でも散歩して憂さを晴らそうと思ったのです。

 強い風にメタセコイヤが獰猛に揺れています。春一番でしょうか。もしそうだとしても私は感動などしません。大きな木がなすすべなく揺すられている姿に私自身を投影して、『今』が誰かの都合で勝手に浪費されていくという、どうしようもない不愉快を感じているだけです。

 イカンな……。

 時間はさしずめ煙草のようです。イカンな、イカンな、と思いながらもついダラダラと火を点けてしまう。そして周りに迷惑を掛けつつ自分の命までダメにしてしまう。そしてそれはすべて『だって』『どうしても』の様なモノに集約され、私のワガママという事になる。 

 さあ、どうしてくれよう、私は私の『今』をどうしてくれようと、木洩れ日の美しい朝のマラソン道を、恐らく私1人だけがイライラしながら歩いているに違いありません。 ドッグランでは数匹の犬が全力疾走しています。まるで地球を回しているよう。もし本当にあの数匹の犬が地球を回しているんだとしたらそれはなかなかの滑稽です。そんな理由の中に、私や家族の運命が収まっているんですから。悪魔の髪の毛の様にしつこく絡みつく長い影を、犬たちはものともせず走り回っています。 

 そうか、そういう事ね。私もそうすればいいんだ。私は私の『今』がグッと広がるのを感じました。これは喧嘩で言うところの、とうとう殴り返したのと一緒です。静かな木漏れ日の中で私は1人、喧嘩を始めたのです。私は今目の前に広がった『今』の端の方に注目します。そこには誰かの不手際の尻を拭うべく予定変更によって雪の予報が出ている群馬の山間の現場に向かう途中、ツルツルのタイヤのせいでスリップ事故を起こしてトラックごと谷底に転落して死んだ私と、その言い逃れを必死に考える会社の人間と、悲嘆にくれる私の家族がいます。 

 彼の『だって』『どうしても』はとうとう私を殺しました。 

 なぜタイヤを替えてくれなかったんですか? 主人は何度もそう頼んでいたはず。 

 妻が言うのに対し、会社の人間の頭の中には言い訳以外なにもないように見えます。 

 あぁあ、めんどくせぇことになっちまった……。しかし私は次に目に転じ、彼の家族にフォーカスを当てます。 

「お父さんの会社で、死亡事故があったんだって。お父さんその事で今大変みたい」

 妻は毎日帰りが遅い主人の健康を気遣います。娘はそんな母親を気遣います。 

  しかしそれはやがて、娘の同級生に知られることになります。 

 おい、知ってる?○○の親父の運送会社で死亡事故があってさ、アイツの親父、その責任を問われてるんだって。アイツの親父のせいで、人が死んだんだぜ。 

 娘はやがてその事でいじめを受ける様になります。人殺しの子!  

 私は助けません。娘は学校に行けなくなり、自宅に引きこもって自殺未遂を繰り返す様になりました。 

 あぁあ、何で我が家こんな目に合うんだ、アイツが勝手に事故ったせいで、こっちは大迷惑だよ……。 

ハハハハ、私は笑いました。いい気味。ざまぁみさらせ!!私は自分の『死』の影を鞭の様に撓らせて、何度も何度もその可哀想な娘を打ち据えました。そしてその悲痛な様子を十分に見届けてから、何事もなかったように家族の元へ戻るのです。 

「今日はマジで怖かったよ。峠道でスリップしてさ、もうちょっとで谷底に落ちるとこだったよ」妻は眉をひそめて「早くタイヤ替えてもらいなよ」と言います。妻の顔をジッと見ると確かに、さっきまで泣いていた跡が見えたのです。

「なに?泣いてたの?」

「うん、今日は花粉が酷くて……」 それが、昨日の事。

 私は一切の『過去』『未来』がすべて『今』の一部であるとしっかり認識しています。つまり私は生きると同時に死んでいる。さしずめ『シュレディンガーの猫』のようです。 

 お察しの通り、私はとても消耗しています。反省や言い訳や開き直りがもう手が付けられないぐらいにグチャグチャに混然となって膨張し続けているのです。だから今日はもう、店に顔を出すのもやめておきます。顔を出したところで、店には2人の少年がいて、私を見るなり、あ、店長、おはようございます。なんていつもと同じ事を言うのはわかっています。私はさも落ち着き払って、この2人にはまるで関係のない事でイライラしている自分を隠ぺいしようと骨を折らなければなりません。いい加減こういう予定調和が世界からなくなって欲しい。『今』『今』として常に正しく認識されなければいけない。そうすればだれでも世界中どこに行っても、それぞれ常に自分自身の『今』を、ピクニックの敷物の様に、思い思いにその場所に広げることが出来るとおもうのです。 

 私はベンチに腰を下ろしました。昨夜の雨のせいで少し湿っていましたが、そんな事はどうでもありません。 

 『シュレディンガーの猫』と言いましたが、実は誰もがそうなのです。それは不思議でもなんでもないのです。 

 あぁ、また気持ちの悪いニュースが入ってきました。私の『今』は煙草の煙の様に、主人である私の意に反して妙な形に広がります。 

 ひゅーすとん、ひゅーすとん……。 

2022年2月。 ウクライナに侵攻したロシア軍は、予想だにしないウクライナ軍の激しい抵抗にあい、戦況思わしくない様子……。 

 眼耳鼻舌身意に守られて、私達は初めて安心していろんな場所に行けるんですね。そしていろんな人にあって、いろんな話をして、そうして物事が前に進んでいるかのように思う。しかし眼耳鼻舌身意はすべてディフェンシヴな機能に他なりません。『死』に対して人間が圧倒的に受け身に感じられるのも、こんなディフェンシヴな機能のみですべてを決めてしまおうとするからです。この呪縛から逃れるには、『今』を出来るだけ大きく広げて、その中に生きる、或いは死ぬ自分をもっとはっきりと正確に認識する必要があるのです。いやもう、私にはそれ以外に楽になる方法はないと確信してさえいるのです。 

 本当は誰もがもっと自由奔放にそれぞれの『今』に翻弄されるべきなのです。手も足も意味がないぐらい無限の可能性にもみくちゃにされるべきです。そして様々に思い知るべきなのです。

 この度の戦争でウクライナとロシア双方に数多くの死者が出ました。それは明らかな悲劇です。葬ることが出来ない子供の死体が路傍に積まれているとききました。しかし自分の優しさが自分にしか作用しない事はけっして学ばないのが人間です。自分可愛さこそ一番の敵であり絶対悪。それは大統領を見ていたらわかるでしょ?それなのに『憎しみ』の対極に『優しさ』があるという風にしか世界中の宗教は教えません。憎しみを否定するために優しさを人身御供に使うのです。初めからそこに誤魔化しがあるのです。 

 目を覚ますと、ドッグランにはもう1匹もいませんでした。犬が消えると、悪魔の髪の毛も消えるのですね。知らなかった。悪魔の原因が犬だったなんて……。 

 思いきり吸い込むと少しにおいを感じました。何の臭いだろう? 桜はまだしばらく咲きそうもない様子です。 

 ベンチを立つとズボンの尻がしっとりと濡れていました。きっと猿の尻の様にくっきりと濡れている事でしょう。 

 みっともないけど仕方がない。乾くまでもうしばらく、マラソン道をウロウロしてから帰ろうと思います。 


 第56章『まったく酷ぇヤツ』 

 珍しい人が店を訪れました。彼は私を見るなり、久しぶり!とも言わず、まったく酷ぇヤツが多くて困るよ、と言ったのです。その瞬間、私の目はきっとキラリとしたはずです。罰が当たったと思ったからです。なんだい? 聞かせてくれと言うと彼は、人の不幸は蜜の味ってか? と言って笑いました。 

 彼と私は15年ほど前、バンドのメンバー募集サイトで知り合いました。彼は当時から、音楽のセンスよりも商いのセンスが素晴らしく、一緒にバンドをやっていた1年ほどの間だけ、CDやティーシャツやステッカーなど、バンドのノベルティーグッズの売り上げが倍増したのを思い出します。まるでバンドの人気が上がったような、そんな心地よい勘違いをさせてくれました。しかし1年ほど一緒にやったところで、彼は突然いなくなったのです。そんな彼が10数年ぶりに私の前に現れたのです。 

「俺が会社を始めたきっかけは借金だったって、言ったっけ? そうなんだよ。それまでは俺もお前と一緒で、ちゃんと本気でプロミュージシャンを目指してたんだよ。でも諦めたね。もうそれどころじゃないって。だからお前と会った時の俺はもうミュージシャンじゃなかったんだよ。俺にとって音楽はただの借金を返すためのツールでしかなくなってた。悪く思うなよ。俺には俺の立ち位置がある。とにかく借金を返さなきゃならない。そのために必要なのは、そっけない金融機関の審査や、目付きのアブねぇ町金の連中じゃなくて、何にもわかってないくせに荒唐無稽な夢ばかり見て、怖がりもせずに突っ込んでいくような、夢も現実も、味噌も糞も一緒くたな奴らだと思った。それならミュージシャンか劇団員かなって思ってさ。結果、俺のその勘は当たってたわけさ。俺は連中の中から芽が出そうな奴らを集めて小さなプロダクションを開設して、それがとんとん拍子にうまくいった。ほら、『Enterbrain』ってバンド知ってるだろ、ポッキーのCMの。あれうちの子だよ。とにかく、借金の返済に目星がついたら、わけわかんねー夢ばっかり見て現実をみない、面倒クセェ連中と音楽ごっこなんて嫌なこった!ってなったわけ。understand?」 

 確かに、うちのバンドは彼のおかげでノベルティーグッズも売れて、ライヴの出演依頼も増えて、ひょっとして、このままメジャーデビュー行けるんじゃないか?と疑わせるところまでいきました。私もそれはひとえに彼の商才のおかげで、彼もそんな自分の才能を十分に理解していましたから、自信を持って当然だと思うんです。でも私はそんな彼の態度がとても嫌だったのです。俺はノベルティーグッズを売りたいんじゃない、楽曲を売りたいんだ! 

 あのさ、あの音源貸してくんねぇ? 彼は言いました。 音源を? どうすんの? 私は尋ねました。

 今がチャンスなんだよ、使いたいんだよ、あれ。そうしたらすべてうまくいくんだよ。

 私は、 大事な音源だから貸せないな。そう言いました。彼の本心を探ろうと思ったのです。 

 いやいや、それおかしくねぇ?俺もギター弾いてんだからさ、俺にも使う権利があるだろ? 

  ないよ。あれはメロも歌詞も全部俺が作った曲だから、権利は全部俺にある。 

 おかしい!おかしい! じゃあお前があの音源で金稼いでも俺には1円も入らないって事? 

 お前は俺の作ったコード進行にちょっとリフを乗せただけだからないも同然だ。 

 それ絶対におかしいって! 

 お前がそうしたんだろ。アレンジでも何でも、何を訊いても、「別にいいんじゃん、それで」しか言わなかったじゃねーかよ。バレてたよ、お前が片手間でバンドやってたってね。そんな奴に俺は1円も渡す気はない。

 そんなくだらない過去のメンツに拘ってる場合じゃねーんだってさ。彼はもう笑っていませんでした。 

 何があったのさ? 私が言うと、彼は、

 俺、先月オヤジになったんだ。と言ったのです。 

 え? あ!そう。それは、おめでとう! 

 彼はもう50歳を過ぎていますから、それはとてもおめでたい事です。 彼は続けました。 

 だからさ、1からやり直したいわけよ。 


 ご存じの通り、私の店には、『今の子』『昔の子』という2人の少年がいます。彼らはそれぞれの理由から、若くして時間の括りから抜け出て、たまたま私の『今』とリンクして私の店にやってきたのです。彼らが応桑諏訪神社の道祖神である事はこれまで何度も言ってます。しかしその前に彼らは、我々に五感を示す『今』という存在でもあり、おそらく全ての時代が見えていると思われるのです。なぜそう思うのかは私もよくわかりません。しかし、彼らの会話や行動を見て私は少しずつ、彼らは私の『今』そのものであると推察できるようになったのです。

 音楽で1からやり直したい。娘を一流ミュージシャンの娘にしたい。 

  彼は言いました。しかし彼はなにを1からやり直すと言っているのでしょうか。いったん死ぬと言っているのでしょうか。 

  『死』は人間が作ったモノです。『生』もまたそうです。『今』を無理矢理にこの2つに分けた時点で、我々は何もわからなくなったのです。 

  一流ミュージシャンって言うけどさ、お前そんなにいいミュージシャンだっけ?

 私が言うと彼は、

 金儲けのためにやってた俺を本当の俺と思うなよ!自慢じゃないけど俺は天才だよ。ギターの神様だよ。 

 私は ハハハ、と笑いました。私の知るかぎりの彼のギターはいかにも子供っぽい速弾きでした。天才の真似をした少年が弾くギターそのものだったのです。 

 おい!何で笑うんだよ。じゃあ正直に言おうか、あの音源、お前が歌うより俺が歌った方が絶対に良かった。ギターも俺が全部弾いた方が絶対に良かった、そうすりゃ売れた。なにより俺が確実に絶対に売った。

 俺の楽曲じゃねーかよ!

 楽曲は認めてやろう。俺は楽曲作れねーからな。まあまあの曲だ。そのまあまあな曲を、俺が確実に売ってやろうと言ってるんだから感謝してもおかしくないぐらいだぜ。

 だから、なにがあったんだって? 彼はようやく本当の事を言いました。 

 騙された。会社を、乗っ取られた。 

 理由は知りません。ただ彼は相当に追い詰められているようです。もう首に縄を掛けているか、或いは屋上に靴を揃えているか、恐らくはそんな状態でしょう。だからこんなに必死になっていろんな所を回って『今』を回収しているのです。もし次の『今』が見つからなければ、彼はそのまま足を浮かせることになるのかもしれません。

 私は音源を彼に渡しました。彼は、ワルイね。でもイイの? お前のギター全部消えちゃうけど、いいの。と言いました。

でもな、くれぐれも楽曲は俺の楽曲なんだからな。絶対に俺のクレジットで発表しろよな!

 彼は、I guarantee!(確約する!)と言って、音源と共に店を出ていきました。

                   * 

  今、彼は誰なんだろう。どこでうまくいっているんだろう。

あの野郎……、確約しといて、俺の名前でクレジットしなかったな。全く酷ぇ奴だ。

子供はもう、だいぶ大きくなった事でしょう。店の窓から見ると、強い風が吹いているようです。でも『春一番』ではないようです。 


covid-19 2022 Feb Tokyo Japan



2/28(月)

27977 (30919) 0 (74)

27977 (30993) 9632人

34.42%(31.07%)

2/27(日)

4906(5605) 0(3)

4906(5608) 10321人

**********

2/26(土)

14741(15902) 0 (122)

14741(16024) 11562人

78.43%(72.15%)

2/25(金)

14841(25875) 0 (94)

14841 (25969) 11125人

74.96%(42.83%)

2/24(木)

20568(27556) 0(132)

20568(27688) 10169人

49.44%(36.72%)

2/23(水)

5224(6097) 0 (40)

5224 (6137) 14567人

*********

2/22(火)

23609(27121) 0 (52)

23609 (27173) 11443人

48.46%(42.11%)

2/21(月)

23603(34264) 0(50)

23603(34314) 8805人

37.30%(25.66%)

2/20(日)

5105 (6468) 0 (22)

5105(6490) 12935人

*********

2/19(土)

13951(17024) 0 (60)

13951(17084) 13516人

96.88%(79.11%)

2/18(金)

22321(25929) 0 (66)

22321(25995) 16129人

72.25%(62.03%)

2/17(木)

16450(24183) 0 (75)

16450 (24258) 17864人

*******(73.64%)

2/16(水)

20717(26001) 115

20832 (26116) 17330人

83.18%(66.35%)

2/15(火)

25288(29855) 135

25423 (29990) 15525人

61.06%(51.76%)

2/14(月)

26377(38622) 0(69)

26377(38691) 10334人

39.17%(26.70%)

2/13(日)

4415(7062) 0

4415 (7062) 13074人

**********

2/12(土)

17143(19670) 0

17143 (19670) 11765人

68.62%(59.81%)

2/11(金)

5269(7807) 0 (89)

5269 (7896) 18660人

**********

2/10(木)

20457 (27554) 153

20610 (27707) 18891人

91.65%(68.18%)

2/9(水)

20565(28822) 0 (48)

24069 (28870) 18287人

88.92%(63.34%)

2/8(火)

26128(32452) 0 (99)

26128(32551) 17113人

65.49%(52.57%)

2/7(月)

28644(42132) 0(70)

28644(42202) 12211人

42.63%(28.93%)

2/6(日)

5660(6052) 0

17526人

***********

2/5(土)

17357(18553) 129

17486(18682) 21122人

***********

2/4(金)

19913 (29197) 0(384)

19913(29581) 19798人

99.41%(66.92%)

2/3(木)

20,883(25095) 0

20883(25095) 20679人

99.02%(82.40%)

2/2(水)

21188(24989) 240

21428(25229) 21576人

*********(85.52%)

2/1(火)

29665(30892) 152

29817 (31044) 14445人

48.44%(46.53%)

covid-19 2022 Jan Tokyo Japan


1/31(月)

29940(39206) 532

30472(39738) 11751人

38.56%(29.57%)

1/30(日)

6754 345

7099 15895人

**********

1/29(土)

19390 (21038) 465

19855(21503) 17433人

87.80%(81.07%)

1/28(金)

22656(32509) 566

23222 (33075) 17631人

75.92%(53.30%)

1/27(木)

22258(26955) 379

22637(27334) 16538人

73.05%(60.50%)

1/26(水)

27832(29381) 450

28282(29831) 14086人

49.80%(47.21%)

1/25(火)

33657(34640 ) 477

34134(35177) 12813人

37.53%(36.42%)


1/24(月)

32797 (42790) 399

33196(43189) 8503人

25.61%(19.68%)

1/23(日)

6871(7651) 485

7356(8136) 9468人

**********

1/22(土)

19725(20999) 443

20168(21442) 11227人

55.66%(52.35%)

1/21(金)

20846(31473) 445

21291 (31918) 9699人

45.55%(30.38%)

1/20(木)

20931(24951) 803

21734(25754) 8638人

39.74%(33.54%)

1/19(水)

21695(26537) 421

22116(26958) 7377人

33.35%(27.36%)

1/18(火)

21497(27326) 338

21835(27664) 5185人

23.74%(18.74%)

1/17(月)

24251(28398) 435  

24686(28833) 3719人

15.06%(12.89%)

1/16(日)

4521(6100) 204

6304 4172人

92.28%(66.18%)

1/15(土)

11761 (14725) 113 (612)

11874 (15337) 4561人

38.41%(29.73%)

1/14(金)

13644(20487) 435

14079 (20922) 4051

28.77%(19.36%)

1/13(木)

15068(16920) 453

15521 (17373) 3124人

20.12%(17.98%)

1/12(水)

13723(16193) 578

14301(16771) 2198人

15.36%(13.10%)

1/11(火)

20551(21373) 283

20834(21956) 962人

4.61%(4.38%)

1/10(月)

3720(4845) 128 (220)

3848 (5065) 871人

22.63%(17.19%)

1/9(日)

3299(3966) 212

3511 (4178) 1223人

34.83%(29.27%)

1/8(土)

7300 (9397) 179

7479 (8576) 1224人

16.36%(14.27%)

1/7(金)

7762(11724) 257

8019(11981) 922人

11.49%(7.69%)

1/6(木)

8894 (9966) 439

9333(10405) 641人

6.86%(6.16%)

1/5(水)

10794 (11213) 240

11034(11453) 390人

3.53%(3.40%)

1/4(火)

11586 (11893) 308

11894(12201) 151人

1.26%(1.23%)

1/3(月)

3584 (4336) 242 (315)

3826 (4651) 103人

2.69%(2.21%)

1/2(日)

3224 (3781) 190(272)

3414 (4053) 84人

2.46%(2.07%)

1/1(土)

1256(2378) 280

1536(2658) 79人

5.14%(2.97%)

保護猫とのまの一言成長日記 2022。1月~2月


2/28(月)

今朝も起こしてくれました。髭を剃ったので、直接顎に噛み付く作戦。おかげでスッキリ目が覚めたよ。今朝も早速2度寝中。もうすぐ早朝ご飯だよ。

2/27(日)

今朝もちゃんと起こしてくれましたよ。最近、朝暖かくなってきたので、ファンヒーターを点けなくなりました。すると、すぐ2度寝するようになりました。やっぱり猫にはまだ朝は寒いのかな。

2/26(土)

今朝はずっとそばに居てくれたね。二度寝もせずに足元やテーブルの上にジッと一緒にいてくれたね。やっぱり、一緒にいると暖かいね。とのちゃん。

2/25(金)

今朝も起こしてくれたけど、最近、私を起こすけど自分は起きてこずに二度寝パターンが多い。『春眠暁を覚えず』だね、もうすぐ春だね、とのちゃん。

2/24(木)

今朝はちょっと早めに起こしてくれて、今は2度寝中。もうすぐ早朝ご飯だよ。

2/23(水)

今朝もちゃんと起こしてくれた。ありがとう。昨日は、『スーパー猫の日』だったようで、猫の日チュール貰ってました。あの慌てようが、何回観てもカワイイ。でもあげ過ぎには注意。

2/22(火)

今朝も、ちゃんと起こしてくれました。私がパソコン始めると、あ、もう遊んでくれない……。って思うのかな、いつもこのタイミングで二度寝に行くんです。ごめんな、おやすみ、とのちゃん。

2/21(月)

今朝も3時半に起こしてくれました。今朝、妙に寒くない?

2/20(日)

今日は二人とも寝坊しちゃったね。でもちゃんと起こしに来てくれました。何分ぐらい乗っかってた?重くて目が覚めた。今は早朝ご飯食べて二度寝中。おやすみ、とのちゃん。

2/19(土)

今朝は目覚ましを聴いてから、慌てて起こしに来てくれました。そこがまた、可愛い。今は絨毯の上にじっとして、早朝ご飯待ち中。あ!ご飯出たよ!!(オートフィーディングマシーン使用。)

2/18(金)

今日はちょっと遅れて起きてきて、今、ぼんやり中。部屋中が乱れてた。夜中1人で大暴れした様子。眠い朝もあるよね、早朝ご飯食べて、二度寝しな。

2/17(木)

今朝も3時40分に起こしてくれました。最近は、あれね。左手で顔をツンツンする攻撃で起こしてくれるのね。昨日、初めてテレビに興味を持った様子。今もなにも付いていないテレビをジッと観ています。行ってきます、毎朝ありがとね、とのちゃん。

2/16(水)

今朝は3時23分に起こしてくれました。なぜか今朝はとてもアグレッシヴで、髭抜いたり、顔引っ掻いたりして、あのね、それ、両方、けっこう痛いよ。あとは乗っかり攻撃ね。あのね、それ、けっこう重いよ。 でもありがとうね、毎朝助かるよ とのちゃん。

2/15(火)

今朝は2時半に起こしてくれた。さすがに早過ぎるから、ジッとしていると、ずっと、畳をガリガリ、襖をガリガリやって、何とか起こそうとしてたけど、私が起きると入れ替わりに二度寝するんだよね。何でだろう??猫の心理って、複雑。

2/14(月)

今朝はホント、4時ピッタリに起こしてくれました。雪降ってるよ!と言おうと思ったら、もう2度寝してました。ほんと、私を起こすためだけに起きてくれているんだね。ありがとう、とのちゃん。大丈夫そうだから、タイヤのチェーン外しました。でも寒かった。

2/13(日)

今朝は私が1時間寝坊。しかし、根気よく『胸乗っかり作戦』で起こしてくれました。今は早朝ご飯を食べて二度寝中、おやすみとのちゃん。

2/12(土)

今朝も、3:40に起こしてくれました。今朝は妙に元気ではしゃいでます。また月曜日に雪予報。嫌だなぁ……。

2/11(金)

今朝も起こしてくれました。ナント、3時59分。君の体内時計は、うちの目覚まし時計よりも正確だね。昨日は寒かったね。今日はそうでもないと思うよ。二度寝中だけど、もうすぐ早朝ご飯だよ。昨日もちょっと吐いたって? お腹、変なの?気持ち悪い?

2/10(木)

今朝はちゃんと3時45分に起こしてくれました。寒いのに。でも私が起きると、自分はさっさと寝てしまう。ホントに、私を起こすためだけに、早起きしてくれてるの?ありがとう、とのちゃん。

2/9(水)

今朝は2時半に起こしてくれた。さすがに早い。でもずっと、『胸乗っかり攻撃』と『襖ガリガリ攻撃』で結局少し早く起きた。寝れなかった?ちょっと、吐いたね。大丈夫?

2/8(火)

今朝も3時10分に起こしてくれました。ちょっと、早いね。でも今日は早出だから助かる。今週、雪が降るんだってさ。嫌だね。

2/7(月)

今朝も、しっかり4時に起こしてくれました。でも最近は、じっと座っているだけ。『胸乗っかり攻撃』とか『髭抜き攻撃』が懐かしい……。

2/6(日)

今朝は少し遅めに起こしてくれました。今も、二度寝せず、ジッとこっちを向いて香箱座りしてます。寝ないの? もうすぐ早朝ご飯だから?

2/5(土)

今朝はまだお休み中。一回起こしてくれたような気がしたんだけど、気のせいか??

2/4(金)

今朝も起こしてくれました。でもすぐ2度寝。寒いもんね。昨日ちょっとだけ、外に脱出したんだって? 久々の外だったね。寒かったでしょ?

2/3(木)

今朝は3時に起こしてくれました。寒いのに、布団に潜り込まずずっと、『胸乗っ刈り作戦』で。でもやっぱり、私が起きると、また寝ちゃうんだよね、ホント、わざわざ私を起こすために、早起きしてくれているとしか思えない。ありがとう、とのちゃん。

2/2(水)

今朝も3:57に起こしてくれました。すごい、正確な体内時計。感心するよ。でも今日はすぐに2度寝しに行きました。毎朝、お勤めご苦労さんです。

2/1(火)

今朝は3:40に起こしてくれました。今日は早出なので、ちょっと早めでちょうどいい。知ってたの?とのちゃん。

1/31(月)

今朝も起こしてくれました。ちゃんと。4時に。差し出した手を顔でグイッと持ち上げて、さ、起きて、起きて、というアクションが可愛くてなかなか起きられない。

1/30(日)

今朝も起こしてくれましたよ。ちょっといつもよりソワソワして、鳴いたりしてたけど、今は2度寝に行きました。もうすぐ、早朝ご飯だよ。起きて来るかな?それとも、寝てるかな?朝ご飯は、8時半です。

1/29(土)

今朝も起こしてくれました。上から見ると、お腹周りがちょっと太ったような……。ネコの健康管理は100%飼い主の責任だから、気を付けます。

1/28(金)

今朝も『胸乗っかり』いや『腹乗っかり作戦』で起こしてくれました。しかし、朝だけは思いっきり甘えてくれるね。昼間はツンとしてんのにね。そこがまた可愛いんだけど。

1/27(木)

今朝も『胸乗っかり作戦』で起こしてくれました。でも昨日の夜はずっとはしゃいでたね。眠れなかった?寝不足じゃない?さっそく2度寝に行きましたが、もうすぐ早朝ご飯だよ~。

1/26(水)

今朝もちゃんと起こしてくれましたよ。雪が降るとか言われてたけど、そんなに寒くないね。暫く外を見た後、今は2度寝に向かいました。おやすみ、とのちゃん。

1/25(火)

今朝もちゃんと起こしてくれましたよ。でも寒いからやっぱり、早朝ご飯まで2度寝に行きました。今日も楽しいといいね、とのちゃん。昨日、ちょっと吐いたんだって?大丈夫かい?

1/24(月)

今朝もちゃんと4時に起こしてくれたけど、本人は起きてこず……。新しいパターンです。ひょっとして、私のいた、暖かい布団で寝たいから、起こしてくれているのかも。いや、君はそんな打算的なネコじゃないよね。とのちゃん。まあ、それでもいいんだけど。

1/23(日)

今朝も3時に、起こしてくれました。でも根気良く、『胸乗っ刈り作戦』で、1時間近く粘ってくれたおかげで、今日もきっちり4時に起きました。本人2度寝中……。おやすみ。

1/22(土)

今朝はちゃんと起こしてくれました。そして二度寝もせず、今カーペットの上で香箱座りにて、早朝ご飯待ち中。食べたら、ソッコー2度寝しそうな感じです。けさもありがとう、とのちゃん。

1/21(金)

今朝はちゃんと起こしてくれましたよ。よかった。でも、自分は起きてこず、そのままお母さんの布団に直行! やっぱり、眠いし、寒いんだね。それなのにわざわざおこしてくれて、ありがとう、とのま。

1/20(木)

今朝はゆっくり寝てます。昨日ちゃんと起きなかったから、もう起こしてくれるのやめたのかな。それだったら、ちょっと、寂しい……。

1/19(水)

おはよう、とのちゃん。今朝もちゃんと起こしてくれたのに、もたもたしてたら、お母さんの所に2度寝しに行っちゃったね。やっぱり、寒いのにわざわざ起こしに来てくれてるんだね。ありがとう。とのちゃん。明日もよろしく!

1/18(火)

今朝もちゃんと4時に起こしてくれました。今は二度寝せずに早朝ご飯を香箱座りで待機中。今日も天気が良さそうだね。外に出たいかい? 

1/17(月)

今朝も起こしてくれました。最近はもっぱら、『胸の上に乗る作戦』が増えてきました。これが一番効果的?だって重いからね。目が覚めるよ。(6.5kg)

1/16(日)

今朝もちゃんと起こしてくれました。寒いのに、ずっと『胸乗っかり作戦』で。結構、重いよ。昨夜はお母さんが実家に行っていないのでちょっと寂しかったね。夕方には帰ってくるよ。

1/15(土)

今朝もちゃんと4時に起こしてくれました。また『胸乗っかり作戦』で。でもトイレに起きてきたお母さんと一緒にまた寝に行ってしまいました。その薄情さがまた、可愛い。

1/14(金)

今朝も胸に乗っかり作戦でおこしてくれました。でも最近は朝寒いせいかすぐに2度寝。本当に私を起こしてくれるためだけにに起きてるんだね。眠いのに、わざわざ……。ありがとう。とのちゃん。

1/13(木)

今朝も起こしてくれました。3時半に……。今朝は襖もゴリゴリして、だいぶ念入りに起こしてくれました。寒い朝は、胸に乗っかられると重いけど、触ると暖かいので朝からほっこりしますな。まいあさありがとう、とのちゃん。 

1/12(水)

今朝も、ちょっと遅れて起きてきたね。あの、ちょっと遅れた!って、慌てて起きてくる感じもとても可愛くて癒されるよ。もう2度寝中。律儀なネコだね。とのま君。

1/11(火)

今朝もちゃんと起こしてくれた。いつもはお母さんばっかり一緒に寝てるのに、最近は私の布団で寝るのは、嬉しいような、気になって眠れないような……。

1/10(月)

今朝もちゃんと起こしてくれたのに、私が起きられなかった。起きた時には早朝ご飯も食べた後で、水もちょっと減ってて、寂しい一人早朝ご飯だった様子。ごめんな、とのちゃん。明日からまた、ちゃんと起きるから……。

1/9(日)

今朝もちゃんと起こしてくれました。昨日の夜、だいぶ一人遊びしてたみたいだね。いろいろ、散乱してた。今は2度寝中。おやすみ。とのちゃん。

1/8(土)

今朝はまだ起きて来ません。昨日、千と千尋の神隠し 最後まで見ちゃったから、夜更かししちゃったからね。ゆっくり寝てな、けさもさむいよ。とのちゃん。 

1/7(金)

今朝もちゃんと定刻に起こしてくれました。でも寒いから、サッサと二度寝しな。おやすみ、とのちゃん。

1/6(木)

今朝もちゃんと定刻(4:00)に起こしてくれました。しかし、今朝はめちゃめちゃ寒いね。そのせいか、すぐに寝てしまいました。ただいま2度寝中。おやすみ、とのちゃん。でももうすぐ早朝ご飯だよ。

1/5(水)

初出勤の朝も、ちゃんと定刻(4:00)に起こしてくれました。ありがとう、頑張っていってくるよ。とのちゃん。

1/4(火)

今朝も、いつも通り起こしてくれたのに、起きなくてごめん。明日から仕事だから、またいつもの時間に起こしてね。よろしくー。とのちゃん。

1/3(月)

今、お雑煮を作っているんですが、ジッと台所から監視されています。今朝も早起きのとのちゃん。今日は箱根駅伝の往路だよ。一緒に見る??

1/2(日)

箱根駅伝を見るためにスタンバイ中。でもそういう時に限って、遊びたいんだよね。とのちゃん。しばらくスリスリしてたけど、今諦めて二度寝に行きました。ごめん、とのちゃん!

1/1(土)

あけましておめでとう!とのちゃん。元旦は、朝寝がしてみたい。って感じで、お寝坊です。いいよ素敵な寝正月。

『いきてるきがする。』《第7部・冬》


もくじ


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第49章『一次関数』

 

 見上げたらバッサリと、何もかも切り落とされた空が我関せずと広がっていて、昨日などまるで無かったようだ。 

 さて俺はこれから、どっちに進めばいいのだろう?  

 真っ白く光る土の道を、俺は歩いた。とにかく誰かに会いたかった。 

 どれぐらい歩いたかな。1時間? 10時間? 100時間? それにしても暑いなぁ……、夏って、こんなに暑かったっけ? それに夏ってこんなに、長かったっけ? 

 のどが渇いたので川の水を飲もうとしたらザリガニやドジョウがたくさんいる水はとても澄んでいて、でもいざ俺が飲もうと顔を近づけるとたちまち、奴らは泥を巻き上げて畔の中に隠れた。俺に飲めなくしやがった。 

 水はたちまち汚れてしまった。そうか、汚いのは俺だというんだな。俺だけが世界でたった一つ汚れているんというんだな。俺が動くと世界が汚れてしまうというんだな。この考えの卑しさといったらなんだ? 水に映った俺の顔は何だ? ガリガリのシワシワで、もうジジイの様じゃないか!  

 冗談じゃない! 俺はまだ小学生だぞ! なぜこんなに汚い?  

 そうか、わかったよ……。みんなまとめて俺が喰ってやるから。俺はザリガニとドジョウを捕まえて河原の焚火に投げ込んだ。そして焼きあがるまで1人で遊んだんだ。まるで子供の様に、知らない民家の木に登り、しばらく遠くを眺めていたら、なぜだか急に涙が出そうになってきたもんだから、慌てて飛び降りたら足から変な音が出た。でももういい、もう気にしない。そのまま足を引き摺って、誰もいない納屋に忍び込んで、甕の水をたらふく飲んだ。あぁ、いい気分。きっとそのまま暫く眠ったんだな。 

『この子がいなかったら、みんなで旅行に行けたかも。犬も猫も飼えたかも。妹も死なずに済んだかも、俺もお前も、あんな恥ずかしい思いをしなくて済んだかも……。』 

 項垂れた夫婦が小さな布団を挟んでいる。布団には眠る子供。きっと俺だ。まだ何も気づいてない頃の俺だ。 

 外に出た。焚火はすでに燃え尽きていて、掘り返すと真っ黒に焦げた頭蓋骨が出てきた。そしてその近くからぞろぞろと、朱鷺色の焼けたザリガニや琥珀の腹を反らせたドジョウたちがうじゃうじゃと出てきた。どれもこんがりと焼けている。全て俺の仕業だ。俺のモノ。俺は食った。

  腹が減ってて本当によかった。じゃなきゃ、こんなに汚い命が自分だなんてとても耐え切れないよ。今の子は大変だな……。そりゃ辛いよな……。毎日毎日、腹も減らずに、のども乾かずに、ただただ嫌な事ばかりを目の前に並べられて……。 

 と、つまりそういう事ですね?             


 中学校に通っていない今の子に私は、「勉強なら私が教えてやる」と、余計な事を口走ってしまいました。中学生ぐらいなら私にだって教えられる。そう思ったんですが……。 

 いざやってみると英語以外はまるで覚束ない。本当に忘れているんですね。苦労している私を見て、昔の子が言いました。 

        

 だからつまりこの『一次関数』というのは、xとyがある特別な関係にあって切っても切れない状態なのを数式であらわしたものですね。 

 まあ、そういう事だね。 

 xとyは、仲がいいんですか? 悪いんですか? 

 え? なにそれ? ちょっと、よくわからない質問なんですけど……。 

 わかりにくい事は擬人化するとよく判るんです。例えば、xとyがメチャクチャ仲が悪いと考えたら、割とすんなりわかると思うんです。 

 そうかな。どうして? 

 たとえば、y=3x。 


 yはxの3倍。yになるにはxは今の3倍にならないといけない。体が小さいxは何とか頑張ろうとするが、所詮はチビなのでとりあえず虚勢を張るしかない。そうしてがんばっていれば、いつか神様が現れて、僕を憐れんで、よく頑張ったと褒めてくれて、yと同じにしてくれる。真っ直ぐで綺麗な橋を掛けて、さあ、ここを渡っておいでと手招きしてくれるに違いない。 

 だからxはひとまず嘘をついて同じになろうとするんですね。『3』という山高帽子を被ったりして。 

 いや、それはちょっと違うよ。xは3倍になって、本当にyと同じになったんだ。まったく同じになったんだよ。 

 じゃあ、なぜ、いつまでもxと呼ぶんです? y=yでいいじゃないですか。なぜ3倍になってもxがついて回るんです? それは誰もそれを望まないからですよ。誰にとっても都合が悪いからです。いくら同じだと言っても、周りはxはずっとxのままだと思っている。そう思っていたい。3倍になるのは大変ですよ。嘘をつき続けるのも辛いです。でもそんなxの努力など誰も認めない。 

「アイツは、山高帽なんかを被ってyぶってはいるけど、本当はxだぜ」 

 でもy=yじゃあ関数にならないからねぇ……。 

 そう、それです。結局、面白くないんですよ。平等ってそういう事を言うんです。まるで違うモノを無理やり同じように見せかけておいて、はい、平等になりました!よかったね、世界は平和です! なんて口先では言いながら、でもほら、見てごらん、あの尖がった目。短い手足。あれは間違いない。xだよ。 

 君は、じゃあ、yは嫌な奴で、xは可哀そうな奴だと、そう仮定するとうまく理解できるというんだね? 

 まさか! 問題を解く人間がどちらかの味方なんかするなんてあり得ない!俺は両方、必ず幸せになってもらおうと努力するんです。差別がない、何ら噓偽りのない穏やかな世界を、xにもyにも平等に与えてあげる。そのために俺は必死に計算するんです。そしていつか彼らに=で握手をさせるために。 

 素晴らしい! それこそ理想の世界だ。様々な差を差として理解した上で平等を築く。これこそ正解だ。君の言うとおりだよ! 

  

 はい、そう思ってました。でも実際はそうじゃなかったのです。都合が悪いのはなにもyばかりじゃあないんです。一見虐げられて卑屈そうに見えるxにとっても事情は同じなんです。xも実はyになんか少しもなりたくないんです。憧れてもいない。yはいつまでもxを矮小なニセモノだと思っていて、xはいつまでもyを意地悪な偽善者だと思っている。その状態が一番都合がいいんです。俺が必死に計算しても、=で渡しても、どちらもその橋の両側でいがみ合うだけで決して渡ろうとしないんです。それでもしつこく橋を渡そうとすると、ついには両方からこう言われるのです。 

  

 邪魔なんだよ、お前。 

 え? またちょっと、なに言ってるかよくわからなくなってきたんですけど……。 

 俺は必死に問題を解いた。そして、y=3xを成立させたんです。でも彼らは大きなため息をついてこう言います。 

 あのさぁ、計算しちゃったらさ、せっかくのy=3xが、y=yになっちゃう、って事でしょ。 つまり0=0と変わらないって事だよ。お前ら両方消えろ! って言ってんのと同じなんだよ。まったく何してくれてんだよ。何でそんなヒドイ事するんだよ。 

 戦争は誰かの利益のために誰かがやってるとでも思ってた? 馬鹿だね。全てが、全ての存在が、アイデンティティが、すでに戦争そのものなんだよ。戦争を否定する事は、全世界を否定する事と同じなんだよ。神様の橋は誰も望んでいない。なぜならば、 

全ての幸せは、全ての正義は、不平等の中にしか存在しないからだよ。  

 xとyは仲が悪かったわけじゃないんです。仲が悪いフリをする事で、お互いを補完してたんですね。彼らの理想はそういう不平等な『平和』であり『愛』なんです。それ以外、彼らには想像する事すら出来ないんです。それにも気付かずに俺は、平和のため、愛のためだと、しなくてもいい計算なんかして、世の中をグチャチャにしていたんです。そして結局俺は1人で耐えていた。誰もいないわけだよ。俺が1人で戦争を起こして、1人で耐えていたんだから。 

 ん~……。 

 でもね、俺はそれでも計算するからよかったんだと思えるんですね。足の骨が折れてても尚、ザリガニやドジョウを喰ってでも生きようとした、そして歩き続けた自分がいたからこそ、俺は今の子と出会って、そしてこの店にも、店長にも出会えたわけですから。 

 ん~……。          


 だからぁ、xとかyとか言ったって新しい事は何もないんだよ。ただ違う数字だという事だけ理解していれば、あとはなんでも。答えはね、1つじゃなくてもいいんだよ。そこが小学校の『算数』と中学校の『数学』の一番大きな違いかもね。 

 しかし息子はもう聞いてもいません。明日、数学のテストだと言うのに、「あ!そうだ!」と言ったかと思うと、何やらゲームのコントローラーをいじり始めました。 

 おいおい、もう勉強終わり? 

 ゲームの時間があと15分余ってたのを思い出した。 

まあ、私の子ですから、嫌いな事はやらないんでしょうね。 

でも私の中学生の頃よりも、断然成績がいいのは妻に似たのでしょうね。 

 寒いんだから、ゲームしてるぐらいならサッサと寝ろ! と言って、私の方がサッサと寝てしまいました。 


第50章『足並み』


 あまり自分の時間を安売りするのはもうやめよう、と思いました。だって私にはもうそれほど冗長な時間が残されているわけじゃない。しかしいくら私が『今』に全てが含まれているのだと知っていても、この世界にはシーケンシャルなモノを基本として駆動するという悪い癖があって、そこには『時間』という粗悪な燃料があって、『足並み』というおざなりなギアレシオがある。それをどうするべきか。 

 足並み……、か。 

 別に足並みが乱れたからと言って個人が困る事は何一つ起きないはずなのに、足並みを乱すと、風紀が乱れる、風紀が乱れると、平安な生活が脅かされる、となぜかどんどんネガティヴな方向へと発想を持っていき、せっかく『今』が暖かな陽だまりに包まれて、風は穏やかで、腹も背も痛くないにもかかわらず、まるで悪い事の前兆であるかのように解釈されてしまう。これがいわゆる『不安』の正体です。 

 不安……、か。 

 先月辺りから私の所にも欠礼の葉書が例年よりもずっと多く届いています。多くの知人の親族がなくなったという事です。私の義父も今年の春、亡くなりました。 

 それはもう『不安』ではないんだね。もう諦めないといけない、耐えないといけない事なんだね。とシーケンサーはなぜか得意げ。この時とばかり畳みかける様に慰めてきます。

 ここにきて急に強まった冬の刺すような寒さも追い打ちをかけます。夏、目覚ましアラームよりも30分も早く、小さな鼻息をフンフンさせて起こしてくれていたネコは、ここ一月ほどはすっかり起こしてくれなくなりました。飼い主としては薄ら寂しい朝になりました。 

 早出の日はだいたい5時前には出掛けますね。だから4時には起きます。当然この時期、外はまだ真っ暗です。軽い鉄扉をなるべく音をたてないようにそっと閉めると、私はバイクを、ろくに暖機せずに走り出します。心のどこかに、中国製の125ccバイク、という侮蔑があるような気が、毎朝しています。 

 朝焼けの美しさだけがホンモノの『今』を感じさせてくれます。『今』が全てだと気付いたというならば、その『今』の一番美しいところだけ抽出して味わう事が出来るはずなのですが、それがなかなか、これから仕事だと思うと難しいのです。 

 『今日は戸田から板橋、足立、江戸川から千葉の茜浜。そのまま357で戻って有明で積んで横須賀。下で帰って事務所に着くのは18時。実働12時間……。 

 もうだいたい、夕方の自分の疲れ果てた姿が予想できるのです。不満ですか?あぁ、とても不満ですよ。うちは12時間働いても給料は8時間分しか出ないんです。そういう会社なんだそうです。 

  でもいいでしょうか? 予想なんてしたら絶対ダメなんですよ。人生、予想したら終わりです。 

 昨日も三つ目通りで、大型トラックが乗用車と事故を起こしましたね。ニュースでも報道されました。大型が積んでいた荷の種類が悪かった。ご愁傷様です。私はその時、そのすぐ前を走っていたんです。煙が上がるのが見えたのですが、自分が夕方に疲れ果てている姿を予想していたのでそのまま茜浜に向かってしまったのです。 

 もし、もしですよ。私がすぐに車を路肩に止めて消火作業に掛かっていれば、あの人は死なずに済んだかもしれない。 

 ぶつかられる直前まで、あの人は、「正月の前にクリスマスがあるなぁ、アイツ何欲しがってたっけ? スイッチ、とか言ってたなぁ、最近はおもちゃもバカに出来ないからなぁ、サンタも楽じゃねぇ……」なんて事を考えていたかも知れません。 

 でもその人のクリスマスは、来なかったんです。 

 もし、もしですよ。その人がそんな事を考えていなければ、『今』の一番美しいところを抽出して楽しんでいれば、たとえ助からなかったとしても、悲劇は劇的に軽減されたはずです。 

 人は際限なく悲惨になれます。それを避けるには、今以外の事を『今』に混入させるのを一切やめる事です。どんな事があろうとも、『今』『今』でしかないんです。楽観でも悲観でもない。結果の良し悪しを導いたり、遠ざけたりする事は、万に一つもないのです。 

 「仕事、終了しました。」そう無線を入れると、「お疲れ様です。じゃあカムバックで」と言われます。 

 私はそれから2時間ほど、1円にもならない時間に、空荷のトラックを走らせます。 

一切、予想はしません。どうしようか。とにかく今、どうしようか。 

 私の直近の夢として一番デカいモノに、『キャンピングカーを買う』というのがあります。キャンピングカーで最も人気があるのが、2tトラックベースの『キャブコン』と言われるサイズで、1000万円近くするものもあります。 

 これは、キャブコン。 

ヘッドライトは、キャンプ場へ続く道を照らしている。後ろのキャビネットには食材と、夕食をしたくする妻と、運転席の上のバンクベッドに寝転がってスイッチに興じる息子がいる。 

 おい、暗いところでゲームすんな! 

私は上に向かって話し掛ける。キャンプ場にはランタンがあって、バーベキュー用の備え付けのコンロがあって。 

 私はそうやって本当に自分勝手に足並みを乱しているはずなのですが、でも、ほらごらん。 

 誰も困らない。 


第51章『2会目』


 珍しい人から連絡があり練馬に来ています。以前は練馬に住んでいて、息子が生まれた時はまだ練馬区民でした。連絡をくれたのは小学生の頃の同級生で、今は郷里で料理屋をやっている人間なんですが、たまたま関東に出てきたので、久々にどう? という事で呼び出されたわけです。 

 かつての最寄り駅である江古田駅を降り、小さい方の北口改札を出ます。そこから斜めに入る小道をいくとその先に小さな公園があるんですが、そこに1本、背の高いメタセコイヤがあったのです。見ると私は、いつかそのてっぺん近くで小学生が おーい! と叫んでいた記憶が蘇ります。 

 危ないから下りなさい! 私が思わず叫んだのに、その少年はわざと枝をゆさゆさと揺すって、ボスザルさながらな権力を振りかざします。あの高さまで登れるのは、いくら身軽な子供でもその少年だけなのでしょう。木の下では群れの平ザルの様な少年たちが、やや羨望の眼差しで見上げています。高さは優に10メートル以上はあります。落ちれば確実に死にます。 

 しかし、砂場で子供を遊ばせているバギー軍団のお母さん達は何の関心も示しません。きっと日常の光景なんでしょう。あまりにそっけないのでそのうち私も、そんなに危なくないのかな……、と思えてきて叫ぶのをやめたのです。 

あれから8年……。 

 メタセコイヤは切られていて、そこにはブランコが出来ていました。 

 砂場やレジャーテーブルは昔のままだったのですが、昔ほど子供でにぎわっておらず、入り口には『サッカー、キャッチボール禁止!ペットの連れ込み禁止!』 

という、ありがちな看板が立っていました。 

 約束の時間までまだあったので私はかつて住んでいたマンションまで行ってみる事にしました。 

 そこは4階建てのマンションの2階にある1DKで、自転車置き場はなく、ハメ殺しの窓は開かない、風呂は2度焚き出来ず、ガス台は一口。おまけに以前は反社会組織の事務所だったらしく、突然○暴の警察官がやって来て、 

 おい!ここで何やってんだ! なんてドアをガンガン叩かれ、それでいて家賃10万円強という、今と比べたらすさまじい悪条件だったのですが、当時の練馬の家賃相場から考えたらそれもきっと日常だったのでしょう。私も、東京で暮らすなんてそんなモンだろうと、何も疑わずに住んでいたのです。 

 見るとベランダに、息子が通っていた幼稚園の制服が干してありました。きっと我々の後に住んだ家族の子供が、同じ幼稚園に通っているんだなぁ、とほっこりとみていたのですが……。 

 しかし、どう見てもそれは息子の制服でした。 

 そんなはずがあるわけがありませんが、でもほら、ちゃんと息子の名前も書いてある。ん~、また『今』がワイドになって、8年も経ったのに『今』のままのようです。 

 正直、たまに不便ですね、この『今』の在り方は。だって誰にも共感を得られない正解は、一般的には『間違い』という事になるのでしょう? つまり私は目の前の光景を『間違い』と判じる必要があるのですから。 

 まあ同姓同名の子がいないとも限らない。こんな誤魔化しで煙に巻いて私はそのまま、息子がよく遊んでいた『八雲公園』に向かいました。『八雲公園』にはコンクリートの大きな滑り台があって、息子は当時、そこを上まで駆け上ることが出来ずに悔しくて泣いていました。またそんな、可愛い記憶が蘇ります。 

 夏はやぶ蚊が凄くて、『ここの池で水遊びをすると必ず風邪をひく』というジンクスは、8年経った今でもママたちを悩ませているのだろうかと見ると、さすがにもう冬だからもう水はありませんでした。やぶ蚊もいません。しかし夏の名残のセミの抜け殻が、欅の落ち葉に混ざってあちこちに落ちています。時間はこうやって経っている様に見せかけておいて、ある部分では経っていないのですね。そして私が来ると慌てて『今』に混ぜこぜにして、さもその通りの時間が流れましたよと言わんばかりの誤魔化しをやるのです。 

 セミの抜け殻は、きっとさっき羽化したばかりなのです。違うと言えますか? なぜ? 見てもいないのに? それにそうじゃないと、これからの話がまた全部『間違い』になってしまいます。わざわざ練馬まで来たのに、それもすべて。 

 私はシーソーに腰を掛けました。買った覚えのない缶コーヒーを握っています。すると、おーい、ここここ、と滑り台の上から声が聞こえました。それは約束の彼女で、彼女はコックスーツのまま私に向かって手を振っています。 

 もういいよ……、わざと時間と場所をごちゃごちゃにして、そんな事で不思議なお話を捏造しようとしている。もうこれ以上お前のつまらない作り話に付き合っていられない。そうですよね。やめましょうか? いいですよ、やめても、しかし……、 

 あり得ないと思える事や、つまらないと思える事から目を逸らしたり、自分が納得いかない事や興味がない事をすべてない事にしていたら、最後の最後に自分の手の中に何が残ります? 

 おもちゃ箱の蓋ばかりが残るのです。なにか『期待』はあったのですね? それはわかります。でもそれはおもちゃ箱の蓋を開けるまでの話です。ふたを開けたら、あとは結果が出てくるだけ。それは? 本当に望んだものでした? そんな事が一度でもありました? そもそも貴方は、本当にそんな結果が欲しくてその蓋を開けました? 私にはそうは思えない。蓋は意思に関わらず勝手に開いた、違います? 

 そしてただガチャガチャとうるさいエピソードの蓋だけが残るのです。その前後に付随していたはずの『希望』『予想』など、初めからなかったのです。 

 だから、私は必死に『今』を見ようとするんじゃないですか。見えているのは、聞こえているのは『今』だけなんです。ゴチャゴチャ勝手な判断したり、期待を掛けたりするなんて事は、そもそも出来様がないのです。 

 しきそくぜくう?? くうそくぜしき?? 私はそれがなんの意味かすら分かりません。科学ではある物が消える事はないと言いながら、宗教では常にある物は何もないという。そしてそれは両方正解だという。矛盾にしても単純すぎます。 

 まあ公園でウロウロしているだけなのに、先達お歴々のお言葉を論って大袈裟に話を膨らませる必要もないでしょう。先を急ぎます。もう、終わりますから。 

 彼女とは初めはわかりませんでした。そればかりか私は、約束したのが彼女であった事すら、その瞬間に知ったのです。 

 滑り台から降りてきたのは、真っ白いコックスーツを着た、出会ったばかりの頃の初々しい彼女でした。 

 なんで、コックスーツなんか着てるの? 

 わかってるくせに……。 

 浅草のカッパ橋で買って、そのまま着てきたのだという。 

 うん、わかってる。それでずっと心の中に蟠っていたから、こういう事が出来た。 

 君の店に行きたい。君の作った料理を食べてみたい。 

 来年かな。 

 来年か……、まあそれでいい。 

 僕らは明らかに、冗談のように、そして合言葉のように『来年』と言った。来年はすぐそこの様であって、永遠に来ないようでもありました。 


  

 そして私達は笑い合って、そのままフラフラ練馬駅まで歩いて『福ちゃん』という博多ラーメン屋に入った頃にはもう、私の覚悟は決まっていました。入ったすぐ右側の席に着くと同時に私はプロポーズしたんです。 

 ラーメン屋か……。と呟いた妻の顔が忘れられません。 

 この結果は確かに私が望んだものでした。私は彼女にとても感謝しています。もし彼女から電話がなければ、私は妻と結婚できなかったでしょう。でもそのためにはもう一つ条件があったのです。それは公園のメタセコイヤが切られなければならなかった事。やはり事故があったらしいのです。私は妻と結婚した事と、なぜもっと強く少年を叱らなかったかという事が未来永劫パックになっている事に気付きました。  

 だからね、何かというとすぐ結果結果って言うけどさ、ナニ? 何で勝手に線引いちゃうの? その結果が終わったってどうやって誰が判断すんのよ。出来事は、基本、未来永劫、終わらないの。今、こうやって、飲んだくれてくだまいてる事だって、ちゃんと未来永劫終わらないんだよ。 

 店の運営が芳しくないと、すっかり酔っぱらった彼女は愚駄を巻いています。コックスーツは少し汚れてしまいました。明日帰るというけど、何処に泊るの? と訊くと、池袋の漫画喫茶だと言いました。 

 彼女とは人生でもう1度、会います。 

今回はその『2会目』。 


第52章『サンタクロース的』


 季節が冬っぽくなってくると思い出す事があります。それはサンタクロース的なオジサンが実際にいたという話です。 

  私の古い友人で1年ほどホームレス生活をしたヤツがいます。私と同じで、夢を追いかけて上ばかり見ていて、足を踏み外したのです。90年代以降、日本経済は急減速し、増えましたもんね。ホームレス。彼もその一人。

 今日本の1人当たりのGDPはOECD加盟国内でも19位と振るわず、かつての経済大国の面影はもうありません。失業率も上がり、持ち家を手放す人や、ホームレス生活に落ちる人、自殺者も増えているのです。

 『今』、世界はしょんぼりと沈み込んでいますよね。景気は冷え込む一方なのに温暖化は進み、貧富の格差は広がる一方なのに疫病は等しく蔓延しています。いったいどっちが本来の姿なのかわからなくなりそうですね。絶望と恐怖と不安ばかりが雲の様に全世界を覆うこの時代を、きっと100年後の教科書は『暗黒時代』として表記する事でしょう。あ、因みに、まだまだ終わりませんからね。この時代……。 

 しかし彼は「ホームレスは決してドリームレスなんかじゃない。あの時、オレはホンモノの夢を見た」と不思議な事を言うのです。


            

 アルタの前を道なりに緩やかに右を向いて、山手線の下を潜るよう左折しようとした時、暗がりからスーッと影のようなモノが飛び出してきたんです。私は思わずブレーキを掛けました。危ない! でも見ると誰もいない。 だから私は、あぁ、あの人だなぁ、とそう思う事にしたのです。勿論、実際は目の錯覚なのでしょうけどね。冬の夕方は特に見え辛いですから。 

 かつて新宿駅東口にはフェンスで囲まれた『聖域』がありました。今はもうありません。そしてそのフェンスの内側には数体のオジサンは住んでいたのです。オジサン達野良猫の様な警戒心を以て、常に怯え、僻み、怒っていました。 

  危ねぇだろ!! 飛び出したオジサンの持つワンカップには雨水の様に空しい酒がほんの少し残っているだけでした。 私は、まあまあお互いさまで、とオジサンを宥めます。オジサンにとって『今』は、わずかに残った酒のように大切でかけがえのないモノだと知っているからです。

  あの頃の日本はまだ、世界を相手にはしゃぐことが出来ました。街のあちこちには今からは想像もつかないほど豪華なクリスマスのイルミネーションが狂ったように飾られて、社会全体が正体不明の熱に浮かされていたのです。こんな状態は長くは続かない、そのうち足を掬われる、その事を、本当は誰もが知っていたのです。知っていながら誰もそっちを見ない様にしていたのです。その頃から、現実は現実ではなくなり、『今』使い捨てようにその都度廃棄されるだけのモノになったのです。

 なぜそういう心理に傾いたのか。自分の立つ地面の傾きと、体の傾きの整合性を疑う。 

 それが本当は一番重要な事だったのですが、そんな生産性のない事を気にするモノはあの時代、自殺者以外は誰もいませんでした。 

 やがてその矛先はかつての宿敵に向きました。コテンパンにやられた腹いせの様な、それはどこか復讐のようでもありました。それならそれで変な気を遣わずに、もっと露骨に、最後まで復讐すればよかったんですが、あの時、パンツまで脱がされて、公衆の面前で土下座をさせられた事に対する永遠にぬぐえない屈辱が、持ち前の謙虚さに似せたシニカルな気取りとなって、結局その邪魔したのです。 


 友人が最後の吐息をつくと、オジサンは、お前にはまだまだ先があるのに、かってに終わらせようとしている。お前にはまだまだ可能性があるのに、使わずに捨てようとしている。悲しくもないし腹も立たない、ただ羨ましいだけだ。そう言ったそうですよ。 

 友人の命日にあたるクリスマスイヴは、もう私の中にはありません。消えました。あの頃、私と友人の共通点は、『天才の名を恣にして27歳で惜しまれつつもオーヴァードーズでこの世を去る』といういかにも単純で、簡単に手に入りそうな夢だけでした。 

 あの日、私と別れた友人は1人で歌舞伎町で飲み直したそうですよ。あんなに飲んで、足元も覚束ない状態だったのに、そのあとまた1人で……。 

 案の定、彼は何件目かの飲み屋にギターを忘れてきてしまって、ちょうどそのフェンスの前で気が付き立ち尽くしたと言います。見上げると煌びやかなイルミネーションが空しく、あぁ、もう先に掴んじゃおうかな、そうすりゃ、あとは誰かが何とかしてくれるんじゃねーかな……、と、ふとそう思ったそうです。 

 夢を追うのは楽じゃない。でも追わないのはもっと楽じゃない。つまり消去法で生きてきたわけです。消去法とはつまり、『逃げ』なわけです。追っかけているようで、実はずっと逃げてきた。そしてまた、今1人でこうして、夢とも現実ともつかない世界をウロウロして逃げ道を探している。

 その時、誰かと肩がぶつかったそうです。 

「オラぁ! お前誰にぶつかってんだよ!」と数人の男は友人を必要以上に強く突き飛ばしたそうです。タイミングが悪すぎました。友人は立つのもやっとなほどベロベロに酔ってい上に、杖となるギターを置き忘れていたのです。 

 頭を強く打ったのが致命傷だったようです。頭の中を、暖かいモノが流れるのを感じたと言います。それは血管が破裂したことを言ってるのでしょう。ほどなく意識が遠退いて目が霞んできたと言います。しかしそれにつれ、それまではただ煌びやかだったイルミネーションの、それまでは気が付かなかった辺鄙な括りが溶け、様々な人の形や会話に変ったといいます。俺はバカだったと、友人は笑います。 

 クリスマスイヴとか、イルミネーションとか、歌舞伎町とか、天才とか、オーバードーズとか、あってない様なモノにばかり目を奪われていて、実際に目の前にあるイルミネーションが本当は何なのかすら全然わかっていなった。イルミネーションに交じって、

 やだ、死んでる……。死んでるよね? あれ。そんな声も聞こえたそうです。 

 まあ当然でしょうね。きよしこの夜、美味しい料理を食べて、お酒も飲んで、プレゼントも貰って、とてもいい気分。楽しい時間がひと段落、さあ、これからさらにイヴの夜を楽しもう、そう思っている人にとっては、あり得ないほどの『クズ』のような人間を見た場合に対するそれは『慈悲』という優しく正当な『虐待』なのです。障害者を指さす子供に対してお母さんが言う『指さしちゃダメ!』という、あれと同じですね。指をさす事すら憚られる人間が、確かにこの世にはいるようです。大概の虐待は、こうした優しさから派生しているように思えます。天才の名を恣にするはずだった友人は『クズ』として心無い『慈悲』を浴びたのです。こういう優しさがないところには虐待はないのです。つまり優しさは虐待の種なのです。 

 友人の葬儀の時、いつも優しい顔で笑ってくれていた友人の母親に、何で最後まで一緒にいてくれなかったの!と激しく詰め寄られました。私は『そんなこと言われても……』と思いましたが黙っていました。これも優しい虐待に当たると思います。息子が先に亡くなるなんて絶対にあってはいけない事でしょうね。でも私はその時、ただこういえばよかったのです。 

 お母さん、アイツがどうかしたんですか? 

 え? ときっと母親はきょとんとしたに違いありません。それで、そうね、そうよね。と照れくさそうに頭を搔いた事でしょう。友人が倒れたところには偶然水の入ったビニール製のウエイトがあったそうです。オジサンは偶然を装ってそこに置いたらしいと、友人は言いますが、私は偶然を装う必要など少しもない気がします。ただ、夢を追う友人にとってそれは是非偶然であって欲しい。オジサンはイルミネーションの中から現れて、先ほどの言葉を言うと、そっとそれを首の下に置いたと言います。それはまるでサンタクロースのようだったと。


 私が見た影はきっとそのオジサンの一人だと思うのです。残りの酒を、グイっと煽ると、オジサンはもとの所に消えました。いる事は確かなのですが、それは霊でも、妖精でも、宇宙人でもありません。それは誰しもの手の下に、当たり前に出来ている影の様に、『今』がふくよかに織りなす単純な出来事の一つで、そういう我々がそもそも、そういう出来事の一つなんです。 

 そう思うとやっぱり、生きているって素敵ですね。そう意識するだけで、いろんなモノが見えて、いろんな音が聴けて、美味しいモノが食べられて、好き合ったり、嫌い合ったり、時間なんてあっという間に過ぎてしまいます。

 あのクリスマスイヴから約1年間、彼は意識のない状態が続きました。彼の母親は今も、あの時はホント、生きた心地がしなかったわよ、と回想するそうです。 今は意識も戻り、順調に回復して後遺症もなく過ごしています。  母親は、音楽なんかやめなさい!そう何度も言ったらしいのですが、彼は今も月に1~2回のペースでライヴを行い、精力的に活動していますよ。 

 12/24ってさ、キリストの誕生日じゃないんだって。そんな文献どこにもないんだって。ただなんとなく日付を逆算したらだいたいこの頃、という程度なんだって。 

 でも良くない? それで。キリストが生まれた日で。キリストが生まれたという事実で、もう良くない?? 


第53章『100年の徒然』


『桃鉄』って知ってますか? 正しくは『桃太郎電鉄』。サイコロを振って出た数だけマスを進んで、日本各地に設定されたゴールを目指すという、まあ双六のようなゲームで、お正月には丁度いいです。我が家のリビングには元旦から、その『桃鉄』の軽快なサウンドが蜜の様な日差しの中に溢れています。所謂、素敵な『正月』です。 

 もとより『正月』とはこんな風に、徒然を如何にトラディショナルに過ごすかがなにより重要であったように思うのですが、ところがここ最近、『脱年賀状』など、おそらくは数百年スパンの大変革の時期を迎えつつあるように思えるのです。我が家にも、『今年限りで、年賀状卒業します!』なんて言う年賀状が何通も届きました。 

 正月をどう変革していくのか。これ、案外重要案件かも知れませんよ。 

 私が最後に双六をしたのは5~6歳の頃、母の実家で、やはりお正月だったと記憶します。襖をすべて取っ払い、ぶち抜きの大広間と化した和室の長テーブルには、酔っ払った大人たちの胴間声に混じって、伸びやかな子供の声がします。みんな双六をやっているのですが、私はその端っこで、みんなとは明後日な方を向いて座っています。 

 私のいとこは多く、私の兄妹も合わせると10人もいるのです。 

 知ってますか? 一見平和に見える双六も、場合によってはガッチガチの『イジメ遊び』に成り果てるんですよ。11人いると当然、駒が足りませんよね。だから2人1組でやるのですが、私だけ1人組。理由は誕生日に『6』が付かないから。他の子は全員、年か月か日に『6』が付くのです。これは始めからみんなわかっている事でした。何かというと、お前だけ『6』が付かない、ってあたかもそれが欠点であるかのように言われ続けてきましたからね。だから今回のこの基準も、明らかに私を1人組にすることを仕組まれたルールだったのです。おまけに一番初めに上がってしまった私は、あとは見ているだけ……。ワハハハ、と笑い声が起きても、え?何があったの? とたずねても、お前に説明してると話が長なる、とスルーされるのです。

 癇癪持ちの私が、こんなところでみんなと一緒に泊まるのは嫌だ!と母親に言うと、なんでまたアンタだけ他の子と違うこと言うの!なんで仲良く出来ひんの! と、私だけ叱られてしまいました。 私にとって、双六など、ロクなゲームじゃなかったんです。           


 『桃鉄』で息子を完膚なきまでに下した私は、「くそ、もう一回やろ!」という息子の声を背に、パーカーを羽織って外に出ました。私なりの正月大変革の一環として考えに考えた結果、煙草をひと箱買ってくる、というのを思いついたのです。20年ぶりに、煙草を吸ってやろうと思い付いたのです。 

 私が煙草をやめたのは30になる少し手前ぐらいでしょうか。咥え煙草で本を読んでいて、煙が目に染みるのが鬱陶しくて、そのまま箱ごとゴミ箱にドン!それきり吸っていません。私の禁煙はこうして、0.5秒で完遂されたのです。 

 だから、まあ1本ぐらい吸っても大丈夫でしょう。煙草を吸った瞬間、きっと私の『今』は20年前の『今』に少しくリンクするはずです。『今』が少しくヤニ色の染まるはずです。 

 コンビニでマイルドセブンを買おうとしたらその銘柄はもうない、強いて言うならメビウスです。と言われました。私はメビウスを買って躊躇なく火を点けました。青い煙が快晴の元日の空にスプレッドしていきます。 

『初煙草』いいんです。一富士二鷹三茄子。そして四煙草、知ってました?

 読んでいたのは幸田露伴の『五重塔』でした。のっそりは腕はいいが、如何せん人間がどんくさい大工。報われない天才に対して巨大なシンパシーを持っていた私がそっと感情移入しようとすると煙草の煙がその邪魔をして、 

 お前は大工じゃないし腕もよくない。ただ聞きかじりのギターを弾いて、バカな夢を見ているだけの、自分の盆百極まりない駄曲に付ける陳腐な内容の歌詞をデコレーションするための語彙と世界観を借りるのが目的の、打算的で貧弱な読書を恥ともしない、無神経で無責任な男だ、と言います。 

 そんな風に読書の邪魔をされる筋交いは誰にもないと怒った私は、そのままその、憎きタバコを握りつぶして捨てました。メビウスは買われて1分でゴミの束になりました。 

 『初怒り』これでいいんです。喜怒哀楽の一番しんどいのを使っちゃいました。 

 2度目の禁煙に成功した私は揚々と足取りも軽く店に向かいました。『初出勤』です。店にはもう2人がいて、あ、あけましておめでとうございます、と元気に挨拶してくれました。 

 あぁ、あけましておめでとうございます。今年も、暇かも知れないけど、腐らず頑張ってお店、よろしくお願いします。 

私はそう言いました。すると今の子がすぐに、なんか煙草臭いですね、と言いました。 

あぁ、そうわかる? さっき1本だけ吸ったんだよ。もう吸わない。 

 『今の子が煙草の臭いに敏感だ』という、今までにない『今』をみつけた私は、それを新年に見つけた新しい『今』で、すばらしい瑞兆だとしました。今の子の母親は、普段は吸わないのですが、機嫌が悪い時、或いは自暴自棄になっている時、自分を汚す意味で煙草を吸うのだと言いました。 

 そうか、煙草にはそんな使い道もあったのか。私はまた嬉しくなりました。他人のこういうサンプルをたくさん持って、私はきっとまたスタジオに籠って新しい曲を書くつもりなのでしょう。しかしそれは20年前の私であって、『今』の私ではないのです。 

 名曲が出来上がる事を期待しつつ、私は家に戻ってきました。家に入ると息子が開口一番、うえ! 煙草クセェ! と言いました。 

 そうか、まだそんなに匂いうか? 私は20年前の『今』が早く消えてくれることを祈りました。 

 20年前、私は、あぁ、もういい、そろそろ出かけよう、と、当時まだ付き合っていた妻に言いました。妻はもうとっくに準備が出来ていて、待たせていたのは私の方でした。勿体ない、と、妻は私が捨てた煙草の箱をみながら言いました。年明けのライヴに間に合わせようと、新曲の歌詞を練っていた私は完全に煮詰まってしまい、初詣に行く約束を、妻に待ってもらっていたのです。結局その曲はライヴには間に合わず、メンバーにも不評で没になるのですが、そんな事とはつゆ知らず、一世一代の名曲のつもりで、私は書いていたのです。 

 息子は『桃鉄』をやりたいけど煙草臭いのが気になって集中できない、と文句を言います。 

 そんなセンシティブなもんか。たかだか双六じゃないか。 私が言うと、 

 カードの使い方で、勝敗が決まるんだよ。と息子が言い返します。 

 じゃあ、煙草の匂いが完全に消えたらもう一回勝負するか。私が言うと息子は、当然、だってまだ21年しか経ってないじゃん。 

と言いました。 

 え? 私は息子のこの突然の、『今』を超越した言葉に一瞬たじろぎましたが、この『桃鉄』には100年モードというのがあるらしく、今はまだその21年目という事だとわかりました。 

 勝負はまだ全然ついてない、と息子は勇ましく言い放ちます。 

 そうだよ! 辞めるから負けが確定するんだよ!勝負の行方なんてな、人生が終わるまで誰にもわかるはずがないんだよ。でも出来ないと思ってやったら出来るはずがないんだよ。自分で決めるんだ。自分がそっち向いてんたらそうなる。逆に出来ると思ってやってたら、それは出来なくても出来た事に、最終的にはなるんだよ。いいか、だから、21年目の自分が今どっちを向いているのか、それをちゃんと精査しなけりゃいけないんだよ。そうじゃなきゃ、つまらない曲の歌詞を書くのに、四苦八苦して、初詣も行きそびれて、おまけに20年も、あんなに大好きだった煙草も吸えなくなってしまうんだよ。  

 な、何言ってんの? と息子は不思議そうに言いました。 

 何でもないよ。まだ、臭いか? 

 うん、だいたい消えた。じゃあ22年目に突入しますか!

 おう!負けへんで!! 

 2人とも、もうお昼だから一旦やめて。お餅、何個食べる? 

 2個!  


  第54章『暗い暗いツボの中』 


 せっかくいい感じに暮らしてたのに……。思わずため息をつきました。そんな事は私には珍しい。 

 正月休みはとても有意義な時間でした。息子ともたっぷりと一緒の時間を過ごせたし、我が家のツンデレ猫も概ね、私を歓迎してくれたようです。だがネットのニュースで『うつ』を発症した人の記事を読んだ途端、ナニモノかがいきなり噛み付いてきたのです。 

 突然ふと心によぎる。それが『うつ』の始まりだったと、その人も言っています。  

  

 仕事に対する熱意も経験も知識も責任感もあって、そしてなにより、私よりもずっと若い。つまりあらゆる面で私よりも可能性に満ちたその人はある朝、まるで糸が切れた様に、何も出来なくなったと言います。そして家族の前で泣き叫んだそうです。 

 もう、無理だ!何もやりたくない! 

 いったいその人の身に何が起きたのでしょうか? きっとその人の取り巻かれている状況に特別な変化があったわけではないのです。変化があったのは、その人がいる次元と、その方向……。 

 私の店には2人の少年、今の子昔の子が働いています。私は以前、2人と私の関係性が少しわかってきた、と言いました。私は2人が、私自身の過去未来だと想像したのです。そう思う事が一番無理がないように思われたのです。私には『今』という厳密な時間はありません。同様に『過去』『未来』という確固とした時間もないのです。私は、今の子今から未来昔の子今から過去、そして私はそのあるかなきかの隙間の『今』という瞬間にしか存在しないモノだと考えたのです。 

 そもそも、私の命は私が生まれた時に始まったのではないと考えています。 

 私には帝国軍人の祖父がいました。血の繋がらない祖母がいました。共産主義に傾倒して投獄され獄死した祖父がいました。絶対に笑わない祖母がいました。父と母がいました。その人達の様々な事情に応じて、私は生まれるしかなかったのです。私の全てはその人達に委ねられ、操られ、やがてそれら鬩ぎ合うベクトルが均衡してジッとして見える一つの点をみつけたのです。そしてそれを『自分』だと決めたのです。しかし本当の自分とはその点を見出したモノの事を言うはずですよね。 

 斯様に『自分』なんてモノはまるで牛乳のキャップの様に利便性を優先した結果、仕方なくあるだけのモノだと思えるのです。 

 しかしそれも結局、私が私の立ち位置から勝手に想像した事に過ぎずないのです。実際には彼ら2人がナニモノなのかという事は相変わらず何一つわかっていないのです。2人とも、いないと言えばいないのです。

 私は彼らをネットのフリー画像の中から見つけ出したと、これまで何度も説明していますね。彼らは群馬県の応桑諏訪大社の道祖神だと。誰がどう見たってそうです。でも私はこの2人から、自分では思い付くはずもない今と昔を得たのもまた紛れもない事実なのです。何のアテもないままにただ暇に任せてフリー画像を眺めていた私がこの道祖神を見てふと、『そうだ、この2人を店のマスコットにして、ネットショップを始めてみよう』という考えに至ったのですから、その事自体が私自身モノでない事は明白です。だってそうじゃないですか? それはどうしたってこの2人を見た瞬間に、突然どこかから訪れたナニモノかという事になるのです。 

 一般には『ひらめき』、などと言いますが、『ひらめき』の何処に自分が含まれていますか? 含まれていないからハッと思いとどまるのでしょう?含まれていたらただ当たり前に納得するだけで終わるでしょう?登別クマ牧場のヒグマが、飼育員から与えられたペレットを、あたかも自分で獲得したように誤解しているだけでしょう。 

 理解とは誤解を正解に曲解する事を言うのでしょうか? いいえ、絶対に違うと思います。じゃあ正解とはなんでしょう? 何処にあるのでしょう? 妥協の産物として以外の正解が、果たして本当にあるのでしょうか? 

 現にこうして普通に暮らしている様でいても、実際は果てしない謎を背負ったままです。だって、携帯電話の仕組みを把握してますか? ナビは? WIFIは? 

 心のツボの奥にはこれらの他にも、理解しえない理屈や道理が漆の様に不気味に怪しくたっぷりと溜まっているのがわかるでしょう。私はどうしてそんなところを覗いているのでしょうね。そんなところを覗くから不安になるのです。不幸にもなるのです。その闇の中にはおそらく、誰が望むどんなモノもありません。ただ考え付くすべての可能性がどんよりとして眠っているだけなのです。 

 でも普通、覗くでしょ? それはそういう事実を目の当たりにしたからです。つまり我々は『気付かない』という事を恐怖するのではなく、『気付いていない』という事に対して漠然と恐怖するのですね。 

 初詣に行ってもうだいぶ経ちますが、あれから何の音沙汰もありません。日常はウソの様に元通りなって、まるで正月などなかったようです。私の初詣も既読スルー。勢いで買った破魔矢だけが空しくキッチンの端に置いたままになっています。 

 或いは正月など、本当になかったのかもしれません。私は永遠にこの月日にくぎ付けになっているのかもしれないのです。『時間が流れる』と言いますが、もし流れているとしたら、それは過去も未来も一緒に流れているのでしょう。 

 あぁ、まだまだ話し足りない。足りないが、どうやらここらで時間のようです。今、玄関が開く音がしました。初詣から帰ってきたようです。去年はいろいろ、彼なりに大変な一年だったようです。何を願ったのか、やけに嬉しそうにな声が聞こえます。この屋の主はきっと、この書き込みを見て驚く事でしょうね。ただ、彼は今かなり混乱し心を痛めてますから、或いはこんな事を、自分は書いたのかもしれないと、いつものように弱気な合点をするかもしれません。 

 私ですか? 私は、いろんな名前があるのですが、そうですね、一番わかり易いところで、『皇極法師』と名乗っておきましょう。彼の『うつ』と一緒にお暇したいと思います。 

 では失礼いたします。 


      第55章『AB型のさきえさん』 


私、AB型だからホント、自分が次に何をするのか、ホントにわからないの。 

 さきえさん(漢字がわからない……)と一緒に働いていたのは、ほんの1~2年だったと思います。 

 本人が言うとおり、彼女は突然、職場の隣の商店の息子と結婚して店をやめました。それからも何度か見掛けたのですが、結婚する前と何も変わらない様に見えました。実際、何をするかわからないという人ほど、結果として的を射た事をしている気がします。 

 本当はこんなふうに、思い切った決心などせず、なにも深く考えず生きるのが一番健康的でいいのでしょうね。でもそれが本当は一番大変で才能が必要なんですよね。 

 某、凶悪犯罪組織の首謀者の死刑が執行された時、私はさきえさんに、彼をどう思うかと訊ねました。彼女は、少し考えてから、結局何も答えませんでした。 

 可哀想? 

 そうですね……。 

 でも何千人も被害者を出した事件の首謀者だよ。死刑になっても仕方がないと思う。私がそう言うと、さきえさんは、うん、私もそう思います。と言いました。 

 でも可哀想? 

 そう考えれば確かに、そんなに可哀想でもないですね。 

 あなたにはね、自分の意見と言うか、考えはないの? 

私は、ある種の愛情をこめてそう訊ねたんです。私は自分の考えや言う事がコロコロ変わる人が嫌いではありません。人に操られやすく、騙されやすく、流されやすい人ほど穏やかで、周りを信用している様に見えるからです。でもさきえさんはこう答えたのです。 

 私の意見は私以外の誰かにとってはただのデタラメなんです。デタラメはなるべく言いたくないんです。 

 じゃあ、自分の意見や考え方には、何の意味も価値もないと? 

 とんでもない!違いますよ!私にとっては何よりも大切ないモノです。だから絶対に譲りませんよ。私はこう見えて、とても頑固で強情なんです。 

 でも、他人に言う事じゃない、と? 

 口に出すとその瞬間、ウソになるのが、なんだかとても残念で勿体なく感じるんです。だから無暗に言わない。

  

 そんな風に、とても強情で何一つ答えてくれないさきえさんはでも、血液型は? と訊ねた時だけ、AB型です、と答えてくれました。私も同じ血液型です。 

 そうか、AB型か。なんか連帯感あるよね、AB型同士って。 

 そうですね。嫌われモンですからね。 

 でも、『天才肌』ってよく言われるよ。言われない? 

 言われます。でも何回言われても、『天才肌』の意味が分からない。『天才』じゃなくて『天才肌』って、『中華』に対しての『中華風』みたいな感じ?つまり『中華』じゃない。 

 つまりつまり、天才じゃない、って事? 

 そういう事かなって思って、別に嬉しくもない。 


 今の子は、自分の体が成長しているのを恐怖しています。 

 昔の子は、自分の体が成長しているのを喜んでいます。 

 仮に2人が死んだ年齢を同じ11歳ぐらいだとして、昔の子が死んだのは戦後まもなくだと思われます。今の子は、母親の行動から察するにおそらく、数か月、或いは数年前ぐらいだと想像できます。今の子は、 

 たったの11年しか親子でいていられなかった。そんな申し訳ない気持ちがどうしても拭えないんです。もっとママを信用すればよかった、話せばよかった、甘えればよかった。そんな気持ちと、虐待の恐怖が一緒に蘇って息が詰まる……。いっそ完全に僕を忘れてくれれば、その時は僕は何事もなかったような顔をしてまたママの所に戻れる気がするんです。 

 実際そうだと思いです。昔の子は、 

 あんな時代、11年でも生きられた事に感謝してるよ。長生きした人と比べたってしょうがない。長生きして人をたくさん迷惑かけて、大勢人を殺して恨まれながら死刑になるヤツもいる。それに比べてば俺の命は綺麗だ。そして月日とともに、俺の悲しみはどんどん忘れられていく。つまり俺の悲劇はどんどん癒されていくってことだ。それが楽しくなくてなんだろう。これも、あの父親と母親の間に生まれたからだと感謝も出来るんです。 

 これも実際そうだと思います。 

 11年しか生きられなかったと、11年も生きられた。同じ年齢で死を迎えた子供同士、こんなにも違うんですね。 

  

『自分』は最初にみつける真実です。でも一般の人はそうは考えないでしょう。そこからすべてが始まっている様に思う。命も然り。そしてそこにある真実だけをただ見極めようと目を見張る。 

 しかしさきえさんとか、今の子昔の子のような人にとっては、そこは多くの事物の隙間の様に、フラフラと形を変える陽炎の様なモノで、その好き嫌いは自分で判断する以外にはどんな物差しもなく、是非もないと考える様に見えます。 

 凶悪犯罪組織は今も名前を変えて活動しているようです。私の仕事現場の近くの公園に、赤いのぼり旗がずらりと並んでいます。それは伏見稲荷神社の鳥居を連想させます。何か、結界の様に、邪悪なモノを封じ込めているようです。のぼり旗には、 

『〇〇〇(組織名)は我が町には要らない!』 

 と書いてありました。 

 先日、さきえさんが3人目の子供を無事出産したとききました。おめでというございます。あなたの子供に生まれて、その子はとても幸せ者だと思います。 

 最近明るい話が少なかったので、もう春も近い事だし、最後に少し明るい話を入れてみました。 

  

covid-19 2021 Dec Tokyo Japan


12/31(金)

78

12/30(木)

2235 318

2553 64人

2.50%

12/29(水)

3333 451

3784 76人

2.00%

12/28(火)

4246 (5094) 682

4928(5778) 46人

0.93%(0.79%)

12/27(月)

8110(8605) 372

8482(8977)) 35人

0.41%(0.38%)

12/26(日)

1616 (2058) 253

1869(2321) 43人

2.30%(1.85%)

12/25(土)

3778(4550) 473

4251(5023) 38人

0.89%(0.75%)

12/24(金)

4075(6213) 427 39人

4502 (6640)

0.86%(0.58%)

12/23(木)

5269(5911) 423

5692(6334) 37人

0.65%(0.58%)

12/22(水)

5974 (6290) 410

6384 (6700) 40人

0.62%(0.59%)

12/21(火)

6893 (7057) 354

7247 (7411) 38人

0.52%(0.51%)

12/20(月)

7485 (8780) 366

7851 (9146) 11人

0.14%(0.12%)

12/19(日)

1702 (1824) 149

1851(1973) 33

1.78%(1.67%)

12/18(土)

3786 (4062) 283

4069 (4345) 28人

0.68%(0.64%)

12/17(金)

3817 (7011) 157

3974(7168) 20人

0.50%(0.27%)

12/16(木)

5326 (5937) 0 (89)

5326 (6026) 30人

0.56%(0.49%)

12/15(水)

6194(6297) 0 (148)

6194(6445) 29人

0.46%(0.44%)

12/14(火)

6401 (6528) 0

6401 (6528) 24人

0.37%(0.36%)

12/13(月)

7357 (8531) 0 (100)

7357(8631) 7人

0.09%(0.08%)

12/12(日)

1756(1853) 0 (117)

1756 (1970) 13人

0.74%(0.64%)

12/11(土)

3776 (3955) 0

3776 (3955) 20人

0.52%(0.50%)

12/10(金)

3447(6860) 0

3447(6860) 25人

0.72%(0.36%)

12/9(木)

5134 (5609) 270

5404(5879) 17人

0.31%(0.28)

12/8(水)

5785 (5906) 0

5785 (5906) 21人

0.36%(0.35%)

12/7(火)

6467(6538) 89

6556 (6627) 19人

0.28%(0.28%)

12/6(月)

7207 (8743) 0

7207(8743) 7人

0.09%(0.08%)

12/5(日)

1752 (1930) 0

1752(1930) 20人

1.14%(1.03%)

12/4(土)

3865(4241) 0

3865(4241) 19人

0.49%(0.44%)

12/3(金)

3568 (6743) 0

3568 (6743) 14人

0.39%(0.20%)

12/2(木)

5613 (6138) 0

5613 (6138) 11人

0.19%(0.17%)

12/1(水)

5273 (6030) 0

5273(6030) 21人

0.39%(0.34%)


クローンとは?


《クローンとは?・・・姿ばかりじゃなく行動まで同じという事か・・・。》


まず、クローンを作ってみます。編集の『クローン →クローン作成』をクリック。



クローンが生まれました。重なってるのでドラッグしてください。コピーとどこが違うのでしょうか??


複製元の図形を選択ツール(黒い矢印)で選択して上にドラッグすると、クローンも同じ形に変形します。ここはコピーとは違うところです。


同じように、色も変わります。今、クローンは複製元の言いなり。まるで同じ動きをしています。でも、色だけ変えたいんだよね。という事ありますよね。だったら、このまま色だけ変えられればいいんですよね。わかりました。


複製元のフィル/ストロークをいずれも『アンセット』にします。するとやっぱり、クローンも真っ黒に。


クローンのフィル/ストロークで単色塗りを選択して、フィルを赤ストロークを緑にしました。形だけ複製されたことになります。


出来ました。いかがでしょうか。