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covid-19 2022 July Tokyo Japan


7/31(日)

31541人

7/30(土)

33466人

7/29(金)

25860 34

25894 36814人

**********

7/28(木)

25439 21

23460 40406人

**********

7/27(水)

33547 15

33562 29036人

86.51%

7/26(火)

40040 0

40040 31593人

78.90%

7/25(月)

37987 (50423) 0

37987(50423) 22387人

58.93%(44.39%)

7/24(日)

8622(10063) 0

8622 (10063) 28112人

**********

7/23(土)

25988(28098) 27

25995 (28125) 32698人

**********

7/22(金)

27827(44549) 25

27852(44574) 34995人

**********(78.50%)

7/21(木)

27530 (32520) 108

27638(32628) 31878人

**********(97.70%)

7/20(水)

36655 (38428) 62

36717(38490) 20401人

55.56%(53.00%)

7/19(火)

41434 (51297) 11

41445 (51308) 11018人

26.58%(21.47%)

7/18(月)

7964 44

8008 12696人

**********

7/17(日)

7415 258

7673 17790人

**********

7/16(土)

19253(21249) 30

19283(21279) 18919人

98.11%(88.90%)

7/15(金)

23321 (31235) 12

23333 (31247) 19059人

81.68%(60.99%)

7/14(木)

23545 (26981) 42

23587(27123) 16662人

70.64%(61.43%)

7/13(水)

26861(28376) 51

26912(28427) 16878人

61.71%(59.37%)

7/12(火)

24643(30286) 80

24723(30366) 11511人

46.55%(37.90%)

7/11(月)

34784(36566) 44

34828(36610) 6231人

17.89%(17.02%)

7/10(日)

5144(6403) 0(4)

5144 (6407) 9482人

**********

7/9(土)

12619 (14856) 63 (93)

12682 (14949) 9716人

76.61%(64.99%)

7/8(金)

15632(21033) 3

15635(21036) 8777人

56.13%(41.72%)

7/7(木)

18648 (19492) 10

18658 (19502) 8529人

45.71%(43.73%)

7/6(水)

15466(18822) 22

15488(18844) 8341人

53.85%(44.26%)

7/5(火)

18753(20088) 23

18776(20111) 5302人

28.23%(26.36%)

7/4(月)

23509(24251) 4

23513(24255)2772人

11.79%(11.42%)

7/3(日)

3696(4768) 1

3697(4769) 3788人

**********(79.42%)

7/2(土)

8004(9810) 0 (15)

8004(9825) 3616人

45.17%(36.80%)

7/1(金)

13333(15299) 2

13335 (15301) 3546人

26.59%(23.17%)

『いきてるきがする。』《第9部・夏》


もくじ



第69章『運命を片時も疑わずに。』 

  昨夜は珍しく雨が降ったので今日は幾分過ごしやすいです。この夏は梅雨が早々に明けてからの猛暑日続きで、地面も空もカラカラに乾燥している様子だったので、それはそれで、まあよかった。 

 今夏、私は何年かぶりに帰郷することが出来ました。生まれ故郷の京都府北部まで約600㎞を、息子は一足先に電車で、私と妻は後から車で。久々に夫婦2人でのロングドライヴで、よそよそしいか、或いは物足りないのかと思ったら意外と楽しかったです。心秘かに、「お!まだ、デートって、出来るんだ!」なんて思ったりして……。 

 サービスエリアごとに止まっては、買いもしないのに土産物売り場をウロウロ、そしてフードコートで、私は仕方なしにカツカレー、妻は仕方なしにうどんを食べ。 

 この『仕方なしに』が、要するに『旅情』なんです。 

「あと何キロで○○サービスエリアがあるけど、そこまで行っちゃうとお昼の時間に掛かっちゃうから、それならその1つ前のサービスエリアで早めにチャチャっと済ませて、先を急いだほうがいい。あんまり遅くなると、向こうにも迷惑になるからね」 

 そんな事を算段しながら妻と私は『仕方なし』に食べる。こうして少しでも『日常』を遠ざけようとするんですね。もちろん完全に日常を離脱するわけじゃない。 

 最後に「あぁあ、あっという間の夏休みだったなぁ……、」と嘆息を漏らす事は、もう旅行に行く前から織り込み済みで……。 

 2年ぶりに見た故郷は、それでも少し変わっているようでした。両親が存命中に住んでいた家は今は他人の手に渡り、目印だった焼肉屋の看板の色は変わっていました。実家も改装中で、私の知っている実家はもうありませんでした。そして一足先に帰った息子は我々を見るとやや残念そうな顔をました。 

 わかる! それ、正しいぞ! 

 日常がちょっと戻ってきた感じだろ? それでちょっと、ガッカリしたんだろ? わかるわぁ~。 うん、それ、正しいぞ! 

  

 何だか、今日はすべてが肯定的です。普段、何事にも自信がない私には、些細な事にまですぐに根源的な平等性を求めるという悪い癖があるのですが、根源的な平等など、もとより欲しい訳ではなく、私はただ、自分の大切な人だけが幸せになればいいと、つまり自分だけが幸せであればいいと考え、その上で世界が平和であれば、それに越したことはないと考えているだけです。その上で、全ての行動をしているのです。 

 着いた日の夜、中学時代のバンド仲間が集まってくれて、セッション大会を催してくれました。なんと40年ぶり。 

 久々の大きな音で演奏を回します。Eのワンコード。中学時代の『今』が頭をもたげます。 

 おい、アイツどうした? アイツ、どこにいる? アイツは? 帰って来てるの? アイツ、今何してる? 

 必ずそんな話になりますよね。でも地元に住む同級生は、あまり知りませんでした。さぁ、知らんで……。帰って来てるんかな。全然会わへんけどな……。 

 知るわけないよね……。人生が分岐する前の『今』が目の前に広がりました。あの頃と同じ事が、今目の前で起きている。そこに自分もいる。とても妙な感じです。そりゃ、弾いてるフレーズも、喋っている内容も、録音して聴き比べると当時とは全然違うでしょうが、それはそんな事をするからです。もともと一つしかない『今』に2つの要素を無理やり捻じ込んだりするから、そういう矛盾めいた事になるのです。 

 それはあたかも、ハマチ『ハマチ』と名札を付けて3年後、明らかにブリになっているのに『ハマチ』と書いてあるのを見て、矛盾だ!と言っているのと同じ様な滑稽です。 

              ハマチとブリ。  

 京都府北部ハマチブリは、今も昔もメチャクチャ美味かったです。本当に、多言無用! メチャクチャ美味い! 未来永劫この一言で充分です。 旨味が口いっぱいに……、プリップリの……、一切無用!! 

 私は東京に来てから『甲殻アレルギー』を発症して、エビ・カニは一切食べられなくなっていたのですが、此度、故郷で食べたエビ・カニにはその症状が全く出ませんでした。『何故そんな危険な事を試したのか?』 と言われるかもしれませんが、それは発症する前の『今』の私の判断だったのかなぁ、と思わざるを得ません。 

 緑は?  私は出来るだけさりげなくそう訊ねました。

               * 

「緑君の、お子さんが亡くなってな」墓参の帰り、兄が言いました。緑は私の同級生で、私と違い、スポーツマンで、人気者で、明るい奴でした。 

 子供が、亡くなる。 

 聞いた途端、私はまた、おせっかいに、どうしたの?どうしたの?と、まるで面白半分みたいに緑の心に踏み込もうとしています。 

 お前はパッとしない奴だった。 俺は人気者で、いつも楽しく笑っていた。 

 私は緑に無理矢理そんな事をしゃべらせてみました。でも緑は全然私を相手にしてくれません。そりゃそうでしょう、緑はそんな事を言う奴じゃない。そして感じたのは、罰は当たらない。因果応報など無い。という事でした。 

 あればいいですよね。みんな納得できるなにか。でもないんです。 

 あれは、私のために生まれてくれた。あれのおかげで、私はあれの父親というプライドを持って、一生誇り高く生きていける。 

 私はまた、緑にそんな事を無理矢理言わせてみました。でもダメです。緑の悲しみを、私はどうしても、自分本位に探ろうとしてしまうのです。そして自分勝手に安心しようとするのです。 

 緑君か……、さあ、あんまり見ぃひんけどなぁ。どこにおんなるんやろ。 

  

 今を羨む未来は要らない。 

 私はギターを弾きながら何度もそう頭の中で呟いていました。 

Eのワンコードは何の脈絡もなくただ続きます。そこに、我々中学生が、楽器を持って暴れているのです。何かいい思い出を作ろうとして、何か、熱い思いを遂げようとして。 

やがてそこに緑君がまざりました。そして、緑君の子供も。 

 ワンコードは、さすがにきついな。ネタが尽きる。 

そう言ってみんなで笑いました。 

 今を羨む未来は要らない。 

 私も笑いながらもう一度、そう頭の中で呟いてみましたが、もとより『今』は1つしかないのだから羨みようがありません。私の今は、中学生の頃からずっとここにあります。そしてそれは、今日集まってくれた同級生も、緑も、緑君の子供も同じです。14歳という若さで亡くなった緑君の息子に、私はこう言ってみます。 

 こんな、使い道のない様な時間でも、いい? 

 彼はそれでもいいと言います。私は自分がとてつもない財産を手にしている事に、気付いていないのです。それが『今』だという事にも。 

 仕方なしに食べるカツカレーも、甲殻アレルギーも、Eのワンコードも、私の知りうるすべてのモノは燦然と輝く宝石なのです。 

 1個2個、なくなってもいい? いいえ、なくなる事はないんです。 

 いつか見渡す事もなくなって、やがて見失っても、それはありつづける『今』なんですね。気持ちが揺らぎます。でもいい。千々に乱れます、でもいい。『今』が、同級生が、緑が、緑の子供が、私の『今』をしっかりと支えてくれるから大丈夫です。 

 ライヴハウスから出て、ありがとうね、楽しかった。私はそう言いました。すると言葉は夜空全体に広がる様にすぐに消えていきました。代って夏草の匂いがしました。 

 うまく言えませんが、なんとなく、伝わりました?

 見えないモノこそ確かにあるという、今日は、なんとなくそういうお話でした。 

        第68章『裁判について。』 

 何も話す事がないので、今日は私が今抱えている裁判について話をします。なるべくかいつまんでお話しするつもりですが、この裁判に至るまでの経過がいささか複雑なので、ひょっとして面倒くさい話になるかもしれません。 

 ご存じの通り、私はここに『日日彼是色々面白可笑し。』という変な名前の店をやっていて、その店は『昔の子』『今の子』という少年が2人に切り盛りしてもらっています。2人にはちゃんとした名前もあるのですがあえて発表はしていません。彼らは働き者で、とても賢いいい子達なんですが、いつまで経っても少年のままでいる事に私は不憫さと責任を感じています。彼らの時間は止まっているのです。 

 でも皆さんご存じの通り、時間など少しでも体を動かせば誰にでも簡単に動かす事が出来ますよね。他にも、モノを考えたり、眠ったり……。何でもいい訳です。とにかく、何かをすればそれで時間は動くわけです。 

 しかし彼らの場合、その時間が他の誰とも共有されないという妙な状態にあるのです。 

 時間が共有されない。しかしこれは何も彼らに限った事ではありません。我々も一緒です。我々はただ、全世界の100億人と時間を共有しているに過ぎないのです。 

 しかし彼らの場合、時間の進む方向がまるで風船が膨らむように一定でないためにこういう現象が起こります。彼らの時間は他の誰にとっても動いている事にならないのです。そしてそんな現象が起きるのは偏に、私が臆病モノであるせいなのです。 

 謙遜したフリして自分に特殊能力があるかのようにひけらかすな、と言われるかもしれませんが違います。それだってあなたと同じです。あなたはその心臓で、その瞬きで、その喜怒哀楽で、自分の時間の進む方向を自分で決めているのですよ。その証拠に、あなたの行動には不自然なところばかりです。それはあなたが大好きな家族や友人との時間を共有したいばかりに、毎日そんな不自然な行動をとり続けているからです。何でそんな髪型なんですか? 何でそんな名を名乗り、そんな服を着て、そんなところに毎日通ってるんですか? まるで不自然です。 

「自然にして」と言われたって出来るわけがありません。そんな事をすると死んでしまうからです。  

 我々に彼らの放射状に広がる時間を想像する事は出来ません。いろんな『今』があるのではなく、放射状に広がりゆく『今』が1つあるのです。それはパラレルワールドとも違います。『今』とは、瞬間であろうと永遠であろうとたった1つの『今』なのです。 

  

 しかしそんな事を言って実際を煙に巻いて誤魔化しているようじゃあ、いつまで経っても私は彼らに進むべき方向を示せないのです。彼らがいるのは、私にとっては半分が想像で半分は現実です。実際私がここにこうして店をやっていて、そして少ないとはいえ売り上げを上げているという事実が彼らに起因している以上、彼らをただの創造物として片付けるのには無理があるのです。 

 そして私が臆病だというのはそこです。もしその気なら、私は彼らの放射状の広がる時間をぼんやりと眺めているのでなく、実際に彼らのために土地を借り、そこにこの店を忠実に再現して実際に彼らを働かせるべきなのです。そうやって彼らの時間を想像の亜空間から私の現実に手繰り寄せるべきなのです。それが何故できないのか? 私は借金をしてまでそれを亜空間から取り戻す自信も度胸も全然ないからです。もしそう出来たら、きっと『今の子』『昔の子』は、ミッキーマウスとミニーマウスの様に、さっそうとその存在を実際に知らしめる事が出来るでしょう。ウォルトディズニーの頭の中に住んでいた2匹のネズミは、今や紛れもなく現実のモノになっているじゃないですか。あ、あれ、着ぐるみじゃないですからね。 

 今のままでは、彼らがいくらお客さんと一生懸命に何かを話したとしても、色々モノを売ったとしても、それはお客さんにとっては現実とはならず、『今』『過去』『未来』も判然としない、なんだか曖昧な記憶となって、「あぁ、なんか変な夢を見た……」となってしまうのです。それも皆さんにも経験がある事でしょう。夢を現実の残滓の様に言う人がいますが、あれも違います。 

 あなたはあんなに巧緻な世界を、本当に自分1人で作り出していると思うのですか、夢に出てくる人の言葉にハッとさせられたり、目が覚める様な美人が現れたりするのも、すべて自分の想像だというのですか? 

 あり得ません。あれは自分の『今』に含まれる現実の一つなのです。 

 皆さんの時間だって本当は放射状に広がっているんですよ、これは本当です。 

                   *

 私はある日あるご婦人から、彼ら2人をこの店に『監禁』していると非難されました。それは『今の子』の母親を名乗る女性で、彼女は、息子を自分のもとに返せ! と私にしつこく詰め寄りました。しかし私は返しませんでした。なぜならば彼女は『皇極法師』と名乗る怪しい男に傾倒するあまり彼を虐待し、死に追いやっていたからです。しかし彼女はそんな事は知りもしません。ただ、自分は愛する我が子を守ろうとして、あらゆる手を尽くしたと、本気でそう信じ込んでいるのです。 

 そして『今の子』にこの母親と名乗る女性の事を訊くと、彼は、エキストラさん だと言いました。本当に驚きました。

 僕がこうあって欲しいなぁ、と思った時、たまたま向いていた方向からやってきた母親という、エキストラさん。とても都合がいい、エキストラさん……。 

 彼はその、母親と名乗る女性に対し、ウソだ!助けてくれなかったじゃないか! と泣きながら叫びました。母親は、 あなたは私の最高の息子よ。今も、これからも。と何度か繰り返した後、『今の子』を信じられないほど残酷な言葉で叩きのめしました。(第15章『皇極法師』)私はそれをこの目で見たのです。

 しかしそれでも『今の子』は、その女性の事の、都合のいいエキストラさんです。と言って笑ったのです。 それがつまり『今』なのです。

 その時の私は、現実とは『風景の様にすべてを巻き込んであらゆる角度からあらゆる現象を同時に見せてくるトンボの眼鏡だ』と気付きました。そしてそれ以来、事ある毎に非難を浴びてくる女性を私は悉く無視してきましたが、そのせいでとうとう『被告』になってしまったようです。 

  

                    * 

  ややぶ厚いその封筒に入っていた数通の書面の1枚目は『訴状』というモノでした。私は『訴状』というモノをこの時生まれて初めて見ましたから、果たしてそれが『訴状』として正しいのか、間違っているのか、判断できません。 

『訴訟』には私が、いつ、誰に、どんな事で訴えらえたのかが詳細に書かれていました。 

                   * 

 あなたにまず、原告からの訴えを……、あ、その前に、あなたはこの手紙を、いつ読んでいますか? 朝ですか?それとも昼?夜? 

 しかしそれはそんなに重要ではありません。あなたはきっと自分の都合のいい時間に読むでしょうから。私にとって一番重要なのは、あなたがこの文章を読んでいるという事は、私はもう二度と、最愛の家族に会えない状態にあるという事です。全く、あのご婦人は凶暴で、凶悪で、そして菩薩の様な愛にあふれた方です。私はそんな人に初めて会いましたし、きっとあなたもそうでしょう。まあ、実際の彼女がどういう人間か、もう私には知る由もありませんが。 

 彼女の話によると、あなたは〇年〇月〇日、埼玉県入間市に住む少年Aをアルバイトをしないかと言葉巧みに誘い出して自らが経営する店舗『日日彼是色々面白可笑し。』内に監禁、性的暴行を加え、脱出を試みた少年を捕まえ、惨たらしい形で殺し、どこかに連れ去って捨てました。私は彼女からの訴えを聞き終わるのに10年もかかった気がしました。それほど、あなたが彼女の息子にやった事は、人類史上まれに見る程の残酷さでした。彼女は、あなたを、絶対に許さない。絶対に仕返ししてやる。でも、私は立派な社会人なので、まさかこの人の家に火を付けたり、こっそり近づいて、頭を切り落としたりなんて、そんなことが出来ようはずがありません。 

 だからこの弁護士に相談し、訴状を書いてもらったのです。彼はおっとりとした人で、もう弁護士の仕事はあと2~3年で区切りをつけて、あとは妻と田舎に引っ越して畑仕事でもやるつもりだとおっしゃいました。 

 あぁ、言いましたね。確かに、私は彼女にそう言いました。すると彼女はその菩薩のような笑顔で、まあ、素敵ですわね、私も、出来ればそういう老後を送りたかった……。でももう無理です。私だって、あの子がもうこの手の中に帰ってこない事は十分承知なのです。でも、私はどうしても諦められない。だから、あの男の助けがいる。いえ、あの男の助けなど要りません。あの男を利用して、どうしても、人類、いえ、生きとし生けるものすべての常識を覆すべく方法で、あの子をもう一度、この手の中に抱きしめたいのです。その方法が、実は1つだけ、あるのです。 そう言いました。

 私は最近、耳が遠くなったせいで、上品なご婦人の腹筋の弱い声はすこぶる聴きにくかったのですが、でもその話の内容が、その声の調子とあまりにもかけ離れていたので、私は思わず身を乗り出していました。 

 「私は○○(『今の子の本名』)君を殺した人間を知っています。その人はきっと、あなたもご存じだと思います。」 

 彼女が上げたのは、ある有名な宗教家の名前だったのです。 

 あの男が、変態性欲者なのは有名な話です。そして男は息子を巧みに誘い出して、惨たらしい形で命を奪った。

 でもそれならばなぜ、あなたはこの人を訴えるのですか。 

 私のこの質問を待っていたかのように、彼女はこう答えました。 

 彼は私がその宗教家に唆されて、我が子をその手に掛けたと言いました。でもそれこそ、図自分がやった告白している事に、彼はまだ気づいてない。『皇極法師』というペテン師に……、フフフ、どう思います?先生。私とこの人と、どっちが騙されているのだと思います?

 私は、2人とも騙されていない。問題があるとすればこの『皇極法師』だろうと思いました。そうして私はまんまと罠に落ちたのです。私は両方を否定できない事で、自らの時間を見失った。夫人はその時、急に艶めかしい声でフフフ、と、また笑いました。

 お気づきですね。先生にあった時間はもう止まっているのです。そして私とこうして話をしている時点で、先生はもう、私の『今』以外、何処へも行けない。わたしだけの弁護士になったんです。 あの男は、酷い男です、先生、お願いです。私にはもう、あの男を訴えて、あの男の店から我が子を取り戻す方法がないのです。

 私はあとずさり、ドアを開けようとしましたが感触がありません。壁を叩いても、まるで感触がありません。 

 さ、先生、彼女はそう言って私に覆いかぶさりました。私は、何十年連れ添った妻と、赤ん坊の頃からの息子と娘の笑顔が、川の支流の様に枝分かれして流され、やがて見えなくなるのを感じました。 

 彼女は、凶暴で、凶悪で、そして、菩薩の様な愛にあふれた人です。 

 へぇ~……。 

 彼女の現実の中で、私がそんな事をしていたなんて、全く知りませんでした。 

 次回の裁判は〇月〇日だそうです。 

  第67章『それが座敷童です。』 

 突然ですが、私の実家には『座敷童』が住んでいます。そうです、あの『座敷童』(ざしきわらし)です。 

『座敷童』は古来より古い家に住む妖怪として知られています。私の実家は築30年ほどのごく普通の民家ですが、本家は300年以上続く造り酒屋で、母屋はその創業当時からある古い建物で、今の家を建てる前、私の家族はその別棟に住んでいたのです。田舎の旧家の御多分に漏れず本家の敷地はとても広く、母屋を出ると庭は里山から森へと続き、京都の女酒に最適な軟水の湧き水が川となって流れ、夏にはそこでスイカや夏野菜を冷やして食べ、秋には松茸や栗を収穫し、冬には茅葺きの大屋根の軒下に祖母がたくさんの吊るし柿を並べ、春が来るとそこに燕が巣を掛けました。まあ正直幼過ぎて、その頃の記憶はあまりないのですが……。 

 『座敷童』が住んでいる間、その家は繁栄するが、いなくなると途端に寂れて途絶えてしまうと言われています。だから『座敷童』の存在に気付いたら出来るだけ長くとどまってもらう様に、そりゃあもう丁重に、おもちゃを置いたり、食べ物を備えたりと、いろいろ気を使うと言います。 

 いえいえ……、 

 そんなのは全部ウソです。『座敷童』とはそんな、人の運命を弄ぶような極悪非道なモノじゃない。じゃあいったい、どんなモノだと思いますか? 

  

 よく聞くのが、子供たちが遊んでいると、知らない顔は1人もいないのに人数を数えると1人多い、なんて言いますよね。それは『座敷童』の仕業だと。自分を数え忘れていた、なんてオチを付けたがる人もいますが違います。実はそれが座敷童なんです。ただ彼ら、或いは彼女らにとって自分は常にその『1人』の方だという事です。 

  

 さっきまで一緒に楽しく遊んでいた友達が、ふと見れば誰一人知ってる顔がなくて「おい!〇〇!早くボール回せよ!」なんて言われたって、自分の名前は、〇〇じゃない……。 

 そしていきなり、そのうちの一人と目が合って、 

「君、誰だっけ?」 と言われる。  

               

 最初に『座敷童』の存在に気付いたのは私だと思います。子供の頃、喘息持ちで体が弱かった私は、同級生の男の子と遊ぶ事は滅多になく、遊ぶとしても女の子か、或いは年下の子とばかり遊んでいたような記憶があります。 

 ある日、私は近所に住む2つ下の利久君(仮名)の家に遊びに行きました。彼は私と同じ喘息持ちで、同じ病院の同じ先生に診てもらっていたので、よく同じ日に学校を休んで、私の家の車で一緒に病院に行っていたのです。その特別な感じはまるでキャンプにでも行くようで、痛い注射の事も苦い薬の事も忘れて、私はいつもワクワクしました。その長い待ち時間にも私達は、普段ならどうでもいいような、あっち向いてホイ!王様ジャンケンで大いに盛り上がり本当に楽しく過ごせたのです。おやつにはうちの庭で取れた栗を茹でてたくさん持っていき、2人で分け合って食べました。利久君は私の祖母が茹でた栗が大好物だったのです。 

 利久君の家で車を買ってからは一緒に病院に行くことはなくなったのですが、私は彼にも自分と同じ時間が流れている事を疑いませんでした。私が遊びに行けば利久君もきっと喜んでくれる。そしてまた楽し時間が過ごせると、そう信じていたのです。しかし彼と私がそうして楽しく遊んでいたのは、今思えばその時からもう2年も昔の事でした。 

 私を見た利久君の態度は私が思っていたのとは全く違っていました。そりゃあそうです、子供にとっての2年はとても長い時間ですから。絶対に歓迎されると思っていた私に利久君は、「君、誰だっけ?」と言ったのです。私は冗談だと思って笑おうとしましたが、その時、利久君の本当の友達も遊びの来ていて、そしてその子も、「この子、誰?」と言ったのです。利久君は「知らない」と言いました。

 その瞬間に、私の名前も顔も消えました。そして私は、いきなり現れた誰も知らない変な奴になってしまったのです。家の中には、私がやった事もないゲームや読んだ事がない漫画がたくさん散らかっていました。そして彼らの楽しい時間は明らかに私によって中断させられていたのです。私が利久君と一緒に食べようとポケットいっぱいに持ってきた茹で栗にも、利久君はもう見向きもしませんでした。そして、 

 「汚ない食い方しないでくれる。ママに叱られるからベランダで食べて」 

 と言いました。私がベランダに出ると、利久君は内から鍵を掛けてしまったのです。 

 開けて!開けて!と言いましたが、ガラスの向こうで意地悪く嗤う利久君の顔をみてすぐに私は、新しい遊びが始まったことを悟りました。そして、これはもうダメだ、と思いました。すると突然、空がむくむくと沸きあがる様に迫って来て、太陽が燃える音が聞こえ始めたのです。そうして私の知らない世界が、みるみる目の前に広がったのです。私はきっと、この空や太陽の中に取り込まれて消えてしまうんだろうなという、むしろ根源的な感覚をとても新鮮に感じたのです。 

 見るとベランダの隅には利久君が赤ちゃんの頃に遊んだと思われる砂場セットや、汚れた植木鉢がたくさん置いてありました。そして気付くと私はもうそれらと同化し始めていたのです。一応、砂場セット、一応、植木鉢。ですが今はもうナニモノでもなくなったそんなモノ達に……。 

 食べやすいようにと祖母は栗を茹でた後、包丁で軽く切り目を入れてくれていましたから、栗の皮は素手で簡単に剥けます。そして食べると、栗の優しい甘さが口いっぱいに広がります。しかし、食べれば食べるほど、その優しい甘さは私を悲しくさせました。祖母が付けてくれた包丁の傷が、そのまま私の心の傷となって激しく痛めつけるのです。祖母の優しさは私が食べる程に惨たらしい残骸となってベランダに散らばっていきました。 

 利久君はやがて、私をベランダに締め出したまま友達と遊びに行ってしまいました。私はとうとうこの世の中でたった1人っきりになりました。そしてただそこに居て、ただ何かが起きるのを茹で栗とその殻と一緒に待っているだけの存在になったのです。 

 暫くすると利久君のママが帰ってきました。しかし私はもう消えかかっていましたから、何も悪い事をしていないのに息を潜ませなければなりませんでした。 オバサン、開けて! とはもう言えなかったのです。オバサンは利久君と友達が散らかしたゲームや漫画を片付けました。そして台所からお茶を持って来てそのままテレビを観始めました。私は息をひそめてベランダからじっとその様子を伺っていました。そして辺りが薄暗くなってきた頃、ようやく利久君が帰ってきました。 

 おかえり、遅いじゃない、どこ行ってたの? 

そう訊ねるオバサンに利久君は、「〇〇君のとこ」と、おそらくさっきの少年と思われる名前を答えました。私は幸い、祖母の茹で栗のおかげでそれほどお腹は空いていませんでした。ただ、一体いつまで僕はここでこうしているんだろう、と暮れなずむ空と、そこにひと際明るい一番星を見比べ思ったのです。それから、ずっと……。 

 300年間、私はそこで過ごしました。やがてベランダが開いて、「ねえ、もう帰った方がいいんじゃないの?」と言ったのは利久君ではありませんでした。それは私の全く知らない子でした。 

 家に帰ると母に、「どこ行ってたんや?尚武(なおたけ)。もう晩ご飯やのに、遅過ぎるやろ!」と怒られました。私はこのエピソードは家族の誰にも話しませんでしたが、その日以来、私は、尚武です。 

 こんな感じで、私はこの家に300年以上も住み続けているのですが、あれ以来、ただの一度も誰かに見つけられた事はありません。尚武である以上、私はもう2度と、誰かにみつけられることはないでしょう。

これが『座敷童』です。もし、知らないはずのない世界が、突然あなたの目の前にハッキリと見えたら……。 

 それが座敷童です。 

  第66章『ドライヴィングランチ』 

 季節はちょうど寒くも暑くもないですが、それだけいろいろ不安定な事が起こります。先日、関越道を走行中に急に猛烈な睡魔に襲われ、それを紛らすために大声で歌を唄っていると今度は猛烈な貧血に襲われました。これは明らかに、私を亡き者にしようという何者かの悪意だと思って間違いありません。 

 私はトラックドライバー。週5日間、一般の人からすると信じられないくらいの長い時間、長い距離、トラックの運転をしています。1日の平均走行距離は250㎞、時間にして8~9時間、多い日は12時間、ほぼ毎日、昼休憩はなしで走り続けなければなりません。 

 だから私のランチは専ら、ドライヴィングランチ。所謂『おにぎり』ですね。運転しながら箸を使う事など出来ませんからね。具はその前の晩御飯のおかずが専ら。だから唐揚げや焼き魚ならまあ何とか形にはなるのですが、カレーや麻婆豆腐の日は、なかなかアヴァンギャルドなおにぎりに仕上がります。味はともかく、食べにくい事必至。自ずとおにぎりの方に意識が集中してしまい、前方が不注意になる。前日のスーパーでたまたま豆腐と挽肉が安かったから、そのすぐ隣に麻婆豆腐の元が置いてあったから、正直な妻はスーパーの在庫処分の甘い罠にまんまと取り込まれ、我が家の晩御飯が麻婆豆腐になったばかりに、全く関係のない善良な人がトラックにひかれて亡くなる、そんな悲劇が起きるくらいなら、もう私は今後一切、麻婆豆腐を食べない方がいいのかと思ったりもします。 

 これが私の言うところの、所謂『妄想』というヤツで、私は常から、困難が予想される状況下において、この妄想を盾に、次々と起草するされる悲惨な予感を巧みにカモフラージュし、そして突然、『でも予感はないよ!』とその妄想を根から断ち切る事で難局を何度も乗り切ってきたように思うのです。 

 さあ、みんな一緒に逃げよう! そう言って信頼できる仲間をぎゅうぎゅうに救命ボートに乗せて、荒れ狂う海に落としておいて、自分は一人だけヘリコプターに乗って上に逃げる。 

 私にとって、現実とはただのお人好しな正直者。彼は常に私を気遣ってくれます。親身になって一緒に悩んでくれようとします。きっと『一緒に死んでくれ!』と頼むとそうしてくれるでしょう。 

 でもいくら気遣ってくれるとしても、一緒にいると本当に死んでしまうようならこちらから願い下げです。だから現実が、さあ、こっちだ、こっちに逃げよう!そんな事を言ってきても、私は小さな事を何度も気に病んでみせては、自分が広大普遍な『今』の中にいる事を十分に知りながら敢えて動物園の動物の様にそこをグルグルと徘徊し、『あぁ、閉じ込められている、八方塞がりだ、私はこれから何をどうして生きて行けばいいんだ』なんて、いつ誰が考えたところでどうしようもないような事に煩悶懊悩し、その結果また別の妄想に縋りついては、 

 しかし世界にはこんな私すら羨ましくてしょうがない人が大勢いる。私は恵まれている。甘えている。私の現実は、私が思うほど酷くないと、トラックの窓の外を走り去る事物に語り掛ける事で、結果これまで安全にトラックを走らせる事が出来ているのだと決めたのです。 

 しかしそう決めると同時に、待てよ? じゃあ今、自分が置かれている状況なんてただの思い込みじゃないか? 一瞬の時間の中に不自然な理屈や仕組みを無理矢理に塗り固められた重層のウソじゃないか?という想像が、容易に出来る様になったのです。

  いつもならそんなに混まないこの道が、ある場所からぴたりと止まって動かなくなったのです。ラジオからは「県道〇〇号線の下りはワゴン車2台による事故で渋滞が14㎞に伸びています」なんて事を言ってる、場所はまさにその14㎞ほど手前でした。 

 その瞬間、一日の疲れがドッと吹き出しました。そして私の『今』は一気に日の暮れた更にその2時間以上先まで伸びました。私はきっとその時間までここでこうしているしかないでしょう。酒を飲みながらゆっくり観るはずだった西武ライオンズvsソフトバンクホークス戦も、明日のおにぎりの具になるべく何かの料理を食べる事も、妻と息子の顔も、愛猫のスリスリも、全ては保留になったのです。そして私の妄想はそういう時に最大の威力を見せるのです。 

                   * 

 戦争が長引く中、家族を迎えに1000㎞離れた町に向かう車列は続いている。この先にあるのは妻子の待つ町か、それとも絶望か……。 

 戦争に終わる気配がありません。私はもう両方の大統領が大嫌いになっていました。初めは当然、攻め込まれた我が国とその領土と権利を必死に守り抜こうとする大統領を支持しました。しかし死んでしまえば、国も、地球も、宇宙もなくなってしまうのです。それだけが現実なのです。たとえ私が無事に着いたとしても、そこに家族が無事に生きていてくれる保証すら、私にはないのです。 

 私の『今』はただ、全てが保留されているだけなのです。私にとって確実なのはこの車の運転席だけなのです。ルームミラーからぶら下がる骸骨のキーホルダーを揺らす振り子の法則だけが私の『今』を保証しています。しかし私はそれでもまだ幸せと言えるかもしれません。そんな妄想すら次の瞬間には、ロケット弾に吹き飛ばされてしまうかも知れないからです。そして私の到着を待っている家族のもとに私の訃報が告げられる。家族はちゃんと生きて私を待っていてくれたのに、私はたどり着けなかった。 これら諸々、すべてすべて。

 保留だけが、私の現実なのです。 

 私は必死に一番素敵な可能性の保留を探します。それはもう私に出来る事の全てです。私の家族は部隊に守られて安全な場所に十分な食料と水と共に私の帰りを待っている。私のいるこの道は今後、敵国の侵攻に重要な役割を果たすために、敵が攻撃してくる可能性は皆無だ。そして数分後、日暮れと共に警戒態勢が解かれ、検問を通過すると、そこには至って普通の我が国の人々の暮らしがあって、私はラジオで流行りの曲を聞きながら家族の元へとたどり着く。 

 しかし……、 

 私は目の前の現実にハッと目を覚まします。大破したワゴン車が2台。道を塞いで横たわっていました。こぼれたオイルを処理した薬剤を、私のトラックがぐにゃりと踏んだ感覚がありました。救急車のランプが目の奥を差す様に光ります。それだけ辺りはもう薄暗くなっていたのです。慌てた様子のない救急隊員が大きなシートで覆う、その向こうには死体があるのかもしれません。ないのかもしれません。 

 私は妄想よりも現実の方が怖くなってきました。私がさっき踏んだのはオイルを処理した薬剤ではなく、その人の一部だったのかもしれません。しかしそれこそ、是非とも保留すべき事実です。私は何とか、妄想とも現実ともつかないもう一つのモノをみつけなければならなかったのです。 

 私は助手席からリュックサックを引き寄せて中を探しました。すると昼間食べ残したおにぎりが入っていたのです。 

 お腹が空いていたのですが、麻婆豆腐のおにぎりはどうにも食べにくく、食べながら運転するのが危険な感じがしたので食べずに置いて置いたのです。私はすぐにそれを取って食べました。すると昨夜家族と食べたのと同じ安っぽい麻婆豆腐の味が、口の中に広がりました。それがどれぐらい神掛かって感じられた事か、私は『今』ここで表現する術を持ちません。ゆっくりと食べながらラジオで西武ライオンズvsソフトバンクホークス戦を探しまします。そうして私は少しずつ現実にソフトランディングしていったのです。 

 そして世の中には、こんな私すら羨ましくて仕方がない人が、大勢いる……。 


  第65章『稀代のウソツキ』 

「いいのいいの、そのまま上がって」そう言うと彼女は、フカフカの絨毯の上をどんどんと入っていきます。私はいつ、どこから飛び出してくるかわからない彼女の両親の姿を、まるで妖怪の様に想像しながら付いて行ったのです。 

 建物の2階にある彼女の部屋は優に90平米はあるでしょう。ビロードのぶ厚いカーテンが巨木の幹の様に縦長の窓を立ち塞いでいます。「じゃあ、お茶を入れて来るから適当に座ってください先生」彼女にそう言われるまで、私は自分が彼女にアドバイスをする先生の立場である事をすっかり忘れていたのです。 

 調理師時代、彼女は一緒に働く仲間でした。そこは下町の小さな洋食屋で、客は常連ばかりで、毎日何も変わった事は起きませんでした。 

 彼女は料理はとても上手なんですが、如何せん仕事が丁寧過ぎて外食には向かないタイプだと思いました。外食の場合、調理師はある程度以上を自分に期待してはいけないのです。必要最小限の仕事をいかに効率よく早くこなせるか、それだけが必要な能力なんです。彼女は主に賄いが担当でした。 

 「あの子はね、お嬢ちゃんだからおっとりしてるのよ」と90歳になる社長のお母さんは言います。確かに彼女からはどこか浮世離れしたような上品な風が見て取れました。そして私はある日、そんな彼女からとても質の悪い相談を受けたのです。 

 同じ職場に『マツオ(仮名)』という調理師の男がいました。彼女は『マツオ』からしつこく言い寄られて困っていると言いました。今からその『マツオ』について説明します。

 その店には女子更衣室が無く、時間帯を分けて男女は同じ部屋で着替える事になっていたのですが、交際を断られると、マツオは彼女の靴の中に自分の精液を入れたり、ロッカーの取っ手に自分のウンチを付けたりするようになったと言うのです。しかし彼女はその付着していたモノの名前を口にするのどうしても恥ずかしくて、これまで誰にも相談できずにいたのだというのです。 

  そしてある日、彼女は自分のロッカーに見覚えのない本が入っているのに気付いたそうです。それは彼女が取得を目指している資格の参考書で、彼女は、自分がこの資格の勉強をしている事は誰も知らないはずだと言いました。 

「それも、『マツオ』の仕業だと?」 

「うん、だってアイツ、『もう読んだ?』とか、普通に訊いてきたから」 

「そりゃ、間違いないね……」 

 どうやらマツオは彼女のロッカーを自在に開ける事が出来る以外にも、彼女の普段の行動を知る何らかの術を持っている様なのです。 

 マツオは職場でも鼻つまみで、トラブルメーカーで、何よりも病的なウソツキでした。マツオは、自分の実家は開業医だと言い、故郷に帰るとその病院の院長の座が約束されている、だから本当はこんなちんけな店で料理なんか作らなくても全然暮らしていける身分なのだが、勘当同然で家を出た手前、おめおめと実家には帰れない、と言いました。この短い文章の中にもすでにウソがいっぱい入っている事にすぐに気付いたかと思います。 

 勘当同然で家を出た息子になぜ無条件に院長の座が約束されているのか。そもそも、医者でもないマツオが病院の院長になれるのか。 

 あの子はね、孤児院から引き取った子なのよ。と社長のお母さんは言います。孤児院でも周りになじめず、トラブルばかり起こしていたのを、18歳になって院を出る時、職員から『この店で使ってやって欲しい』と頼まれて引き受けたのだそうです。 

 あの子にとって、ウソは護身術なの。社長のお母さんは言います。 

 あの子は現実を見ては少しも生きていられないの。詳しくは言わないけど、みんなには信じられないぐらい、それはそれは辛くて、悲しい思いをずっとして生きてきたの。だからみんなも、あの子の我がままには本当に手を焼くと思うけど、出来るだけ仲良く働いてほしいの。 

 90歳の社長のお母さんは『あの子』と言いますが、その当時で既にマツオは50歳を過ぎていたと思います。マツオの愚行、蛮行はこれに留まりません。マツオは、フライヤーでネズミを揚げ殺し、その肉でオムライスを作って客に出したり、パスタを揚げる網を排水溝の掃除に使ったりしていました。とにかく、やる事が全て常軌を逸していたのです。

「更衣室の件はもう警察沙汰でいいと思うよ」 

私は親切心からそう言ったつもりでした。実際、あのマツオの性格からしてこれ以上の増長は彼女の命にかかわると思ったのです。しかし彼女からは意外な答えが帰って来たのです。 

 私、後悔してるんです。なんで交際を断ったりしたんだろう、って……。 

え? 私は自分の耳を疑いました。 

 「私が彼と交際していたらきっと、更衣室の件もなかったと思うし、それなら彼も余計なウソをつかなくて済んだかも知れない。私は、彼が私にウソをついたのと同じ事を彼にしてしまった気がする。私は彼と自分が付き合えば一番いいと気付いていたにもかかわらず、彼の粗暴な性格とか、年齢とか、怖い見た目とか、そんなどうでもいい事に理由を付けて断ってしまった。それが全ての原因なんだと」 

 お人好しという事ならそれでもう何も言いません。しかしこれはこれでマツオ並みに病的だと思いました。このままでは共依存の様な危ない関係になりかねない。そう思ったのです。彼女は、今からでも彼と付き合った方がいいのか、それとももう遅いのか、それを相談したかったのだと言いました。 

「いや、遅くは、ないと思うけど、そうなればなったで、また別のいろんな事が手遅れにはなるかもしれないと思うんだよね。本当にそれで、イイの?君は。」 

「いいって?私? 私の、何が?」 

「だって、やっぱり、付き合うってもっとお互いの好みとか相性とか、そういうモノが重視されるべきだと思うし、もし結婚するのであれば経済力とか価値観とか、いろんな要素を考えてするべきだと思うし、君はだって、こんな大きな家の御息女で、きっと大切に育てられたんだろうし、そもそも君の両親はどうなのさ。だってアイツだよ! いきなりアイツを連れて帰って、『この人と付き合ってます!』なんて言ったら両親は卒倒しちゃうんじゃないかと思うんだよ。、僕は絶対うまく行かないと思うんだよ。勝手な想像して悪いけど」 

 そこまで一気に言って見ると、彼女はすっかり俯いてしまっていました。私は、しまった、と思い、いや、別にいいならいいけど……と言って黙りました。そしてすぐに、 

「ひょっとして、好きなの?」と大声を上げました。 

 ダメ? 彼女は言いました。そして……。 

 私だってこの家は自分から望んだモノじゃない。それは彼も同じ。彼だってきっと、あんな人生を望んだわけじゃない。だから、彼は毎日、1秒も間を空けずにウソをついているの。すごくわかる。それは私にとってのこの家と同じだもの。だから私も毎日、1秒も空けずずにウソをついてきたの。 

 このお屋敷ね、武闘派で知られる広域暴力団の組長の家なの、大親分。それが私のパパって言ったら?どう? 嘘だと思う? そう、じゃあ自分の目で確かめればいいわ。もしこのままここにいて、

 おい!お前ら、ここで何してる! と怒鳴られたら私はウソツキ。ここは私の実家でもなければ、私は大親分の娘でもない。逃げなきゃきっと殺される、私もヒドイ目に合う。でも、 

 おい、京子この人は誰だい?と言われたら、私はウソツキじゃない。その人は正真正銘、私のパパ。 どう? どっちだと思う?それとも逃げちゃう? 自分の目で現実を確かめる前に、そそくさと逃げちゃう? それじゃああなたは彼と同じじゃない。現実を見ようとしないあなたは、彼と、同じ。 

どうする? 確かめる? 逃げる? 

 私は部屋を飛び出して一散に階段を下りました。すると玄関の扉を塞ぐように、恰幅のいい中年の男が立っていたのです。 

 おい!お前!うちでナニやってる!?  それはマツオでした。 

私は構わずマツオを突き飛ばして外に出ました。 

 まったく、先生も楽じゃねぇ! 

 私は正門まで続くの小道の木漏れ日の中を走り、やがて抜けるように高く青い空を見上げ、木々の小鳥の囀りを聞いて、次第に速度を落とし、やがて歩き始めました。 大きなお屋敷が誰のモノでも、私には元々関係なかったのです。

 おやおや、なんて立派で、綺麗なお庭だ事……。 

covid-19 2022 June Tokyo Japan


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6/30(木)

10745 (12130) 20

10765 (13150) 3621人

33.63%(27.53%)

6/29(水)

12656(13160) 2

12658 (13162) 3803人

30.04%(28.89%)

6/28(火)

11442(13553) 1

11443(13554) 2514人

21.96%(18.54%)

6/27(月)

14040 (15994) 4

14044(15998) 1517人

10.80%(9.48%)

6/26(日)

3472(3577) 19

3491(3596) 2004人

57.40%(55.72%)

6/25(土)

7409 (7612) 3

7412(7615) 2160人

29.14%(28.36%)

6/24(金)

12010 (12282) 40

12050(12322) 2181人

18.09%(17.70%)

6/23(木)

9716(11307) 0 (2)

9716(11309) 2413人

24.83%(21.33%)

6/22(水)

11182(11978) 5

11187(11983) 2329人

20.81%(19.43%)

6/21(火)

10498 (12477) 0

10498(12477) 1963人

18.69%(15.73%)

6/20(月)

14003 (15597) 0

14003 (15597) 1076人

7.68%(6.89%)

6/19(日)

3317(3400) 0

3317(3400) 1622人

48.89%(47.70%)

6/18(土)

6898(7065) 1

6899(7066) 1681人

24.36%(23.79%)

6/17(金)

7218 (11861) 2

7220(11863) 1596人

22.10%(13.45%)

6/16(木)

8915 (9708) 4

8919 (9712) 1819人

20.39%(18.72%)

6/15(水)

9781(10278) 0

9781(10278) 2015人

20.60%(19.60%)

6/14(火)

10385(11753) 0

10385(11753) 1528人

14.71%(13.00%)

6/13(月)

14529(15420) 13

14542(15433) 960人

6.60%(6.22%)

6/12(日)

3408(3525) 0

3525 1546人

45.36%(43.85%)

6/11(土)

7069(7271) 0

7069(7271) 1526人

21.58%(20.98%)

6/10(金)

9437(11605) 7(107)

9444(11712) 1600人

16.94%(13.66%)

6/9(木)

10410  7

10417 1876人

18.00%

6/8(水)

8646(10394) 6

8652(10400) 1935人

22.36%(18.60%)

6/7(火)

9638(11164) 32

9670(11196) 1800人

18.61%(16.07%)

6/6(月)

14316(14719) 0

(14719) 1013人

7.07%(6.88%)

6/5(日)

2649(3333) 0

(3333)1584人

59.79%(47.52%)

6/4(土)

6195 (7218) 1

6196(7219) 2071人

33.42%(28.68%)

6/3(金)

7408 (10603) 19

7427 (10622) 2111人

28.42%(19.87%)

6/2(木)

9730 (11064) 8

9738(11072) 2335人

23.97%(21.08%)

6/1(水)

10847(11448) 24

10871(11472) 2415人

22.21%(21.05%)

covid-19 2022 May Tokyo Japan


画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: covid19%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%E5%86%99%E7%9C%9F.jpg

5/31(火)

12900 0

2362人

18.31%

5/30(月)

14256(17616) 59

14315(17675) 1344人

9.38%(7.60%)

5/29(日)

3305 (3798) 106

3411 (3904) 2194人

64.32%(56.19%)

5/28(土)

7434(8256) 6

7440(8262) 2549人

34.26%(30.85%)

5/27(金)

8208(12702) 2

8210(12704) 2630人

32.03%(20.70%)

5/26(木)

10451 (11745) 11

10462(11756) 3391人

32.41%(28.84%)

5/25(水)

10790(12026) 15

10805(12041) 3929人

36.36%(32.63%)

5/24(火)

13099(13570) 6

13105 (13576) 3271人

24.95%(24.09%)

5/23(月)

15622(18611) 31

15653 (18642) 2025人

12.93%(10.86%)

5/22(日)

3524 (3866) 1

3525(3867) 3317人

94.09%(85.77%)

5/21(土)

8827(9268) 5

8832(9273) 3464人

39.22%(37.35%)

5/20(金)

9271(14340) 37

9308(14377) 3573人

38.38%(24.85%)

5/19(木)

10671 (12100) 14

10685(12114) 4172人

39.04%(34.43%)

5/18(水)

12202(12812) 72

12274(12884) 4355人

35.48%(33.80%)

5/17(火)

11754(13879) 4

11758 (13883) 3663人

31.15%(26.38%)

5/16(月)

17828(18730) 19

17847(18749) 2377人

13.31%(12.67%)

5/15(日)

2917(3688) 86(87)

3003 (3775) 3348人

**********(88.68%)

5/14(土)

7657 (8894) 3 (5)

7660(8899) 3799人

49.59%(42.69%)

5/13(金)

9598(13184) 5

9603(13189) 4109人

42.78%(31.15%)

5/12(木)

12807(13194) 85

12892(13279) 4216人

32.70%(31.74%)

5/11(水)

10962(13460) 70

11032 (13530) 4764人

43.18%(35.21%)

5/10(火)

14059 (14956) 0

14059 (14956) 4451人

31.65%(29.76%)

5/9(月)

17058(19889) 15

17073 (19904) 3011人

17.63%(15.12%)

5/8(日)

3476(4051) 5

3481(4056) 4711人

**********

5/7(土)

9450 (10356) 6

9456 (10362) 3809人

41.60%(36.75%)

5/6(金)

13406(18367) 29

13435 (18396) 2681人

27.39%(14.57%)

5/5(木)

5424 (5921) 5

5429 (5926) 2320人

42.73%(39.14%)

5/4(水)

5782(6127) 0

5782 (6127) 2999人

51.86%(48.94%)

5/3(火)

2753 (5054) 1

2754 (5055) 3357人

********** (66.40%)

5/2(月)

9473(14913) 58

9531(14971) 2403人

25.21%(16.05%)

5/1(日)

3352(3984) 36

3388(4020) 3161人

93.29%(78.63%)

保護猫『とのま』の一言成長日記 2022。5月~6月



6/30(木)

今朝は兄さんに蹴られそうになったけど、上手くかわしたね。暑くて兄さんの寝相もいつもにも増して、悪くなってるからね。要注意だ。しかし、今日も朝から暑いね~~。

6/29(水)

今朝もちゃんと起こしてくれましたよ。わきの下に入ってジッとして、熱で起こす。夏ならではの起こし方です。暫く外に出たくてそわそわしてたけど、諦めて寝てしまいました。暑いからね。涼しい家に外に出たいよね。わかるんだけど、お母さんが起きるまで待っててね。

6/28(火)

今日は私が寝坊。ちょっとだけ。その隣で、暑いのにじっと待っててくれたとのちゃん。この夏、1人で3日も留守番しなければいけないので、そのための、3日ぶんの、水ディスペンサーの訓練中。やけに甘えてくる今朝です。

6/27(月)

今朝はちょっとだけ早起きしてみました。ちょっとだけ早出なので。でもちゃんととのチャンは起こしてくれましたよ。昨日は暑かった。今日も暑いよきっと。だから、朝の涼しい家に『とのちゃんランド』に出たいんだね。わかるけど、父さんもうすぐ出勤だから、お母さんが起きたら出してもらいな。じゃあ、行ってくるね。とのちゃん。

6/26(日)

今朝もちゃんと起こしてくれました。今、ベランダの改修済の『とのちゃんランド』に出ています。4時はまだ涼しいんだね。とても快適な朝です。

6/25(土)

今朝もちゃんと4時に起こしてくれました。最近朝は決まって『撫でてポーズ』をします。撫でて欲しいのか?よしよし、でも朝だけ……。ツンデレ猫のとのちゃん。『とのちゃんランド』今日改修する予定です。暑そ~。

6/24(金)

今朝は一度2時半に起こしてくれて、こりゃ、早い!と、そのまま寝てたら、起きて―!と襖、網戸、ガリガリ攻撃。あれは、効く! 次にはちゃんと4時に起こしてくれました。朝だけ、『お父さん撫でてタイム』だから、私には貴重な時間です。

6/23(木)

今朝もちゃんと起こしてくれました。最近、朝撫でると、肉球とか耳が暖かいんだよね。一瞬、熱があるのかと思ってしまうぐらい。だんだん夜寝苦しくなるのは、猫も同じ。

6/22(水)

今朝も、『胸乗っかり作戦』で起こしてくれました。『とのちゃんランド』もうすぐ改修終わるから、楽しみに待っててね。

6/21(火)

今朝もちゃんとおこしてくれましたよ。『髭抜き攻撃』と『胸飛び乗り攻撃』と『左手チョンチョン攻撃』の3本立てで。指の手術、終わったよ。

6/20(月)

今朝はちょっと寝坊してしまいました。午後は指の手術のため、今日は休日。とのチャンは早朝『とのちゃんランド』で遊んでます。気に入ってくれたようで、良かったです。

6/19(日)

今朝もちゃんとおこしてくれましたよ。だからご褒美に、早朝とのちゃんランドで遊んでます。ベランダから落ちないようにね!!もうすぐ早朝ご飯だよ。

DSC_0880

猫に無害な『マリーゴールド』を植えてみました。

6/18(土)

今朝もちゃんと起こしてくれました。とのちゃんランド、よっぽど気に入ってくれたらしく、朝から、「外出せ!外出せ!」とせがんでましたが、今は落ち着いて早朝ご飯待ち。今日も天気がいいよ。まだ建設中だけど、また、出てみる?

6/17(金)

今朝は一度2時に起こしてくれて、2度目はちゃんと4時におこしてくれました。そわそわしてるんだよね。昨日『とのちゃんランド』に試しに出てみたからね。久々の外、楽しかった?

6/16(木)

この2日ほどは、私の方が早起き、その数分後。起きてきて水飲んで、ちょっとスリスリして、いい訳に、ニャ、と鳴いてまた寝る。パターンです。眠いんだね。寝てていいんだよ。とのちゃん

6/15(水)

今朝も私の方がちょっと早起き。とのちゃんは窓場からとのちゃんランド建設地(ベランダ)を眺めてます。梅雨だから、建設長引いてます。もうちょっと、待っててね

6/14(火)

今日は私が1時間早く起きたので、とのちゃんはまだ寝てます。『とのちゃんランド』今週末には完成しそうだけど、梅雨だから雨っぽいね。

6/13(月)

今朝は私の方が一歩早起き。今起きてきて、窓から朝焼けを眺めています。今日はてんきよさそうだね。『とのちゃんランド』、作り始めたよ。楽しみにしててね!

6/12(日)

今朝もきっちり4時に起こしてくれました。どんな体内時計してるんだろう。動物の不思議。しかし、目覚めてそこに、ドアップのとのちゃんがいるというこの幸福感……。毎朝、感謝してます、とのちゃん。

6/11(土)

今朝は2時間も大寝坊。とのチャンはちゃんと4時に起こしてくれたのに。疲れてるのかなぁ、とのちゃんも今は2度寝中。ごめんなとのちゃん、せっかく起こしてくれたのに、明日はちゃんと起きるから、よろしくね。

6/10(金)

今朝もちゃんと、ちょっと早めに起こしてくれました。今日は襖ガリガリ作戦で。これが一番効くかも知れないね。

6/9(木)

今朝は3時半に起こしてくれました。襖ガリガリ、顎をチョンチョン、今は早朝ご飯までしばらく、座布団でウトウトしてます。今日もありがとう。とのちゃん。

6/8(水)

今朝も、ちゃんと4時に起こしてくれましたよ。今朝は何だか、とても寒いね。早朝ご飯を食べて、早々に2度寝。それがいい。おやすみ、とのちゃん。今日もよろしく。

6/7(火)

今朝も起こしてくれましたよ。関東地方は梅雨に入りました。せっかく『とのちゃんランド』の建設が始まったのに、雨もよいで残念だね。

6/6(月)

今朝も起こしてくれました。最近は網戸が開いてるから、それをガリガリやっての間接的な起こし方。考えたね。でもあれだと、お母さんも起きちゃうんだよね。だから、髭抜きか、胸乗っかりで、お願いします。今日もよろしく、3歳になったとのちゃん。

6/5(日)

今朝はお腹が痛くなって目が覚めました。するととのチャンは心配そうにずっとトイレの外で小鳴きしていました。心配ないよとのちゃん、食い過ぎただけ。

6/4(土)

今朝も起こしてくれました。初めは足元で軽く圧力を掛けて、その後、『髭抜き攻撃』で。今日は兄さんの野球をまた観に行くかもしれないから、そうしたら、またお留守番だね。すまないね、とのちゃん。

6/3(金)

今日はたんじょうびだね。とのちゃん! 3歳おめでとう!!いい3年間をありがとう!これからもずっと宜しくね。家族一同より。

6/2(木)

今朝も、ちゃんと起こしてくれました。小鳴きが、可愛いね。いっぺんに目が覚めるよ。今は珍しく、二度寝もせずにウロウロしてます。明日は誕生日だよ。3歳、おめでとう!とのちゃん。

6/1(水)

今朝も起こしてくれました。今日から6月だね。とのちゃんの誕生日は6/3うちに来た日が誕生日になりました。多分、ふたご座だね。もうすぐ3歳。大きくなってくれました。

5/31(火)

今朝も起こしてくれました。最近水を飲む量が増えたのは、暑いせい? カニカマは絶対に上げちゃダメだって、今日携帯ニュースに出てたよ。昔はよく上げてたけど、あれ、体に悪かったんだね。だから尿路結石になっちゃったんだね。気を付けます。

5/30(月)

今朝もちゃんと起こしてくれましたよ。なんだか、昨日あんなに暑かったのに、今朝はヒンヤリとしてまだ梅雨前、って感じだね。とのちゃんランド予定地、掃除したよ。

5/29(日)

今朝は、昨夜寝るのが遅かった分、起きるのが20分ほど遅くなってしまいましたが、とのちゃんはいつも通り、ちゃんと起こしてくれましたよ。最近はそうね、直接のアタックと、間接のアタックが半々だね。だんだん進化している、偉い、とのちゃん!

5/28(土)

今朝もちゃんと4時に起こしてくれました。『左手チョンチョン攻撃』と『顎髭抜き攻撃』で。兄さん、無事林間学校から帰ってきました。都内よりも天気が良かったみたいで、ラフティングも楽しかったようす。よかったよかった。今日も一日よろしく、とのちゃん。

5/27(金)

今朝は兄さんがいないね。ソワソワする?兄さんは今林間学校に行ってます。夕方に帰ってくるよ。父さんもなるべく早く帰るよー。時々クテッとしてるのは、暑いから??

5/26(木)

今朝は一回目は2:40に『身体を踏み越える作戦』起こしてくれて、次はちゃんと4:00に『左手でアゴちょんちょん攻撃』で起こしてくれました。今日から兄さんが林間学校だね。家族全員で楽しく過ごせて無事に帰ってくることを祈ろうね。

5/25(水)

おはようとのちゃん。今朝も起こしてくれました。最近暑いのか、床にくてーっと、良く寝転がってます。うちに来た年の夏、誤嚥と腸炎をダブルで発症した時も、そうやってくてーッとしてたから、ちょっと心配……、平気かい?食欲はありそうです。

5/24(火)

今朝も起こしてくれました。ちゃんと4時に。で、最近は直接起こすのではなく、間接的に起こす方法を編み出した様子。それは、ちょっと離れた場所の襖をガリガリ引っ掻く作戦。確かにこの方が確実に起きるね。けどそのぶん、襖ボロボロ……。

5/23(月)

今朝もちゃんと起こしてくれました。月曜日だよ、とのちゃん。昨日の兄さんの野球の試合。また2連敗だったけど、そんなに差はなかった。今度頑張ろう!お留守番ご苦労さん、とのちゃんランド、作るからね。楽しみにしててね。

5/22(日)

今朝はホント、目覚まし止めてたから、とのちゃんに起こされました。助かった。ありがとうねとのちゃん。今日は兄さんの野球の試合だから、早く起きなきゃダメだったんだよ。助かったよホント。

5/21(土)

今朝はちゃんと起こしてくれました。3時過ぎに……。暑かったので窓を少しだけ開けて寝たんですが、それが気になって早く目が覚めた模様。今は、大人しく『香箱伏せ』で早朝ご飯を待っています。

5/20(金)

今朝は、起きて来ませんね。さっき目が合ったのに……。

5/19(木)

今朝も起こしてくれました。お母さんがワクチン接種の副反応で寝込んじゃって、ずっとそばに居るんだね。心配?でもとのちゃんの必死の看病のおかげで、昨日はだいぶ楽そうだったよ。今日は元気になるよ。ありがとうね、とのちゃん。とのちゃんは優しいね。

5/18(水)

今朝も、起こしてくれましたよ。とのちゃんのゴロゴロは音が小さくて、よく聞かないと聞こえない。そこらへんも気になって、逆に目が覚めてしまうという……。

5/17(火)

今朝もちゃんと4時に起こしてくれました。手にちょっとだけ触れて『香箱座り』でジッとされると、暖かくて気持ち良くて余計に眠くなってしまいそうです。

5/16(月)

今朝もちゃんと4時に起こしてくれました。久々の『左手チョンチョン攻撃』と、『髭抜き攻撃』で。今日も、これからしばらくも、雨もよいだね。毎日退屈? 人間の1日はとのちゃんにとっての4日だもんね。一日一日、楽しく過ごしたいよね。 

5/15(日)

いやー今朝は寝坊しちゃったよ。1時間半も。ちゃんととのちゃんは起こしてくれたのに、ごめんごめん。

5/14(土)

今朝も4時きっかりに起こしてくれました。雨だねぇ、退屈かねぇ、今日も。兄さんの熱は落ち着いたよ。ご心配おかけしました。やっぱり健康が一番だね。とのちゃんもね。

5/13(金)

今日はお父さんの方がちょっと早起きだったね。水を飲んで、すぐに2度寝に行きました。兄さんの熱、今はほとんど下がったみたい。とのちゃんも一安心だね。おやすみ。

5/12(木)

今朝もちゃんと4時10分前に枕元で起こしてくれました。昨日は、兄さんのワクチン接種からくる発熱が凄くて心配したね。とのちゃんもずっとウロウロしてた。でもだいぶ落ち着いたみたいだよ。よかった。とのチャンも安心して寝ていいよ。でももうすぐ、早朝ご飯だよ。

5/11(水)

今朝は久々に『左手チョンチョン攻撃』で起こしてくれました。昨日、兄さんが3回目のワクチンを打ったから、今日は経過観察で学校休み。とのちゃんもしっかり観察しててね。本人がお調子モノだからね。父親に似て……。

5/9(火)

今朝もきっかり4時に起こしてくれました。最近、水を飲んですぐ2度寝に行くね。のど乾く?病気じゃないよね? ちゃんと言うんだよ。もうすぐ早朝ご飯だよ。

5/9(月)

今朝もちゃんと起こしてくれました。一度3時ぐらいに起こしてくれたんだけど、スルーしちゃいました。昨日はお留守番、ありがとうね。G.W.おわっっちゃったね。今週末から『とのちゃんランド』作り始める予定だよ。

5/8(日)

今朝はお母さんも起きて、いつもと違う!って感じで慌ててたけど、今は落ち着いて2度寝中?かな?兄さんの遠征試合のため、家族全員、早起きです。今日もお留守番、ごめんね、よろしくね、とのちゃん。

5/7(土)

今朝も4時に起こしてくれました。『そっと寄り添ってゴロゴロ鳴らす作戦』で。君は野良猫の親とはぐれた迷い猫だけど、モフッと感は超一流だね、とのちゃん。

5/6(金)

とのちゃん、今日はお寝坊さん。さっき見たら、妻の枕元でへそ天で爆睡してました。そんな日もあるさ。3時ごろ、一回起こしに来てくれました。気を使わせて悪いね、いつもありがとう、とのちゃん。

5/5(木)

今朝も起こしてくれました。何だろう、G.W.中は朝眠い。仕事がないからかな。とのチャンはそれを知ってて、わざと起こしてくれなかったり、ソフトに起こしてくれたりしてるのかな。今はお母さんの枕元で香箱座り中。

5/4(水)

今朝はちゃんと4時過ぎに起こしてくれましたよ。私が起きたのと同時で、目が合ってちょっとバツ悪そうにしてました。今は大人しく、早朝ご飯待ちかな、今日も良い天気そうだよ。とのちゃん。

5/3(火)

今朝はお互い1時間半も寝坊しちゃったね。G.W.だから、イイか……。いい天気だよ、とのちゃん。

5/2(月)

今朝はちゃんと起こしてくれました。でもすぐ2度寝。おやすみ。ベランダに『とのちゃんランド』建設するよ。外に出られるようにするよ!

5/1(日)

今朝はまだ起きて来ません。早朝ご飯、もう出てるよー!!

covid-19 2022 Apr Tokyo Japan


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4/30(土)

8041 0

8041 2979人

37.04%

4/29(金)

3346(4364) 0(17)

3346(4381) 3893人

**********(88.86%)

4/28(木)

9877(12479) 178

10155(12657) 5394人

53.11%(42.61%)

4/27(水)

11671(14388) 23

11694(14411) 6052人

51.75%(41.99%)

4/26(火)

15188 (16198) 5

15193(16203) 5048人

33.22%(31.15%)

4/25(月)

18349(21910) 0

18349 (21910) 3141人

17.11%(14.33%)

4/24(日)

4169 (4620) 0

4936人

**********

4/23(土)

10150(10932) 32

10182(10964) 5387人

52.90%(49.13%)

4/22(金)

11604 (16438) 14

11618(16452) 5396人

46.44%(32.79%)

4/21(木)

12488 (14209) 44

12332(14253) 6713人

54.43%(47.09%)

4/20(水)

12652(15018) 17

12669(15035) 6776人

53.48%(45.06%)

4/19(火)

16275 (17107) 36

16311(17143) 5583人

34.22%(32.56%)

4/18(月)

22501(23067) 120

22621(23187) 3479人

15.37%(15.00%)

4/17(日)

4206(4315) 4

4210(4319) 5220人

**********

4/16(土)

9587(9747) 15

9602(9762) 6797人

70.78%(69.62%)

4/15(金)

10226 (16910) 48

10274(16958) 6768人

65.87%(39.91%)

4/14(木)

12784 (14340) 87

12871 (14427) 8540人

66.35%(59.19%)

4/13(水)

15923 (16652) 153

16076 (16805) 5253人

32.67%(31.25%)

4/12(火)

15518(18855) 3 (41)

15521(18896) 6922人

44.59%(36.63%)

4/11(月)

24697 (26230) 16

24713(26246) 8026人

32.47%(30.57%)

4/10(日)

5024(5312) 6

5030(5318) 8026人

**********

4/9(土)

11871 (12100) 25

11896(12125) 8102人

68.10%(66.82%)

4/8(金)

11988(18186) 20

12008 (18206) 8112人

67.55%(44.55%)

4/7(木)

15052(16655) 79

15131(16734) 8753人

57.84%(52.30%)

4/6(水)

16154(17303) 40

16194(17343) 8652人

53.42%(49.88%)

4/5(火)

18014 (18906) 13

18027(18619) 6968人

38.65%(36.83%)

4/4(月)

17523(22082) 13

17536 (22095) 4384人

25%(19.84%)

4/3(日)

3260(4624) 0(30)

3260(4654) 7899人

**********

4/2(土)

8668(9786) 0(43)

8668 (9829) 7395人

85.31%(75.23%)

4/1(金)

14515(15823) 0 (104)

14515(15927) 7982人

54.99%(50.11%)

保護猫『とのま』の一言成長日記 2022。3月~4月


4/30(土)

今日はお寝坊さんでした。そして、私の後に起きてきて一言、ニャ、と言ってエサを食べて水を飲んで、すぐに2度寝に行きました。ゴールデンウィークぐらい、猫だってゆっくりしたいよね、とのちゃん。

4/29(金)

今日は、4時きっかりに『胸に乗る攻撃』で起こしてくれました。6.5㎏あるからまあ、

胸に乗られると重い事重い事。なかなか効果的な起こし方の一つでです。

4/28(木)

今朝もちゃんと4時……、ちょっとすぎに起こしてくれました。最近はそんなに寒くないからいいね、水換えたよ。いま、ちょっと離れた和室の入り口から、体を半分出してジーっとこっちを見ています。もうすぐ早朝ご飯だよ。

4/27(水)

今朝もちゃんと4時前に起こしてくれました。今朝はちょっと、遊びたかったみたい。今は水を飲んで落ち着いて2度寝中です。もうすぐ早朝ご飯だよ~。

4/26(火)

今朝は4時少し前に枕元にたたずむ作戦で起こしてくれました。隣で寝ている息子の寝相が深刻。なぜ、自分の布団で寝ない??とのちゃんは最近毛が抜けるようになったので、また櫛でといてあげましょう。春だねぇ。

4/25(月)

今日は急遽、おやすみです。でもとのまはいつも通り、ちゃんと4時少し前に枕元に来て、ニャ、ニャ、と、他の家族を起こさない程度の声で起こしてくれました。それでも十分目が覚めるところが素敵と言うか、君の能力だね、とのちゃん。

4/24(日)

今朝も4時ちょうどに起こしてくれました。体内時計、すごいね。1分も狂ってない。それなのに、オートフィーデングマシンの時計はもう30分も遅れて、早朝ご飯の時間が5時近くなってる。直すよ、ごめんなとのちゃん、もうすぐ早朝ご飯だよー!

4/23(土)

今朝は久々に『顎髭抜き攻撃』を試みたけど、そんなに伸びてなくて未遂に終わったね。今は大人しく早朝ご飯待ち。お腹空いた顔してます。

4/22(金)

最近はジッとしてオーラで起こすやり方が主流のとのちゃん。今朝もそうでした。ジッと、手の上に香箱座りし起こすやり方です。

4/21(木)

今朝も、枕元にいたんだね。気配がないから気付かなかった。さすが、猫。今もじっとして、早朝ご飯を待ってジッとしてます。あと30分ぐらいで早朝ご飯だよ、もうひと眠りできるよ、とのちゃん。

4/20(水)

今朝は、いつから枕元にいたの?ずーっと、ゴロゴロ言ってる、夢を観てた。あぁ、枕元に、とのちゃんがいる、っていう夢。ずっといたの?

4/19(火)

お!やっと起きたねとのちゃん。今日は父さんの勝ち! 昨日は脱出おめでとう!雨だったけど、久々の外、少しは楽しめた?でも、お母さんが心配するから、脱出もほどほどにね。

4/18(月)

今朝は目覚ましが止まってて、本当に助かったよ。形態の目覚ましって、何で突然、解除されたり、音が消えたりするんだろう。とのまがいないと遅刻するよ。まったく。

4/17(日)

今朝も、いつも通り起こしてくれました。今は妻の枕元で香箱座り中。ひょっとして妻も起こそうとしてる??あ!今日は兄さんが練習試合だから?その朝ご飯を作るために?? 天才ネコ!!!それにしても私と違って、ずいぶんとソフトな起こし方だ事。

4/16(土)

今朝は父ちゃんの方が早起き。でも一応、必ず一回は起きてきて、すりすりしてからまた寝るんだね、律儀なネコ。とのちゃん。

4/15(金)

今朝も、最近は何もしないね。 ジッと枕もとで私が起きるのを待ってる。ただ、腕の上に『香箱座り』するので目が覚めます。今までで、一番ソフトな起こし方……。おはよう、とのちゃん。

4/14(木)

今朝はそばに居たけどなにもせずにじっとしてた。起こしてくれたのかな?今もジッとして2度寝もせずにいます。お腹空いた? 早朝ご飯待ち? あと10分ぐらいだよ。フィーディングマシーンの時計、直さなきゃね。どんどん遅れていく……。

4/13(水)

今朝はやけに要求が多いね。何言いたいが、だいたいわかる。お庭に出たいんだよね。君は明らかに、日本語をしゃべってるね。でもまだ外は暗いよ。窓から覗くだけにしといて。

4/12(火)

最近暖かい朝になって来て、お互い起きるのが辛くなってきて、いつもギリギリに、私は起きるし、とのちゃんは起こしてくれる。でもすぐ2度寝。おやすみ、今日もさっさと帰ってくるよ。

4/11(月)

今朝は起きてたのに起こしてくれなかった。起きたら目が合った。ジーっと見てるけど起こしてくれなかった。その後、水を換えたら少し飲んで、またすぐ2度寝。最近急に暑くなってきたから、給水怠りなく、とのちゃん。

4/10(日)

今朝も起こしてくれました。昨日は野球の試合が延長12回まで続いたせいで7時間も留守番させちゃったね。ごめんな。今は2度寝中。おやすみ、もうすぐ朝ご飯だよ。

4/9(土)

ゴメン!今朝は起きられなかった。いつもより眠かったのかな。起こしてくれたのに。でも私が起きたら一緒に起きてくれて、暫く甘えてくれて、早朝ご飯食べて水飲んで、今は2度寝中……。おやすみ、毎朝ありがとうね、とのちゃん。

4/8(金)

今朝も起こしてくれました。『枕もと佇み作戦』で。今日はお釈迦様の誕生日、花まつりですよ。お祝いにチュールでも貰う?

4/7(木)

今朝は、私の方が早起き!勝った!でもやっぱりすぐ後に起きてきて、ニャ、ニャ、と言い訳するところがまた、可愛いです。もう2度寝に行きました。もうすぐ、早朝ご飯だよ。

4/6(水)

今朝も起こしてくれました。今朝は、『何もせずただただ枕元にたたずんでオーラで起こす作戦』。あと、『手の上で香箱座り作戦』ふわっと、暖かいんだよね。ありがとうね、とのちゃん。

4/3(日)

今朝も『胸の上乗っかり作戦』で起こしてくれました。昨日もみんななかなか寝なくて、ねぇ、早く寝ようよ、ってアピールしてた。そうだね、今日は早めに寝ようね。まだ朝だけど。

4/2(土)

今朝は2:30に起こしてくれた。ちょっと早い……。でもちゃんと4:00にもう一度起こしてくれた。まいあさたのしいじかんをありがとうね、とのちゃん。  

4/1(金)

今朝は3:57に新しい起こし方、『鳩尾に飛び乗る作戦』で起こしてくれました。あれ、なかなか効くよ。

3/31(木)

今朝も起こしてくれましたよ。ちゃんと4時きっかりに。今は、2度寝かな。ネコなのに夜は一番早く眠くなるんだよね。それで、なかなか寝ない家族に「もう寝ようよ~」ってアピールするんだよね。かわいいね。とのちゃん。

3/30(水)

今朝もちゃんと起こしてくれました。ニャ、ニャ、と、小鳴きしながら近づいてくるだけで目が覚めるようになりました。こっちも進化してますよ。

3/29(火)

今朝も、ちゃんと起こしてくれました。今はエサケージの前で、早朝ご飯を大人しく待ってます。今日も、なるべくはやくかえってくるからね。とのちゃん。

3/28(月)

今朝も起こしてくれました。ちょうど4時10分。昨日は外の出たかったね。そのアピールが健気過ぎていつも心に刺さるよ。何とか外に出してあげたいんだよ。本当はね。

3/27(日)

 今朝も起こしてくれて、今私の足元にいます。どうやら最近、朝お腹が空くらしい。あと10分ぐらいで早朝ご飯ですよー。今日は法事なので午前中はお留守番、お願いします。

3/26(土)

朝はだいぶ暖かくなってきた。今朝は早朝ご飯のあと、トイレに行って、今は窓の外、明星を眺めていましたが……、今(5:00)2度寝に向かいました。おやすみ、とのちゃん。

3/25(金)

今朝もちょっと遅れて、慌てて起きてきた様子。暫く外を見て、今2度寝に行きました。律儀なネコだね、眠かったら、ねてていいんだよ。とのちゃん。

3/24(木)

今朝はきっちり4時5分に起こしてくれました。アラームの時間、ピッタリ。あら、今日はもう2度寝?もうすぐ早朝ご飯だよー。

3/23(水)

今朝も、私よりもちょっと後に慌てて起きてきた。そしてひとしきり寝坊の言い訳をしてから、ちょっとご飯食べて、また寝ました。昨日から、朝寒いもんね。もうすぐ早朝ご飯だよー。

3/22(火)

今朝は私の方が早起き。目覚ましを聞いて慌てて起きてきた様子。今は2度寝せずに、早朝ご飯を大人しく待ってます。最近、朝お腹すくのかな。

3/21(月)

今朝もちゃんと4時に起こしてくれました。久々の『髭抜き攻撃』と『左手チョンチョン攻撃』でしっかり目が覚めました。とのまも、左利き? 猫はほとんど左利きなんだって。

3/20(日)

今朝も、ちゃんと『枕もと佇み作戦』で起こしてくれました。夏休みのお留守番の事が今から心配なんだよね。思案中……。

3/19(土)

三連休初日の今朝は、1時間以上寝坊したのに、ずっと枕元にいてくれたんだね。とのちゃん。ちょっと、早朝ご飯食べて、すぐに2度寝。ありがとう、おやすみ。でも、あと2時間ぐらいで朝ご飯だよ。

3/18(金)

今朝も起こしてくれました。最近、昼間も寝てばっかりらしいね。どうした?しんどい?見る限りでは元気そうで熱もないし、でも今朝も、私を起こしてくすぐに2度寝に行きました。

3/17(木)

昨日の地震はびっくりしたね、寝られた?今はちょっと離れたところで、香箱座りで早朝ご飯を大人しく待っている様子。

3/16(水)

今朝も起こしてくれました。何だか遊びたそう。今ご飯食べてます。

3/15(火)

今朝も『枕もと佇み作戦』で穏やかに起こしてくれました。朝はべったりデレデレなとのちゃん。今日はさっさと2度寝。でももうすぐ早朝ご飯だよ。

3/14(月)

今朝はきっと、目覚ましが4時に鳴るのを待ってて、起こしてくれたっぽい。ぼんやりとした記憶だけど、2時ぐらいに枕元にじっと座ってた気配を覚えてる。起こし方を日々工夫してくれているような気がする。毎度毎度、毎朝ありがとう、とのちゃん。

3/13(日)

今朝も起こしてくれました。今はちょっと離れたところで、早朝ご飯待ち中。夜中1人で遊んだと見える、ピンポン玉が廊下に転がってました。あ、つめ切らないとだね。

3/12(土)

今朝は寝坊。ちょっと後で、小鳴きしながら起きてきました。その申し訳なさそうな感じが朝から可愛い。

3/11(金)

今朝も起こしてくれました。最近、起こし方が大人になったね。ジッと佇む、作戦。

3/10(木)

今朝も起こしてくれましたよ。でも最近はどうも、私の目覚ましアラームで起きている様子。春眠暁を覚えず、だね、とのちゃん。

3/9(水)

今朝は起こしてくれませんでした。まだ熟睡中……。そんな朝もあるさ、でもちょっと寂しい……。

3/8(火)

今朝は2時に起こしてくれた、さすがに早いと思ってたら、4時にまた起こしてくれた。ちゃんとねてる?今は2度寝中。

3/7(月)

実はこれは8日に書いてます。昨日、パソコンの不具合で書けなかった。でもちゃんと、3時0分に起こしてくれたよ。ありがとう。とのちゃん。


3/6(日)

今朝は起こしてくれたのに起きられなかった。ごめん。今は2度寝中。早朝ご飯、出てるよ。

3/5(土)

今朝も上乗っかり攻撃で起こしてくれました。3時45分ぐらいかな。君が起こしてくれるから、休日でも同じ時間に起きるんだよ。規則正しい生活が出来てます。ありがとう。とのま。

3/4(金)

今朝もちゃんと起こしてくれました。形態の電源が落ちてて目覚ましが鳴らないところだった。たすかったよ、とのちゃん。でも最近、昼間はずっと寝てるらしいね。体調でも悪い??

3/3(木)

今朝は3時に起こしてくれました。ちょっと、早い……。昨日の夜もずっとはしゃいでたし、眠れない?お昼寝し過ぎた??今は2度寝中。もうすぐ早朝ご飯だよ。

3/2(火)

今朝も起こしてくれた。今朝は2度寝せずに、大人しく早朝ご飯待ち中。今朝はお腹が空いているのかな。もうすぐだよ。とのちゃん。

3/1(火)

今朝もちゃんと起こしてくれました。くー と遊んで欲しそうに鳴いたけど、今は大人しく早朝ご飯を待ってる様子。毎朝ありがとう、とのちゃん。 

covid-19 2022 Mar Tokyo Japan


3/31(木)

15583 (17157) 0(10)

15583(17167) 8226人

52.78%(47.91%)

3/30(水)

13149 (17679) 0(9)

13149 (17688) 9520人

72.40%(53.82%)

3/29(火)

16618(19350) 0(3)

16618 (19353) 7846人

67.53%(39.72%)

3/28(月)

22633(25788) 0(33)

22633 (25821) 4544人

20.07%(17.59%)

3/27(日)

3619 (5521) 0

3619 (5521) 7844人

**********

3/26(土)

9179(12400) 0 (44)

9179(12444) 7440人

81.05%(59.78%)

3/25(金)

11351(19152) 0 (22)

11351(19174) 7289人

64.21%(38.01%)

3/24(木)

11531(16290) 0(32)

11531 (16322) 8875人

76.96%(54.37%)

3/23(水)

11705(17642) 0(19)

11705 (17661) 6430人

54.93%(36.40%)

3/22(火)

21268(26299) 0 (31)

21268(26330) 3533人

16.61%(13.41%)

3/21(月)

4276(6204) 0

4276(6204) 3855人

90.15%(62.13%)

3/20(日)

3819(5242) 0 (47)

3819(5289) 6502人

**********

3/19(土)

9734 (12282) 0 (9)

9734 (12291) 7444人

76.42%(60.56%)

3/18(金)

9824 (17907) 0 (14)

9824(17921) 7825人

79.65%(43.66%)

3/17(木)

12031(16692) 0 (72)

12031(16764) 8461人

70.32%(50.47%)

3/16(水)

13211(18892) 0 (23)

13211(18915) 10221人

77.36%(54.03%)

3/15(火)

14,565(21102) 0 (25)

14565(21127) 7836人

53.80%(37.08%)


3/14(月)

23511(28991) 0(24)

23511(29115) 4836人

20.56%(16.60%)

3/13(日)

4666(5626) 0(1)

4666(5627) 8131人

**********

3/12(土)

11467(13683) 0(47)

11467(13730) 9164人

79.91%(66.74%)

3/11(金)

11567(20607) 0 (11)

11567(20618) 8464人

73.17%(41.05%)

3/10(木)

13608(18517) 0 (117)

13608(18634) 10080人

74.07%(54.09%)

3/9(水)

16199 (19486) 0 (111)

16199(19597) 10823人

66.81%(55.22%)

3/8(火)

15498(22018) 0 (39)

15498(22057) 8925人

57.58%(40.46%)

3/7(月)

20887 (29282) 0 (63)

20887 (29345) 5374人

25.72%(18.31%)

3/6(日)

4212(5270) 0(8)

4212 (5278) 9289人

*********

3/5(土)

11868(14504) 0 (5)

11868(14509) 10806人

91.05%(74.47%)

3/4(金)

12320 (22526) 0(19)

12320 (22545) 10517人

85.36%(46.64%)

3/3(木)

16812 (21331) 0(76)

16812 (21407) 12251人

72.87%(57.22%)

3/2(水)

16051(22578) 126

16177(22714) 12693人

78.46%(55.88%)

3/1(火)

20167(24827) 129

20296(24956)  11813人

58.20%(47.33%)

『いきてるきがする。』《第8部・春》


もくじ


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第64章『オモイデ、アリ〼。』 

 今日は私が店番をしています。2人にはお使いに出てもらっています。少し時間がかかる様なお使いに出てもらっているので、暫く帰って来ないと思います。というのも、今日は皆さんに話す事が、話したい事があるのです。 

 しかしあの2人がいないと、この店はこんなにも冴えない古びた雑貨屋なんですね……。ゴールデンウィークが終わってからこっち、急に夏の様な日が続いたかと思うとジトジトと冷たい雨が降ったりして、何だか体調もすぐれません。 

 窓辺の万年風鈴が チリ、と鳴ったので目をやると、窓の向こうに人参色をしたケシの花がたくさんゆらゆらと気楽げに揺れているのが見えました。何かに似ているな、どこかで見たな、と考えるとそれはいつか神田駅のホームで見た酔漢達にそっくりでした。私がまだ未成年だったあの頃、酔漢達はみな模範囚の様に見えたモノです。そして巡り巡って、気が付くと自分までその模範囚となり今、私達は共に店の内と外でこうして揺れているのだから面白いモノです。そしてあの時同様、ほどなく雨が降るようです。 

 2人にお使いを仰せ付けた引き換えに私は、2人から多くの事を仰せつかりました。 

 今日はたくさん荷物が着きます。今日の発送分の品物に関しては触らないでください。それ以外は、Tシャツなら男女それぞれMサイズを柄ごとに1枚ずつ、袋から出して中央の台に見栄えよく置いてください。残りの在庫分は衣類はカラーバリエーションがグラデーションになるよう重ねて戸棚に、お客さんから見える様に綺麗に収めてください。小物も一つずつ出して、在庫は箱ごと見えない様に台の下に仕舞ってクロスを掛けて置いてください。平積みはやめてください。売れなくなります。どうもうちの商品はたくさん並ぶと急に魅力がなくなるようです。それはデザインに問題があると思います。いずれも一点モノでしか成り立たない様なクセのあるモノばかりで、しかも大人が着るにはふざけ過ぎていて、子供が着るには可愛くなさ過ぎるのです。それというのは店長が顧客のニーズを全く考慮せずすべて思い付きでデザインするからで、実際に買っていく人を見ても大概は後先考えない衝動買いか、さもなくば誰かに送って困らせてやろうというイタズラ好きな人ばかりのようです。 

 ずいぶんな言われようですが、これが実際なのでしょう。 

  

 昨日、フレデリックのしっぽの付け根に白いモノをみつけました。 

『おぐされ病』という病気らしく、いろんな原因があるのですが、医者の言いうところによると、フレデリック自身の免疫力の低下もあるのではないか、という事でした。薬をもらって、今朝から水槽に入れてるんですが、なにぶんご高齢につき、慎重には慎重を重ねて……。あ、これも触らなくていいですから。 

  

 フレデリックとは金魚の名前です。誰が付けた名前なんでしょう。人間ならもう300歳ぐらいでしょうか? いつからこの店にいるのでしょうか? 

 いえきっと、私はこれらの事はすべて知っているのです。しかし私があまりに長く生き過ぎたせいで、今初めて知った事も、ずっと昔から知っていた事もまったく区別がなくなっているのです。それは例えるなら、宇宙から地球を俯瞰しているような感じでしょうか。 

 宇宙から見れば東京も大阪も変わりません。更に遠く俯瞰すれば、銀河系もアンドロメダ星雲も変わりません。時間は長く過ぎれば過ぎるほど、『今』は遠くから俯瞰されるような変化をするのです。 

 もっと若い頃の私は『今』を時計の針の何倍も細かく刻んではそれを浪費しているような罪悪感に苦しんでいましたが、今はもうそんな事はありません。『今』は老いた猫と並んで、私の傍らでじっとしています。 

 言いたい事がある、と言いましたが、それは他でもないこの、私の溜まりに溜まった思い出の『処理問題』です。どうか皆さんにも使ってもらいたいというのが趣旨なのです。 

 他人の思い出を使うって?どういう事?と思われるかもしれませんが、思い出はもともと独り占めできるものはありません。こう言うと、じゃあ、夢は? と大概は仰るが夢にしたって独り占めできるものではありません。思い出も夢も、誰かと共通しているのが通常です。 

 私達は様々な場所を旅します。それは単に空間的にという意味ではなく、想像のエリアも含めた全体を示します。そしてその日に見た事、聞いた事、やった事を行商して回っているのです。 あぁ、今日はこんな事があった、でもこんな事もあった、だからこんな事になった、という按配で、それを人に見せて回っているのです。そして誰かがその思い出を気に入ればそれを持っていきます。お代なんて有りません。ただ、ひと声かけて持っていくのです。そしてその人が掛けた何気ない一言が、あなたの思い出や夢の内容を決めているんです。 

               * 

 やあ、忙しいそうだね、今日は。 

 早速、誰かが話し掛けてきました。 

  2人はお使いかい? どおりで忙しいわけだ。じゃあそのフレデリックという金魚について教えてくれないか? 

 私は金魚の事を話します。 

 あの金魚は私が小学2年生の時に神社の縁日で掬ったモノです。生き物が嫌いな父親に黙って、おばあちゃんと行った縁日で私は生まれて初めて金魚を掬ったのです。 

 5匹も掬ったのですが、家に帰るなり酔った父に取り上げられ、そのまま家の前を流れる側溝に捨てられてしまいました。血の雫の様な赤い金魚が、ボウフラが湧いた汚らしい側溝に消えていったのです。私は側溝に飛び込んでヘドロの中から金魚を掬いだしましたが、2匹しか見つかりませんでした。 

 ヘドロまみれの私に、父は酒臭い息で言いました。 

「お父ちゃんはな、動物が大好きなんだよ。子供の頃はいろんな動物を飼った。でも今は全部死んでしまった。自分が動物より先に死ねば楽でいいが、じゃあ残された動物はどうなる? 逆に動物が先に死ねば、それはお前が考えているよりもずっと悲しくて辛い事だ。動物を飼うという事はそういう事だ。どちらにせよ、お前は自分の人生を敢えて悲しみの袋小路に追い込むことになるんだ。それは無駄な事だ、やらなくてもいい選択だ。動物は絶対に飼ってはダメだ!」 

「じゃあ、人間の子供はどうなんだよ?」 

人間の子供は飼うんじゃない。子供の命は親の命の一部だ。大切かそうじゃないかという存在じゃない。だから大丈夫だ。先に死んでも、先に死なれても、存在を疑う必要はない。だから別段問題はない」 

「じゃあ、俺はどうなんだよ?」 

お前は大問題だ。お前は紛れもなく父ちゃんの子だ。だから厄介なんだ。」酔っぱらった父はその時、少しまじめな顔になりました。

 お前は生まれた時にほとんど死んでいた。お父ちゃんはそんなお前をベストじゃないと直感したんだ。だからもう諦めたからいいと言ったのに、医者が勝手にお前を生き返らせた。案の定、お前は父ちゃんには懐かず、ばーさんにばかり懐いて、父ちゃんのお前に対する愛情はどんどん薄れていった。それは父ちゃんをどんどん不幸にする事だ。だから父ちゃんは父ちゃんもお前も不幸にならないための唯一の方法を取った。それは神様から生まれた正真正銘の自分の息子であるお前を『飼う』事だ。飯を食わせて、病気をすると医者に連れて行って、誕生日のお祝いをして、旅行に行って、運動会に参加して、人並みに大学まで通わせた。でもただそれだけだ。父ちゃんはお前に何の見返りも期待せず、お前に感謝されない様にと、それだけを気を付けた。父ちゃんは自らの意志で、全く可愛くないモノを細心の愛情を込めたのとまったく同じように飼育したんだよ。犬猫と人間の混ぜこぜだ。これは大変だぞ。しかしそれでお前も私も救われたと、父ちゃんは自負している。今でも父ちゃんはお前が生まれてくれてよかったと思っているよ。そのお陰で父ちゃんは親子という関係の脆弱さを知った。疑う事が出来た。そして親子の関係を力づくで制御する必要性に気付いた。だから父ちゃんはお前に感謝している」 

その時の2匹が、あの金魚です。」

「……。」

「どうですか?」 

「つまんねぇ話、要らねぇ」 

「あぁ、そうっすか、じゃあ、神田駅のホームから酔っ払いが転落してそこに急行列車が……」 

「あぁ、それも、要らねぇ」 

「あぁ、そうっすか……。」 

 今日は、まだゼロのようです……。誰の現実も夢もシェア出来ていません。私はしばらく、ただぼんやりと夜景を眺める様に億千万の生活が星の一つ一つに宿っているのを眺めている事になりそうです。

 そうしてジッと庭を見ていると、『今』の自分がどういう状況に置かれているのか自分勝手に決めても一向にかまわない事に気付くんです。出来るんですよ。で、そこに花瓶につと花を1輪活けるように、

私の思い出の数々、置いてみませんか? オモイデ、アリ〼。

                 

                * 

  ポツポツという音で目を覚ますと同時に2人が帰ってきました。 

 お帰り、早かったね。  

 お帰りじゃないですよ店長。雨降ってきましたよ。窓閉めなきゃダメじゃないですか! 

 あぁ、そうかそうか。そりゃ大変だ。で、売れた? 

 売れませんよ。 

 万年風鈴がまた、チリ、と鳴りました。これはさっきも聞きました、遅かりしの雨告げのチリ、です。 夏までまだもう少しありそうな気がしました。 

第63章『拝啓、ミスター・ルサンチマン!』 

 私など大した人間ではないし、何も知らないし、何も出来ないのですが、こんな私に憧れ、必死に追いつこうとしたが追いつけず、ついにはルサンチマンから私を殺そうとした人がいたのです。これは私がドライバーになる前にいた職場での話です。 

 まず初めに、私は12歳でギターを始めました。まあ多少の才はあったのではないでしょうか。周りの友達よりも上達が早く、お前はなかなか筋がいい、東京でもイケるんちゃうか?!という周りの大人のいい加減な言葉を信じ、高校を卒業すると同時に、私は極東で一番大きくて一番危険な街、東京に足を踏み入れたのです。 

 そこでは壊れたバイクを高額で買わされたり、厄介な宗教団体に合宿と称して監禁されたり、殺人の前科がある変態性欲者の餌食になりそうになったり、 AV女優の運転手としてアメリカに行ったらパスポートを取り上げられ帰れなくなったりと色々ありましたが、もとより東京はバケモノの巣窟だと思っていたのでそれなりに処理できました。 

 しかしこれだけは意外でした。それは音楽が本当に楽しかったという事。 

 田舎にいた頃は、東京というモノを誇大に妄想しては、そこで暮らすにはきっともっと大きな角をはやさなければ、もっと派手な翼をはやさなければ、と荒唐無稽な条件が次々と頭に浮かび、『こんな田舎でこんな凡百な連中を相手に手こずっているようではとてもとても東京では通用しない!』と周りとの関係をわざとギスギスとさせて、相手の欠点ばかりに目を向けてその分自分を少しでも優位に立たせようとする、そんな卑屈で意味のない習慣が身に沁みついていたのです。 

 ところが実際に東京に来てみると、連中は皆とても楽しそうで、自分以外にいいプレーヤーをみつけたら寧ろ嬉しそうに近づいてきて、一緒にやろうよ! と声を掛けてくる。自分の可能性と相手の可能性を同等に見るんですね、しかも私には考えられないほど、ごく自然に……。 

 あぁ、つまりこれが東京なんだな……、と思いましたが、そう気付いた時はもう私にはそこを伸ばす伸びしろが見当たりませんでした。私は自分の才能にも可能性にも見切りをつけた事はこれまで1度もありませんが、ただ私には誰かの力を伸ばす力がなかった事だけは痛感せざるを得ませんでした。バンドをやろうと意気込んでいたくせに、私はバンドそのものをまるで信用していなかったのです。 

 30歳を過ぎた時、私はミュージシャンの夢を諦めて、普通に就職する事にしたのです。 

 まあ、よくある話ですね。 私はいつも恐れて怯えていた、ただそれだけです。誰かこんな凡人に憧れますかね? もし彼にもその事をちゃんと話せていれば、彼の私への病的な憧憬やルサンチマンは幾分か色褪せたモノになっていたかもしれません。殺す価値もない奴だと、早々に気付いていたかも知れません。彼は確かに、私の目から見ても、何も持っていませんでした。知識も、技術も、社交性も、話術も、素敵な表情も、罪のない嘘も、夢らしい夢も、希望も、目標も。 

 彼は職場の先輩でした。私よりも年は若いのですが、職場では先輩でした。私はいつか彼に仕事のやり方をたずねた事がありました。すると彼は、これは僕のやり方だから正解じゃない。だから僕のやり方を参考にするのは勝手だけど、自分の正解は自分で見つけて、と言いました。それからも、何かを訪ねるたびに彼は、これは正解じゃない、と同じ事を言いました。それは道理です。そして仕事に慣れ始めるに従って私は、彼が言ったとおり自分で工夫したやり方に変えていったのです。それは当然、彼にとっても正解のはずでしたが、しかし彼は事ある毎に私のやり方を非難するようになりました。 

 そんなやり方じゃ2度手間になる。僕の話、聞いてた? 

 と言っては、私のやった事をあてつけがましくやり直したりするのです。私は温厚な性格なので大概、態度には出しませんが、そういうあてつけがましい行為に対しては、自分でも驚くほど耐性がなく、その時も、傷ついたのか腹が立ったのかは今や判然としませんが、とにかく私は彼に対して猛烈な不快感を持つ様になっていったのです。 

 彼は私を見ても笑いません。当然私も彼を見て笑いません。仕事は慣れれば誰にでも出来るような単純なモノでした。だから私は彼を、彼は私を、出来るだけ仕事が連携しない様に、そしてその分、その他の社員とは出来るだけ楽しそうに話す様にと、それはげんなりするほど低辺な戦いを続けたのでした。底辺の戦いに関しては彼に分があるように感じていましたが、その時はまだ勝負としては互角だった様に思います。 

 しかしあるファクターが私に大きく加勢します。それは、その職場の所長が、『大のロック好き』という事情でした。所長と私はロックの話で盛り上がりました。所長は大のロ―リングストーンズファンで、私はいつも、ほんの少しだけ話の下手に出る形を取ります。すると話はとても盛り上がるのです。これを『銀座のホステス方式』と私は勝手に呼んでいるのですが……。 

 実はローリングストーンズの知識も、私には相当あるのです。でもわざとわからないふりをして相手に花を持たせる。これを相手にわからない様にするのです。そして相手が気持ちよくなっているところで、ストーンズのスピンオフ的話題、大ファンにとってはどうでもいいような、雑学的話題を振り掛けると所長は、お前は、本当によく知ってるなぁ~、と言って感心するのです。 

 恐らく私のそういうところが彼の琴線に触れたのだと、私は推測しています。彼は俄然、音楽を、特にローリングストーンズを聴くようになったのです。そして、 

「所長、知ってます? ロンドンのビル・ワイマンが経営するレストランのお土産のライターが、使い捨てなのに700円もするんですよ」などと、悲しいほどに絞りだしてきた話題で細々と対抗しようとするのです。私はかつての自分を見るようでした。彼を少し哀れに感じたほどでした。敵を恐れるあまり巨大に見えて、小石の様なモノまで投げつけて身を守ろうとする。 

 きみ、私と所長の話はそんな大したモノじゃない。ただの雑談なんだよ……。 

 しかし私は私で、明らかに彼の劣勢を意識して、それこそ必要以上に楽し気にローリングストーンズの話をして見せたのも事実です。私は読書も好きなので、ローリングストーンズの話にうまく交えて、三島由紀夫と川端康成の裏話や、ジョルジュ・バタイユガルシア・マルケスの様な、やや癖のある作家の雑学などを披露し、ますます『お前はホントにいろんな事をよく知ってるなぁ~」と言われ、彼を突き離しに掛かったのです。毎日彼の歯ぎしりが聞こえて来るようでしたが、それはそれで全然不快ではなかったです。 

 そんなある日、彼が突然、私を食事に誘ってきたのです。 

 彼は私を居酒屋に誘いました。そして突然、これまで取ってきた不遜な態度を全てを詫びてきたのです。あれはすべて、自分の不甲斐なさから出た事で、あなたには関係ない。私はあなたの豊かな知識と経験が羨ましくて仕方がなかった。自分は貧しい母子家庭に育ち、あらゆる欲望を諦めなければならなかった。そんな母親もある日、再婚相手と家を出て帰らなくなった。私は母を待ったまま親戚に引き取られ、そこで『飼育』されたんだと。 

 僕は、本当は警察官になりたかったんです。この世の中から、あらゆる不平等や理不尽を根絶したかったのです。彼はそう言いました。そして、でも、諦めました。と言ったのです。 

 『飼育』されながらも、彼は母を待っていたのだと言いました。いつか、あらゆる世の中の不平等や理不尽の間を縫って、母の白い手が私を目掛け、一直線に伸びてくるのを、バカバカしい話ですが、つい最近まで本当に心待ちにしていたのだと。 

 でも、諦めました。それは偏に、あなたのおかげです。 

 そいう言うと彼は、テーブルの下に隠していた両手を振り上げると私の胸めがけて包丁を振り下ろしたのです。大柄な彼がいきなり立ち上がったせいで、居酒屋のテーブルが彼の肘を押し、包丁は私の胸のややズレた場所に刺さりました。店内で悲鳴が上がり、私は彼の両手を両手で押さえた形で絵の様に膠着しました。そして彼はさめざめと泣きながら、 

 なんで? これも、ダメなの? 

 と言ったのです。 

 『命掛け』なんて簡単に言いますが、命なんて邪魔なだけじゃないでしょうか。命なんてモノを意識すればするほど、人生が他人事になってしまうんじゃないでしょうか。私は、彼のために立派に死ぬ事も出来たんじゃないでしょうか。それが正解だったのではないでしょうか。 

 私は彼を凹ませるためだけについた、ジョルジュ・バタイユやガルシア・マルケス、三島由紀夫と川端康成、ローリングストーンズについての数々の嘘を胸に抱えて、彼の代わりにまっとうな社会人として、父親として生きる事を誓います。 

第62章『名前は、椎名。』 

 さっきからずっと庭を眺めてはため息をついています。恋をしてるのかって?そんなんじゃありません。揶揄わないでください。喜怒哀楽が疲れ切ってしまった私の事などもう覚えている人も少ないかと思います。私の事が見えている人はもう1人もいないかもしれません。なぜならば私はあの出来事以来、すっかり自己嫌悪に陥り、自暴自棄になって、携帯からすべてのアドレスを消去して、SNSの全てのアカウントを削除してその上、何度も覚悟の足りない、中途半端な自殺未遂を繰り返して、そうしながら孤独の淵の奥深くに卑しく身を沈めているのですから。 

 私の名前は椎名。ウソでも本当でもそんなのどうでもいいです。 

 大好物はスイカ、いつかの夏の海であの子と食べたあのスイカです。日焼けしたあの子は、浮き輪に座ったまま器用に種をぷっぷと吹き出して……。それ以外は何を食べても同じです。 

 難しい問題は次から次と現れては私を掠めて飛んでゆきました。飛んで行ったのならいいじゃないか!と、そう仰ってもそれは違います。『今』とは常に、その掠めている瞬間の事なんですから。突然降りかかってくる、悲しみや恐怖は常に『今』なんです。それに、掠めるといったって、それはまるで剃刀のような勢いなんですよ。完全に私の命を狙っているんです。 

 だからまずは私は正体を隠す必要があるのです。だからまずは私の性別が男か女かわからなくするために、初恋の話から始めます。私の初恋は幼稚園の頃、同じクラスではなく違うクラスの、近所に住む……。 

「あ~あ、また始まったよ」そう言ってペンをくるくるし始めた。 

私?私の名前は椎名。ウソでも本当でもそんなのどうでもいいよ。 

どうせまた、そこから結婚して子供を3人設けて、なんのかんので今に至るまでのいきさつを滔々と2時間も3時間も話すんでしょ。もうウンザリだよ……。なんなんですかね、こうやって頭がおかしくなったフリさえすれば、罪はどんどん軽くなるってシステム。 

 昔みたいにタバコの煙がモクモクという事はありませんが、この部屋の中はその分、凛とした重い空気がみっちりとしています。タバコの煙など、たとえあったとしても揺れようもないでしょう。 

 私が庭を見ていたのは昨日の午後の事です。雑草が伸びたので娘達と一緒に草引きをするよと声を掛けて、それぞれが庭に出てくるのを待っていた時でした。風に揺れる雑草が私の足元で小さく揺れるのを眺めている時、私には今までの私の状況のすべてが、あたかも頭の中だけに限られた事のように思えてきたのです。私があの人と結婚したことも、あの人との間に2人の娘と、そして、あの子を授かった事も……。 

 私は大きくかぶりを振ります。違う違う!! 頭の中に限られた事なわけがない。でも私の心は尚、揺れる雑草を見て寛いでいるのです。バカな!嫌だ嫌だ! そんなにして、私はあの子を否定したいのか?もともとなき者にしたいのか?? 

 いくら私があの子の悲惨な最期を『今』に投げつけてみても、穏やかな風はやみませんし、私の心は落ち着いたまま乱れません。 

 そういうあなたは、心の傷を何だと思っています?どういう性質のものだと思っています? 

 そう訊かれて私は即座に、必ず癒す事が出来るモノだと思いますと答えたのです。するとその人は、なぜ、そう思う?と再び訊きました。私は、 

 人はいつまでも一つの事に固執していては前に進めません。人間は生きる限り先を、未来を見なければなりません。過去はどうする事も出来ませんが、未来はなんとでもすることが出来る。そう思って生きる事こそが魂を幸せに保つ事だと思うからです。 

 そんな、今思えば優等生過ぎる、雛形どおりの全く親や社会からの受け売りな事を、でもその時は本気でそう思ってそう答えたのです。 

 過去も未来を含まない、そんな『今』が、あなたには見えるんですね? 

 そう訊かれて私はあわてて訂正しようとしましたが、それはダメだとハッキリ言われました。一度そう答えたのならもうそれは本音として覆らないと。覆ったとしても、それは全てウソだと。『その人』は言います。 

 すべてのチャンスは一度だけだと……。 

  私は椎名といいます。でもそれはもともとは、誰名(すいな)から派生した名字で、誰も私の名前を知らない、という意味で……。 

  

 椎名、強いな、恣意な、思惟な、シーナ、sheena. 

 そんな調子で、私はきっと誰にでもなれるんでしょうね、いや、なれたのでしょう。その気になれば鳥にだって。そうして庭にポンと降り立って、心の向くままにミミズや虫を啄んだり、誰も見てさえいなければ植木鉢や車のボンネットの上にフンをして、そのまま鳥として、羽根を繕ったり、そこで偶然にスイカの種をみつけて……。 

 あ! やっと娘達が出てきました。双子なんですよ。2人とも私が言うのも何ですが、とても美人。お揃いの鍔広の帽子がとてもよく似合っています。さあ、草引きを始めますよ! 

                   * 

 やれやれ……、やっと終わったよ。今日は草むしりまでか。それで、あれでしょ、庭で草むしりをしていてスイカの種をみつけて、息子のあの出来事を思い出して、取り乱して、娘達に介抱されるんでしょ。そのあとは何でしたっけ? 何回聴いても、そこから先を忘れちゃうんですよね。まあ、どうせデタラメだからどうでもいいんですけど……。 

 私の名前は椎名。出身は京都なんですけど、なんでも千葉に多い苗字らしくて、部首の隹(ふるとり)はしっぽの短い、ずんぐりとした鳥、という意味があるらしいのですよ。それが木に止まっているって、そんな意味なんですかね? そりゃ鳥だから気に止まっても何も不思議じゃないでしょうけどでもね、椎名だからって、実際は何も私の事を表してはいないんですよね。 だから、そんな風に呼ばれても、一応返事はしますけど、納得しているようなしていない様な……。名前とか、何なら顔とか。 

  

 何なんでしょうね? わからなくなりますよね。いつも。  

第61章『春を走らせ!走らせ春を!』  

 素敵だなぁ、と呟いたら……。 

 そりゃ、そうでしょ。今年もこうして無事に桜が咲いてくれたんだからこんなに素敵な事は他にあるわけがないでしょ? まったく咲かない可能性だって、まるでなかったわけじゃない。黒い雲や冷たい風は、いつもどこかで渦巻いている。それが今年も房総半島の春が、こんなに素敵に無事にやってきたのだから、こんなに素敵な事が他にあるわけがないでしょ? 

 房総半島の春? そうか、私が見ているこれは、房総半島の春なのか……。 

 房総半島のちょうど真ん中辺にあるこの現場は、曲がりくねった狭い山道のどん詰まりに追い詰められたキツネの様に蹲っていて、余所者の私を見ると息をひそめるのか、だだっ広い敷地内にはいつも人影がなく、散々ウロウロと歩き回ってやっと誰かをみつけても、私の管轄じゃない、とか、フォークのオペレーターに訊いて、とたらい回しにされた挙句、もうちょっと早く持って来れなかったの? などと心無い文句を言われるのが常なので、朝、配車表でここをみつけると気持ちが沈むのが常なのですが、春だけは別。そうじゃない。とにかく、その道すがらの桜の見事な事! 

 今はソメイヨシノは終わり、花吹雪を演じているのは専ら八重桜。品で言うとやや線が太く、繊細な桜を演じるにはソメイヨシノよりやや劣ると評価されがちな八重桜が、それならばと一世一代、その一番の特徴であるふくよかな枝先を、まるで酔った楊貴妃の白妙の指先から下がるライチの房の様にたおやかに艶めかしく揺すってみせるのです。 

 お見事! 私はハンドルを握りながら拍手喝采! 

                 * 

 ディーゼルエンジンも今日は心なしかしゃいでいるようです。いつもよりウンウンと唸りを上げて坂を上ります。あなたもあるでしょう、お散歩中の犬のような気分。あっちこっちに素敵なモノがあり過ぎて、いったいどこに行きたいのかわからなくなるような気分。 いかんいかんと、私は気を取り戻します。

 この時間にまだ船橋だから、卸すのは午後イチになりそうだな。その後は多分、有明辺りで積んで都内近県に2~3件。それで終わりにしても事務所に着くのは17時前後と言ったところか……。 

 昔ならば何日もかかった道のりが、わずか数時間で過ごされる文明社会。結果として私は昔の人の何倍もの時間を過ごしている事になるでしょう。今日午前だけで私はきっと、江戸時代の旅人の数日分にも換算される時間を過ごした事でしょう。でもそれは単にトラックのスピードのせいじゃない。頭の中身が、時間を飛ばし読みをしようとしているのです。私の脳みそは道すがらの何百年のメッセージを一瞬で捕えようと無理をするのです。でもそれは昔の旅人だって同じです。何百年も昔にふと私をみつけて歩き出す、そんな無理をするのです。私と旅人は図らずもそうして、抜きつ抜かれつしながらお互いをめざして歩いている。会えない事もあるでしょうが、うまく会える事もある。 

 どうせ昼に掛かるのだから同じ事だと、私は路傍にトラックを止めて午後のちょうどいい時間までそこで昼休憩を取る事にしました。窓を開けるとソメイヨシノより稍々大ぶりの八重桜の花びらがいっぱい入ってきました。それはいつか昔、私が放った毛束のサルが花弁なって帰って来たモノかもしれません。私のメッセージは遠い中国の遠い作家に無事届けられたようです。そう、私だってなにかの目的のためにそこへ向かい、それを終えてまた戻るのだから旅人に変りない。その運ぶモノが例え、一通の恋文だろうが、20トンの建築資材だろうがなんら変わりはない。 

 『今』私の目の前に咲くこの立派な八重桜の老木は、江戸時代の旅人をしてわざわざ私に会いに向かわせるための標となって何百年も昔にこの道を歩かせしめたのでしょう。彼の目的は正に、私に会う事、そして一通の恋文を渡す事だったのです。もし私がちょうどその場所にトラックを止めていたとしたら、一体どういう現象が起きると思います? 

                   * 

 あぁ、やっと追いついた。この恋文は、貴方へのモノです。 

 え? でも私には、思い当たる人が1人もありませんが……。 

 そりゃ、そうでございましょう。おなごがそうそう恋心など悟らせようはずもございません。 さ、どうぞ、お読みください。それまで私はここで、一服させてもらいます。そう言ってガードレールにもたれると彼は猫の根付けをグイっと引っ張り、煙管を出すと煙草の葉を詰めはじめました。 

 受け取った手紙からは微かに香が香りがします。開くとそこには綺麗な平仮名がサラサラとして、知識のない私には全然読めないのですが、きっと私も年柄もなくドキドキと火照っていたのでしょう、その微熱のせいか、頭に入るなり平仮名はザラメの様に易々と解けては沸々と語り掛けてきたのでした。 

                  * 

『あなたへ。私は今、夢を見ているのでしょうか? あなたがはっきりと見えるのです。あなた、私は恋をした事がありません。それはきっと、誰かが私を望まなかったせいでしょう。いったい誰が、何のために私を望まなかったのでしょう。私は私の命が続く限り、その人と、その人が私を望まなかった訳と、そして最後に、その人の代わりに私を望んでくれる人を探したのですが、とうとう見つかりませんでした。それにはあまりにも私の命は短すぎたのです。私はそのあまりの辛さから、その考えを何度も捨てようとしました。しかしそのたびに、望まれない私がその考えを捨てたりしたらそれこそ、私は何なのか、私の命は、私の苦しみは、私の希望は何なのか、そのすべてを私自ら捨ててしまう事になるのです。それは矛盾です。揶揄われたのと同じです。もしそうならば、私を望まなかった張本人が私自身であったならばその時は、私は初めて腹を立てると決めているのです。憤怒に我を忘れて、髪を掻きむしってのた打ち回ると決めているのです。 

 今、気持ちはとても穏やかです。私の前には、小さな八重桜の苗木がほんの数輪の花をつけております。こんな小さな苗木に咲いた花でさえ、時に連れて老木と同じように散ってしまうのですから、私の命が幾許もなくとも文句は言いません。ただこの苗木がいつか見上げるほどの大木となって、そして私を望む人がふとその姿に目を止めて、その場所に立ち止まってくれたならば、私はその人に手紙を書くことが出来ると思うのです。 

あなたへ、あなたは私を望みますか? 望んでくれますか?』 

                  *  

 私が目を上げたのと同時に、読み終わりましたか? と言って彼はガードレールから立ち上がりました。 

 えぇ、でも、なんて返事を書けばいいのかさっぱりわかりませんよ……。で、この人はその、亡くなったんでしょうか? 

 はははは、そりゃ、もう何百年も前にね。いいんですよ、今、貴方が思う率直な気持ちで。 

 そう言われてもねぇ……、私はあくせくしながらようやく返事を書きました。それを渡すと、彼はそっと懐にしまい、 

 確かにお預かりしました。して……、 

と、猫の様に鼻を中空クンクンとさせ、さっきから春の香に混じって妙な匂いがしませんか? と言いました。そういえば確かに何かが焦げるような臭いがします。 

 大方、私のこの方への想いが、手紙の端っこでも焦がしてしまったのでしょう。私が言うと、彼は大きに笑いました。 

 ワハハハハハ! そんなに熱い内容なら私もちょっと読んでみたくなりました。読んでいいですか? 

 ダメダメ!絶対ダメですよ。何処の世界に人の恋文を盗み読みする人がいるんですか! 

 ワハハハハハ! 何処の世界にもおかしな奴はいるモンです。人のモノとも、自分のモノとも区別もつかず、いい事しているつもりで悪い事をしては、未来の、過去の人達に嫌われたり、また好かれたりしている。そりゃあもう、悔しいほど是非の付かない、おかしな連中が……。 

 とにかくその手紙、絶対に途中で読んじゃダメですからね。ちゃんとこの人に届けてくださいよ。 

 まあ、長い間ですからね、私にだってふっと魔が差す事がある。我慢する度胸はあってもふとした拍子にそれが徒となることもある。それならば堂々と今、ちょっとだけ。 

 だからダメだって言ってんじゃん!しつこいオヤジだな! 

 ワハハハハハ! 

                  * 

 そっと目を開けて時計を見るとちょうどいい時間です。私は腹の上に溜まった八重桜の花びらを払うとエンジンを掛けました。そしてギアを入れてハザードランプを消して右ウインカーを出し、再び走り出そうとしたのですが……。 

 妙にはしゃいでいるなと思っていたディーゼルエンジンの調子が妙なのです。ウンウンと唸るばかりで全然坂を上りません。 

 去年の車検の時、私はちゃんと言いましたよね? 

『クラッチの調子が悪いので診てください』って。 

 状況を告げると、電話の向こうで事務方が大慌てしている様子が聞こえてきました。 

 「えぇ、あの、予定していたトラックがですね、今、千葉で故障して動けなくなってしまった関係で、急遽別便を手配しますけど、もう少しお時間がかかるかと思うのですが……」  

 じゃあそれまで、私はこの桜の下で恋をしていようと思います。 


第60章『ウソを承知で。』 

  

 ゴールデンウィークが近づいてくると、自分の行動範囲がグッと広がっていくというか、いろんな場所がより身近に感じられるというか、自分が赴いてもいい範囲がいよいよ広く世の中に認可され始めてくるというか。 

  

 旅に出たい。知らない場所で知らない人と接したい。そこで新しい何かを経験をしたい。これはもう本能でしょう。人間が生きる上で必要な衝動でしょう。同時にそれは引きこもっている人間には残酷な背徳感を与える悪魔でしょう。 

 書を捨てよ、町に出よう! 

 その通り。インドア派であれアウトドア派であれ、もう他人の考えや生き様なんて胡散臭いモノを頼りにするのは一切やめにして、もっともっと、人は自分の内なる考えを頼りに生きてみたらどうでしょうか。その上で、他人はマイパーツとして認識するのがいいのかと思います。 

 でも一聴するとそれは他人を自分の都合のいいように理解して利用するという、とても利己的で浅ましい考え方のように感じますね。しかし実際は逆で、自分が意のままに行動するには、まるで杖の様に他人が絶対に必要である事を理解するという事を大いに助けるのです。 

 私は息子と車に乗って出かけます。妻も、と誘ったのですが家事が忙しいという事で今日はお留守番。妻がいないのだから、そんなに遠出は出来まい。晩ご飯のおかずもちゃんと3人分用意しているはずだから、それまでには必ず帰って風呂に入って食卓の前に鎮座する義務が、私と息子にはある。そんな条件付きで。 

                 * 

 大きくせり出した松を避けると今度は、『うどん・そば』 と書いた看板にぶつかりそうになりました。おっと危ない! その看板を避けると自然と駐車場に導かれ、うまい事導きやがったな! と私は笑う。昼なのに、土の駐車場には他に車が2~3台。入ると専門店と言うにはあまりにオートマチックな、食券を自販機で買って席に着くと、国籍不明の目の血走った店員が薄暗い厨房の奥から黙って出てきて半券をもぎってまた厨房の中に消える。うどんとそばはウソのような早さ出てきました。 

 ウソを承知で言うとなぁ……、私はなぜか口ごもっています。息子は大盛りの天ぷらうどんとサイドメニューの明太子おにぎりを上手に交互に食べながら返事もしません。 

 ウソを承知で言うとなぁ、父ちゃんは今、脅迫されているんだよ。 

 誰に? 息子はうどんをすすりながら訊いてきました。 

 ある、オバサンに。お前も知ってるだろ。父ちゃんの店。ほら、ネット上の店。 

 あぁ、『日日彼是面白可笑し。』? 

 そうそう、そのお店の事をネットで小説みたい紹介して遊んでるんだけど、ある日そこに、オバサンがやって来てさ。 

 オバサン? 

 そうオバサン。オバサンって言っても父ちゃんよりも若いと思う。綺麗なオバサンだよ。で、そのオバサンがさ、うちの店で働いている2人の子供の1人の母親だって言いだしてさ、息子を返せ!って言うんだよ。 

 ふーん……。 

 でもさ、父ちゃんとしてはその証拠がないわけ。で、ね、本人に訊いたわけよ。あれ、本当に母ちゃん? って。そうしたらさ、『あれはエキストラさんです』なんて言うんだよ。困っちゃってさ。 

 ふーん……。 

 エキストラ? なに?それ。って。そうしたらさ、『僕が自分が死んだいきさつがこうならいいのに、と思う上で必要だと思ったママです。』なんて事を言い出すんだよ。 

 ふーん……。 

 で、父ちゃんが拒否するとそのオバサンが未成年者略取誘拐の罪で父ちゃんを訴える、みたいな事を言い出してるんだよ。 父ちゃん、逮捕されるかもしれない。

 ふーん……。 

 でさ、いろいろ話してるうちに、そのオバサンが、どうやら変なヤツに洗脳されてることがわかってきたんだよ。『皇極法師』っていうヤツらしいんだけど、お前の友達とかでさ、そんな話聞かない? 

 聞かない。 

 あ、そう。それならいい。聞かないなら聞かない方がいい。それで、ここからがちょっとややこしいんだけど、その『皇極法師』ってヤツがさ、どうやら1人じゃないっていうか、人格じゃないって事に、最近気が付いてさ。 

 ふーん……。 

 人格じゃない。つまり、その時その時で、人の心や考えに忍び込んでくる何者か、みたいな。そこまではなんとなく気付いたんだよ。おまえ、こういう事ない? 例えば、ひらがなとか色をジーっと見てるうちに、突然ナニモノかわからなくなる現象。ない?

 今のところない。 

 あ、そう。それならいい。ないならない方がいい。でもこんな事考えた事ない? 『あ』『あ』で、『オレンジ色』『オレンジ色』でも、どっちが先なんだろうって。もともと『あ』があって『あ』が出来たの?それとも、『あ』が出来て『あ』が生まれたの? 

 そりゃ、『あ』が先でしょ? 

 お前もそう思う。実は父ちゃんもそう思ってるんだよ。つまりそうだよ、何かに名前を付けたのでも、名前が何かを生み出したのでもない。『あ』は同時に出来たんだよな。それ以外に考えられない。でもそうだとしたら、『皇極法師』は? 父ちゃんが作っちゃったって事? そのせいで、オバサンは洗脳されて、父ちゃんは脅迫されているの? 

 息子はすっかり食べ終わった天ぷらうどんの器を『返却口』に戻して帰ってきました。そしてこう言ったのです。 

 でもそれは全部、父ちゃんが作った世界のお話でしょ? 

 そうだよ、だから最初に『ウソを承知で』って言ったじゃん! 

               *      

 結局車でわざわざさして旨くもないうどんを食べに来ただけでした。え!まさかゴールデンウィークのお出掛け、これで終了? と息子は悲惨な顔をしました。午後はまだたっぷり時間があったので、いったん家に帰ってまたバッティングセンターに行くことにしました。今度こそ、妻も家事を終え、付き合ってくれると思います。 

        第59章『アイドルの命日』 

  

 あまりにも美しくなりすぎた彼は、大胆なポーズとともに雑居ビルの屋上の手摺の外側に消えたのでした。 

 僕は花を持ってガードレールの前に膝をつく。交通量の多い交差点だから邪魔になっている事はわかっています。また田舎モノが感傷に浸って変な事やってるなという冷たい視線は仕方がないとして、この日が彼の命日だと知っている人は、『今』この場所に何人いるのだろうと思った。 

 祈っている様に見えても、僕はこの一連の出来事に一片の悲しみも感じていません。彼が最後に浴びた風はきっと、世界中の誰もがうらやむホンモノの風だったと思うから。悲しみも苦しみも一切を洗い流してくれたに違いないと思うから。どうだった? だから僕は今年も、ただそれだけを訊きにここへ来た。気持ちよかった? 

 ただ惜しむらくは今年の今日がまるで真夏の様にクソ暑い日だという事。 

「ほれ!兄さん若い成りしてすぐへばらんともうちょっと頑張れや! あとここ2センほど掘って、平ぁらにして! ここ平ぁらに!」 

 若くったって暑いモノは暑いし、バテるモノはバテるんです。僕はさっきから、ドカヘルを被ってスコップで地面を平らにしています。腕の太さから想像するに、年齢は20歳前後。土の匂いから類推するに、場所は生まれ故郷でしょうか? 借りたドカヘルは代々どんなオッサンたちがどんな理由で渡り被ってきたのか知らないけれど、もう臭くて臭くて堪りません……。 

 よし出来た。ほなタバコしようか! そう言ってにっこり笑った親方の顔がどんなに善良そうに見えても、僕には上下の前歯が4本とも痩せた歯茎からニョキっとはみ出して今にも抜けそうなのは如何にも不衛生で不摂生で、休憩!と言ったらまるでその事しか考えていない様な、まるで裏も表もない様な笑顔を、どうしても善良だなんて依怙贔屓な判定は出来ません。もし不意にショベルカ―が倒れて、僕がその下敷きになって虫の息でも、親方は、だいじょうぶか? なんて平気で訊いてきそうだから……。 

 だから僕はこういう人にこそ、彼のエピソードを語るべきだと思ったのです。 

「昔、アイドルの友達がいたんすよ」 

「アイドル? なんや、ベッピンさんか?」 

「いえ、男のアイドル」 

「なんや男かいな、興味ない」 

「それがそんな男前じゃなくて『アイドル? なれるの?』なんて訊いたぐらいなんです」 

「あれやろ、整形手術やろ。芸能界なんてそんなヤツばっかりや。女も男も売れるためなら手段を択ばん。枕営業もホイホイな奴ばっかりやろ」 

 親方はどうやら、アイドルが自分とは関係のない存在だと決めつけているようです。彼にとってはまるで月の裏側の様な話を、すべてお見通しの様に話します。そうです。すべてデタラメでいいんです。きっとわざとそうしているんです。自分の歯茎が痩せて、前歯がグラグラで不衛生で不摂生である理由の肩代わりを、アイドル達がセッセとしてくれている事にわざと気付かないフリをしています。それは純朴に擬態したプライドという堅牢な壁です。とても厄介な鎧です。 

「それが、流行の方が彼にすり寄ってきたんですよ。ある地方局の食レポで大福もちを食べた時、『食べ方が可愛い!』なんて言われたのをきっかけに突然テレビや雑誌で『1000年に1人の男の子』なんて騒がれ出して」 

「ワシはその『男が可愛い』ちゅー意味がようわからへんのよ。赤ちゃんならわかるけど、大人の男はカラはゴツイし、髭も生えるし声は低いし、どっこも可愛くないやろ。おなごの方が形も声も、全然可愛らしい思うけどな」 

 その瞬間、弁当が腐るほどの熱風がザっと吹き抜けました。 

                   * 

 彼は悪魔に睨まれた。 

 僕は彼がアイドルになりたがってるのを知ってから、今まで見えなかった彼のおかしな特徴が見える様になりました。彼はアイドルになるために感情を捨てようとしていました。アイドルに喜怒哀楽は必要ないと思ったようです。以前、ある格闘家が『格闘家に前歯は要らない』と言って全部抜いてしまったという話を聞いたことがあります。彼にとっての感情は、その格闘家にとっての前歯と同じようなモノだったと思われるのです。脱着可能な喜怒哀楽。 

 実際、それで彼はどんどん上手くいったのです。彼は喜びたい時に喜んで、悲しみたい時に悲しめるようになったんです。それも、ウソじゃなく、本当に……。 

 そうして彼は彼を望まれるままのアイドルにすることが出来た。 

 ただ、彼の思うアイドルと、世の中が欲する彼はまるで違うのです。まるで違うというよりは正反対なのです。僕はこのズレに気付くことが出来ませんでした。 

              * 

 やがて年を取り、人気もなくなり、完全に行き詰った彼が一度だけ僕に希望したことがありました。それは自分の葬式に掛ける曲を作ってくれというモノでした。彼にはもう、感情が完全にありませんでした。 

「僕がさ、死ぬからさ、そうしたらそれを利用してさ、君はそのレクイエムで有名になればいい。そうしたらさ、君は儲かるし、僕お死の価値が上がるって事さ、いいだろ」 

 まあ、確かにナイスアイディアだと思いましたね。

「死ぬとか、何言ってんの、お前」 

 僕は一応そう言った。すると彼は、 

「いいからいいから、遠慮しないで!」 

 と笑顔で言います。それはもう、見た事がないほどの美しい笑顔で。 

「遠慮なんかしてねーよ!」 

 いいえ、ウソです。僕は確かに遠慮していたのです。 

「目を覚ませよ、お前さ、命を何だと思ってんの?」 

「命? 喜怒哀楽でしょ?」 

「バカ、喜怒哀楽が命じゃねーよ。命があっての喜怒哀楽だよ」 

「どこが違うの?」 

「え?」 

「命と喜怒哀楽。どこが違うの?」 

              * 

 うわー!嫁の手弁当が砂だらけやがな!もう食われへん!風のアホ! ほれ、兄さんタバコは終わりや、尻上げ! ほな午後はあっちを、もう2センほど掘って、あっちも平ぁらにして!平ぁらに!! 

 


第58章『記憶、正しく……。』

 

 どんなに辿っても実際になかった記憶には辿り着けない事は、誰にでも簡単にわかるよね??つまり逆を言うと、辿り着いたらならそれは実際にあったという事になるよね。 

 じゃあどうだろう、夢は。あれは記憶じゃないのかな? 

 間違いなく記憶だよね。じゃあ夢は実際にあった事でいいよね? 

 違う?なぜ? 

 夢というのは目を覚ましている間に見たり聞いたりした事が、睡眠時に頭の中で整理される過程に於いて副次的に生成されたイメージの残骸なんだよって? なぜそう思う? 

 残骸というなら寧ろ、今君が頭に思い描いている昨日の記憶の方じゃないのかい? 誰と会った、何を話した、気分がよかった、ムカついた。 

 そりゃあ、事象を一つ一つ他人を交えて確認し合えば、それがお互いの記憶と合致すれば、お互いの真実と言える事は言えるかもしれないけど、でもそれは半分、他人の記憶じゃないのかい? 個人の記憶というなら、他人の意見が混じった記憶よりも混じらない記憶の方が、より一層自分にとっての真実と言えるんじゃないのかい?そう考えるのが普通じゃないのかい? なのになぜ君は混ぜ物だらけの方を真実と、夢の方を残骸だと決めつけているんだい? 

 僕の知り合いでさ、可哀想なオバサンがいてさ。その人は自分の子供をずっと虐待していたんだね。育児ノイローゼさ。その男の子は結局死んでしまうんだけど、そのオバサンはそれが自分のせいではないと必死に言い訳を考えてるんだ。そりゃあもう必死さ。笑ってしまうぐらい。 

 だから僕は一言、『あなたのせいじゃない理由を、とりあえず100個探しなさい。探してみつけるんですよ。作るんじゃなくて、それだけに専念しなさい。』ってね、言ってみたんだよ。するとそのオバサン本当に探し始めちゃってさ、どう思う? 実際に虐待してたんだから虐待してない理由なんて、あるわけないじゃない。ところが……。 

 ある日、そのオバサンが嬉しそうな顔で僕の所に来てさ、息子をみつけました!って言うんだよ。始め聞いた時、全然意味が分からなかった。でも変な事を吹っ掛けちゃった手前僕も、あらそう、それは良かったですね。なんてね、平常心を装って言ったんだよ。するとオバサンは、でも息子はある質の悪いお店で店員紛いな事させられてこき使われてるから、今から取り戻しに行ってくる、って。 

 あぁ、とうとう狂っちゃった。可哀そうだけど、僕は彼女の話は全部妄想だと、そう確信したんだ。したんだよ、したんだけどさ……。 

 彼女は真剣な目で、僕にもその店に来て欲しい。そして頑固者の店長を説得して欲しい。なんて言うんだよ。僕は内心、知らねーよ! って思いながら、じゃあ今度僕もその店に行って、その頑固者の店長と話をしてみる。と、仕方がない、約束したんだ。 

 その約束の日が、実は一昨日だったんだけどさ。当然、僕としては気が乗らない訳さ。だってどんな顔で行けばいいのさ? 気が狂ったオバサンだよ、その店で僕はどんな悪党呼ばわりされているか見当もつかないじゃない。きっとあのオバサンの事だから、自分に知恵を授けてくれた大先生、みたいに触れ回ってるに違いない。悪いけど僕はそんな大したものじゃない。そしてそんなのが相手には真逆に作用するんだよ。インチキ野郎さ、皇極法師だよ。結局僕は行かなかった。『遅れていく』とだけ連絡してね。 

 で、暇になった午後を、僕は街歩きに費やそうとして電車に乗ったんだ。いつもと同じ、何処で降りるかなんて決めないさ。適当な駅で降りで、そのまま駅前の道をずーっと、でもそうだな、本当にただ歩くのはあまりにも無責任だから、とりあえず、あの高圧電線に従って歩いてみよう。そう決めたんだから、それなりの結果が必ず出るのはわかり切っているからね。 

 果たして僕は、高圧電線の下をずーっと歩き続けた。公園を抜けて、踏切を渡って、そしてある小さな小屋のような建物に出くわしたんだ。 

 まったく驚いたよ。 

 そこにはあのオバサンが娘らしい2人の女の子と一緒にいたんだよ。そしてその店の人間と何かを言い争ってたんだ。信じられるかい? 僕は適当な駅で降りて適当に歩いて、結局オバサンとの約束の場所に来てしまったんだよ。 

 どう? これ、僕の真実だと思う? 

どう考えたってそうじゃない。それで僕はピンときた。 

これは、オバサンの真実に僕が取り込まれているからだって。   

 そこで、夢の話に戻るよ。 

 改めて、君は本当に夢は自分が覚醒時に見聞きした記憶の残骸だと思うのかい? あんなに巧緻に作り込まれた世界が、本当に自分の拙い経験と幼稚な発想力だけで作り上げられていると思うのかい? 

 僕はその店のドアを開けた。きっと拙い事になる。そう思ったけど、何事もなかったよ。ただ僕はその店の店員の少年になった。『昔の子』というらしい。ただそれだけの事だよ。要らない人間や、その場にいるはずもない人間は、夢の方から必要な人間に置き換えられる。夢ってそういうモンじゃない? 

 じゃあ、君の言う現実は? 現実だってそうじゃない? 君は常にその場所に必要な人間に置き換えられている。自分がなぜそこに居るのか、どこの誰だか、名前も顔もわからなくなった事、これまで一度でもあった。ないはずだ。ないよね。それでいいんだよ。それで普通なんだよ。ただ時間の経過を『過去』『今』『未来』みたいにして並べちゃうとそんな当たり前な事が理解できなくなる。そして無理矢理、ありもしない理屈を作ってそれに凝り固まろうとするんだ。 

 オバサンは僕に気付かない。そりゃそうだよ。僕は店員の少年なんだから。僕がいらっしゃいませ、というとオバサンは明らかな作り笑顔で、あら、こんにちは、素敵なお店ね、なんてことを言うんだよ。もうなんだか気味が悪くてさ……。 

 僕は店長に荷物を渡して、確か、パンだったと思う。いい匂いがしたのを覚えてる。それを渡して何食わぬ顔で店の掃除を始めたんだよ。で、あ、やっぱり、拙い事になってる、って、その時気が付いたんだ。 

 僕は『昔の子』と呼ばれて、怪しまれもせずその日をその店で過ごした。すると、もう1人の、そのオバサンが自分の息子だと言った男の子が僕に、君は、なぜここにいるの? なんて事を訊いてきたんだ。 

 あぁ、拙い事になった……。 

 僕は渋々自分の事を話した。僕は、生まれたタイミングが悪くてね、戦争が終わってすぐに餓死したんだ。そうしたらその少年は、ふーん、って、それだけ。だろうね。他人なんてまずそんなモンだよね。 

 その少年はオバサンが言ったとおり、自分はママにイジメ殺された、って言ったけど、目は少しも悲しんでいなかった。むしろその配役に満足している様にすら見えたんだ。まあ、これは僕の主観だけどね。 

 わかるかい? もしここで僕が目を覚ましたら、それが『夢』という事になるんだよ。目を覚まさなければ、僕はずっとあの冴えない店で『昔の子』なんて呼ばれて、店の掃除をしたり、定期的にパンを運んだり、大きな金魚の世話に明け暮れなければいけないんだ。 

 ちょっと気になったのが、その店の店長という人でさ。その人は僕ほどはっきりと自分がなぜ死んだのかを理解していない様子だったんだ。まあ、大概の人はそんな事を理解しないんでしょうけどね。自分が死んだ瞬間を見ていない。そんな人もまれにいるんだね。 

 だから彼は今も、夢を見たり覚めたりしながら、『今』の中を彷徨っているんだ。 

 そしてそれは君も一緒だよ……。 

 なぜ違うんだい? なぜ、違うと思うんだい? 



第57章『早春あくび雑記』 

 だから!タイヤがツルツルなんですって!こないだの雪の日なんか本当に危なかったんですよ!  

 朝早に電話しました。昨夜、9時過ぎに仕事を終えた時はもう誰いなかったのです。 朝っぱらから文句の電話を取った休日当番は明らかの不機嫌そうに、 

 だって、うちはタイヤは一括で注文するんだからさ、君だけ先に替えるわけにいかないだろ。だからどうしてもこの時期になってしまうんだよ。 

 と言いました。私には彼が言う『だって』『どうしても』の意味がわかりません。誰かわかります? 

 電話を切ると私は外に出ました。今日はよく晴れているので公園でも散歩して憂さを晴らそうと思ったのです。

 強い風にメタセコイヤが獰猛に揺れています。春一番でしょうか。もしそうだとしても私は感動などしません。大きな木がなすすべなく揺すられている姿に私自身を投影して、『今』が誰かの都合で勝手に浪費されていくという、どうしようもない不愉快を感じているだけです。

 イカンな……。

 時間はさしずめ煙草のようです。イカンな、イカンな、と思いながらもついダラダラと火を点けてしまう。そして周りに迷惑を掛けつつ自分の命までダメにしてしまう。そしてそれはすべて『だって』『どうしても』の様なモノに集約され、私のワガママという事になる。 

 さあ、どうしてくれよう、私は私の『今』をどうしてくれようと、木洩れ日の美しい朝のマラソン道を、恐らく私1人だけがイライラしながら歩いているに違いありません。 ドッグランでは数匹の犬が全力疾走しています。まるで地球を回しているよう。もし本当にあの数匹の犬が地球を回しているんだとしたらそれはなかなかの滑稽です。そんな理由の中に、私や家族の運命が収まっているんですから。悪魔の髪の毛の様にしつこく絡みつく長い影を、犬たちはものともせず走り回っています。 

 そうか、そういう事ね。私もそうすればいいんだ。私は私の『今』がグッと広がるのを感じました。これは喧嘩で言うところの、とうとう殴り返したのと一緒です。静かな木漏れ日の中で私は1人、喧嘩を始めたのです。私は今目の前に広がった『今』の端の方に注目します。そこには誰かの不手際の尻を拭うべく予定変更によって雪の予報が出ている群馬の山間の現場に向かう途中、ツルツルのタイヤのせいでスリップ事故を起こしてトラックごと谷底に転落して死んだ私と、その言い逃れを必死に考える会社の人間と、悲嘆にくれる私の家族がいます。 

 彼の『だって』『どうしても』はとうとう私を殺しました。 

 なぜタイヤを替えてくれなかったんですか? 主人は何度もそう頼んでいたはず。 

 妻が言うのに対し、会社の人間の頭の中には言い訳以外なにもないように見えます。 

 あぁあ、めんどくせぇことになっちまった……。しかし私は次に目に転じ、彼の家族にフォーカスを当てます。 

「お父さんの会社で、死亡事故があったんだって。お父さんその事で今大変みたい」

 妻は毎日帰りが遅い主人の健康を気遣います。娘はそんな母親を気遣います。 

  しかしそれはやがて、娘の同級生に知られることになります。 

 おい、知ってる?○○の親父の運送会社で死亡事故があってさ、アイツの親父、その責任を問われてるんだって。アイツの親父のせいで、人が死んだんだぜ。 

 娘はやがてその事でいじめを受ける様になります。人殺しの子!  

 私は助けません。娘は学校に行けなくなり、自宅に引きこもって自殺未遂を繰り返す様になりました。 

 あぁあ、何で我が家こんな目に合うんだ、アイツが勝手に事故ったせいで、こっちは大迷惑だよ……。 

ハハハハ、私は笑いました。いい気味。ざまぁみさらせ!!私は自分の『死』の影を鞭の様に撓らせて、何度も何度もその可哀想な娘を打ち据えました。そしてその悲痛な様子を十分に見届けてから、何事もなかったように家族の元へ戻るのです。 

「今日はマジで怖かったよ。峠道でスリップしてさ、もうちょっとで谷底に落ちるとこだったよ」妻は眉をひそめて「早くタイヤ替えてもらいなよ」と言います。妻の顔をジッと見ると確かに、さっきまで泣いていた跡が見えたのです。

「なに?泣いてたの?」

「うん、今日は花粉が酷くて……」 それが、昨日の事。

 私は一切の『過去』『未来』がすべて『今』の一部であるとしっかり認識しています。つまり私は生きると同時に死んでいる。さしずめ『シュレディンガーの猫』のようです。 

 お察しの通り、私はとても消耗しています。反省や言い訳や開き直りがもう手が付けられないぐらいにグチャグチャに混然となって膨張し続けているのです。だから今日はもう、店に顔を出すのもやめておきます。顔を出したところで、店には2人の少年がいて、私を見るなり、あ、店長、おはようございます。なんていつもと同じ事を言うのはわかっています。私はさも落ち着き払って、この2人にはまるで関係のない事でイライラしている自分を隠ぺいしようと骨を折らなければなりません。いい加減こういう予定調和が世界からなくなって欲しい。『今』『今』として常に正しく認識されなければいけない。そうすればだれでも世界中どこに行っても、それぞれ常に自分自身の『今』を、ピクニックの敷物の様に、思い思いにその場所に広げることが出来るとおもうのです。 

 私はベンチに腰を下ろしました。昨夜の雨のせいで少し湿っていましたが、そんな事はどうでもありません。 

 『シュレディンガーの猫』と言いましたが、実は誰もがそうなのです。それは不思議でもなんでもないのです。 

 あぁ、また気持ちの悪いニュースが入ってきました。私の『今』は煙草の煙の様に、主人である私の意に反して妙な形に広がります。 

 ひゅーすとん、ひゅーすとん……。 

2022年2月。 ウクライナに侵攻したロシア軍は、予想だにしないウクライナ軍の激しい抵抗にあい、戦況思わしくない様子……。 

 眼耳鼻舌身意に守られて、私達は初めて安心していろんな場所に行けるんですね。そしていろんな人にあって、いろんな話をして、そうして物事が前に進んでいるかのように思う。しかし眼耳鼻舌身意はすべてディフェンシヴな機能に他なりません。『死』に対して人間が圧倒的に受け身に感じられるのも、こんなディフェンシヴな機能のみですべてを決めてしまおうとするからです。この呪縛から逃れるには、『今』を出来るだけ大きく広げて、その中に生きる、或いは死ぬ自分をもっとはっきりと正確に認識する必要があるのです。いやもう、私にはそれ以外に楽になる方法はないと確信してさえいるのです。 

 本当は誰もがもっと自由奔放にそれぞれの『今』に翻弄されるべきなのです。手も足も意味がないぐらい無限の可能性にもみくちゃにされるべきです。そして様々に思い知るべきなのです。

 この度の戦争でウクライナとロシア双方に数多くの死者が出ました。それは明らかな悲劇です。葬ることが出来ない子供の死体が路傍に積まれているとききました。しかし自分の優しさが自分にしか作用しない事はけっして学ばないのが人間です。自分可愛さこそ一番の敵であり絶対悪。それは大統領を見ていたらわかるでしょ?それなのに『憎しみ』の対極に『優しさ』があるという風にしか世界中の宗教は教えません。憎しみを否定するために優しさを人身御供に使うのです。初めからそこに誤魔化しがあるのです。 

 目を覚ますと、ドッグランにはもう1匹もいませんでした。犬が消えると、悪魔の髪の毛も消えるのですね。知らなかった。悪魔の原因が犬だったなんて……。 

 思いきり吸い込むと少しにおいを感じました。何の臭いだろう? 桜はまだしばらく咲きそうもない様子です。 

 ベンチを立つとズボンの尻がしっとりと濡れていました。きっと猿の尻の様にくっきりと濡れている事でしょう。 

 みっともないけど仕方がない。乾くまでもうしばらく、マラソン道をウロウロしてから帰ろうと思います。 


 第56章『まったく酷ぇヤツ』 

 珍しい人が店を訪れました。彼は私を見るなり、久しぶり!とも言わず、まったく酷ぇヤツが多くて困るよ、と言ったのです。その瞬間、私の目はきっとキラリとしたはずです。罰が当たったと思ったからです。なんだい? 聞かせてくれと言うと彼は、人の不幸は蜜の味ってか? と言って笑いました。 

 彼と私は15年ほど前、バンドのメンバー募集サイトで知り合いました。彼は当時から、音楽のセンスよりも商いのセンスが素晴らしく、一緒にバンドをやっていた1年ほどの間だけ、CDやティーシャツやステッカーなど、バンドのノベルティーグッズの売り上げが倍増したのを思い出します。まるでバンドの人気が上がったような、そんな心地よい勘違いをさせてくれました。しかし1年ほど一緒にやったところで、彼は突然いなくなったのです。そんな彼が10数年ぶりに私の前に現れたのです。 

「俺が会社を始めたきっかけは借金だったって、言ったっけ? そうなんだよ。それまでは俺もお前と一緒で、ちゃんと本気でプロミュージシャンを目指してたんだよ。でも諦めたね。もうそれどころじゃないって。だからお前と会った時の俺はもうミュージシャンじゃなかったんだよ。俺にとって音楽はただの借金を返すためのツールでしかなくなってた。悪く思うなよ。俺には俺の立ち位置がある。とにかく借金を返さなきゃならない。そのために必要なのは、そっけない金融機関の審査や、目付きのアブねぇ町金の連中じゃなくて、何にもわかってないくせに荒唐無稽な夢ばかり見て、怖がりもせずに突っ込んでいくような、夢も現実も、味噌も糞も一緒くたな奴らだと思った。それならミュージシャンか劇団員かなって思ってさ。結果、俺のその勘は当たってたわけさ。俺は連中の中から芽が出そうな奴らを集めて小さなプロダクションを開設して、それがとんとん拍子にうまくいった。ほら、『Enterbrain』ってバンド知ってるだろ、ポッキーのCMの。あれうちの子だよ。とにかく、借金の返済に目星がついたら、わけわかんねー夢ばっかり見て現実をみない、面倒クセェ連中と音楽ごっこなんて嫌なこった!ってなったわけ。understand?」 

 確かに、うちのバンドは彼のおかげでノベルティーグッズも売れて、ライヴの出演依頼も増えて、ひょっとして、このままメジャーデビュー行けるんじゃないか?と疑わせるところまでいきました。私もそれはひとえに彼の商才のおかげで、彼もそんな自分の才能を十分に理解していましたから、自信を持って当然だと思うんです。でも私はそんな彼の態度がとても嫌だったのです。俺はノベルティーグッズを売りたいんじゃない、楽曲を売りたいんだ! 

 あのさ、あの音源貸してくんねぇ? 彼は言いました。 音源を? どうすんの? 私は尋ねました。

 今がチャンスなんだよ、使いたいんだよ、あれ。そうしたらすべてうまくいくんだよ。

 私は、 大事な音源だから貸せないな。そう言いました。彼の本心を探ろうと思ったのです。 

 いやいや、それおかしくねぇ?俺もギター弾いてんだからさ、俺にも使う権利があるだろ? 

  ないよ。あれはメロも歌詞も全部俺が作った曲だから、権利は全部俺にある。 

 おかしい!おかしい! じゃあお前があの音源で金稼いでも俺には1円も入らないって事? 

 お前は俺の作ったコード進行にちょっとリフを乗せただけだからないも同然だ。 

 それ絶対におかしいって! 

 お前がそうしたんだろ。アレンジでも何でも、何を訊いても、「別にいいんじゃん、それで」しか言わなかったじゃねーかよ。バレてたよ、お前が片手間でバンドやってたってね。そんな奴に俺は1円も渡す気はない。

 そんなくだらない過去のメンツに拘ってる場合じゃねーんだってさ。彼はもう笑っていませんでした。 

 何があったのさ? 私が言うと、彼は、

 俺、先月オヤジになったんだ。と言ったのです。 

 え? あ!そう。それは、おめでとう! 

 彼はもう50歳を過ぎていますから、それはとてもおめでたい事です。 彼は続けました。 

 だからさ、1からやり直したいわけよ。 


 ご存じの通り、私の店には、『今の子』『昔の子』という2人の少年がいます。彼らはそれぞれの理由から、若くして時間の括りから抜け出て、たまたま私の『今』とリンクして私の店にやってきたのです。彼らが応桑諏訪神社の道祖神である事はこれまで何度も言ってます。しかしその前に彼らは、我々に五感を示す『今』という存在でもあり、おそらく全ての時代が見えていると思われるのです。なぜそう思うのかは私もよくわかりません。しかし、彼らの会話や行動を見て私は少しずつ、彼らは私の『今』そのものであると推察できるようになったのです。

 音楽で1からやり直したい。娘を一流ミュージシャンの娘にしたい。 

  彼は言いました。しかし彼はなにを1からやり直すと言っているのでしょうか。いったん死ぬと言っているのでしょうか。 

  『死』は人間が作ったモノです。『生』もまたそうです。『今』を無理矢理にこの2つに分けた時点で、我々は何もわからなくなったのです。 

  一流ミュージシャンって言うけどさ、お前そんなにいいミュージシャンだっけ?

 私が言うと彼は、

 金儲けのためにやってた俺を本当の俺と思うなよ!自慢じゃないけど俺は天才だよ。ギターの神様だよ。 

 私は ハハハ、と笑いました。私の知るかぎりの彼のギターはいかにも子供っぽい速弾きでした。天才の真似をした少年が弾くギターそのものだったのです。 

 おい!何で笑うんだよ。じゃあ正直に言おうか、あの音源、お前が歌うより俺が歌った方が絶対に良かった。ギターも俺が全部弾いた方が絶対に良かった、そうすりゃ売れた。なにより俺が確実に絶対に売った。

 俺の楽曲じゃねーかよ!

 楽曲は認めてやろう。俺は楽曲作れねーからな。まあまあの曲だ。そのまあまあな曲を、俺が確実に売ってやろうと言ってるんだから感謝してもおかしくないぐらいだぜ。

 だから、なにがあったんだって? 彼はようやく本当の事を言いました。 

 騙された。会社を、乗っ取られた。 

 理由は知りません。ただ彼は相当に追い詰められているようです。もう首に縄を掛けているか、或いは屋上に靴を揃えているか、恐らくはそんな状態でしょう。だからこんなに必死になっていろんな所を回って『今』を回収しているのです。もし次の『今』が見つからなければ、彼はそのまま足を浮かせることになるのかもしれません。

 私は音源を彼に渡しました。彼は、ワルイね。でもイイの? お前のギター全部消えちゃうけど、いいの。と言いました。

でもな、くれぐれも楽曲は俺の楽曲なんだからな。絶対に俺のクレジットで発表しろよな!

 彼は、I guarantee!(確約する!)と言って、音源と共に店を出ていきました。

                   * 

  今、彼は誰なんだろう。どこでうまくいっているんだろう。

あの野郎……、確約しといて、俺の名前でクレジットしなかったな。全く酷ぇ奴だ。

子供はもう、だいぶ大きくなった事でしょう。店の窓から見ると、強い風が吹いているようです。でも『春一番』ではないようです。 


covid-19 2022 Feb Tokyo Japan



2/28(月)

27977 (30919) 0 (74)

27977 (30993) 9632人

34.42%(31.07%)

2/27(日)

4906(5605) 0(3)

4906(5608) 10321人

**********

2/26(土)

14741(15902) 0 (122)

14741(16024) 11562人

78.43%(72.15%)

2/25(金)

14841(25875) 0 (94)

14841 (25969) 11125人

74.96%(42.83%)

2/24(木)

20568(27556) 0(132)

20568(27688) 10169人

49.44%(36.72%)

2/23(水)

5224(6097) 0 (40)

5224 (6137) 14567人

*********

2/22(火)

23609(27121) 0 (52)

23609 (27173) 11443人

48.46%(42.11%)

2/21(月)

23603(34264) 0(50)

23603(34314) 8805人

37.30%(25.66%)

2/20(日)

5105 (6468) 0 (22)

5105(6490) 12935人

*********

2/19(土)

13951(17024) 0 (60)

13951(17084) 13516人

96.88%(79.11%)

2/18(金)

22321(25929) 0 (66)

22321(25995) 16129人

72.25%(62.03%)

2/17(木)

16450(24183) 0 (75)

16450 (24258) 17864人

*******(73.64%)

2/16(水)

20717(26001) 115

20832 (26116) 17330人

83.18%(66.35%)

2/15(火)

25288(29855) 135

25423 (29990) 15525人

61.06%(51.76%)

2/14(月)

26377(38622) 0(69)

26377(38691) 10334人

39.17%(26.70%)

2/13(日)

4415(7062) 0

4415 (7062) 13074人

**********

2/12(土)

17143(19670) 0

17143 (19670) 11765人

68.62%(59.81%)

2/11(金)

5269(7807) 0 (89)

5269 (7896) 18660人

**********

2/10(木)

20457 (27554) 153

20610 (27707) 18891人

91.65%(68.18%)

2/9(水)

20565(28822) 0 (48)

24069 (28870) 18287人

88.92%(63.34%)

2/8(火)

26128(32452) 0 (99)

26128(32551) 17113人

65.49%(52.57%)

2/7(月)

28644(42132) 0(70)

28644(42202) 12211人

42.63%(28.93%)

2/6(日)

5660(6052) 0

17526人

***********

2/5(土)

17357(18553) 129

17486(18682) 21122人

***********

2/4(金)

19913 (29197) 0(384)

19913(29581) 19798人

99.41%(66.92%)

2/3(木)

20,883(25095) 0

20883(25095) 20679人

99.02%(82.40%)

2/2(水)

21188(24989) 240

21428(25229) 21576人

*********(85.52%)

2/1(火)

29665(30892) 152

29817 (31044) 14445人

48.44%(46.53%)